2 / 2
2、高校入学
しおりを挟む
一軒家から、鍵を掛けて外に出る。
徒歩圏内に高校があった。
ハンター育成の最高峰と言われる学園だ。数多の有能な能力者を排出している名門校"グランドナイツ"。
あれから両親に頭を下げて、一人暮らしをしながら今日からこの学園に通うことになった。
両親は、何かを言いたそうにしていたが、結局言葉にすることはなかった。
黙って送り出してくれたことに感謝している。今はまだ能力も口にできるほど、気持ちの整理がついていない。
いつか両親に能力のことも言わなくてはいけないが、この先どうなるのか分からないこともあって、口を重くさせる。
それに、例の俺を追い詰めるアイツもこの学園にいるはずだ。アイツを避けようと思えば避けられたが、この学園が一番ハンターに成るのに適しているは間違いない。
カリキュラムの内容も、教師陣の厚さもここが一番良い。ハンターを続けるにはここ以上に最高の場所はない。何せ二年生になれば、学園の上位五名は自由にダンジョンに入る資格を得る。
態々あの面倒な手続きをしなくて良いのは、時間的な意味でも無駄がなくて良い。
契約書の諸々の手続きを思い出すとゲンナリする。
1ー2が俺の教室だ。
教室の扉を開けると一度静まり返り、慌てたように騒がしくなる。
俺への一瞬の警戒を無視して、自分の席に座った。
ダンジョンであったことは生徒達の噂に上っていないようだが、ここでも兄貴の名前が効いてくる。俺の素行の悪さは、相手が警戒するのにちょっとした効果の上乗せに過ぎない。
兄貴に目をつけられたら、ハンターの資格を取得できない可能性があると考えているのだろう。
ここも兄貴の名前が効いているのにうんざりする。
それに、素行が悪いという噂も、それに見合うような行動を俺は全くしていない。ダンジョンで無理をしすぎて、学校を休んだくらいだ。
むしろ、何故か勝手に集まってくる人間の素行が悪いので、その噂に尾びれ背鰭が付いて、自由に動き回っているせいだ。
そんなもはや真実は何か分からないものを、独り歩きする噂を訂正すること無く自由にさせている。態々訂正して回るのも面倒クセェ。
「よぉ、セイジ」
聞きなれた声に眉を潜める。
机に頬杖をつきながら見ると、中学が同じで、いつも俺に絡んでくる奴が立っている。
俺はチラリと見るだけで特に反応はしない。
中学の時も積極的に関わってこなかった。いつも近寄ってくるのを放っておいただけ。
どちらかというと、好き好んで近付けたくはない。
こいつらが、未来の俺のグループの一人だった。自暴自棄になった俺はこいつらのグループに少しずつ染められるように、素行が悪くなっていった。
「・・・」
「相変わらずツレねぇな」
図々しく北城が前の席の奴を退かすと、俺の方を向いてくる。それに合わせて、勝手に周りに人が集まる。
会話に参加しないのに、周囲に集まってくるのは正直鬱陶しい。
勝手に北城の席で駄弁れば良いものを態々こちらに来るな。
周りが喋っているのを右から左に流しながら、体内の魔素の巡りを周りに悟られないように活性化させる。これも遠距離系魔法を使う者の訓練の一つだ。このスピードが魔法の出力の速さに比例する。
退屈な時間を訓練に充てて、入学式を待つ。
瞑想の領域に達していたころ、教室の外から妙な気配が漂ってきた。魔素の異様な動きを感じとる。
なるほど粗削りだが、魔素の変換率が高い。"アイツ"が来たのだ。
魔素の変換率は、大気中に漂う魔素を肉体に取り込む早さのことだ。肉体に取り込むことで、肉体・体内魔素の保有量の強化に割り振られる。
ハンターの上位者はこの魔素の変換率が高いのが条件の一つだ。
通常の場所では魔素が無く、それ故魔物も生まれない。魔素があるのはダンジョンだけだ。
