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本編
兄弟子との作戦
しおりを挟むジルクはへらへら笑いながら肩を組んできた。
「でもさ、よかったんじゃない?」
「なにが……?」
「いや、真面目な話よ。異世界から勝手に召喚されてさぁ、縁もゆかりも無い世界しぶしぶ救わなきゃなんねぇより、大事な人がいる世界を守りたい!って方がいいじゃん」
「……それは、まぁ」
「でしょ?俺は師匠が魔王倒すって言ってるからじゃあ絶対倒すか、って思ってるだけだけどね」
「それだって立派だよ」
「……ふふ」
ジルクは少し照れくさそうに笑って、もう一度耳元に顔を寄せてきた。
「それにしても……あんな美人とダブルベッドで寝て、手ぇ出さなかったの偉いねぇ?♡」
「……!?なんでそれを」
「師匠に聞いたに決まってるだろ?フィーネはさぁ、自分が美人な自覚があんまねぇからなー。『ぼくはエルフの標準やで?』とか言って!しかもあんなふわふわほわほわしてさぁ、俺がガキの頃からくっそモテてるからね、がんばれよ弟!ま、脈がねぇようには見えねぇけど!」
そう言われて、またフィーネの事を思い出す。
確かにあんな美人に優しくされたら惚れてしまうのも頷ける。しかも本人がモテている自覚がないなら尚更勘違いするやつも多いんだろう。
うわ、なんか人の事言えない気がしてきた……。
「……めちゃくちゃ年上の人の口説き方教えて、お兄ちゃん……」
気持ちぐったりしながらそう言うと、ジルクは「ひぃー!」と大爆笑した。
――
その後もジルクと恋バナ(というよりミーグとの惚気話)をしていると、向こうから大量の荷物を持ったフィーネとゴウシュが帰ってきた。
「ハヤト、ジーくん!もう帰ってたんや、お待たせ!」
ニコニコ笑うフィーネは、先程自覚した気持ちも相まっていつもよりキラキラと輝いて見える。
我ながらとても単純だ。
「はぁぁ、つっかれた!ふたりもおつかれさん!ジルク、酒も買ってもらったからな!」
「おっ、ちゃんとツマミもあるー!やるじゃんゴウシュ」
ジルクはゴウシュが持っていた荷物を一つだけ受け取り、中をガサガサと物色しだした。
ミーグとシャンを待つ間に4人で協力して荷馬車に荷物を詰め込んでいく。
「ジーくんと2人で仲良くできた?」
細かい荷物の仕分けをしているフィーネが、こっそりと訊ねてきた。
その質問の内容にジルクの言葉を思い出して笑ってしまう。フィーネから見てもやっぱり俺は子どもなのだろうか。
「うん、思ってたより仲良くなったと思う」
「そうなんや?なんの話ししてたん?」
「……内緒」
「えー?」
「言うてくれてもええやんか……」と少し口を尖らせるフィーネに、もう1つジルクの言葉を思い出した。
「今度はフィーネと2人きりでゆっくり街歩きしたい」
「ふ、2人きり……?……こ、今度な」
『フィーネは鈍感だから遠回しに口説いた所で伝わらない!それでスカされてきた奴を俺は山ほど見てる。フィーネを口説くならストレートに!だ!』
耳の先を少し赤くしたフィーネに、頬がふっと緩んだのが自分でもわかった。
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