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本編
はじまりの決意[sideフィーネ]
しおりを挟む眩い光がゆっくりと消えていって、目を凝らすと、魔法陣の中央に一人の青年が立っていた。
(……あの人が勇者様)
魔法陣に魔力を注ぎ続けていたのでクラクラしてたけど、青年を目に入れた瞬間、彼の事だけがハッキリと目に焼き付いた。
黒い髪に黒い瞳、少し乱れた服装ながらも凛とした佇まい。背筋が真っ直ぐ伸びている。
でも、何となく迷子の様だった。
当たり前か、いきなりこんな場所に連れてこられてんから……。
(……思ってたんと全然ちゃう)
宰相と王が彼に話しかけている声が耳には入ってきてるのに、内容は全然入ってこない。
彼は時折頷いたり、質問をしたりしている。
……もっと派手で、でかくて、強そうで、いかにも魔王なんてひとひねりです!みたいな人を想像してたのに、そんなことはなくて。ぼくよりも背は高そうだけど、普通の人のように見える。
でも、こんな状況にも関わらず取り乱しもせずに冷静で。
……あとは、何となく、何かを求めるのを諦めてしまっている感じ……というか……。
「貴殿には本当に申し訳無い事をしているとは、わかっている……。だがっ、私たちにはもうこれしかないのだ、どうか、どうか……っ!」
王の悲痛な声が聞こえ、はっと我に返った。
王を始め、皆が頭を下げたのでぼくも頭を下げる。
自分の命の危険も、この世界を彼に託すしかないという重さも彼はきっと理解してるのだろう。
ましてや、こんな人数に頭を下げられて、彼が断れるとは思えない。なんかぼくの方が泣き出してしまいそうや。胸がギュッと苦しい。
(ごめん、ごめんなさい、こんな事を背負わせてしまうなんて)
でも、だからこそ、ぼくが勇者パーティに選ばれてよかった。
彼は絶対にぼくが守る。絶対にずっとそばにおる。
彼に降りかかる火の粉や悲しみが、ひとつでもなくなるように。
――
「フィーネ」
「あ、ミーグ!……と、勇者様」
翌日、いよいよ勇者様もいらっしゃったので、旅までの流れをゴウシュに聞いておこうと思い、ゴウシュを探している途中の中庭で勇者様を連れて歩いているミーグに会った。
「探す暇が省けたのぉ、ハヤト、このエルフは度の仲間になるフィーネじゃ」
「……」
「フィーネ、こちらは勇者のハヤト」
「フィーネです、こ、これからよろしくお願いします」
近くで見た勇者様は、めちゃくちゃカッコ良かった。二重で切れ長の目、すっと通った鼻筋、少し薄いけど大きめの口。やっぱりぼくより頭一つぐらい背も高い。
その勇者様は、何故か目を見開いて、口も半開きのまま黙ってぼくを見下ろしていた。
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