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鉄壁
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244 鉄壁
ハンバーガーは3時を過ぎた頃には今日の分を売り切ることができた。
結局、これから屋台で販売するハンバーガーは300個に減らすことにした。
朝ごはんの時にフェルと相談してそう決めたのだ。おばさんのところのパンも100個単位で焼いているというし、このくらいがたぶん分相応かと思ってる。
あと10日くらい屋台を続けたら経費を差し置いて、だいたい金貨1枚の収入になる。もうそれで充分すぎる利益になると思った。
並んでくれてるお客さんのために、もう50個頑張って売るというのはやめた。
完売したなら完売したで早めに店じまいすればいい。
売り上げを伸ばすために無理に仕入れを増やして頑張ることはしないことにした。
もちろんどんどんハンバーガーが売れていくのを見て、その売り上げに目が眩まなかったわけじゃない。
だって3日も営業すれば小熊亭の給料分くらい稼げてしまうんだもの。
ひたすら屋台でハンバーガーを売れば確かにお金にはなるけれど、忙しくなればなるほど来てくれるお客さんにしっかり対応出来なくなってしまう。
昨日来たあの女の子のこともあってそう考えて決めた。
昨日作ったトマトソースを使って、今日買ってきた鯖を煮込んでみる。
鯖の切り身は程よい大きさに切り分けて塩を振って臭みを抜く。身を崩さないように注意しながらフライパンで軽く焼き目をつけた。
おにぎりより今日はパンかな。フェルに頼んで追加でパンを買いに行ってもらった。
ちょっと予算オーバーするけどまあいいだろう。
鯖を煮込むトマトソースには荒くみじん切りしたタマネギとニンジン、程よい大きさに切ったキノコを入れる。
きっと美味しいものが作れると思う。
出来るまでの間、小熊亭のアラカルトメニューを小さめに作って出していく。
オーク肉のステーキは食べやすい大きさに切って提供、ハンバーグは小さめに、お弁当に入れるような大きさで出した。
大皿にたくさん乗せてオニオンソースを上からかける。
ポテトサラダはちぎったレタスを混ぜて少しかさ増しして大皿で出す。ちょっと思ったより人数が多かった。
フェルがパンを持って戻ってきた。一緒に歩いてるおじさんは誰だろう?
「親父!どうしたんだ?店はいいのか?」
トビーがおじさんに声をかける。
え?トビーのお父さん?
「やあ、はじめましてだよね。いつもうちのパンを使ってくれてありがとう。私はフリオと言う。そこにいるトビーの父親だよ。ちょうど休憩時間でね、少し様子を見にきたんだ。そういえばうちのトビーにレシピを教えてくれたそうじゃないか、珍しくトビーが厨房でいろいろ試行錯誤していたよ。コイツは商売を甘く考えてるところがあったから君の屋台が隣で営業してるのがいい刺激になったみたいだよ。ありがとう」
「親父。余計なことは言わなくていいんだよ。どうすんだ?ケイのハンバーガーはさっき売れ切れちまったぜ」
「フリオさん。いつも美味しいパンをありがとうございます。良かったら試作の料理がこれから出来ますので食べて感想をいただけませんか?王都での僕の店の料理もあるんです。食べてもらっていろいろ意見をききたいのでぜひ」
フリオさんを店の裏の飲食スペースに招いてお茶を出す。
「君の働いてる店ってクライブの店なんだってね。あいにく私は王都には行ったことがなくて。あいつの店の料理が食べられるなら嬉しいよ」
確かフリオさんも戦後の炊き出しをずっとやってたって言ってたな。師匠もその時一緒だったはずだ。
フェルがささっとお皿に料理を取り分けてくれてフリオさんに差し出す。
それを見て僕は屋台に戻った。
鯖のトマト煮はどうかな?一切れ取り出して味を見る。ちょっと酸味が足りないかも。生のトマトをすりおろして鍋に入れ、塩で味を整えた。
火を止めて少し置いておこう。
ニンジンの葉っぱをもらってくれば良かったかな。
かわりにパセリのような香草を少し混ぜた。
ずっと火にかけていた1番フォンをザルで濾してマジックバッグに入れる。
出しがらで2番フォンを作るのは宿に戻ってからにしよう。出しがらは鍋に入れて蓋をしておいた。
フェルが焼いてくれたパンをバゲットみたいに切り分けて、温め直したトマト煮と一緒に出す。
チーズをおろし金ですりおろして仕上げをしたら出来上がり。
