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本編
皇后の嫌がらせ
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ゼルという、この王宮で強い味方ができたんだけれど、豹である彼の言葉がわかるのは俺だけだから犯人がわかったところで何も動けない。その日は食堂へ行く気が起こらず、食欲も無く何も食べられなかった。
次の日。
気が滅入ってなかなか寝付けなかったので体がダルい。
トントン、とノックの音がしてドアを開けるとゼルが俺を訪ねてきた。
「朝飯食うんだろ?またあんなことになるといけないから護衛してやるよ」
ゼルはそう言って、ゲットのそばに行き、おはようと頬ずりをする。
さすがにお腹が空いてきたので、意を決して朝食を取りに食堂へ行くと、廊下に嫌がらせはなく、俺は少しほっとした。
王族専用の食卓テーブルに行くと、そこには皇后一派が陣取っていた。
「申し訳ございません、今は皇后さまが…」
給仕の人が言いづらそうに俺にそう告げる。
すると、皇后が俺に気づいたようだ。侍女二人に何か耳打ちをする。
「お食事に来られたこの方にお席を用意して差し上げてと皇后様が」
侍女の一人が給仕の人に指示をしすぐに俺の席が用意される。
「皇后様お勧めのお料理を賜りましたよ、皇后さまの大好物なのですよ」
侍女が恩着せがましく俺にそう言って笑う。皇后が俺を見てニコニコしている。軽く会釈をした。
俺のために用意した?怪しすぎんだろ!
給仕の人が美味しそうな鶏肉のハンバーグにフォアグラがのせられたものを出してきた。朝から濃いな皇后…でも、美味しそうな匂いにお腹は鳴っている。
ふと、隣にいたゼルとゲットが表情を険しくした。
「おい、これ、わからないように肉で包んであるが…中のほう腐ってるぞ、絶対食うな」
「え…」
俺は驚いて肉を見た。美味しそうな湯気が出ていて、全く腐ってるような香りが何もない。
「皇后もお前に食わそうと思って、わかってて仕込んだんだ。用意周到だな…陰険な」
ゲットが忌々しげに呟く。
え、どうしよう…食べないわけにはいかないし。でも、この二人がいてくれて本当によかった。
「早く召し上がれ。皇后様に失礼ですよ」
少し苛立ったように侍女が急かす。
ほんとにどうしよう…。
「わかった。レイ。俺に考えがある」
ゼルが微笑んで俺に指示をする。ゲットと俺は不安げに顔を見合わせた。ゼルの考えって?なんだろう?
「どうぞ、召し上がれ」
皇后がにこやかにそれだけ言い、俺は鳥肌が立った。
サラダと前菜ははセーフだから食べていいとゲットからの指示があり、素直にそれを口にするが、問題は肉だ。
すると。
テーブルの角にゼルが前足を乗せた。
「ん?どうしたのゼル?」
「俺が言うことを復唱しろ」
復唱?うん、わかった…俺は小さく頷いた。
『ゼル、この肉欲しいの?、ほら言え』
「ゼル、この肉欲しいの?」
『だめだめ、せっかく皇后様が俺にくださったんだから、ほら続け』
「だめだめ、せっかく皇后様が俺にくださったんだから」
皇后たちの集団が一斉に真顔になった。
『え?どうしても要るの?仕方ないな』
「え、どうしても要るの?仕方ないな」
そしてゼルがテーブルに足を掛けて立ち上がろうとしたときだった。
「お、お待ちなさい!!!」
皇后が蒼白になって俺を止めた。
「料理長をおよび!待つのよ、まだ食べてはいけないわ!」
慌てて侍女が厨房へ走り、料理長が飛んでくる。
「このお肉をお下げなさい!せっかくこの者にと思ったのだけれど、今日のは思ったより美味しくはなかった、そんなものをわたくしの大好物だとして出すことは許しません、すぐ下げて!今日は違う料理を用意なさい!」
侍女が給仕の人より先に慌てて皿を下げていった。料理長が頭を下げて、急いで厨房へ戻っていく。
え?俺は何があったのかわからない。
「…ゼルが皇后にもらった肉を食って倒れたりしてみろ、大問題だろう」
ゲットが椅子に座った俺の腰にすりすりをしながらざまあみろと吐き、そう教えてくれた。
あ、そうか。
ゼルは国王陛下のペットだからな。皇后が彼に何か危害を加えるような事があったら立場が悪くなるだけだよな。
今日の朝食は全てゼルが毒味をしてくれました。
美味しかった。
あの皇后は相当俺が嫌いらしい。
次の日。
気が滅入ってなかなか寝付けなかったので体がダルい。
トントン、とノックの音がしてドアを開けるとゼルが俺を訪ねてきた。
「朝飯食うんだろ?またあんなことになるといけないから護衛してやるよ」
ゼルはそう言って、ゲットのそばに行き、おはようと頬ずりをする。
さすがにお腹が空いてきたので、意を決して朝食を取りに食堂へ行くと、廊下に嫌がらせはなく、俺は少しほっとした。
王族専用の食卓テーブルに行くと、そこには皇后一派が陣取っていた。
「申し訳ございません、今は皇后さまが…」
給仕の人が言いづらそうに俺にそう告げる。
すると、皇后が俺に気づいたようだ。侍女二人に何か耳打ちをする。
「お食事に来られたこの方にお席を用意して差し上げてと皇后様が」
侍女の一人が給仕の人に指示をしすぐに俺の席が用意される。
「皇后様お勧めのお料理を賜りましたよ、皇后さまの大好物なのですよ」
侍女が恩着せがましく俺にそう言って笑う。皇后が俺を見てニコニコしている。軽く会釈をした。
俺のために用意した?怪しすぎんだろ!
給仕の人が美味しそうな鶏肉のハンバーグにフォアグラがのせられたものを出してきた。朝から濃いな皇后…でも、美味しそうな匂いにお腹は鳴っている。
ふと、隣にいたゼルとゲットが表情を険しくした。
「おい、これ、わからないように肉で包んであるが…中のほう腐ってるぞ、絶対食うな」
「え…」
俺は驚いて肉を見た。美味しそうな湯気が出ていて、全く腐ってるような香りが何もない。
「皇后もお前に食わそうと思って、わかってて仕込んだんだ。用意周到だな…陰険な」
ゲットが忌々しげに呟く。
え、どうしよう…食べないわけにはいかないし。でも、この二人がいてくれて本当によかった。
「早く召し上がれ。皇后様に失礼ですよ」
少し苛立ったように侍女が急かす。
ほんとにどうしよう…。
「わかった。レイ。俺に考えがある」
ゼルが微笑んで俺に指示をする。ゲットと俺は不安げに顔を見合わせた。ゼルの考えって?なんだろう?
「どうぞ、召し上がれ」
皇后がにこやかにそれだけ言い、俺は鳥肌が立った。
サラダと前菜ははセーフだから食べていいとゲットからの指示があり、素直にそれを口にするが、問題は肉だ。
すると。
テーブルの角にゼルが前足を乗せた。
「ん?どうしたのゼル?」
「俺が言うことを復唱しろ」
復唱?うん、わかった…俺は小さく頷いた。
『ゼル、この肉欲しいの?、ほら言え』
「ゼル、この肉欲しいの?」
『だめだめ、せっかく皇后様が俺にくださったんだから、ほら続け』
「だめだめ、せっかく皇后様が俺にくださったんだから」
皇后たちの集団が一斉に真顔になった。
『え?どうしても要るの?仕方ないな』
「え、どうしても要るの?仕方ないな」
そしてゼルがテーブルに足を掛けて立ち上がろうとしたときだった。
「お、お待ちなさい!!!」
皇后が蒼白になって俺を止めた。
「料理長をおよび!待つのよ、まだ食べてはいけないわ!」
慌てて侍女が厨房へ走り、料理長が飛んでくる。
「このお肉をお下げなさい!せっかくこの者にと思ったのだけれど、今日のは思ったより美味しくはなかった、そんなものをわたくしの大好物だとして出すことは許しません、すぐ下げて!今日は違う料理を用意なさい!」
侍女が給仕の人より先に慌てて皿を下げていった。料理長が頭を下げて、急いで厨房へ戻っていく。
え?俺は何があったのかわからない。
「…ゼルが皇后にもらった肉を食って倒れたりしてみろ、大問題だろう」
ゲットが椅子に座った俺の腰にすりすりをしながらざまあみろと吐き、そう教えてくれた。
あ、そうか。
ゼルは国王陛下のペットだからな。皇后が彼に何か危害を加えるような事があったら立場が悪くなるだけだよな。
今日の朝食は全てゼルが毒味をしてくれました。
美味しかった。
あの皇后は相当俺が嫌いらしい。
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