フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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心遣い

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 246 心遣い

 鯛めしの炊き上がる直前に鍋の火を少し強くする。
 少し香ばしい匂いがしたところで火を止めた。
 そのまま10分置いておく。

 エミリオさんが支配人を呼んでくれる。
 手の空いた人がお味噌汁を作ってくれていた。具材は単純なものにしてくれて鯛めしの邪魔をしないようにしてくれている。

 鍋の蓋を開けて鯛めしを優しくかき混ぜる。出汁のいい香りが厨房に漂う。
 お皿に盛り付け針のように細く千切りにした生姜を散らす。少しだけ擦ったゴマを振りかけた。

「香りがなんとも良いですな」

 支配人がそう言うと厨房のみんなもそれに頷く。
 緊張しながらもみんなが鯛めしを口に入れる。

「……これは……美味いな……」

 スティーブさんが驚いた表情で鯛めしの感想を伝えてくれる。
 しっかりと鯛の旨みを吸ったお米を噛み締めるたびに口の中で美味しさが広がる。
 そして後から漂う上品な香りもいい。
 何より力強い味に仕上がってる。あまり上品にまとまり過ぎていないところがいいな。
 だって鯛めしって漁師さんの家庭料理みたいなものでしょ。料亭みたいな整った味にすることはない。
 おこげもいい感じだ。焼きおにぎりにして食べたいな。

「鯛めしも炊き込みごはんの一種ですからね。キノコやタケノコみたいな森で採れるものを一緒に炊き込んでも面白いかもしれませんね。でも一番簡単で単純な作り方はこれでいいと思います。前にマルコさんに教えられたことがあるんです。少し未完成な方がここからみんなが競い合って工夫して、もっと美味しいものが出来上がるって」

「それは素晴らしい考え方だね。マルコさんにそんな言葉をもらえたなんて羨ましいよ。やはりあの人にいつかは会いに行きたいものだ」

「マルコさんは王都の近郊の街でピザのお店をやってるんです。ピザなら作り方を教えられますから作ってみてはどうでしょうか?この街の海鮮を使えばきっと美味しいピザになりますよ」

「しかし……良いのかい?店のレシピを簡単に教えたらマルコさんが怒るのじゃないか?」

「それについてもマルコさんに言われてます。僕がそう望めば自由にこのレシピを伝えても構わないって。商業ギルドにレシピが登録していないのは理由があって、マルコさんのピザを適当に真似されてあまり変なものを作って欲しくないかららしいんです。隠してるってわけじゃないみたいなんですよ。マルコさんは本当にピザが大好きで、美味しいピザを作りたいから仕事を辞めて王都から引っ越ししたくらいですからね」

 見ると支配人とフェルは用意していた出汁をかけてさっそくお茶漬けにして食べている。
 まだ鯛めしが残っているな。きっと2人ともおかわりをするだろう。

 2人のために残った鯛めしを焼きおにぎりにして、器に入れた。
 刻んだネギとワサビのような辛味のある香草を細かく刻んで入れる。
 最後に用意しておいた出汁をかけて出来上がり。鰹節を最後に少しだけ振りかける。

 さっそくおかわりをしたいと言う2人にそれを出してあげた。

「これは!なんと素晴らしい。このお茶漬けというのは最高ですな。ケイさんが少し手を加えただけで全く違う味わいになります」

「お茶漬けはいろんな具で簡単にできますよ。梅の塩漬けとか、焼いた塩鮭とか、サバを塩焼きにしてもいいですね。朝ごはんにちょうどいいんです。体も温まるし消化もいい。お客さんに好きな具材を選んでもらってその場で作って提供してもいいですね。きっと話題になりますよ。この出汁に使った昆布は今まで使い方が分からずにあまりいい値段で引き取ってもらえていなかったみたいです。ジェイクのおっちゃんに言えば喜んで売ってくれると思いますよ。これから銀の鈴でこの昆布出汁の使い方を広めてくれるとうれしいです」

 支配人はさっそく明日の朝食でやってみると言い出した。スティーブさんも余った食材を無駄なく使えるから助かると言う。
 梅干しは領都でも手に入るみたい。市場にあったかな?今度探してみよう。

 ゴードンさんの家でもらった梅干しを保存瓶に入れて支配人に渡す。
 目を丸くして困惑している支配人に「さっき赤ワインをもらったからおあいこです」そう笑って伝えた。
 麦茶が銀の鈴でもらえるから地味に結構助かっているし。梅干しももともとタダで頂いたものだしね。

 鯛めしのレシピはスティーブさんが書き起こして支配人からギルドに登録してもらうことになった。
 急いでエミリオさんが書いてくれたメモに調理方法で必要なことを書き足した。
 鯛めしが領都で人気の名物料理になるといいな。楽しみだ。

 フェルは先に部屋に戻って、僕は厨房に残りデミグラスソースのフォンの見張りをする。
 何にもしていないと手持ち無沙汰で落ち着かないから急遽決まってしまった明日の朝食のお茶漬けの仕込みを手伝うことにした。

 お米を1合くらい炊いてそのお米を潰していく。もち米がいいけど今はないから普通のお米であられを作ろうと思う。
 潰したお米を棒状に細長く伸ばしてざっくりといい大きさに刻む。このままじゃくっついてしまうから打ち粉の代わりに片栗粉を薄くまぶす。
 本当は乾燥させてからの方がいいんだけど、今日は時間がない。半分は乾燥させることにして、もう半分を油でカラッと揚げた。食べてみると素朴な味で悪くないと思った。本当はもう少し小さく作りたかったけど、手作業では限界がある。

 お茶漬けに少し入れると美味しいですと言って厨房の人に渡した。
 そろそろいい時間になったので作業を切り上げる。
 煮込んでいたフォンは保存瓶に入れた。2番フォンは明日また鍋に火を入れれば完成かな。
 保存瓶は部屋の保冷庫に入れておけばいいだろう。

 部屋に戻るとフェルはもうパジャマに着替えていて、僕も急いでシャワーを浴びてパジャマに着替えた。

 寝る前に3男からもらった包みを2人で開けてみる。
 中には今の季節にピッタリの外套が2着入っていた。
 
「領都の街はこちらより寒いと聞きました。屋台の仕事をするならばこれを着て風邪など引かぬように。 エリー」

 中に入っていた手紙を読んで、王都の母の心遣いに気持ちが暖かくなった。
 
 










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