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本編
旅立ちの荷馬車
しおりを挟む「……この話は終わりだ」
ゴウシュは小さくそう言って、シャンの方へと身体を向けた。
いつも見ている頼りがいがある大きな背中が、何故か少し小さく見えた。
走ってきたシャンはそのままの勢いでゴウシュに抱きついて、買い物であった出来事を楽しそうに報告している。
あとからゆっくり歩いてきたミーグが、俺とフィーネを見たあとジルクをちらっと見て「ふむ」と頷いた。
「……待たせたようだの、さ、荷造りの続きをしようか」
荷造りの続きをする中、もちろん誰もさっきの話には触れなかった。
けれど、話をしながらニコニコ笑うシャンとゴウシュを見ていると、それだけで何となく大丈夫なんじゃないかと思えた。
――
荷物を全て荷馬車に積み終え、いよいよ出発の時が来た。
シャンの親方と、工房の仲間が見送りに来てくれて「腹が減ったら食え」と弁当まで持たせてくれた。
シャンは「バイバーイ!行ってくるねー!!」と大きく手を振り、親方達が小さくなるまでグラズの街を見ていた。
「……大丈夫か、シャン」
シャンの隣に座るゴウシュが小さく声を掛ける。
「ん?うん、大丈夫だよ!みんなの為にも魔王やっつけなくちゃね!」
ニコニコといつも通り笑ってはいるが、少し寂しくなったのか、いつもよりぴったりゴウシュに引っ付いていた。
――
ジルクが探してきてくれた魔王城に入るために必要な宝珠があるというダンジョンまでは、馬車で3日程らしい。
馬を扱えない俺とシャンを除いた4人で御者をしてくれることになった。
今はゴウシュが御者をしてくれているので、御者席にも聞こえるように、ダンジョンについて話し合っている。
「話を聞いてきた中では、そのダンジョンに宝珠があるのは間違いないっぽい。ただ、よくわからないことがあって」
「よくわからないこと?」
「……あぁ、通常のダンジョンって難易度に違いはあれど、パーティでもソロでも挑戦することが出来るんだけど、今から行くダンジョンは最低でもペア、パーティの人数も偶数じゃないと入れないらしい」
「……ふむ」
ジルクの説明を聞いて、ミーグは顎に手を当て何かを考えている。
「誰も宝珠持ってへんからダンジョンクリアした人はおらんねんなぁ?中のこと知ってる人には合わんかった?」
「何人かには会えたんだけど……」
フィーネがそう尋ねると、ジルクは少し言いづらそうに口を開いた。
「まず1組目は、そいつらには直接会ってないんだけど、近辺で強くて有名な4人組のパーティがそのダンジョンから戻ってきたら冒険者辞めて、男娼として働きだしたらしい」
「……男娼?」
「……お金に困って、ってこと?」
フィーネは首を傾げている。
「いや、親しかった別のパーティのやつが会いに行ったらしいんだけど『俺たちは間違っていた、こっちが天職だった』って4人とも喜んで働いてるって」
「……うーん」
「あと、2人で挑戦したやつらもいて……っていうか、そいつらは何度も何度もそのダンジョンに挑戦してるらしいんだけど、その頻度が異常なんだよ」
「頻度が?」
「出てきて3日も空けずにまたすぐに挑戦してるらしい。俺が話聞いた後は5日程ダンジョンに潜ってたあとだったみたいなんだけど、また3日後に挑戦するって言ってたから、出てくるの近くの街で待ってたんだよ……1週間後に会えたんだけど、なんて言うか、行く前より2人の距離が近くてずっとお互いのどこかが触れ合ってて、俺が話しかけてんのに俺の方は見ねぇの」
「うーん?」
不思議そうに首を傾げるフィーネ。
ミーグは何も言わずずっと何かを考えている。
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