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外伝5 【名探偵―ケッソク―】
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「……へへ」
「よし、そろそろずらかるぜ」
暗い暗い闇の中で男二人の声が響く。
ここはコルキスの賭博場、善人も悪人もここでは均等に運による勝負が行われ泣く者も勝利の雄叫びを上げる者も様々だ。
そんな賭博場には当たり前だが大量の金が貯蔵されている。
その金を、己の運を使わずに掠め取ろうとする者がいる
「脱出路も入った時と一緒だ、後数分もあればバレちまうから行くぞ」
「へへ、この金があれば一生遊んで暮らせるぜ!」
潜入する時に使ったロープを使用し、ゆっくりと音を立てずに賭博場の二階から降りていく。
そして、大きな布に溢れんばかりの札束を詰め込み二人の男が駆け始める。
それと同時に、賭博場の明かりが一斉に点き始めた、警告音と共にコルキスの警備隊や賭博場の番兵が盗賊を捕らえる為に動き出す。
「ぴょい~んっと!」
しかし盗賊の足は軽やかでかなりの量の札束を抱えているのに柵をあっさりと飛び越えてしまう。
そしてそのまま馬に跨って走っていく。
「クソ! 馬を出せ!」
「だ、 だめだ! 全員寝かされちまっている!」
そう、この盗賊達は用意周到だったのだ。
事前に賭博場の従業員として潜入し、更には馬の餌に睡眠剤を混ぜて相手の足を無くしたのだ。
そうしている間にも街の間を縫うように進み、盗賊は賭博場を後にしていく。
これにて盗賊の完全勝利、賭博場の財産はこの盗賊の財産に成り果てる――筈だった。
「ちょいな」
「うお!? な、なんだおい!?」
「うわ!? 急に止まんなおい!?」
戦闘を走る盗賊の乗る馬の鼻先に何か丸い物が投げ込まれる。
丸い物は麻袋で中にある粉末が荒い麻袋の隙間から溢れ出し動きを止めてしまう。
「くそ! 誰だ!?」
「ふっふっふ~、テリオに予想通りの行動だわ。アウトリュコス兄弟! この名探偵テミスの推理は大正解だったわ!」
夜の暗闇に一人の少女が立っていた。
赤と黒色のチェック柄の帽子と同じ柄の短い肩マントを付けており、一見身軽そうに見えるが一本のステッキを持っている。
「く、探偵だと!?」
「その通り! アウトリュコス兄弟の過去の犯行から逃走ルートを割り出した結果、ここを通る可能性が高い、そして馬を利用するであろうことも解っていた! なのでお馬さんの鼻っ柱にコショウ粉を、ぽん! とね……へっくち!」
テミスが手のひら程の大きさの麻袋をボール遊びの様に上下に投げ揺らす、その内麻袋からコショウが漏れたのか軽くくしゃみをする。
「ち、小娘一人だ、殺しちまえば逃げれる!」
「残念ながらそれも予想済み! デイモス!」
「ああ」
テミスの背後から一人の男が現れる。
デイモスと呼ばれた男は身長2メートルはある筋骨隆々のエルフの大男、あまりの威圧感に盗賊の二人が一瞬怯む。
しかしここで二人も止まってられない、盗みを働いた以上後ろから何時追手が追いついてくるか解らないからだ。
「クソ! お前は小娘をやれ!」
「ああ!」
二人の男が短剣を抜刀し走り出す、一人はデイモスへ、もう一人はテミスへ。
一見ただの盗賊であるアウトリュコス兄弟だが元は怪獣討伐チームの出だ、短剣とは言え人相手でも実力は十分発揮できるだろう。
だが、この二人は知らなかった。
目の前に立つ者の実力を――
「デリャア!」
「うお!? ぐあ!? あぎ!? ぐああああ!?」
「あ、兄貴!?」
デイモスは腕に篭手の様な物を着けている。
これは彼の戦い方である無手を阻害しない程度に防具として使える物だ。
しかしこの程度の相手にそんな事は関係ない、デイモスは短剣を腕から落とすために腕を握った拳の側面、つまり鉄槌で攻撃したのだが。
アウトリュコス兄の腕が折れ、あまりの痛みに短剣を握ったまま踞ってしまう。
「あー! デイモスダメですよ!? もっと手加減しないと相手がミンチですよ!?」
「……手加減は、したつもりだが」
「く、くそ! 小娘、お前だけでも!!」
一人でもこの場を逃げ出そう、とテミスに駆けだす。
その判断は間違ってはいないだろう、あっさりと人の腕を折ってしまうデイモスと戦うよりは少女であるテミスと戦った方が逃げられる確率も高かったかも知れない。
問題は――
「ちょ、い、さぁ!!」
「ぐえ!? おご!?」
ステッキで短剣を払われたと思った瞬間、アウトリュコス弟の体が浮き上がるかのように持ち上がり地面に叩きつけられる。
腕に組み疲れ足を払われバランスを崩したかと思った瞬間の事で、デイモスの様に力任せに動いたのではなく、相手の重心、体重を利用した対人用の投げ技だ。
勿論こんな技術は怪獣討伐で得られる物ではない、彼女が犯罪者を捕まえるために教え込まれた技術だ。
「よぉし、これにてアウトリュコス兄弟を逮捕できるわ! デイモス、この二人を運んでね! 勿論、慎重によ? 貴方の力で二人を潰しちゃわないでね?」
「ああ」
朝日が昇る中、二人の探偵によって世間を騒がせていた盗賊が捕まった瞬間だった。
この街に謎が、そして事件がある時、名探偵テミスはこの街を守る為に戦うのだ。
*
「……はぁ、だめだこりゃ」
「なんでぇ? エポニム、まだ見つかんねぇのか?」
仄かな明かりに照らされ、タバコの臭いが染み付いた部屋で資料を見ていた一人の魔族がため息を吐く。
机の上には最早塔と言っていい程、紙が束になって重なっている、この資料はコルキスの警備隊や観測隊が300年間この世界の様々な物を見て記録した物である。
言わば今の人類の辞書なのだがその辞書をみてエポニムと呼ばれた魔族の青年はタバコを咥えたまま資料に文句を言い始める。
「そうは言ってもモロスのとっつぁん、300年分の資料だぜ? 読んでる間にわたしちゃんの腰がもうゴッキリしちゃうよ」
「お前そんな年じゃねぇだろうよぉ」
「嫌々ガタガタになるって……特にここ最近は改造人事件のせいで机に向きっ切りだしさぁ」
「25の若造がなぁにいってんだよ、俺みたいに35過ぎてから文句言いやがれよ」
調べても調べても碌な資料が出てこない。
こんな缶詰になってでもこの二人が見つけたいのは最近コルキスを騒がせている改造人、と言われている存在だ。