この学園は、異例中の異例でダンジョンの入り口の真ん前に立っている。
中から漏れ出てきた魔素が学園中を覆っているのだ。
普通であれば、いつ魔物が出てくるか分からない、そんな土地過ごすのはごめん被る。
だが、危険度の高い土地に学園を建てることで、ここで過ごすだけで魔素が身体に蓄積していく。
究極の冒険者を育てる施設ということだ。
そんな危険地帯に建っているせいで、入学時に身の危険に関する合意書も交わすことになる。
結界魔法がお得意のいけすかないジジイが学園長でもなければ、この学園の設立許可は降りなかっただろう。
"アイツ"が教室に入ってきた。羽佐間 優真だ。
黒髪に、キッチリとボタンを上まで留めた学ランを着ている。身長は男子の平均身長はあるが、色も白くヒョロヒョロとしている。真面目そうな普通の雰囲気を持った男だ。
ダンジョンで見た時は、もう少し身体に厚みがあった筈だが、今は攻撃を受けたら一発で骨が折れそうだ。
その容姿とは反対に、俺の脳内で警戒のアラームが喧しくなる。確実に脅威になる前に潰せと言っている。
まだ、ハンターにも成れていないコイツに全神経が持っていかれるのは不快だ。
心の中で舌打ちを収める。
ただ、圧倒的な生まれ持った才能を察知して、羽佐間へ自然と視線を向けさせる。
勘の良い者は、羽佐間のことを警戒しているようだ。
教室の空気を変えたのが羽佐間だと悟ったのだろう。北城が苛立ったように羽佐間を睨み付けている。
まるで、縄張りを荒らされた猫のようだな。
才能の差と未来を見ている俺にとっては、小さな身で化け物に毛を逆立てているようにしか見えない。
・・・健気で哀れだ。北城にわずかながら同情する。ハンターは才能と努力、その二つが揃わないとダンジョンで死ぬ。
てんでこの状況を理解していないのは、当人と鈍いやつだけだ。
徒歩圏内に高校があった。
ハンター育成の最高峰と言われる学園だ。数多の有能な能力者を排出している名門校"グランドナイツ"。
あれから両親に頭を下げて、一人暮らしをしながら今日からこの学園に通うことになった。
両親は、何かを言いたそうにしていたが、結局言葉にすることはなかった。
黙って送り出してくれたことに感謝している。今はまだ能力も口にできるほど、気持ちの整理がついていない。
いつか両親に能力のことも言わなくてはいけないが、この先どうなるのか分からないこともあって、口を重くさせる。
それに、例の俺を追い詰めるアイツもこの学園にいるはずだ。アイツを避けようと思えば避けられたが、この学園が一番ハンターに成るのに適しているは間違いない。
カリキュラムの内容も、教師陣の厚さもここが一番良い。ハンターを続けるにはここ以上に最高の場所はない。何せ二年生になれば、学園の上位五名は自由にダンジョンに入る資格を得る。
態々あの面倒な手続きをしなくて良いのは、時間的な意味でも無駄がなくて良い。
契約書の諸々の手続きを思い出すとゲンナリする。
1ー2が俺の教室だ。
教室の扉を開けると一度静まり返り、慌てたように騒がしくなる。
俺への一瞬の警戒を無視して、自分の席に座った。
ダンジョンであったことは生徒達の噂に上っていないようだが、ここでも兄貴の名前が効いてくる。俺の素行の悪さは、相手が警戒するのにちょっとした効果の上乗せに過ぎない。
兄貴に目をつけられたら、ハンターの資格を取得できない可能性があると考えているのだろう。
ここも兄貴の名前が効いているのにうんざりする。
それに、素行が悪いという噂も、それに見合うような行動を俺は全くしていない。ダンジョンで無理をしすぎて、学校を休んだくらいだ。
むしろ、何故か勝手に集まってくる人間の素行が悪いので、その噂に尾びれ背鰭が付いて、自由に動き回っているせいだ。
