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本編
選ばれし絆
しおりを挟むまずは用心を重ねて、神殿の周りを探ってみることになった。
見た目はただの古びた神殿で、特に異常があるようには見えない。
入口だと思われる扉の前には、文字が刻まれた石碑があった。
ゴウシュがそれを声に出して読み上げる。
「『ここは選ばれしふたりの絆を試す地。手を重ねし者に道は開かれる』……?ふたりの絆?なるほど、だからペアか偶数でしか入れねぇんだな」
「んー、その文字の下の窪みってなんやろ?」
フィーネが指を指した先には、2つの窪みがあった。
「『手を重ねし』ってぐらいだから手を置けばいいのか?……試してみるか」
ちらりとゴウシュがこちらを見たので、石碑の前に足を進める。
こういうのは前衛の俺たちの出番だということだろう。
よくよく見ると窪みは手のひらの形になっている。
右手と右手だろうか、こうなると確かにペアでしか入れない。
……だが、ゴウシュと同時に窪みに手を置いてみても何も反応がなかった。
「……ダメか」
ゴウシュが手を離し、短く息を吐いた。俺も手を引き、もう一度石碑を見上げる。
「『選ばれし2人』って、どう選ばれるんだ……?」
ただの2人じゃ意味が無い、ならどういう組み合わせなら『選ばれし2人』に当てはまるのか……。
沈黙の中で視線が石碑の文字に集まる。
『絆を試す』ということは、ある程度の絆が必要……?俺とゴウシュじゃダメな絆ってなんだ……?
そんなことを考えていると、不意にミーグがすっと前に出た。
無言でジルクの手を引き、迷う素振りもなく、自分の右手とジルクの右手を窪みに置いた。
「……師匠?」
戸惑うジルクの声が響いた瞬間、2人の姿は淡い光に包まれすっと消えてしまった。
残された4人は言葉を失ってぽかんと立ち尽くす。
「……消えた」
最初に我に返ったのはゴウシュだった。
「ミーグのやつ、答えにたどり着いたなら言ってからやれよ……」
呆れ混じりの声には同意しかない。
ミーグとジルクが入れて、俺とゴウシュでは入れない。と、なると俺はフィーネかシャンのどちらと入れるというのだろう。
「んー、仲良しが入れるってこと?」
シャンが石碑の周りをぐるぐると歩きながらそう言った。
「……なかよし?」
「じゃあぼくゴウシュと仲良しがいー!!」
「えっ?」
戸惑うゴウシュの手をぐいっと引いて、シャンは石碑に手を乗せる。
次の瞬間、2人の姿もまた光の中に溶けていった。
「……まじか」
残されたのは俺とフィーネ。
自然と目が合い、言葉が喉に詰まる。
心臓が変に高鳴って、呼吸が浅くなった。
「……フィーネ」
「っ、う、うん」
「……いこう」
差し出した手をフィーネはギュッと握り返してくれた。そうしてフィーネと手を繋ぎあって石碑に手を乗せる。
目の前が淡く光り輝き、俺たちも無事に選ばれたのだった。
入れたことはわかっても、フィーネの手を離すことが出来なかった。
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