つい先日現れた改造人7号と呼ばれている存在、クジラの様な姿をした改造人で何人か市民や警備隊を殺害した後改造人4号に倒された。
あの改造人が何処から現れたのか、誰に改造されたのか、その調査の為に今までの資料を洗いなおしているのだ。
「ってかさぁ……改造人が現れたのは三か月と2日前だよ? 何で警備隊資料の全部を洗いなおしてるのって話しだよ……今更だけど」
「今更だが、こういった小さな物からも何かが見つかるってもんだ。捜査の基本は足だが足でどうしようもねぇ以上何でもいいから情報を探すしかねぇんだよ」
「……警備隊の限界、かねぇ」
「馬鹿な事言ってんじゃねぇ、いいか? 改造人は定期的に現れて確実に被害を出す、しかも改造人4号が出てこなければ改造人を倒すこともできない、装備の開発が進められているが今の俺達には何一つ改造人の撃退手段が無いんだ。なら改造人がでる前に市民の避難をさせるのが俺らの仕事だ」
「そりゃ、そうだけど……そもそも改造人ってどこから人攫って何処で改造してるのか解んないじゃないか」
「それを少しのヒントでもいいから見つけんのが今やってる仕事だろうが」
「あ、はい」
そう言われてしまえば、もう自分はこの資料と睨めっこをするしかない。
300年分の資料を見て、少しでも市民への被害を減らさなくてはならないだろう。
警備隊にも改造人の被害が出ているのだから手を抜くことはできない、ため息を吐きながらでも何かを見つけなくてはならない。
しかし何度見ても、記憶する程資料を見てもなんのヒントも浮かんでこないのだ。
まるで答えにたどり着くための道が無いかの様に。
そんな姿を、モロスも感じ取ったのだろう。
「……おい、エポニム。お前ちょっと見回り行ってこい」
「え? あ、あぁ……そんなに煮詰まって見えました?」
「おう、見える。ほらさっさと行ってこい」
「は、はぁい……」
こうもはっきり言われては一旦頭をすっきりさせる為にも別の事をした方が良いだろう。
咥えていたタバコを灰皿に押し当てて火を消す、一旦自分の思考をリセットするために外に出る準備を整える。
この選択が、エポニムの全てを変える選択だというのをその時は誰も知らなかった。
*
「…………はは、良い天気だ」
タバコ臭い部屋の空気とは違う冷たい潮風の香りを肺一杯に吸い込む。
ここコルキスは巨大な船の上にある国だ、気分をリフレッシュさせるのに海の風と空気を感じるのはこれ以上にない効果があるだろう。
こういう時は趣味の風光走機、風力と太陽の光をエネルギーに変換し走らせる事のできる装置が役に立つ。
コルキスの研究者が最新の技術を集結させて作った四輪の馬を使わない馬車だ。
あまり大きくなく、乗り込める人数も二人か三人が限界、その上この風光走機は地面に座る程度の高さで運転することになる。
速度も中々な物でエポニムの風光走機には特殊なカスタムがされており馬より早く走れるだろう。
ペダルを踏むことで加速減速する風光走機はコルキスでも少ないが本質は走る鉄塊なので人の多い所では走れない。
なので。
「久しぶりに走ったけどやっぱり気持ちいいなぁ……速度が出すぎるからちょっと危ないけど、人のいない森林地帯付近の通路なら、こんなにも快適に走れる……」
コルキスの南にある森林地帯、少し進むと渦巻き状の山の様な部分にいけるが人が歩く場所は横幅が広く石と粘土で作られた道で風光走機が走りやすい通路だ。
今は寒い時期なので人も少ない、正にうってつけの走り日和だ。
「んぐお!?」
そう、思っていたのだが。
パァン、という破裂音と共に風光走機の動きが悪くなる。
ブレーキを使って風光走機を止めて音の出所を確認する。
「あっちゃあ、車輪の点検忘れてた……交換しないと」
風光走機の一番の欠点は車輪の消耗が激しい事だ。
なめした牛革を空気で膨らませているのだがもう少し頑丈な何かがあれば良いと愚痴っているが研究者もそれを見つけられてない様で現状車輪の交換をしょっちゅう行わなければならない。
「あ~よいしょ……この車輪交換が頻発するのが良くないよねぇ、今回は一か所だったから良かったけど……」
風光走機を操縦する以上ある程度の知識が必要になってくる。
警備隊で使うかも、と試作機を貰った時にある程度の事は教わっているのでエポニムは自分でも風光走機の整備が可能だ。
というより最近ではこの機体を自分で弄ったりもしてる。
「よ、し終わり終わり……さぁてもう少し遊んだら帰――」
大きく背伸びをしていると遠くから馬の走る音と風光走機が走る音が聞こえる。
馬の音は蹄なので解りやすく、風光走機は独特なキューン、という様な音が聞こえるのが特徴的なので音さえ聞ければ解りやすいのだ。
「何時までも追ってきてんじゃねぇよ小娘が!!」
「んなぁ!? ひ、卑怯者ー!?」
「え? ちょなうおぉ!?」
馬が三匹と赤く旧式の風光走機が走ってくる、一見すると風光走機を馬が追っている様に見えその予想は当たっているだろう。
風光走機には羊の獣人の女の子が、馬は厳つい海人の男が二人、最後尾にはエンスの女の子が乗っている。
馬も風光走機も少し出しすぎなくらい速度を出しており、何事かと驚いていると最後尾を走っていた馬の上からエンスの女の子が落馬した。
どうやら前を走る厳つい男性の騎手が石弓を使い最後尾を走る馬の足を撃った様だ。
女の子の乗っている馬が大きく地面に転がる、すぐに立ち上がるが足を怪我しており獣人達をう事は出来ないだろう。
「あい、たたた……く、お馬さん大丈夫? くそ、これじゃあ追えないわね……!」
「君は、もしかしてテミスちゃんかい? うわなにそのゴテゴテしたの!?」
落馬した女の子の顔に見覚えがあった。
警備隊とも情報交換をする事もある探偵のテミスだ。
警備隊とは別の方向から事件を追うその姿は警備隊でも注目を集めているが行動が少し過激である事も問題視されている。
そんな彼女は太ももを半分隠す黄金色の鎧のようなブーツを履いている、何時もは同じ部分にまで伸びている靴下を履いているが今はゴテゴテした鎧のような物を付けている。
「はい? そうだけど……貴方は? い、いやそんな事よりそれ風光走機だよね!? それ使わせてくれない!?」
「え!? こ、これを!? もしかして、追うの!?」
「当然! 今追われている人はあたしが目星を付けていた改造人にされるかも知れない人なのよ!」
「改造人に!? 解った、乗ってくれ!!」
