217 / 318
上機嫌
しおりを挟む
218 上機嫌
エドさんの屋台に行って、使ってるコップをどこで買ったか聞いてみる。
フェルはさっき果実水を飲んだばかりだから我慢するそうだ。
エドさんの果実水の果物、魔法で凍るくらいまで冷やしたらきっと美味しくなると思うんだけどな。
作り方教えてみようかな?
そしたらフェルももっと喜ぶかも。
でも僕がこっそり作った方が、フェルの喜んだ顔を独り占めできるのかな?
いやいや、お世話になった人には何かしら還元していかないと。
養鶏してるチェスターさんにプリンの作り方を教えるのもいいな。チェスターさんなら僕以上に美味しいプリンを作ってくれそうな気がする。
試食させてもらったチーズはとても美味しかった。
「エドさん。ありがとう。さっそく行ってみるよ。ごめんね、僕たち注文もしないで」
「気にするな、困ったことがあればなんでも言えって言っただろ。みんなで助け合ってやっていくのが、この街の流儀だぜ」
エドさんがカッコいいことを言う。
エドさんが教えてくれたのは、中央区のちょっと西側。貴族街よりの場所にある商会だった。
「こっから中央に出て右に行くとすぐ銭湯がある。その向かいにある商会だ、青い旗が立ってるから多分すぐわかるだろう。そこに行ってエドから聞いてきた、って言ってデイビットに会いたいっていうんだ。食器ならそこで大抵のものは手に入るぞ。デイビットのやつに欲しいものをいえばだいたいのものは買えるはずだ。いいか?遠慮はいらんからちゃんとオレの名前出してデイビットを呼び出すんだぞ?あいつの店は最近貴族向けの商品も扱ってるから、店員も調子に乗って態度が悪いんだ。金持ってなさそうなやつは冷たくされる」
エドさんは僕にしっかり念を押して、見送ってくれた。
ほんとにいい街だなぁ。王都に比べるととても暖かくて涙が出そうになっちゃう。
王都の人たちもいい人ばかりだけど、小さい街だからかな、みんなが助け合って暮らしているのがすごく感じられる。
フェルもおんなじ気持ちなのか、繋いだ手を離して僕の腕にしがみつくような感じで一緒に歩く。腕から伝わるフェルの体温がなんか心地いい。
中央区を右。西側に少し歩くと銭湯がある。
道を挟んだその向かい側を見ると、大きめの建物の前に青い旗が並んでいた。隅っこに何か紋章が描かれてるけど、ここがおそらくエドさんの言っていた商会なんだろう。
店内には高級そうな食器が、色別に分けられて綺麗に並んでいる。
ちょっと気軽には手を触れられない感じで、フェルと僕は美術品でも見るかのように、置いてある食器をただ眺めた。
すぐに女性の店員が来て用件を聞かれる。
エドさんの紹介で来たことを伝え、デイビットさんに会いたい旨を伝えた。
ところがその女性の店員が、デイビットとはどのようなご関係でしょうか?紹介状はお持ちですか?と、詰め寄ってくる。他にもいろいろ失礼なことを言われ、意地の悪そうな女性店員は僕たちにに、お前たちはこの店に相応しくないからもう帰れみたいな空気を発してくる。
僕たちがその店員の対応にオロオロとしていると、年配の男性が来てその女性と変わって話を聞いてくれた。
「あぁ、エドワードさんの紹介でいらしたのですか。それは失礼いたしました。エドワードさんとは古い付き合いでして、商会を立ち上げた時にはずいぶんお世話になりました」
40代後半くらいの上品そうなその男性は僕らに優しい口調で話しかけた。
「私は当商会の代表のデイビットと申します。もともとは王都の貴族街で店を開いていたのですが、もっと庶民的な商売をしたいと思いこの領都に移って来たのです。最初は街に馴染めず商売もなかなか上手くいかなかったのですが、当時、エドワードさんにいろいろ助言をいただいてそれでなんとか商いを軌道に乗せることができたのです」
そしてデイビットさんは急に少し小声になり、
「先ほどはあの店員が失礼いたしました。実は今私どもの商会は少々厄介な御仁に目をつけられておりまして、あれはその方の娘なのです。得意客の1人でかなりの上客だったのですが、ある時、娘がここで働きたいと言っているから雇ってもらえないかと頼まれまして、仕方なくその娘を雇えば、だんだんと我が物顔でその方もこの店にやってくるようになりました。店のレイアウトも勝手に変更したり、客を見た目で判断して貧しそうな者を追い出したりと、他にもいろいろとやりたい放題になりまして。ですがこの領に多額のお金を貸した例の大貴族と繋がりがある方なので、あまり強くも言えず。困っているのですよ」