持って行ったら今日も冒険者たちから歓声が上がる。
フリオさんには別でお皿に盛ったものを渡した。その方が食べやすいだろう。
少し後片付けをして僕たちもトマト煮をいただく。
トマトの酸味がいい。トマトソースは昨日作ったばかりだから少し熟成が足りていないけど爽やかな感じで悪くないと思った。仕上げにかけたチーズもいい感じだ。
パンにもよく合うけれど、パスタにすればもっと美味しくなるかも。
フェルはトマトソースが余ってしまうのが少し不満みたいだ。
難しいな。パンにつけて食べるとしてもちょっとソースだけが余り過ぎちゃった。
でも油の乗った鯖はトマトソースによく馴染んで食べ応えのある料理にはなっている。ペンネみたいなパスタを一緒に煮込めば美味しく作れるかも。
ラッセルさんには味の染みてるところを見繕って油紙に包んで渡した。
試作料理だから少し失敗しちゃったと少し笑って言うと、ラッセルさんは首を振り真剣な顔で僕に言ってくれた。
「今まで、全部の料理美味しい。失敗しても君の料理は必ず、次、美味しくなる。それいつか食べるの楽しみ」
ラッセルさん今まで一番長く話したかも。
そう。いつかはこの街に店を出してこんな風にいろんな料理を作れたらいいな。
居酒屋がやりたいわけじゃないけれど、お客さんとの距離が近い店。そういうのが理想だ。
今はなんとなくそう思うだけでそこから先のことは何も考えていないのだけど。
ジークたちの買ってきた折りたたみの椅子を、シドが興味深そうに見ている。
実際に座ってみたりして、ロザリーさんと本気で王都行きの仕事を受けようと相談しはじめた。
ロザリーさんはナンシーさんが王都で買ってきたものに興味があるらしい。
なんとなくわかったけど黙っておいた。
たぶん乙女の秘密に関わることだ。ここで言ったらきっと殺される。
そしてシド、ゴブリンの集落はどうした。早めに対処しないと大変なことになるんじゃなかったの?
椅子はたぶん3男に言えば買えると思うけど、それ以外はどうかな。ゼランド商会が支店を出せば領都で人気の店になるかもしれない。でも領都の街の店に影響があるかも。それに服飾関係は店舗がないと大変だろうし。
3男には今度時間がある時にゆっくり相談しよう。たぶん3男もそれなりに考えてることがあると思うんだ。
ふと見るとリサさんの目が座ってる。隣にはベンだ。椅子に座らずベンが地べたに正座しているのはなんでだろう。それでもベンの頭の高さが椅子に座ったリサさんとそんなに変わらない。
早くない?まだ明るい時間なんだけど。リサさんってお酒弱いんだ。
そんな2人をほっといて他の騎士たちは冒険者に混じって自由にお酒を飲んでいる。
フリオさんはそろそろお店に戻らないといけないらしい。今度また時間がある時に食べに来てくれるそうだ。
次は師匠のとっておきの話をしてくれると言っていた。なんだろう。顔の話じゃなければ良いけれど。
後片付けをフェルとやっていたらそこにトビーが来た。夕方になって客足も途絶えて落ち着いたんだろう。
「急にうちの親父が悪かったな。昨日たまたまケイの働いてる店が小熊亭だって言ったら親父が急に興奮してさ。小熊亭って王都の店か?とか言い出して。まさか屋台にまで来るとは思わなかった」
「なんかうちの師匠のことを知ってる人って意外に多いみたいだね。ギルドの食堂のウォルターさんも昔師匠のパーティメンバーだったみたい。僕は師匠から何も聞かされてないからちょっと戸惑っちゃうんだけど」
「ガキの頃さ、アランがみんなの前で演説して、そのあと戦いが始まって。俺みたいな子供はとにかく教会にみんな集められてさ。ずっとそこで隠れてたんだ。その戦いが終わってさ、戦いに行ったアランたちが戻ってきたんだ。その時親父から聞いたんだ。ケイの師匠のクライブさんは一番傷だらけで帰ってきたって。しっかりと自分の足で歩いて帰ってきたらしい。俺はその時のことをあまり覚えていないけど、街に着いてその後ぶっ倒れたらしいぜ。勲章の授与の式典にも出られなかったらしい」
何があったのかはわからないけど、師匠らしい話だと思った。
「鉄壁」とみんなから呼ばれた師匠はきっと仲間を守るために自分のことなどお構いなしに敵の前に立ちはだかったのだろう。そういう感じはなんとなくわかる。
そしてそのあと炊き出しをするようになったいきさつはよくわからないけどこの街で師匠の話がいろいろと聞こえてくるのはなんだか嬉しかった。
今日も用意した食材がなくなってしまった。暗くなる前に後片付けしなくちゃ。
本当はずっとこの輪に入っていたかったけど僕たちはみんなに挨拶して屋台を引いてその場を離れた。
ハンバーガーは3時を過ぎた頃には今日の分を売り切ることができた。
結局、これから屋台で販売するハンバーガーは300個に減らすことにした。
朝ごはんの時にフェルと相談してそう決めたのだ。おばさんのところのパンも100個単位で焼いているというし、このくらいがたぶん分相応かと思ってる。
あと10日くらい屋台を続けたら経費を差し置いて、だいたい金貨1枚の収入になる。もうそれで充分すぎる利益になると思った。
並んでくれてるお客さんのために、もう50個頑張って売るというのはやめた。
完売したなら完売したで早めに店じまいすればいい。
売り上げを伸ばすために無理に仕入れを増やして頑張ることはしないことにした。
もちろんどんどんハンバーガーが売れていくのを見て、その売り上げに目が眩まなかったわけじゃない。
だって3日も営業すれば小熊亭の給料分くらい稼げてしまうんだもの。
ひたすら屋台でハンバーガーを売れば確かにお金にはなるけれど、忙しくなればなるほど来てくれるお客さんにしっかり対応出来なくなってしまう。
昨日来たあの女の子のこともあってそう考えて決めた。
昨日作ったトマトソースを使って、今日買ってきた鯖を煮込んでみる。
鯖の切り身は程よい大きさに切り分けて塩を振って臭みを抜く。身を崩さないように注意しながらフライパンで軽く焼き目をつけた。
おにぎりより今日はパンかな。フェルに頼んで追加でパンを買いに行ってもらった。
ちょっと予算オーバーするけどまあいいだろう。
鯖を煮込むトマトソースには荒くみじん切りしたタマネギとニンジン、程よい大きさに切ったキノコを入れる。
きっと美味しいものが作れると思う。
出来るまでの間、小熊亭のアラカルトメニューを小さめに作って出していく。
オーク肉のステーキは食べやすい大きさに切って提供、ハンバーグは小さめに、お弁当に入れるような大きさで出した。
大皿にたくさん乗せてオニオンソースを上からかける。
ポテトサラダはちぎったレタスを混ぜて少しかさ増しして大皿で出す。ちょっと思ったより人数が多かった。
フェルがパンを持って戻ってきた。一緒に歩いてるおじさんは誰だろう?
「親父!どうしたんだ?店はいいのか?」
トビーがおじさんに声をかける。
え?トビーのお父さん?
「やあ、はじめましてだよね。いつもうちのパンを使ってくれてありがとう。私はフリオと言う。そこにいるトビーの父親だよ。ちょうど休憩時間でね、少し様子を見にきたんだ。そういえばうちのトビーにレシピを教えてくれたそうじゃないか、珍しくトビーが厨房でいろいろ試行錯誤していたよ。コイツは商売を甘く考えてるところがあったから君の屋台が隣で営業してるのがいい刺激になったみたいだよ。ありがとう」
「親父。余計なことは言わなくていいんだよ。どうすんだ?ケイのハンバーガーはさっき売れ切れちまったぜ」
「フリオさん。いつも美味しいパンをありがとうございます。良かったら試作の料理がこれから出来ますので食べて感想をいただけませんか?王都での僕の店の料理もあるんです。食べてもらっていろいろ意見をききたいのでぜひ」
フリオさんを店の裏の飲食スペースに招いてお茶を出す。
「君の働いてる店ってクライブの店なんだってね。あいにく私は王都には行ったことがなくて。あいつの店の料理が食べられるなら嬉しいよ」
確かフリオさんも戦後の炊き出しをずっとやってたって言ってたな。師匠もその時一緒だったはずだ。
フェルがささっとお皿に料理を取り分けてくれてフリオさんに差し出す。
それを見て僕は屋台に戻った。
鯖のトマト煮はどうかな?一切れ取り出して味を見る。ちょっと酸味が足りないかも。生のトマトをすりおろして鍋に入れ、塩で味を整えた。
火を止めて少し置いておこう。
ニンジンの葉っぱをもらってくれば良かったかな。
かわりにパセリのような香草を少し混ぜた。
ずっと火にかけていた1番フォンをザルで濾してマジックバッグに入れる。
出しがらで2番フォンを作るのは宿に戻ってからにしよう。出しがらは鍋に入れて蓋をしておいた。
フェルが焼いてくれたパンをバゲットみたいに切り分けて、温め直したトマト煮と一緒に出す。
チーズをおろし金ですりおろして仕上げをしたら出来上がり。
持って行ったら今日も冒険者たちから歓声が上がる。