改造人、と言われて聞き逃すことはできなかった。
改造人に繋がる何かがあるのならそれを追わなくてはならない。
今まで一欠片でも見つけることのできなかった改造人の何かが見つかるかも知れない。
「エウハリストー! 所でこれどのくらい速度でるの!? 追い付ける!?」
「安心、したまえ! わたしちゃん特製の、カスタム機だ!!」
風光走機に本来取り付けられてないレバーを思いっきり引っ張る。
キーン、という甲高い音と共に風光走機後ろにある本来は荷物などを置ける場所が開く、本来は荷物を置いてある場所には二つの排風パイプと持つ一つのエネルギー炉、風光炉が積まれている。
「しっかり捕まっててね!? 振り落としちゃうよ!?」
「どわああああ!?」
テミスの可憐な見た目からは想像できない悲鳴が飛び出す。
しかしそれも仕方ない、エポニムの風光走機は馬よりも早く弾丸の様に走り出したのだ。
「な、なにこれ!? 風光走機ってこんな速度で走れるの!?」
「これはわたしちゃん特製のカスタムだからね! 追い付いてきたよ!?」
「ちぃ!? なんだあいつ!?」
「くそ!! 商品に傷が付くかも知れねぇが、仕方ねぇ!!」
エポニム達が追いつくころには渦巻き状の山を昇り始めた位置で追いかけ合っている。
そんな中、馬に乗った二人組の片方が追いかけている風光走機の装甲をハンマーの様なもので叩く。
「きゃ!?」
「あー!? なにしてんのよ!? ってうわぁ何か飛んできた!?」
「く!?」
追いかけられている風光走機から女の子らしき悲鳴が聞こえ車輪をカバーしてるパーツが外れる、それは勿論後方を走っているエポニムの風光走機にぶつかりそうになるがエポニムが少しハンドルをずらした事にってギリギリ回避する事ができた。
「好き勝手やってくれちゃって!」
「もう少し近づいて! あの男だけ撃ち抜く!」
「撃ち抜くってなに!? 嫌、今は任せた!!」
話し合いをしている場合ではない、何か手段があるなら仕掛けるべきだろう。
ハンドルを握っている以上エポニムは運転に集中しなければならない、ならば追いかけている男を倒すのはテミスの役割だろう。
「くそ、しつけぇぞてめぇら!!」
「今!! 後でハンドル操作で受け止めて!!」
「ちょ!? 危ないって!?」
先ほどテミスの乗っていた馬に石弓を当てた男が再び石弓を構える、しかしその前にテミスが行動を起こした。
不安定なエポニムの風光走機から立ち上がりブーツに付いているボールの様なモノを思いっきり回す、ギャリギャリ、と火花と共に音を立てると同時にボールが熱を持つ、のだが。
走る風光走機で立ち上がった為に風でスカートの中にあるレースの付いた白いパンツが露になる、テミスはそんな事を気にしてないのかそれともそんな余裕も無いのか真っ直ぐと石弓を向ける男に視線を向ける。
「ランビリーゾ! タラリア!!」
「ウッソ!?」
「な、なに!? ぐあ!?」
「うげぇ!?」
風光走機からテミスが飛び降りた、勿論本来ならその体は重力に従い地面に落下する筈だが彼女の履いているブーツが光輝き石弓を構えていた男の前まで急接近と共に飛び蹴りを食らわせ、更に隣の男にも回し蹴りを食らわせる。
男二人が落ちると二頭の馬の動きを止めてあっという間にエポニムの風光走機に追い抜かれる。
テミスは相手を蹴り飛ばした勢いのまま、少し前に飛ぶがその後失速する。
「ああ受け止めてってそういう!? く!?」
「あぶえ!? く、助かったわ……もう一度行く!」
エポニムが風光走機を巧みに操作し隣の座椅子にテミスを着地させる。
流石に上手く着地できなかったのか顔から座椅子に突っ込むことになったがそれでも直ぐに起き上がりブーツのふくらはぎの部分を開く。
パシュー、という音と共に蒸気が飛び出しテミスが慣れた手付きで中に入っている弾丸の様なものを交換する。
「え!? でも二人とも倒したんじゃ……!?」
「あいつらに追いかけられてた子! さっきの攻撃で気絶してスピード上げっぱになってるの! 乗り込んでブレーキかけるわ!」
「嘘でしょ!? この先道無くて崖下だよ!?」
男達に攻撃した時に気がついたのだが追いかけられていた風光走機に乗っていた女の子が気絶していた。
しかもその足は風光走機を走らせるペダルを踏んだままでその勢いを維持したまま走ってしまっている。
この先の道は崖だ、今でさえ奇跡的にぶつかりながらも走っているが崖下に飛び出してしまえば乗っている女の子も只ではすまない。
「これじゃあ崖下に飛び出すかバラバラになる!」
「その前に、跳んでいく!」
風光走機が一定の距離まで詰めた瞬間、テミスが再び立ち上がり飛び出した。
さっきも思っていたがパンツが見えていたとかそんな事気にしている場合ではない、もう崖は目の前だ。
「く、行ってくれ!! う、ぐあ!?」
テミスが飛び出した瞬間、ハンドルを切ってブレーキをかける。
テミスの護衛対象が乗っている風光走機と殆ど同じような速度を出していたのだ、こちらも崖下に落ちない様に横の崖にぶつかってでも落下は防がねばならない。
結果横の崖にぶつかって止まる様になった、エポニムの風光走機が正面からひしゃげて折れた車軸から車輪が飛び出して転がる。
それと同時に崖下の方で大きな音がする、テミスの護衛対象の乗っていた風光走機が落ちた音だろう。
「あい、たたた……やっぱりスピードが出るって危険だなこれ……おぉ~い、大丈夫か~い?」
痛む体と衝撃でふらつく頭を押さえながら立ち上がる。
下の方で大きな音が聞こえたが、あのテミスが助け損ねるとは思えない。
ある種の確信を持って崖の下を覗き込む。
「大丈夫~! このまま下に降りるから、何かあるなら事務所にお願い~ご協力ありがとう~!」
「それはよかった~! ……はあ、さてと。ここからどう帰ろうかねぇ」
崖下の方でぶら下がっていたテミスを見て安堵する、助ける必要が無いのとまだ追手が来る可能性がある以上このまま彼女達を逃がすべきだろう。
問題はこの壊れた愛車と自分の帰り道だ。
「とんでもない休憩時間になっちゃったよ……休憩の筈がなんでわたしちゃんさっきより疲れてるんだろう」
ため息を吐きながら風光走機に積んでいた無事な荷物を取って山道を歩き始める。
風光走機はこう壊れてしまっては走れないしエポニム一人では運ぶこともできないのでここに置いていくしかない。