ふと先ほどの女性店員を見ると、こちらをじっと睨んでいる。目が合うと顔を逸らしどこかへ消えていった。
「お客様は本日はどのようなものをお探しでしょうか?エドワードさんの紹介でしたらいろいろと相談に乗らせていただきますよ」
「屋台で使う木製のコップが欲しいのです。なくなったりすることも考えるとそれほど高価でないものが良いのですが……すみません、大したものではなくて」
貴族が買いにくるような店で、1個、銅貨1枚くらいの値段のコップが欲しいって言うのが少し恥ずかしい。でもデイビッドさんは優しく僕たちに微笑む。
「いえ、全く気にする必要はございませんよ。質の良い量産品こそ、うちの最も得意とする商品です。食堂などで使う食器ならばこちらの奥にございます。エドワードさんが実際使ってるコップもございますよ」
そう言ってデイビットさんは奥の方に案内してくれる。
「こちらの商品がそうですね。ここには置いてありませんが、在庫は充分にございます。こちらがエドワードさんが果実水を入れているコップですよ。通常より厚めになっていて、冷えたものが手の温度でぬるくなりにくいようになっております」
見ると、確かにエドさんのところで使っているコップがあった。
無料で配るサービスの麦茶だから、もっと小さくていいかな?飲みきったらおかわりをすればいいし。そんなに厚く作ってなくてもいいけど、少し丈夫なほうがいいな。
デイビットさんに麦茶の件も含めてそう伝えると、店の奥に言って小さめのコップいくつかを持ってくる。
「たとえばこちらなんていかがでしょうか?」
そのうちの1つを僕とフェルに渡してデイビットさんが商品の紹介をする。
「こちらなら100個で銀貨2枚です。飲み口を薄く仕上げておりますので、木製でも飲み物が飲みやすいです。食堂などで水を出すのに良いかと思って作らせたのですが、いかがでしょうか?」
まさに理想的なものをデイビットさんは持ってきてくれる。形が工夫されていて、重ねて置いてもコップ同士がくっついて取れなくなるようなこともなさそうだ。
フェルの持つコップに実際、重ねてみたりしてその使い心地を確かめる。
デイビットさんは僕がその工夫に気づいたのが嬉しいのかニコニコして僕たちの様子を見ている。
デイビットさんにコップをお返しして少し身なりを正して言う。
なんとなくそうしたかったのだ。
紹介してもらったから、ではなくて、きちんと取引する人にはできるだけ自分たちのことを 信用してもらいたい。
「このコップがいいです。数は…150…いや、200個欲しいです。在庫はありますか?」
「ありがとうございます。在庫は充分にございます。エドワードさんのお知り合いということですので値段は200個で銀貨3枚でいかがでしょうか?」
そんな僕を見てデイビッドさんは優しい顔でそう言ってくれた。
「ありがとうございます!それでお願いします」
デイビットさんは店の従業員に伝えて在庫を用意させる。
フェルが、色のついた木製のコップを手に取って見ていた。大きさはエドさんのところで使っているサイズで、かわいいピンク色だ。
「そちらは特殊な染料で色付けしたものでございます」
戻ってきたデイビットさんがフェルに向かってそう言った。
「エドワードさんの果実水を飲んでから、こういったコップであれを飲んだら楽しいだろうなと、半ば趣味のようなもので作らせたものでございます。少々お待ちください。色違いが何個かございますのでお持ちいたします」
そう言ってデイビットさんは奥に引っ込む。
木製の食器でも、こんなカラフルにできるなら売れると思うのにな。高級な食器は綺麗だけど、食堂では使えないし。
普段家で使ってるお皿もこういうのがいいな。
なんか楽しそうだし。
デイビットさんは色とりどりのコップを持って戻って来た。
それを全部並べて説明してくれる。
こちらの染料は特殊な色落ちしにくいものを使っております。普通に塗料を塗れば使っているうちにその塗料が剥がれてきてきてしまいますが、こちらは口に入れても問題のない染料で木を染めておりますので剥がれ落ちることはございません。
どうしても使っているうちに色は少しずつ抜けてきてはしまうのですが、同時に木の風合いも出てきますので、徐々に味わい深い感じになっていきますよ。
僕とフェルはいろんな色のコップを手に取り、色や木の風合いを確かめる。
長くお使いになられるのでしたら淡い色がおすすめですよ。木の木目が透けるように見えてきてとても美しい味わいになります。そちらの桃色か、あとは水色ですね。そこの薄い緑色も良いかもしれません。
