フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ

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私のために

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 273 私のために

 難しいな。

 頑張ります、みたいなことを言ったはいいけどかなりプレッシャーだ。2つの国の友好の架け橋にならなきゃとか考え出すと緊張してきてしまう。僕にそんなことできるのだろうか。
 緊張しているのに気がついたフェルが後ろからそっと僕の両肩にその手を優しくのせてくる。

「大丈夫だ。普段と変わらないではないか。いつものように私が食べて喜ぶものを作れば良いのだろう?気負わず普段通り、私のために美味しい料理を作ってくれ」

 振り向くとフェルがイタズラっぽく僕に微笑む。
 そうか、そうだね。いつもと変わらないのか。
 簡単に手早く作れてフェルが喜びそうなもの。うん。なんだかやれそうな気がしてきた。

 厨房に入る前に大きく深呼吸をした。弱気になってた僕の気持ちをを全部吐き出したかった。
 マジックバッグから普段使ってる醤油の小瓶を取り出す。
 
 醤油というのは本当に万能な調味料だと思う。
 出汁をとったかのようにしっかり風味があって、それ自体がすでに熟成されたソースのように完成されている。しかも密封すれば保存が効く。
 たしか何年か寝かせたものもあるんだっけ。
 原価もあるしふんだんには使えないけど……やっぱりこの味を生かして他にはない斬新な感じに仕上げたい。
 だけど醤油をたくさん使うと逆に味が安定し過ぎちゃったりするんだよな。僕にしてみればそれは無難な感じなものに仕上がりそうな気もする。

 小魚は唐揚げでいいんじゃないかな。東の国で屋台をするなら胡椒を効かせた味がいいかもしれないけど、この町で売るならカリカリにして骨まで食べられる醤油味の唐揚げにしてみよう。
 味噌は……もう味噌汁でいいか。小さなエビとか入れちゃえば美味しい味噌汁は誰でも簡単に作れちゃうはず。
 
 とにかく鯖サンドだな。酸味を効かせたマヨネーズにお醤油を少し、みじん切りにしたタマネギを少しだけタルタルソースを和風な感じに。

「3男、マヨネーズってどうなの?この町で作れそうかな?」

「んー、新鮮なタマゴを手に入れるのは難しくはないと思うよ?ケイくんが気にしてるのは古い卵を使ってみんながお腹を壊しちゃうことだよね。モルテンさん、実際その辺りはどう?きちんとみんながそれを守ってやってくれそうかな?」

「んー、そうならないようマヨネーズを町で製造して、しかも鮮度を管理するとなると……少し難しいですね。準備に時間もかかってしまう」

「それなら定期的にうちのギルドの職員が品質を確認して回るというのはどうでしょうか?屋台を出すとしたなら商業ギルドに登録が必要です。出店したい人の審査を厳しくすることは考えておりませんが、この料理を出す屋台にはそれを義務付けることにしましょう」

 キャロさんがマヨネーズに関して商業ギルドが協力してくれると言う。マヨネーズに毒がないか調べる方法があるらしい。

「ケイさんのやられていた屋台の話は領都の職員からも皆聞いております。ぜひ私たちにも何かお手伝いさせてください」

 キャロさんたち商業ギルドの人たちが全面的に協力してくれることになった。これでマヨネーズの心配は無くなった。

 食堂の厨房でさっそく試作品を作ってみる。手伝いに来てくれた奥さんがパンを買って来てくれた。コッペパンのような少し丸長いパンはこの辺りではごく普通に食べられているものらしい。
 そのパンの横に切れ目を入れてレタスと一緒にサバのフライを挟む。少し香ばしい風味がする醤油入りのマヨネーズをサバのフライに塗った。
 鯖より小振りなイワシは2枚使ってパンに挟み、同じようにマヨネーズを塗って出来上がり。

 小魚はもう少し醤油に漬けておきたいから、先に鯖サンドの試作からみんなに食べてもらう。

 レモンの搾り汁は結局マヨネーズに混ぜてしまった。その方が簡単に作れるからいいと思う。あとはこれを売る人たちがそれぞれ工夫して仕上げていけばいいと思った。
 
「美味しいよー、ケイくん。これでもう完成でいいじゃない」 

「待ってよ3男。コウさんたちの意見もちゃんと聞かなくちゃ」

 フェルは口いっぱい鯖サンドを頬張ってもぐもぐしている。
 また唇にマヨネーズが。

「醤油の量を控えたのは値段のことを気にしているのであるからであろうか?ならばこちらでも取引の価格を考え直しても良いのだが」

「コウさん違います。値段のことを気にしているのはその通りなんですけど、原価を抑えて安い値段で買えるようにすることでもっと気軽にこの料理を食べてもらいたいって考えています。ちょっとお腹が空いたなって思った時に気軽に食べられるように。そうなったらきっと時間とかに関係なくみんなが買いに来ますよね?いろんな人に食べてもらいたいから僕の方で少し加減しただけで……」