「それにしても、流石探偵テミス……独自のルートで改造人にされる人を見つけて守っていたなんて……やっぱり、警備隊のやり方じゃ見つけられないモノがあるかも知れない」
なら、自分が人々を改造人から守るためには、自分の正義を貫くためにはどうすればいいのか。
その答えが、漠然と自分の中に浮かんできた様な気がした。
*
「なにぃ!? 警備隊を辞めるだぁ!?」
机を叩く音と共にモロスの凄まじい声量の叫びに部屋の皆の視線が集まる。
山道を歩いて
しかしこの結果は何となく解っていた、モロスとは警備隊に初めて入った時から自分を育ててくれた先輩だ。
その先輩に、今エポニムは警備隊の辞表を叩きつけているのだ。
「すいません、モロスのとっつぁん。でも、警備隊の情報網だけじゃ改造人を追う事は出来ないんです!」
「馬鹿野郎! 改造人を追う事だけが警備隊の仕事じゃねぇだろうが!」
「それも解っています! ですがその他の仕事をしていては救えない命があるんです!」
自分が偶々あの場所で休憩をしてなければ、護衛に依頼したのがテミスで無かったら、あの命は救えなかった、今頃新たな改造人として被害を出していたのかも知れない。
それを目の前で散々と見せつけられた、警備隊と同じようにテミスも命を懸けて依頼人を守り独自の捜査で改造人の尾を掴もうとしている。
そして、その尾に一番近づいているのは恐らく――
「……お前さんがそこまで言うってこたぁ、何らかの確信があるんだな?」
「正直な話、感って所です。改造人を作っている誰かの尾を掴む事ができるかは……解ってないですけど、ここで出来ない事ができる可能性があるんです……!」
自分ができることをしなければならない。
改造人がどういった存在なのか、誰が作っているのか、いくら過去のデータを調べても欠片すら見つからないのは何かがおかしい。
すっぽりとその部分だけが抜け落ちているような、あからさまにおかしな部分があるのだ。
その部分をあの探偵と一緒に探せば、何かが解る気がする。
「……はぁ」
大きなため息と共にモロスが椅子に深く座り込む。
タバコに火を付けて大きく息を吸ってから吐き出す。
こうなったエポニムは何をしても自分の意思を貫くだろう、彼の強さを良く知っているモロスからすればもう彼を止める事が出来ないのは解っている。
「…………お前、支給された風光走機を壊しただろ?」
「え? あ、あぁ……あはは、カスタムしまくってもう自分の物扱いだったですけど、まぁ」
「じゃあ謹慎だな」
「は?」
「謹慎だよ謹慎、それと事故って怪我もしてるんだろ? 長期休暇でもとっとけ」
「え、あ、あの……モロスのとっつぁん?」
「休暇の間、何してんのかぁ俺は知らねぇ、いいか? お前は休暇で自由なんだ、若いからって手に付けた職を簡単に手放すんじゃねぇ、狡賢く生きろ……お前が戻ってくる場所を残しとく」
そう言いながらモロスが受け取った辞表を灰皿の上に置いて燃やし始める。
タバコを咥えたままにやりと笑うその姿にエポニムはぽかんとしているが、その意味が分かると自然と頬が緩んだ。
「あ、あはは……そうですか、ありがとうございます」
「ただぁし、大見得切ったからには成果は上げて来いよ? 何時か改造人の事件を無くすのがこの国の、俺たちの目的なんだからな」
「はっ!」
今までした中で、一番誇り高い敬礼だと思った。
父も母も居ない自分を待ってくれる人がいる、そしてその待ってくれる人の背中は、初めて警備隊に入った時と同じ大きさで、彼の見本になってくれていたのだから。
*
「は~い、という訳で新メンバーの紹介! エポニムさんとパンドラちゃんだよ!」
「よろしく、エポニムだよ」
「この前助けてもらったパンドラよ、こっちの方が楽しそうだし居候させてもらうわ」
テミスの探偵事務所に出向いて話しをした所、気前よく出迎えて貰えた。
この前の一件でお互いの実力は解っているのでテミスも人手が増えると喜んでいた。
そんなエポニムが驚いたのは二つ、一つはパンドラの事だった。
彼女はこの前追われていたテミスの護衛対象、そんな彼女がどうしてテミスと共に探偵をする事になっているのか。
「いやぁ驚いたよ、君狙われてるんじゃなかったの?」
「本来ならあの程度の相手、一人でも何とかなったの。でも丁度回復期間だったのを狙われたのよね」
「回復期間?」
「強い魔法を使ったからしばらくの間魔法が使えなくなる時期があるの、その回復期間だったのよ。そこをあいつらに狙われたの」
「その間の護衛をあたしに頼んだのがきっかけね、改造人の事を追うには戦力が必要だったから臨時で雇ったのよ!」
羊型の獣人であるパンドラ、彼女は本来護衛など必要のない程魔法に長けた人物だった。
しかし強力な魔法を使える半面回復期間がありその間は無防備になってしまう。
今後も襲われる危険が無いとも限らない以上チームでいた方がリスクも少ない、それにテミスは改造人を追うために戦力を欲している、お互いに損のない契約だった。
「成程、そういう事なら協力しよう」
そんな話しを聞いていたのはテミスの相棒、デイモスだった。
筋骨隆々な姿には驚いたが彼には彼なりの事情があるのだとテミスが言っていた。
「よ~し、これにてテミス探偵事務所は再出発! 景気祝いにぱぁっと飲みますかぁ!!」
鼻歌を歌いながら冷蔵庫の扉を開ける、一本の酒瓶となにかつまみが乗っているお皿を手にしてお尻で冷蔵庫の扉を閉める。
見た目的には、胸部以外の部分が学生にも見えるテミスが悠々とお酒を持ってくる姿に思わず警備隊の性が働いてしまう。
「あれ? テミスちゃん? お酒は大人になってからだと思うんだけど……」
「はい? 何言ってるのあたし25よ?」
「ヴェ!?」
「えぇ!?」
「なん、だと……?」
きょとんとした表情のテミスに全員の表情が固まった。
思わずテミス以外の三人で集まってひそひそと話してしまう。
「う、嘘でしょ……わたしちゃんと同い年だったんだけど」
「私は3歳差で22よ……私の方が同じ年か下だと思ってたわ、デイモスあんた私達より長い間相棒やってたんでしょ? 気が付かなかったの?」
「俺も一か月前から世話になったばっかりで知らん……年上だとは思っても無かった」
「……ちなみにデイモスくんってば何歳なの?」
「…………先週二十歳になった」
「嫌君が一番若いんかーい!? わたしちゃんびっくりだよ!?」
「その雰囲気で二十歳は無理があるでしょ!?」
新しいスタートを切ったこの四人が、コルキスに潜む何かを見つける事は出来るのだろうか。