「ケイ!このコップでエドの果実水を飲んだら楽しそうだな。私はこの桃色のコップがいいと思うのだ。入れた果物がさらに美味しそうに見えそうだ」
フェルが少し興奮気味にいう。
値段は1つ銅貨10枚。木のコップとしては少し割高ではある。
「こういう木を染めたものでお皿とかはありますか?」
そう聞いたら、少し離れたところの棚に案内される。
「こちらが同じ方法で染めたものになります。染料は同じく毒性のない、口に入っても問題ないものを使っておりますので、ご安心ください。本当はもっと目立つところに置いていたのですが、今はこちらの棚に移されてしまいました。本当はこういう商品を売りたくて引っ越してきたのですがね。まったく厄介な方に目をつけられました」
デイビットさんは悲しそうにいう。
選んだコップと同じ色で普段使ってるくらいの大きめの深皿を購入することにした。
陶器製だけど、かわいいお茶碗がいくつかもあったので、少し高かったけど、フェルと相談しながらお揃いのものを買った。
全部で銀貨5枚と少し、デイビットさんは端数をおまけして銀貨5枚にしてくれた。
「屋台の商売がうまくいくと良いですね」
デイビットさんはそう言って笑顔で商品を包んでくれた。
デイビットさんに屋台の場所を伝えて、近くなのでぜひ来て欲しいこと、そして今度は僕らがサービスしますと言って、固辞したにも関わらず、店の外まで見送ってくれるデイビットさんと別れた。
果実水のためのコップは包んでもらわずにそのまま持ち帰った。フェルが両手にそのコップを持ち、上機嫌だ。
「なあ、ケイ。エドの店に寄って帰ろう。このコップに果実水を入れてもらって部屋で飲むのだ。きっと楽しいぞ」
そう可愛く言ったあとにフェルが急に立ち止まる。
「あ、ケイ、通り過ぎてしまったが、さっきの銭湯に寄って風呂に入ってからエドの店に行くのはどうだ?風呂上がりにエドの冷たい果実水は格別だと思うのだ」
銭湯はまだ営業を続けてるみたいだった。ガンツの言ってた改装はいつやるんだろ。
いいね。まだ日が落ちるまで時間もあるし、行ってみようか?
エドさんの屋台に行って、使ってるコップをどこで買ったか聞いてみる。
フェルはさっき果実水を飲んだばかりだから我慢するそうだ。
エドさんの果実水の果物、魔法で凍るくらいまで冷やしたらきっと美味しくなると思うんだけどな。
作り方教えてみようかな?
そしたらフェルももっと喜ぶかも。
でも僕がこっそり作った方が、フェルの喜んだ顔を独り占めできるのかな?
いやいや、お世話になった人には何かしら還元していかないと。
養鶏してるチェスターさんにプリンの作り方を教えるのもいいな。チェスターさんなら僕以上に美味しいプリンを作ってくれそうな気がする。
試食させてもらったチーズはとても美味しかった。
「エドさん。ありがとう。さっそく行ってみるよ。ごめんね、僕たち注文もしないで」
「気にするな、困ったことがあればなんでも言えって言っただろ。みんなで助け合ってやっていくのが、この街の流儀だぜ」
エドさんがカッコいいことを言う。
エドさんが教えてくれたのは、中央区のちょっと西側。貴族街よりの場所にある商会だった。
「こっから中央に出て右に行くとすぐ銭湯がある。その向かいにある商会だ、青い旗が立ってるから多分すぐわかるだろう。そこに行ってエドから聞いてきた、って言ってデイビットに会いたいっていうんだ。食器ならそこで大抵のものは手に入るぞ。デイビットのやつに欲しいものをいえばだいたいのものは買えるはずだ。いいか?遠慮はいらんからちゃんとオレの名前出してデイビットを呼び出すんだぞ?あいつの店は最近貴族向けの商品も扱ってるから、店員も調子に乗って態度が悪いんだ。金持ってなさそうなやつは冷たくされる」
エドさんは僕にしっかり念を押して、見送ってくれた。
ほんとにいい街だなぁ。王都に比べるととても暖かくて涙が出そうになっちゃう。
王都の人たちもいい人ばかりだけど、小さい街だからかな、みんなが助け合って暮らしているのがすごく感じられる。
フェルもおんなじ気持ちなのか、繋いだ手を離して僕の腕にしがみつくような感じで一緒に歩く。腕から伝わるフェルの体温がなんか心地いい。
中央区を右。西側に少し歩くと銭湯がある。
道を挟んだその向かい側を見ると、大きめの建物の前に青い旗が並んでいた。隅っこに何か紋章が描かれてるけど、ここがおそらくエドさんの言っていた商会なんだろう。