「なるほど。まずは食べてもらわないと何も始まらない。それは確かに理屈であるな。うむ、私としては依存ない。ロン……は、ロン、それは試食だからな?もうひとつよこせとかそういうことを気軽に言うものではない」

「私はこれ美味しいと思います。醤油の味もしっかりするし、醤油がなかったら少し物足りない味になると思いますからこれくらいで充分だと思います」

 航海士のユズさんがロンさんの代わりにそう答える。ユズさんも口にマヨネーズ、付いてますよ。

 鯖サンドはこれで目処がたった。
 同じように作ったイワシのフライも問題無さそうだ。どちらが美味しいかで激しく意見が分かれているから大丈夫だろう。

 小魚の唐揚げを揚げながら味噌汁を作る。出汁は捌いた魚のアラを使う。エビとか買ってくればよかったな。でもこのアラを丁寧に漉せばかなり美味しい味噌汁ができるはず。

「……やはり君は……私たちの思いに寄り添ってくれるのであるな。歴史的に私たちの国は食材が乏しく、過去には飢えに苦しみ、生きていくのに苦労した経験があるのだ。食材をできる限り無駄にせず、その日その日の食べ物があることに感謝して、質素に暮らすことが善であると考える習慣がある。君の祖先はそのことを君にきちんと伝えていたに違いない。その心は私たちも改めて学びなおす必要があると思うのだ」

 味噌汁を飲んだコウさんがそう言ってくれた。コウさんが味噌汁が好きっていうのもあるかと思うけど。村で暮らしていた時はじいちゃんが食材を無駄にすることを嫌っていると思っていた。貧乏だったこともあるけれど、野菜クズで作ったスープをじいちゃんもよく作っていたし、食材は捨てるところがなるべく少ないようにする。それが普通だと思って僕もそうしてた。
 それ以上に僕自身が貧乏性なのは自覚してるけど。

 もっと醤油の味が欲しいと言う東の国の方々の意見を聞いて、揚がった唐揚げにハケで醤油を塗る。お煎餅みたいな感じだ。フィッシュアンドチップス。というかフィッシュがチップスか。
 カリカリに揚げた小魚は醤油の香ばしい香りがしてお菓子みたいな仕上がりになった。

 鯖とかイワシとかは数を数えて値段をつけてもらったけどそれより小さな魚は好きなだけ持っていけと言われて市場ではタダで貰って来たようなものだった。
 醤油を少し多めに使ったけど……、銅貨1枚で売っても儲けが出るんじゃないかな。子供のおやつとかそんな感じで売れたら良いな。

「これダメだよケイくん。お酒飲みたくなっちゃう。これが流行ると町中に酔っ払いが増えるんじゃない?これすごく美味しいよー。ねーまだ残ってる?もっと食べたいんだけど」

 3男にだけというわけにはいかないので追加の唐揚げを大きめの皿に盛ってみんなの前に置く。
 僕も食べたけど確かに。確かにおつまみみたいで手が止まらなくなる。

 鯖サンドをいくつか作ってみて、大体の方向性が見えたところで今日は終わることにした。
 これから出来上がった料理を実際に売ってもらうってことになるんだけど、手伝ってくれた方々の様子を見ていたら大丈夫な気がして来た。
 だけどある程度軌道にのるまで屋台の営業をやっで欲しいとお願いされる。
 なので僕たちはまた少しの間、屋台をやることになった。

 あとは屋台の準備なんだけど、キャロさんとモルテンさんを交えて揚げる油の仕入れと細かい品質の検査について相談した。
 貸し出し用の屋台は領都から送ってもらえることになり、油の仕入れの話は3男がこの町の人たちだけでやったほうがいいと言うのでモルテンさんから信頼できる商会をいくつかあたってもらうことになった。
 キャロさんには油とタマゴの品質の検査をお願いする。
 食中毒なんておきたら大変だ。

 そして明日から僕たちはこの港町に名物料理を作るために協力することになった。











 



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