その答えが解るのは、もう少し未来の話だ。
「よし、そろそろずらかるぜ」
暗い暗い闇の中で男二人の声が響く。
ここはコルキスの賭博場、善人も悪人もここでは均等に運による勝負が行われ泣く者も勝利の雄叫びを上げる者も様々だ。
そんな賭博場には当たり前だが大量の金が貯蔵されている。
その金を、己の運を使わずに掠め取ろうとする者がいる
「脱出路も入った時と一緒だ、後数分もあればバレちまうから行くぞ」
「へへ、この金があれば一生遊んで暮らせるぜ!」
潜入する時に使ったロープを使用し、ゆっくりと音を立てずに賭博場の二階から降りていく。
そして、大きな布に溢れんばかりの札束を詰め込み二人の男が駆け始める。
それと同時に、賭博場の明かりが一斉に点き始めた、警告音と共にコルキスの警備隊や賭博場の番兵が盗賊を捕らえる為に動き出す。
「ぴょい~んっと!」
しかし盗賊の足は軽やかでかなりの量の札束を抱えているのに柵をあっさりと飛び越えてしまう。
そしてそのまま馬に跨って走っていく。
「クソ! 馬を出せ!」
「だ、 だめだ! 全員寝かされちまっている!」
そう、この盗賊達は用意周到だったのだ。
事前に賭博場の従業員として潜入し、更には馬の餌に睡眠剤を混ぜて相手の足を無くしたのだ。
そうしている間にも街の間を縫うように進み、盗賊は賭博場を後にしていく。
これにて盗賊の完全勝利、賭博場の財産はこの盗賊の財産に成り果てる――筈だった。
「ちょいな」
「うお!? な、なんだおい!?」
「うわ!? 急に止まんなおい!?」
戦闘を走る盗賊の乗る馬の鼻先に何か丸い物が投げ込まれる。
丸い物は麻袋で中にある粉末が荒い麻袋の隙間から溢れ出し動きを止めてしまう。
「くそ! 誰だ!?」
「ふっふっふ~、テリオに予想通りの行動だわ。アウトリュコス兄弟! この名探偵テミスの推理は大正解だったわ!」
夜の暗闇に一人の少女が立っていた。
赤と黒色のチェック柄の帽子と同じ柄の短い肩マントを付けており、一見身軽そうに見えるが一本のステッキを持っている。
「く、探偵だと!?」
「その通り! アウトリュコス兄弟の過去の犯行から逃走ルートを割り出した結果、ここを通る可能性が高い、そして馬を利用するであろうことも解っていた! なのでお馬さんの鼻っ柱にコショウ粉を、ぽん! とね……へっくち!」
テミスが手のひら程の大きさの麻袋をボール遊びの様に上下に投げ揺らす、その内麻袋からコショウが漏れたのか軽くくしゃみをする。
「ち、小娘一人だ、殺しちまえば逃げれる!」
「残念ながらそれも予想済み! デイモス!」
「ああ」
テミスの背後から一人の男が現れる。
デイモスと呼ばれた男は身長2メートルはある筋骨隆々のエルフの大男、あまりの威圧感に盗賊の二人が一瞬怯む。
しかしここで二人も止まってられない、盗みを働いた以上後ろから何時追手が追いついてくるか解らないからだ。
「クソ! お前は小娘をやれ!」
「ああ!」
二人の男が短剣を抜刀し走り出す、一人はデイモスへ、もう一人はテミスへ。
一見ただの盗賊であるアウトリュコス兄弟だが元は怪獣討伐チームの出だ、短剣とは言え人相手でも実力は十分発揮できるだろう。
だが、この二人は知らなかった。
目の前に立つ者の実力を――
「デリャア!」
「うお!? ぐあ!? あぎ!? ぐああああ!?」
「あ、兄貴!?」
デイモスは腕に篭手の様な物を着けている。
これは彼の戦い方である無手を阻害しない程度に防具として使える物だ。
しかしこの程度の相手にそんな事は関係ない、デイモスは短剣を腕から落とすために腕を握った拳の側面、つまり鉄槌で攻撃したのだが。
アウトリュコス兄の腕が折れ、あまりの痛みに短剣を握ったまま踞ってしまう。
「あー! デイモスダメですよ!? もっと手加減しないと相手がミンチですよ!?」
「……手加減は、したつもりだが」
「く、くそ! 小娘、お前だけでも!!」
一人でもこの場を逃げ出そう、とテミスに駆けだす。
その判断は間違ってはいないだろう、あっさりと人の腕を折ってしまうデイモスと戦うよりは少女であるテミスと戦った方が逃げられる確率も高かったかも知れない。
問題は――
「ちょ、い、さぁ!!」
「ぐえ!? おご!?」
ステッキで短剣を払われたと思った瞬間、アウトリュコス弟の体が浮き上がるかのように持ち上がり地面に叩きつけられる。
腕に組み疲れ足を払われバランスを崩したかと思った瞬間の事で、デイモスの様に力任せに動いたのではなく、相手の重心、体重を利用した対人用の投げ技だ。
勿論こんな技術は怪獣討伐で得られる物ではない、彼女が犯罪者を捕まえるために教え込まれた技術だ。
「よぉし、これにてアウトリュコス兄弟を逮捕できるわ! デイモス、この二人を運んでね! 勿論、慎重によ? 貴方の力で二人を潰しちゃわないでね?」
「ああ」
朝日が昇る中、二人の探偵によって世間を騒がせていた盗賊が捕まった瞬間だった。
この街に謎が、そして事件がある時、名探偵テミスはこの街を守る為に戦うのだ。
*
「……はぁ、だめだこりゃ」
「なんでぇ? エポニム、まだ見つかんねぇのか?」
仄かな明かりに照らされ、タバコの臭いが染み付いた部屋で資料を見ていた一人の魔族がため息を吐く。
机の上には最早塔と言っていい程、紙が束になって重なっている、この資料はコルキスの警備隊や観測隊が300年間この世界の様々な物を見て記録した物である。
言わば今の人類の辞書なのだがその辞書をみてエポニムと呼ばれた魔族の青年はタバコを咥えたまま資料に文句を言い始める。
「そうは言ってもモロスのとっつぁん、300年分の資料だぜ? 読んでる間にわたしちゃんの腰がもうゴッキリしちゃうよ」
「お前そんな年じゃねぇだろうよぉ」
「嫌々ガタガタになるって……特にここ最近は改造人事件のせいで机に向きっ切りだしさぁ」
「25の若造がなぁにいってんだよ、俺みたいに35過ぎてから文句言いやがれよ」
調べても調べても碌な資料が出てこない。
こんな缶詰になってでもこの二人が見つけたいのは最近コルキスを騒がせている改造人、と言われている存在だ。
つい先日現れた改造人7号と呼ばれている存在、クジラの様な姿をした改造人で何人か市民や警備隊を殺害した後改造人4号に倒された。
あの改造人が何処から現れたのか、誰に改造されたのか、その調査の為に今までの資料を洗いなおしているのだ。
「ってかさぁ……改造人が現れたのは三か月と2日前だよ? 何で警備隊資料の全部を洗いなおしてるのって話しだよ……今更だけど」
「今更だが、こういった小さな物からも何かが見つかるってもんだ。捜査の基本は足だが足でどうしようもねぇ以上何でもいいから情報を探すしかねぇんだよ」
「……警備隊の限界、かねぇ」
「馬鹿な事言ってんじゃねぇ、いいか? 改造人は定期的に現れて確実に被害を出す、しかも改造人4号が出てこなければ改造人を倒すこともできない、装備の開発が進められているが今の俺達には何一つ改造人の撃退手段が無いんだ。なら改造人がでる前に市民の避難をさせるのが俺らの仕事だ」
「そりゃ、そうだけど……そもそも改造人ってどこから人攫って何処で改造してるのか解んないじゃないか」
「それを少しのヒントでもいいから見つけんのが今やってる仕事だろうが」
「あ、はい」
そう言われてしまえば、もう自分はこの資料と睨めっこをするしかない。
300年分の資料を見て、少しでも市民への被害を減らさなくてはならないだろう。
警備隊にも改造人の被害が出ているのだから手を抜くことはできない、ため息を吐きながらでも何かを見つけなくてはならない。
しかし何度見ても、記憶する程資料を見てもなんのヒントも浮かんでこないのだ。
まるで答えにたどり着くための道が無いかの様に。
そんな姿を、モロスも感じ取ったのだろう。
「……おい、エポニム。お前ちょっと見回り行ってこい」
「え? あ、あぁ……そんなに煮詰まって見えました?」
「おう、見える。ほらさっさと行ってこい」
「は、はぁい……」
こうもはっきり言われては一旦頭をすっきりさせる為にも別の事をした方が良いだろう。
咥えていたタバコを灰皿に押し当てて火を消す、一旦自分の思考をリセットするために外に出る準備を整える。
この選択が、エポニムの全てを変える選択だというのをその時は誰も知らなかった。
*
「…………はは、良い天気だ」
タバコ臭い部屋の空気とは違う冷たい潮風の香りを肺一杯に吸い込む。
ここコルキスは巨大な船の上にある国だ、気分をリフレッシュさせるのに海の風と空気を感じるのはこれ以上にない効果があるだろう。
こういう時は趣味の風光走機、風力と太陽の光をエネルギーに変換し走らせる事のできる装置が役に立つ。
コルキスの研究者が最新の技術を集結させて作った四輪の馬を使わない馬車だ。
あまり大きくなく、乗り込める人数も二人か三人が限界、その上この風光走機は地面に座る程度の高さで運転することになる。
速度も中々な物でエポニムの風光走機には特殊なカスタムがされており馬より早く走れるだろう。
ペダルを踏むことで加速減速する風光走機はコルキスでも少ないが本質は走る鉄塊なので人の多い所では走れない。
なので。
「久しぶりに走ったけどやっぱり気持ちいいなぁ……速度が出すぎるからちょっと危ないけど、人のいない森林地帯付近の通路なら、こんなにも快適に走れる……」
コルキスの南にある森林地帯、少し進むと渦巻き状の山の様な部分にいけるが人が歩く場所は横幅が広く石と粘土で作られた道で風光走機が走りやすい通路だ。
今は寒い時期なので人も少ない、正にうってつけの走り日和だ。
「んぐお!?」
そう、思っていたのだが。
パァン、という破裂音と共に風光走機の動きが悪くなる。
ブレーキを使って風光走機を止めて音の出所を確認する。
「あっちゃあ、車輪の点検忘れてた……交換しないと」
風光走機の一番の欠点は車輪の消耗が激しい事だ。
なめした牛革を空気で膨らませているのだがもう少し頑丈な何かがあれば良いと愚痴っているが研究者もそれを見つけられてない様で現状車輪の交換をしょっちゅう行わなければならない。
「あ~よいしょ……この車輪交換が頻発するのが良くないよねぇ、今回は一か所だったから良かったけど……」
風光走機を操縦する以上ある程度の知識が必要になってくる。
警備隊で使うかも、と試作機を貰った時にある程度の事は教わっているのでエポニムは自分でも風光走機の整備が可能だ。
というより最近ではこの機体を自分で弄ったりもしてる。
「よ、し終わり終わり……さぁてもう少し遊んだら帰――」
大きく背伸びをしていると遠くから馬の走る音と風光走機が走る音が聞こえる。
馬の音は蹄なので解りやすく、風光走機は独特なキューン、という様な音が聞こえるのが特徴的なので音さえ聞ければ解りやすいのだ。
「何時までも追ってきてんじゃねぇよ小娘が!!」
「んなぁ!? ひ、卑怯者ー!?」
「え? ちょなうおぉ!?」
馬が三匹と赤く旧式の風光走機が走ってくる、一見すると風光走機を馬が追っている様に見えその予想は当たっているだろう。
風光走機には羊の獣人の女の子が、馬は厳つい海人の男が二人、最後尾にはエンスの女の子が乗っている。
馬も風光走機も少し出しすぎなくらい速度を出しており、何事かと驚いていると最後尾を走っていた馬の上からエンスの女の子が落馬した。
どうやら前を走る厳つい男性の騎手が石弓を使い最後尾を走る馬の足を撃った様だ。
女の子の乗っている馬が大きく地面に転がる、すぐに立ち上がるが足を怪我しており獣人達をう事は出来ないだろう。
「あい、たたた……く、お馬さん大丈夫? くそ、これじゃあ追えないわね……!」
「君は、もしかしてテミスちゃんかい? うわなにそのゴテゴテしたの!?」
落馬した女の子の顔に見覚えがあった。
警備隊とも情報交換をする事もある探偵のテミスだ。
警備隊とは別の方向から事件を追うその姿は警備隊でも注目を集めているが行動が少し過激である事も問題視されている。
そんな彼女は太ももを半分隠す黄金色の鎧のようなブーツを履いている、何時もは同じ部分にまで伸びている靴下を履いているが今はゴテゴテした鎧のような物を付けている。
「はい? そうだけど……貴方は? い、いやそんな事よりそれ風光走機だよね!? それ使わせてくれない!?」
「え!? こ、これを!? もしかして、追うの!?」
「当然! 今追われている人はあたしが目星を付けていた改造人にされるかも知れない人なのよ!」
「改造人に!? 解った、乗ってくれ!!」
改造人、と言われて聞き逃すことはできなかった。
改造人に繋がる何かがあるのならそれを追わなくてはならない。
今まで一欠片でも見つけることのできなかった改造人の何かが見つかるかも知れない。
「エウハリストー! 所でこれどのくらい速度でるの!? 追い付ける!?」
「安心、したまえ! わたしちゃん特製の、カスタム機だ!!」
風光走機に本来取り付けられてないレバーを思いっきり引っ張る。
キーン、という甲高い音と共に風光走機後ろにある本来は荷物などを置ける場所が開く、本来は荷物を置いてある場所には二つの排風パイプと持つ一つのエネルギー炉、風光炉が積まれている。
「しっかり捕まっててね!? 振り落としちゃうよ!?」
「どわああああ!?」
テミスの可憐な見た目からは想像できない悲鳴が飛び出す。
しかしそれも仕方ない、エポニムの風光走機は馬よりも早く弾丸の様に走り出したのだ。
「な、なにこれ!? 風光走機ってこんな速度で走れるの!?」
「これはわたしちゃん特製のカスタムだからね! 追い付いてきたよ!?」
「ちぃ!? なんだあいつ!?」
「くそ!! 商品に傷が付くかも知れねぇが、仕方ねぇ!!」
エポニム達が追いつくころには渦巻き状の山を昇り始めた位置で追いかけ合っている。
そんな中、馬に乗った二人組の片方が追いかけている風光走機の装甲をハンマーの様なもので叩く。
「きゃ!?」
「あー!? なにしてんのよ!? ってうわぁ何か飛んできた!?」
「く!?」
追いかけられている風光走機から女の子らしき悲鳴が聞こえ車輪をカバーしてるパーツが外れる、それは勿論後方を走っているエポニムの風光走機にぶつかりそうになるがエポニムが少しハンドルをずらした事にってギリギリ回避する事ができた。
「好き勝手やってくれちゃって!」
「もう少し近づいて! あの男だけ撃ち抜く!」
「撃ち抜くってなに!? 嫌、今は任せた!!」
話し合いをしている場合ではない、何か手段があるなら仕掛けるべきだろう。
ハンドルを握っている以上エポニムは運転に集中しなければならない、ならば追いかけている男を倒すのはテミスの役割だろう。
「くそ、しつけぇぞてめぇら!!」
「今!! 後でハンドル操作で受け止めて!!」
「ちょ!? 危ないって!?」
先ほどテミスの乗っていた馬に石弓を当てた男が再び石弓を構える、しかしその前にテミスが行動を起こした。
不安定なエポニムの風光走機から立ち上がりブーツに付いているボールの様なモノを思いっきり回す、ギャリギャリ、と火花と共に音を立てると同時にボールが熱を持つ、のだが。
走る風光走機で立ち上がった為に風でスカートの中にあるレースの付いた白いパンツが露になる、テミスはそんな事を気にしてないのかそれともそんな余裕も無いのか真っ直ぐと石弓を向ける男に視線を向ける。
「ランビリーゾ! タラリア!!」
「ウッソ!?」
「な、なに!? ぐあ!?」
「うげぇ!?」
風光走機からテミスが飛び降りた、勿論本来ならその体は重力に従い地面に落下する筈だが彼女の履いているブーツが光輝き石弓を構えていた男の前まで急接近と共に飛び蹴りを食らわせ、更に隣の男にも回し蹴りを食らわせる。
男二人が落ちると二頭の馬の動きを止めてあっという間にエポニムの風光走機に追い抜かれる。
テミスは相手を蹴り飛ばした勢いのまま、少し前に飛ぶがその後失速する。
「ああ受け止めてってそういう!? く!?」
「あぶえ!? く、助かったわ……もう一度行く!」
エポニムが風光走機を巧みに操作し隣の座椅子にテミスを着地させる。
流石に上手く着地できなかったのか顔から座椅子に突っ込むことになったがそれでも直ぐに起き上がりブーツのふくらはぎの部分を開く。
パシュー、という音と共に蒸気が飛び出しテミスが慣れた手付きで中に入っている弾丸の様なものを交換する。
「え!? でも二人とも倒したんじゃ……!?」
「あいつらに追いかけられてた子! さっきの攻撃で気絶してスピード上げっぱになってるの! 乗り込んでブレーキかけるわ!」
「嘘でしょ!? この先道無くて崖下だよ!?」
男達に攻撃した時に気がついたのだが追いかけられていた風光走機に乗っていた女の子が気絶していた。
しかもその足は風光走機を走らせるペダルを踏んだままでその勢いを維持したまま走ってしまっている。
この先の道は崖だ、今でさえ奇跡的にぶつかりながらも走っているが崖下に飛び出してしまえば乗っている女の子も只ではすまない。
「これじゃあ崖下に飛び出すかバラバラになる!」
「その前に、跳んでいく!」
風光走機が一定の距離まで詰めた瞬間、テミスが再び立ち上がり飛び出した。
さっきも思っていたがパンツが見えていたとかそんな事気にしている場合ではない、もう崖は目の前だ。
「く、行ってくれ!! う、ぐあ!?」
テミスが飛び出した瞬間、ハンドルを切ってブレーキをかける。
テミスの護衛対象が乗っている風光走機と殆ど同じような速度を出していたのだ、こちらも崖下に落ちない様に横の崖にぶつかってでも落下は防がねばならない。
結果横の崖にぶつかって止まる様になった、エポニムの風光走機が正面からひしゃげて折れた車軸から車輪が飛び出して転がる。
それと同時に崖下の方で大きな音がする、テミスの護衛対象の乗っていた風光走機が落ちた音だろう。
「あい、たたた……やっぱりスピードが出るって危険だなこれ……おぉ~い、大丈夫か~い?」
痛む体と衝撃でふらつく頭を押さえながら立ち上がる。
下の方で大きな音が聞こえたが、あのテミスが助け損ねるとは思えない。
ある種の確信を持って崖の下を覗き込む。
「大丈夫~! このまま下に降りるから、何かあるなら事務所にお願い~ご協力ありがとう~!」
「それはよかった~! ……はあ、さてと。ここからどう帰ろうかねぇ」
崖下の方でぶら下がっていたテミスを見て安堵する、助ける必要が無いのとまだ追手が来る可能性がある以上このまま彼女達を逃がすべきだろう。
問題はこの壊れた愛車と自分の帰り道だ。
「とんでもない休憩時間になっちゃったよ……休憩の筈がなんでわたしちゃんさっきより疲れてるんだろう」
ため息を吐きながら風光走機に積んでいた無事な荷物を取って山道を歩き始める。
風光走機はこう壊れてしまっては走れないしエポニム一人では運ぶこともできないのでここに置いていくしかない。
「それにしても、流石探偵テミス……独自のルートで改造人にされる人を見つけて守っていたなんて……やっぱり、警備隊のやり方じゃ見つけられないモノがあるかも知れない」
なら、自分が人々を改造人から守るためには、自分の正義を貫くためにはどうすればいいのか。