フリオさんには別でお皿に盛ったものを渡した。その方が食べやすいだろう。
少し後片付けをして僕たちもトマト煮をいただく。
トマトの酸味がいい。トマトソースは昨日作ったばかりだから少し熟成が足りていないけど爽やかな感じで悪くないと思った。仕上げにかけたチーズもいい感じだ。
パンにもよく合うけれど、パスタにすればもっと美味しくなるかも。
フェルはトマトソースが余ってしまうのが少し不満みたいだ。
難しいな。パンにつけて食べるとしてもちょっとソースだけが余り過ぎちゃった。
でも油の乗った鯖はトマトソースによく馴染んで食べ応えのある料理にはなっている。ペンネみたいなパスタを一緒に煮込めば美味しく作れるかも。
ラッセルさんには味の染みてるところを見繕って油紙に包んで渡した。
試作料理だから少し失敗しちゃったと少し笑って言うと、ラッセルさんは首を振り真剣な顔で僕に言ってくれた。
「今まで、全部の料理美味しい。失敗しても君の料理は必ず、次、美味しくなる。それいつか食べるの楽しみ」
ラッセルさん今まで一番長く話したかも。
そう。いつかはこの街に店を出してこんな風にいろんな料理を作れたらいいな。
居酒屋がやりたいわけじゃないけれど、お客さんとの距離が近い店。そういうのが理想だ。
今はなんとなくそう思うだけでそこから先のことは何も考えていないのだけど。
ジークたちの買ってきた折りたたみの椅子を、シドが興味深そうに見ている。
実際に座ってみたりして、ロザリーさんと本気で王都行きの仕事を受けようと相談しはじめた。
ロザリーさんはナンシーさんが王都で買ってきたものに興味があるらしい。
なんとなくわかったけど黙っておいた。
たぶん乙女の秘密に関わることだ。ここで言ったらきっと殺される。
そしてシド、ゴブリンの集落はどうした。早めに対処しないと大変なことになるんじゃなかったの?
椅子はたぶん3男に言えば買えると思うけど、それ以外はどうかな。ゼランド商会が支店を出せば領都で人気の店になるかもしれない。でも領都の街の店に影響があるかも。それに服飾関係は店舗がないと大変だろうし。
3男には今度時間がある時にゆっくり相談しよう。たぶん3男もそれなりに考えてることがあると思うんだ。
ふと見るとリサさんの目が座ってる。隣にはベンだ。椅子に座らずベンが地べたに正座しているのはなんでだろう。それでもベンの頭の高さが椅子に座ったリサさんとそんなに変わらない。
早くない?まだ明るい時間なんだけど。リサさんってお酒弱いんだ。
そんな2人をほっといて他の騎士たちは冒険者に混じって自由にお酒を飲んでいる。
フリオさんはそろそろお店に戻らないといけないらしい。今度また時間がある時に食べに来てくれるそうだ。
次は師匠のとっておきの話をしてくれると言っていた。なんだろう。顔の話じゃなければ良いけれど。
後片付けをフェルとやっていたらそこにトビーが来た。夕方になって客足も途絶えて落ち着いたんだろう。
「急にうちの親父が悪かったな。昨日たまたまケイの働いてる店が小熊亭だって言ったら親父が急に興奮してさ。小熊亭って王都の店か?とか言い出して。まさか屋台にまで来るとは思わなかった」
「なんかうちの師匠のことを知ってる人って意外に多いみたいだね。ギルドの食堂のウォルターさんも昔師匠のパーティメンバーだったみたい。僕は師匠から何も聞かされてないからちょっと戸惑っちゃうんだけど」
「ガキの頃さ、アランがみんなの前で演説して、そのあと戦いが始まって。俺みたいな子供はとにかく教会にみんな集められてさ。ずっとそこで隠れてたんだ。その戦いが終わってさ、戦いに行ったアランたちが戻ってきたんだ。その時親父から聞いたんだ。ケイの師匠のクライブさんは一番傷だらけで帰ってきたって。しっかりと自分の足で歩いて帰ってきたらしい。俺はその時のことをあまり覚えていないけど、街に着いてその後ぶっ倒れたらしいぜ。勲章の授与の式典にも出られなかったらしい」
何があったのかはわからないけど、師匠らしい話だと思った。
「鉄壁」とみんなから呼ばれた師匠はきっと仲間を守るために自分のことなどお構いなしに敵の前に立ちはだかったのだろう。そういう感じはなんとなくわかる。
そしてそのあと炊き出しをするようになったいきさつはよくわからないけどこの街で師匠の話がいろいろと聞こえてくるのはなんだか嬉しかった。
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