召喚勇者と関西弁エルフ

えびまる

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本編

先駆者の異常

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 ジルクは少し迷ったあと言葉を続けた。

「ダンジョンの中の話聞いても、具体的な事は言わなくて……「楽しかった」とか「素敵だった」とかよくわかんないんだよ、ダンジョンだよ?おかしいじゃん、感想が。で、「ダンジョンの事思い出したらやばいから明日また行く」って言い出してさ……」
「……ダンジョンって、普通、何回も行きたくなるような所なのか?」

 ミーグにそう尋ねると、彼は苦い顔で「……いや」とだけ返した。

「……他には?」

 今度はミーグがジルクに尋ねる。

「あともう1組会えたっていうか、見たって言うか……」

 そう言ったジルクは気まずそうな顔を隠さないままフィーネとシャンを見た。
 見られた2人は揃って少し首を傾げる。

「情報共有だから隠さず言うけど……街の人に聞いたんだ『ダンジョンから出てきてから様子がおかしい冒険者がいる』って。それで探してみたんだけど……うーん、言葉のチョイスがムズいな」

 ジルクは困った様にミーグを見た。

「え、ええよ!ジーくん!今から行くダンジョンのことやねんし、ぼくとシャンもちゃんと聞くからそのまま言うて!」
「うん!言ってジルク!」

 フィーネはビビりながらもジルクをまっすぐ見てそう言った。シャンも珍しく真剣な顔をしている。

「じゃあ、言うけど。街の人に特徴だけ聞いて見つけたそいつらは、片方が首輪を付けてて、そのリードをもう1人のやつが持ってた。街の人が言うにはダンジョンから出てきてからずっとそんな感じらしい」
「……え?」
「怪しいからしばらく鳥になって見てたんだけど、プレイ中だったと思う。首輪を付けられたやつはたまにビクビクってなってイッてたし、もう1人はそいつがイく度に蕩けた顔して褒めてた」

 他人のプレイの内容を聞いたフィーネは、顔を真っ赤にして固まっていた。

「昼でそんなんだから、夜には首輪付けられた方が裸で四つん這いになって散歩させられてて、公園のベンチでしゃぶらされてるわ、木に手ついて立ちバックで犯されてるわ……それ以上は見てないけど何日もそんな感じだった」
「性に解放的になるダンジョンってことか……?」

 そう呟くとミーグがずっと顔を上げた。

「……淫魔じゃろうな」
「……淫魔」

 フィーネはぎゅうっと目をつぶっている。

「……それでも行くしかなかろうて」

 力や技術だけではどうにもならないかもしれない厄介なダンジョンの気配がして、誰も何も言えなくなる。
 ただ、ミーグが言ったようにそれでも行くしかない。

「一口に淫魔だと言えども、向こうがどう出てくるかはわからぬ。心を強く持てとしか今のところ言いようがないのぉ……」

 荷馬車の中はシャンを除いて苦い空気に包まれたのだった。

 ――

 それから野営などを挟んで3日が過ぎた頃、深い森の奥に佇む真っ白な神殿に着いた。

「ここだと思う……」

 ジルクがそう言うと、各々最低限の荷物を持ち、水と草が充分にある所に隠蔽魔法を掛けて荷馬車を繋いでおく。

 その神殿はこんな深い森にあるにもかかわらず、真っ白で美しいままそこに佇んでいた。

 
 
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