その答えが、漠然と自分の中に浮かんできた様な気がした。
*
「なにぃ!? 警備隊を辞めるだぁ!?」
机を叩く音と共にモロスの凄まじい声量の叫びに部屋の皆の視線が集まる。
山道を歩いて
しかしこの結果は何となく解っていた、モロスとは警備隊に初めて入った時から自分を育ててくれた先輩だ。
その先輩に、今エポニムは警備隊の辞表を叩きつけているのだ。
「すいません、モロスのとっつぁん。でも、警備隊の情報網だけじゃ改造人を追う事は出来ないんです!」
「馬鹿野郎! 改造人を追う事だけが警備隊の仕事じゃねぇだろうが!」
「それも解っています! ですがその他の仕事をしていては救えない命があるんです!」
自分が偶々あの場所で休憩をしてなければ、護衛に依頼したのがテミスで無かったら、あの命は救えなかった、今頃新たな改造人として被害を出していたのかも知れない。
それを目の前で散々と見せつけられた、警備隊と同じようにテミスも命を懸けて依頼人を守り独自の捜査で改造人の尾を掴もうとしている。
そして、その尾に一番近づいているのは恐らく――
「……お前さんがそこまで言うってこたぁ、何らかの確信があるんだな?」
「正直な話、感って所です。改造人を作っている誰かの尾を掴む事ができるかは……解ってないですけど、ここで出来ない事ができる可能性があるんです……!」
自分ができることをしなければならない。
改造人がどういった存在なのか、誰が作っているのか、いくら過去のデータを調べても欠片すら見つからないのは何かがおかしい。
すっぽりとその部分だけが抜け落ちているような、あからさまにおかしな部分があるのだ。
その部分をあの探偵と一緒に探せば、何かが解る気がする。
「……はぁ」
大きなため息と共にモロスが椅子に深く座り込む。
タバコに火を付けて大きく息を吸ってから吐き出す。
こうなったエポニムは何をしても自分の意思を貫くだろう、彼の強さを良く知っているモロスからすればもう彼を止める事が出来ないのは解っている。
「…………お前、支給された風光走機を壊しただろ?」
「え? あ、あぁ……あはは、カスタムしまくってもう自分の物扱いだったですけど、まぁ」
「じゃあ謹慎だな」
「は?」
「謹慎だよ謹慎、それと事故って怪我もしてるんだろ? 長期休暇でもとっとけ」
「え、あ、あの……モロスのとっつぁん?」
「休暇の間、何してんのかぁ俺は知らねぇ、いいか? お前は休暇で自由なんだ、若いからって手に付けた職を簡単に手放すんじゃねぇ、狡賢く生きろ……お前が戻ってくる場所を残しとく」
そう言いながらモロスが受け取った辞表を灰皿の上に置いて燃やし始める。
タバコを咥えたままにやりと笑うその姿にエポニムはぽかんとしているが、その意味が分かると自然と頬が緩んだ。
「あ、あはは……そうですか、ありがとうございます」
「ただぁし、大見得切ったからには成果は上げて来いよ? 何時か改造人の事件を無くすのがこの国の、俺たちの目的なんだからな」
「はっ!」
今までした中で、一番誇り高い敬礼だと思った。
父も母も居ない自分を待ってくれる人がいる、そしてその待ってくれる人の背中は、初めて警備隊に入った時と同じ大きさで、彼の見本になってくれていたのだから。
*
「は~い、という訳で新メンバーの紹介! エポニムさんとパンドラちゃんだよ!」
「よろしく、エポニムだよ」
「この前助けてもらったパンドラよ、こっちの方が楽しそうだし居候させてもらうわ」
テミスの探偵事務所に出向いて話しをした所、気前よく出迎えて貰えた。
この前の一件でお互いの実力は解っているのでテミスも人手が増えると喜んでいた。
そんなエポニムが驚いたのは二つ、一つはパンドラの事だった。
彼女はこの前追われていたテミスの護衛対象、そんな彼女がどうしてテミスと共に探偵をする事になっているのか。
「いやぁ驚いたよ、君狙われてるんじゃなかったの?」
「本来ならあの程度の相手、一人でも何とかなったの。でも丁度回復期間だったのを狙われたのよね」
「回復期間?」
「強い魔法を使ったからしばらくの間魔法が使えなくなる時期があるの、その回復期間だったのよ。そこをあいつらに狙われたの」
「その間の護衛をあたしに頼んだのがきっかけね、改造人の事を追うには戦力が必要だったから臨時で雇ったのよ!」
羊型の獣人であるパンドラ、彼女は本来護衛など必要のない程魔法に長けた人物だった。
しかし強力な魔法を使える半面回復期間がありその間は無防備になってしまう。
今後も襲われる危険が無いとも限らない以上チームでいた方がリスクも少ない、それにテミスは改造人を追うために戦力を欲している、お互いに損のない契約だった。
「成程、そういう事なら協力しよう」
そんな話しを聞いていたのはテミスの相棒、デイモスだった。
筋骨隆々な姿には驚いたが彼には彼なりの事情があるのだとテミスが言っていた。
「よ~し、これにてテミス探偵事務所は再出発! 景気祝いにぱぁっと飲みますかぁ!!」
鼻歌を歌いながら冷蔵庫の扉を開ける、一本の酒瓶となにかつまみが乗っているお皿を手にしてお尻で冷蔵庫の扉を閉める。
見た目的には、胸部以外の部分が学生にも見えるテミスが悠々とお酒を持ってくる姿に思わず警備隊の性が働いてしまう。
「あれ? テミスちゃん? お酒は大人になってからだと思うんだけど……」
「はい? 何言ってるのあたし25よ?」
「ヴェ!?」
「えぇ!?」
「なん、だと……?」
きょとんとした表情のテミスに全員の表情が固まった。
思わずテミス以外の三人で集まってひそひそと話してしまう。
「う、嘘でしょ……わたしちゃんと同い年だったんだけど」
「私は3歳差で22よ……私の方が同じ年か下だと思ってたわ、デイモスあんた私達より長い間相棒やってたんでしょ? 気が付かなかったの?」
「俺も一か月前から世話になったばっかりで知らん……年上だとは思っても無かった」
「……ちなみにデイモスくんってば何歳なの?」
「…………先週二十歳になった」
「嫌君が一番若いんかーい!? わたしちゃんびっくりだよ!?」
「その雰囲気で二十歳は無理があるでしょ!?」
新しいスタートを切ったこの四人が、コルキスに潜む何かを見つける事は出来るのだろうか。
その答えが解るのは、もう少し未来の話だ。
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