店内には高級そうな食器が、色別に分けられて綺麗に並んでいる。
ちょっと気軽には手を触れられない感じで、フェルと僕は美術品でも見るかのように、置いてある食器をただ眺めた。
すぐに女性の店員が来て用件を聞かれる。
エドさんの紹介で来たことを伝え、デイビットさんに会いたい旨を伝えた。
ところがその女性の店員が、デイビットとはどのようなご関係でしょうか?紹介状はお持ちですか?と、詰め寄ってくる。他にもいろいろ失礼なことを言われ、意地の悪そうな女性店員は僕たちにに、お前たちはこの店に相応しくないからもう帰れみたいな空気を発してくる。
僕たちがその店員の対応にオロオロとしていると、年配の男性が来てその女性と変わって話を聞いてくれた。
「あぁ、エドワードさんの紹介でいらしたのですか。それは失礼いたしました。エドワードさんとは古い付き合いでして、商会を立ち上げた時にはずいぶんお世話になりました」
40代後半くらいの上品そうなその男性は僕らに優しい口調で話しかけた。
「私は当商会の代表のデイビットと申します。もともとは王都の貴族街で店を開いていたのですが、もっと庶民的な商売をしたいと思いこの領都に移って来たのです。最初は街に馴染めず商売もなかなか上手くいかなかったのですが、当時、エドワードさんにいろいろ助言をいただいてそれでなんとか商いを軌道に乗せることができたのです」
そしてデイビットさんは急に少し小声になり、
「先ほどはあの店員が失礼いたしました。実は今私どもの商会は少々厄介な御仁に目をつけられておりまして、あれはその方の娘なのです。得意客の1人でかなりの上客だったのですが、ある時、娘がここで働きたいと言っているから雇ってもらえないかと頼まれまして、仕方なくその娘を雇えば、だんだんと我が物顔でその方もこの店にやってくるようになりました。店のレイアウトも勝手に変更したり、客を見た目で判断して貧しそうな者を追い出したりと、他にもいろいろとやりたい放題になりまして。ですがこの領に多額のお金を貸した例の大貴族と繋がりがある方なので、あまり強くも言えず。困っているのですよ」
ふと先ほどの女性店員を見ると、こちらをじっと睨んでいる。目が合うと顔を逸らしどこかへ消えていった。
「お客様は本日はどのようなものをお探しでしょうか?エドワードさんの紹介でしたらいろいろと相談に乗らせていただきますよ」
「屋台で使う木製のコップが欲しいのです。なくなったりすることも考えるとそれほど高価でないものが良いのですが……すみません、大したものではなくて」
貴族が買いにくるような店で、1個、銅貨1枚くらいの値段のコップが欲しいって言うのが少し恥ずかしい。でもデイビッドさんは優しく僕たちに微笑む。
「いえ、全く気にする必要はございませんよ。質の良い量産品こそ、うちの最も得意とする商品です。食堂などで使う食器ならばこちらの奥にございます。エドワードさんが実際使ってるコップもございますよ」
そう言ってデイビットさんは奥の方に案内してくれる。
「こちらの商品がそうですね。ここには置いてありませんが、在庫は充分にございます。こちらがエドワードさんが果実水を入れているコップですよ。通常より厚めになっていて、冷えたものが手の温度でぬるくなりにくいようになっております」
見ると、確かにエドさんのところで使っているコップがあった。
無料で配るサービスの麦茶だから、もっと小さくていいかな?飲みきったらおかわりをすればいいし。そんなに厚く作ってなくてもいいけど、少し丈夫なほうがいいな。
デイビットさんに麦茶の件も含めてそう伝えると、店の奥に言って小さめのコップいくつかを持ってくる。
「たとえばこちらなんていかがでしょうか?」
そのうちの1つを僕とフェルに渡してデイビットさんが商品の紹介をする。
「こちらなら100個で銀貨2枚です。飲み口を薄く仕上げておりますので、木製でも飲み物が飲みやすいです。食堂などで水を出すのに良いかと思って作らせたのですが、いかがでしょうか?」
まさに理想的なものをデイビットさんは持ってきてくれる。形が工夫されていて、重ねて置いてもコップ同士がくっついて取れなくなるようなこともなさそうだ。
フェルの持つコップに実際、重ねてみたりしてその使い心地を確かめる。
デイビットさんは僕がその工夫に気づいたのが嬉しいのかニコニコして僕たちの様子を見ている。
デイビットさんにコップをお返しして少し身なりを正して言う。