そんなもはや真実は何か分からないものを、独り歩きする噂を訂正すること無く自由にさせている。態々訂正して回るのも面倒クセェ。
「よぉ、セイジ」
聞きなれた声に眉を潜める。
机に頬杖をつきながら見ると、中学が同じで、いつも俺に絡んでくる奴が立っている。
俺はチラリと見るだけで特に反応はしない。
中学の時も積極的に関わってこなかった。いつも近寄ってくるのを放っておいただけ。
どちらかというと、好き好んで近付けたくはない。
こいつらが、未来の俺のグループの一人だった。自暴自棄になった俺はこいつらのグループに少しずつ染められるように、素行が悪くなっていった。
「・・・」
「相変わらずツレねぇな」
図々しく北城が前の席の奴を退かすと、俺の方を向いてくる。それに合わせて、勝手に周りに人が集まる。
会話に参加しないのに、周囲に集まってくるのは正直鬱陶しい。
勝手に北城の席で駄弁れば良いものを態々こちらに来るな。
周りが喋っているのを右から左に流しながら、体内の魔素の巡りを周りに悟られないように活性化させる。これも遠距離系魔法を使う者の訓練の一つだ。このスピードが魔法の出力の速さに比例する。
退屈な時間を訓練に充てて、入学式を待つ。
瞑想の領域に達していたころ、教室の外から妙な気配が漂ってきた。魔素の異様な動きを感じとる。
なるほど粗削りだが、魔素の変換率が高い。"アイツ"が来たのだ。
魔素の変換率は、大気中に漂う魔素を肉体に取り込む早さのことだ。肉体に取り込むことで、肉体・体内魔素の保有量の強化に割り振られる。
ハンターの上位者はこの魔素の変換率が高いのが条件の一つだ。
通常の場所では魔素が無く、それ故魔物も生まれない。魔素があるのはダンジョンだけだ。
この学園は、異例中の異例でダンジョンの入り口の真ん前に立っている。
中から漏れ出てきた魔素が学園中を覆っているのだ。
普通であれば、いつ魔物が出てくるか分からない、そんな土地過ごすのはごめん被る。
だが、危険度の高い土地に学園を建てることで、ここで過ごすだけで魔素が身体に蓄積していく。
究極の冒険者を育てる施設ということだ。
そんな危険地帯に建っているせいで、入学時に身の危険に関する合意書も交わすことになる。
結界魔法がお得意のいけすかないジジイが学園長でもなければ、この学園の設立許可は降りなかっただろう。
"アイツ"が教室に入ってきた。羽佐間 優真だ。
黒髪に、キッチリとボタンを上まで留めた学ランを着ている。身長は男子の平均身長はあるが、色も白くヒョロヒョロとしている。真面目そうな普通の雰囲気を持った男だ。
ダンジョンで見た時は、もう少し身体に厚みがあった筈だが、今は攻撃を受けたら一発で骨が折れそうだ。
その容姿とは反対に、俺の脳内で警戒のアラームが喧しくなる。確実に脅威になる前に潰せと言っている。
まだ、ハンターにも成れていないコイツに全神経が持っていかれるのは不快だ。
心の中で舌打ちを収める。
ただ、圧倒的な生まれ持った才能を察知して、羽佐間へ自然と視線を向けさせる。
勘の良い者は、羽佐間のことを警戒しているようだ。
教室の空気を変えたのが羽佐間だと悟ったのだろう。北城が苛立ったように羽佐間を睨み付けている。
まるで、縄張りを荒らされた猫のようだな。
才能の差と未来を見ている俺にとっては、小さな身で化け物に毛を逆立てているようにしか見えない。
・・・健気で哀れだ。北城にわずかながら同情する。ハンターは才能と努力、その二つが揃わないとダンジョンで死ぬ。
てんでこの状況を理解していないのは、当人と鈍いやつだけだ。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる