フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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今日も頑張ろう

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 224 今日も頑張ろう

 話していたら料理が運ばれてきた。
 まずは海鮮サラダだ。

 薄切りの鮭?サーモン?
切り身なら鮭、薄切りならサーモンって呼びたくなってしまう。なんでだろう。

 野菜の上に薄く切って載せられたサーモンの上に海ブドウが乗せられている。
 見た目も綺麗で料理長の実力が強く感じられる料理に仕上がっていた。
 
 もしも最初から王都ではなくこの領都に流れ着いてたとしたら、きっと僕はスティーブさんに弟子入りしてただろう。
 そう思うくらいスティーブさんは素晴らしい料理人だと、本当に尊敬している。
 
 だけど師匠に出会えなかったら、料理人として生きていく覚悟のようなものは生まれなかった。
 師匠は何にも知らない田舎の若造に生き方を教えてくれた。
 
 そしてそもそもガンツに出会えなければ、こんなふうに生活できなかったと思う。
 そう考えると王都で良かった。

 王都での幸運な出会いと、支えてくれてる友人たちに感謝だ。神様ほんとにありがとう。

 しばらくしてメインの料理が運ばれてくる。
 鶏肉はトマト煮らしいので僕はパンにしていた。ガンツとフェルはお米にしたようだ。

 チキンのトマト煮は絶品だった。シンプルな味付けで使っている香草もとても少ないけど、とにかく鶏肉が美味しい。普通の鶏肉じゃないって口に入れた瞬間にわかる。
 その素材の良さを壊さないように潔くスパイスを選んでいる。さすがだ。
 メモをとりたかったけどフェルに少し睨まれてしまった。
 自重します。すみません。
 これってチェスターさんのところのニワトリかな。多分そうだと思う。

 フェルにも分けてあげるとすごく驚いていた。こんな美味しい鶏は食べたことがないと言う。僕だってそうだ。特別なご飯って感じがする。

 同じくガンツにもあげたけど反応はけっこう冷静だった。
 
「確かに美味いの、この鶏は」とか言うだけだった。100歳越えの老人はなかなか人生経験が豊富なようである。

 今日も夕食を堪能して、明日の準備を始める。
 ガンツはいつも通り下で酒を飲んでいる。

 9時を過ぎたので厨房に行って明日の仕込みを始めた。

 フェルは僕にずっと付き合う必要はないから、先にお風呂に入ってもらうことにした。フェルも明日のために準備したいものがまだあるみたいだ。

 なので今日は僕一人で厨房に行った。

 美味しいお味噌汁が食べたいから、今日の料理教室は味噌汁の作り方だ。

 仕込みはどうしたんだ、と思うけど、支配人の熱がすごいのだ。
 今日はどうしても屋台に行くことができなかったんです。申し訳ありません。そこから始まってけっこう長めに支配人がお米を出したことの反響を語りだし、もっと王都の文化を我々にもご教示くださいと言う。
 
 そう熱く言われると断りにくい。

 だって僕たち無料で滞在してるんだもん。
 領都の発展のために協力しなくちゃ。
 
 僕が勝手に料理教室と言ってるだけなんだけど、仕込みの合間で僕が知ってる和食の料理を紹介することにした。
 
 少しでもこの宿の人たちに何かで恩返しできればいいと思ってる。
 
 厨房のみんなは鰹節のことは知ってたから、おっちゃんのところで買える昆布の出汁の取り方を説明する。
 
 出汁の説明が難しかったけど、いろんなパターンを紹介して、原価と手間を考えてある程度妥協しても良いと、ちょっと逃げた感じの説明をした。
 
 だってさ、たとえ出汁が最高だとしても一杯1000円の味噌汁なんて誰も飲まないよね。
 いや?美味しけりゃ飲むのかな?

 とにかく領都で、醤油と味噌汁の需要を増やすのだ。これはたぶん布教だ。
 信者が増えてみんなが買うようになれば値段も下がる……のかな?だといいけど。

 その合間を使ってマヨネーズと照り焼きのタレを作ってしまう。
 ガンツが保存箱を作ってくれたら、野菜を切って入れておけるはず。そしたら当日の仕込みがもっと楽になると思う。
 まぁそれは先の話だ。明日はできる限り頑張ってみよう。

 味噌汁は鰹出汁、昆布出汁、その2つを合わせたもの、その3種類作って飲み比べてもらった。

 スティーブさんは味噌汁の奥深さに感動していた。

 魚の捨てちゃうようなところを使ってもいい出汁が出ますよと言うとスティーブさんが考え込む。自分の知ってる料理のことを考えているみたい。
 何か思い当たることがあるみたいだ。

「もしかしてキノコなどでも出汁が取れるのではないか?」

 スティーブさんにそう聞かれてその通りだと答える。

 言ってしまえば出汁というものはどんな食材からも取れるのだ。たとえば鍋ってそれが集約されてる料理だと思う。けれど出汁と呼ばれる物の中で「旨味」という成分を含むものは少ない。
 
 昆布や鰹だし、キノコなど、その抽出した成分が基礎になって料理の味を支えることをスティーブさんに話したら、なるほど、と納得してもらえた。

 詳しい化学的な変化とかわからないから実践的な説明になっちゃったけど、伝わったみたいで良かった。

 部屋に戻るとフェルはもう風呂から上がっていた。
 果実水でも作ろうか?と聞くと、パッと明るい顔になる。フェルのその顔が好き。
 
 ブドウの果実水をエドさん風に作ってあげる。
 しかしブドウは少しシャリシャリするくらいに凍らせた。エドさんの果実水より美味しく仕上げるのだ。

 うれしそうにブドウを食べるフェルを見て、ちょっとエドさんに勝てた気がした。
 少し嬉しい。

 ゆっくりお風呂に入ったらもう11時だ。
 寝る前にフェルにキスをして、ほんの少しイチャイチャしてから寝た。
 どうイチャイチャしたかは恥ずかしくて教えられない。

 夜明け前に目が覚めた。
 
 時計を見るとまだ5時半。
 
 まだ寝ぼけているフェルのほっぺに優しくキスをするとふにゃっとした表情をする。かわいいなぁ。

 2人で洗面所に行き、仲良く顔を洗い、着替えて朝ごはんを食べる。
 昨日よりすこし早い時間に宿を出て仕入れに向かった。

 朝は少し冷える。領都で冬用の外套を仕立ててもいいかもしれない。物価が安いからな。でもどこがいいんだろ。聞くならロザリーさんかナンシーさんかな?
 
 だけど買って帰ったらエリママの機嫌が悪くなりそうだ。
 やっぱりやめとこうかな。

 挽肉を受け取って市場へ。
 スパイスを扱う店でマスタードのタネを買ってセシル婆さんの野菜を買いに行く。
 ニンジンとタマネギは追加で多めに買った。
 まだチェスターさんが来てなかったので魚屋のおっちゃんと雑談しながら待った。
 お刺身のお礼もやっと伝えられた。

 朝はいろんな魚が並んでる。
 食べたい。買いたい。作りたい。

 スティーブさんみたいに調理してフェルに食べてもらいたい。
 でもな。宿だと難しいな。
 
 チェスターさんが来たので、タマゴを買って、最後にパン屋に寄ったら商業ギルドに。
 屋台を押すフリはもうやめた。そんなことしてるよりフェルと話してた方がいい。
 フェルと楽しくおしゃべりしながら仲良く中央公園に入った。

 両隣りのスープ屋のおじさんと、トビーに挨拶をして屋台の設営をする。
 昨日トビーが丁寧に教えてくれたので、今日はちゃんと設営できた。
 お揃いの頭巾をかぶってお互いを見つめ少し笑顔になる。

「よく似合ってるぞ」

 フェルが言う。
 
 フェルに立て看板を任せて仕込みをはじめる。
 
 「準備中」と、かわいいうさぎのイラストが描かれた布を、立て看板にかけて、フェルはお茶を用意していく。
 タマゴの準備もフェルにお願いした。
 なんだかフェルも嬉しそう。だんだんフェルに任せられることが増えていく。

 昨日の反省点を整理したのが良かったのか、分量が増えても仕込みにかかった時間は実際、昨日より早かった。
 使ったタマゴの量とか、記録につけておいた。
 こういうの大事な記録かもしれないな。もう一冊ノートを買ってまとめておこう。
 僕はレシピ帳とは別に料理ノートを作ることを決めた。

 だいたい仕込みが終わったころ、スープ屋のおじさんとたこ焼きもどき、いや明石焼きのおじさんが、自分のところの料理を持って挨拶に来てくれた。

 昨日は2人ともハンバーガーが美味しくて驚いたらしい。
 素直にその言葉が嬉しかった。

 おじさんのスープはとても美味しかった。鰹節を使っているみたいだけど……、これ粉末にしてる?少し荒々しい感じだけどそれを上手くまとめてる。
 面白い味だ。
 
 たこ焼きやのおじさんがニヤニヤしながら言ってくる。

「うちのたこ焼きをこのスープにつけて食べると、じつは最高に美味いんだぜ」
 
 実際そうさせてもらうと、びっくりするくらい本当に美味しい。
 
 食べたことがない味だ。とっても複雑ですごく美味しい。
 
 初めて食べるその味わいはちょっと説明が難しい。
 
 おじさんのスープは一見普通のトマトのスープに見えるけど、飲むと強い魚貝の味がして、トマトは実はただのアクセントになっているように仕上げている。
 スペイン料理に近いのかな?とにかく日本の味じゃない。
 そしてその深い味のスープにたこ焼きを浸せば、甘味とタコの味といろんな風味が重なって不思議な美味しさが広がるのだ。
 
 こんな料理は今まで食べたことがない。
 
 フェルは夢中で食べてる。あれは本当に美味しいものに出会った時の顔だ。
 料理人としては少し悔しいけどこの左隣の屋台のコンビ料理は確かにとても美味しかった。
 
 僕ももっと頑張らなくちゃ。
 僕なんてまだまだ修行を始めたばかりの半人前なんだから。

 継ぎ足した照り焼きソースの味をまとめるのが意外と難しい。
 小熊亭のデミグラスソースの作り方はまだきちんと教えてもらっていない。
 レシピはもらっているのだけど、店で出すデミグラスソースを作らせてもらったことがない。
 いつも師匠がいつの間にか作って補充している。
 ソースを継ぎ足して作るときって毎回同じ味に仕上げるのがこんなに難しいんだと改めて実感した。

 ソースの味もなんとか納得できるものに仕上がったのは10時半過ぎ、11時の開店の前に屋台を綺麗に掃除した。

 屋台の周りには開店を待っているお客さんが見える。遠巻きに見ているけど、僕らのお店を気にしているようだ。

 フェルに合図して立て看板の布を外してもらう。

 さあ、今日も頑張ろう。
 


 
 








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