なんとなくそうしたかったのだ。
紹介してもらったから、ではなくて、きちんと取引する人にはできるだけ自分たちのことを 信用してもらいたい。
「このコップがいいです。数は…150…いや、200個欲しいです。在庫はありますか?」
「ありがとうございます。在庫は充分にございます。エドワードさんのお知り合いということですので値段は200個で銀貨3枚でいかがでしょうか?」
そんな僕を見てデイビッドさんは優しい顔でそう言ってくれた。
「ありがとうございます!それでお願いします」
デイビットさんは店の従業員に伝えて在庫を用意させる。
フェルが、色のついた木製のコップを手に取って見ていた。大きさはエドさんのところで使っているサイズで、かわいいピンク色だ。
「そちらは特殊な染料で色付けしたものでございます」
戻ってきたデイビットさんがフェルに向かってそう言った。
「エドワードさんの果実水を飲んでから、こういったコップであれを飲んだら楽しいだろうなと、半ば趣味のようなもので作らせたものでございます。少々お待ちください。色違いが何個かございますのでお持ちいたします」
そう言ってデイビットさんは奥に引っ込む。
木製の食器でも、こんなカラフルにできるなら売れると思うのにな。高級な食器は綺麗だけど、食堂では使えないし。
普段家で使ってるお皿もこういうのがいいな。
なんか楽しそうだし。
デイビットさんは色とりどりのコップを持って戻って来た。
それを全部並べて説明してくれる。
こちらの染料は特殊な色落ちしにくいものを使っております。普通に塗料を塗れば使っているうちにその塗料が剥がれてきてきてしまいますが、こちらは口に入れても問題のない染料で木を染めておりますので剥がれ落ちることはございません。
どうしても使っているうちに色は少しずつ抜けてきてはしまうのですが、同時に木の風合いも出てきますので、徐々に味わい深い感じになっていきますよ。
僕とフェルはいろんな色のコップを手に取り、色や木の風合いを確かめる。
長くお使いになられるのでしたら淡い色がおすすめですよ。木の木目が透けるように見えてきてとても美しい味わいになります。そちらの桃色か、あとは水色ですね。そこの薄い緑色も良いかもしれません。
「ケイ!このコップでエドの果実水を飲んだら楽しそうだな。私はこの桃色のコップがいいと思うのだ。入れた果物がさらに美味しそうに見えそうだ」
フェルが少し興奮気味にいう。
値段は1つ銅貨10枚。木のコップとしては少し割高ではある。
「こういう木を染めたものでお皿とかはありますか?」
そう聞いたら、少し離れたところの棚に案内される。
「こちらが同じ方法で染めたものになります。染料は同じく毒性のない、口に入っても問題ないものを使っておりますので、ご安心ください。本当はもっと目立つところに置いていたのですが、今はこちらの棚に移されてしまいました。本当はこういう商品を売りたくて引っ越してきたのですがね。まったく厄介な方に目をつけられました」
デイビットさんは悲しそうにいう。
選んだコップと同じ色で普段使ってるくらいの大きめの深皿を購入することにした。
陶器製だけど、かわいいお茶碗がいくつかもあったので、少し高かったけど、フェルと相談しながらお揃いのものを買った。
全部で銀貨5枚と少し、デイビットさんは端数をおまけして銀貨5枚にしてくれた。
「屋台の商売がうまくいくと良いですね」
デイビットさんはそう言って笑顔で商品を包んでくれた。
デイビットさんに屋台の場所を伝えて、近くなのでぜひ来て欲しいこと、そして今度は僕らがサービスしますと言って、固辞したにも関わらず、店の外まで見送ってくれるデイビットさんと別れた。
果実水のためのコップは包んでもらわずにそのまま持ち帰った。フェルが両手にそのコップを持ち、上機嫌だ。
「なあ、ケイ。エドの店に寄って帰ろう。このコップに果実水を入れてもらって部屋で飲むのだ。きっと楽しいぞ」
そう可愛く言ったあとにフェルが急に立ち止まる。
「あ、ケイ、通り過ぎてしまったが、さっきの銭湯に寄って風呂に入ってからエドの店に行くのはどうだ?風呂上がりにエドの冷たい果実水は格別だと思うのだ」
銭湯はまだ営業を続けてるみたいだった。ガンツの言ってた改装はいつやるんだろ。
いいね。まだ日が落ちるまで時間もあるし、行ってみようか?
95
あなたにおすすめの小説
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる