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一章
製造装置を使ってみよう(1)
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さて、分析装置にご活躍頂いた後に行うのは当然、製造装置による製作だ。
そのために分析したのだ。
俺たちは分析するために分析してるんじゃないからな。
プレイヤーのなかには、分析装置によるデータの収集自体が楽しくなっちゃうプレイヤーもいるだろうが……基本的には、製造装置で加工可能にするという実益を求めて分析装置を使うことになるだろう。
製造装置の使い方は、以前カノンが飲料水を作ったときに確認したよな。
前回は製造装置前面の投入口に主原料を直接入れたが、当然、使う素材の数や種類が多くなればそうはいかない。
今回は別の方法、すなわち圧縮ストレージに放り込む方法を試してみよう。
「カノン。採ってきたやつ、ぜんぶ圧縮ストレージに放り込むつもりだけど。
なんか取っときたいやつとかある? 例の茸とか」
「ん、特にない、よ。 ぜんぶ、いっちゃって」
了解を得たので、今回採れた資源をすべてストレージ内に放り込み、扉を閉める。
*────
さて、このまるで現実のような世界で製造装置を使うにあたって、圧縮ストレージに放り込まれた資源を使用しようとするとき、次のような疑問を抱く人もいるかもしれない。
製造装置は、圧縮ストレージ内に存在する資源を、いったいどのようにして製造装置内に運び入れ、加工しているというのか?
結論から言ってしまえば、その答えは「プレイヤーからは見えないため、わからない」だ。
なぜなら、圧縮ストレージの扉を閉めた状態、かつ、圧縮ストレージ内部にプレイヤーが存在しない状態でのみ、製造装置は圧縮ストレージ内部の資源を素材として認識してくれるからだ。
製造装置の稼働中は圧縮ストレージへの扉がロックされる。
だから製造装置の稼働中、圧縮ストレージ内部でいったいなにが起こっているのかはわからない。
どのように資源が製造装置に供給されているかはわからないのだ。
圧縮ストレージ内部に記録機器を仕込むと壊れるし、扉を閉めた瞬間通信も断絶する。
前作で試したプレイヤーがいたが、壊れた機器の検証結果は「よくわからない」だった。
考えられるとすれば、圧縮ストレージに用いられている空間圧縮技術の弊害だとか。
ゆえにプレイヤーは、本当に本当の意味で、圧縮ストレージ内に置かれた資源を製造装置が素材として使用できるということが、単にゲーム的な処理なのか、それとも実際に搬入作業のようなものが行われているのかがわからないようになっている。
……わからないから、疑問に思う必要はない。
圧縮ストレージ内部に入れた資源が、どのように製造装置に搬入されるのか、とか。
その仕事はいったい誰がやっているのか、とか。
そういうことは気にする必要はない。
見えないところでロボットアームが動いているのかもしれない。
空間圧縮技術を応用して、亜空間を経由して製造装置に搬入されているのかもしれない。
わからないが現に出来ているのだから、そんな感じでどうにかしているのだろう。
そのように納得すればいいようになっている。
そのあたりがぼやかしてあるからこそ、プレイヤーは製造装置を使うたびに「まるで現実みたいだけど、やっぱりここはゲームの中なんだな」と思わされることがない。
資源の保管庫としての圧縮ストレージと製造装置の関係は、「もう一つの現実」というVRゲームの世界観を損なわないようにするために、マキノさんの言葉を借りるなら、よく練られている部分なのだ。
*────
プシュッ、という空気の擦過音と共に、圧縮ストレージの扉が閉まる。
これで回収してきた資源は素材として使用可能になった。
あとは製造装置を操作するだけでいい。
製造装置を起動し、コンソールの上にあるモニターを覗き込む。
「さて、さて―― ……おー、いろいろアンロックされとるな」
「んっ、……ほんとだ、家具とか、いっぱいある、ね?」
カノンが遠慮がちに身体を寄せてくる。
分析装置もそうだが、一人で使うことを想定されているため、モニターが少々小さい。
誰かと一緒に見ながら使おうと思うと、どうしても手狭になる。
カノンに気づかれないように、カノンとの間に少し空間を作ろうとして――やめる。
こちらから拠点を借してくれと頼んだ以上、いまさら過敏になるのかという話だ。
カノンが不快の色を見せない限りは、特に気にしないでいいだろう。
異性だからとか、他人だからとか、
下手に気を遣うことで、相手の居心地が悪くなることもある。
『そーいうの、オレどーでもいいから遠慮すんな!!わはははは!!』
親しかった友の顔を思い出す。
彼もまた、こちらが気を遣うことを求めない人間だった。
きっと彼は、いつだって気を遣われる側の人間だったから。
親しい友達からくらいは、普通に接して欲しかったのだろう。
だから俺は、彼にまったく遠慮しなかった。
いつしか彼が、少し特別であるということを忘れるくらいに。
「どれから、見る?」
すぐ隣、俺のパーソナルスペースの少しだけ内側にある、カノンの小さな肩。
カノンもまた、俺に気を遣われることを望んではいまい。
親しき仲にも礼儀あり、という言葉さえ忘れなければ、
それ以上の遠慮はきっと蛇足だろう。
「……、ええっ、と。
……そうだな、カテゴリから選ぶのは前作と変わらんな」
「家具、衣類、道具、簡易食料……あ、食料ある、みたい?」
「おっ、ほんとだ。あれかな、最後の可食葉っぱの加工品?」
モニター上の簡易食糧の項を数回押下していくと、先ほど採取した葉っぱが3Dモデリングによって表示され、加工材料として使うことを提案される。
材料は不足しているようだが、つくった場合の生成物の予想結果を見ることはできるようだ。
「見て、みよっか」
「うむ」
さぁ、果たして製造装置シェフは、道端に生えていた野草をどのように調理するのでしょう!
――――――――――――――――――――――
『乾燥食物繊維』
質量 100g
エネルギー 21kcl
■栄養素
タンパク質 0g
脂質 0g
糖質 0g
食物繊維 99g
ナトリウム 6.5mg
カリウム 21.7mg
カルシウム 0.01mg
鉄 822.1μg
マグネシウム 0.01mg
リン 7.3μg
亜鉛 ……
銅 ……
マンガン ……
クロム ……
ヨウ素 ……
セレン ……
ビタミンA ……
ビタミンB1 ……
ビタミンB2 ……
ビタミンB6 ……
ビタミンB12 ……
ナイアシン ……
パントテン酸 ……
葉酸 ……
ビタミンC ……
ビタミンD ……
ビタミンE ……
■材料不足
【未登録(草木類)】が 986g 不足しています。
――――――――――――――――――――――
……製造装置先生、もしかして料理下手なの?
そんな感想を持つのも已む無しだ。
いや下手というか、料理以前の問題なのだが。
草しかないのに、これ以上なにをどうしろというのか。
だが、この惨状は、なにも素材不足のみが原因というわけではない。
そもそも製造装置先生は、料理ができない。
これは前作でもそうだった。
簡易食料という区分でカテゴライズされていたように、製造装置は資源を加工して栄養素の塊を作ることはできる。
だが、醤油と味醂で煮るとか、油で4分揚げるとか、そういう調理ができない。
わかりやすく言えば……そうだな。
製造装置を使えば、お湯を掛ければすぐにスープになる「乾燥かやく」を作ることはできる。
カップラーメンの乾麺を作ることもできる。
そうした原料の加工物を生成することはできる。
そこまではできるんだ。
だが、そこから先ができない。
というかやってくれない。
どうも「料理」なる人間の創造物は、製造物の生成するものではない、ということらしい。
*────
「なんというか……ひどいな、これはひどい」
「これ、食料、って、言っていい、のかな?」
あの葉っぱを1kgちかく掻き集めてできるのがこれかよ。
いやそういう以前の問題だという話だが。
「これだけ食べてても生命活動は維持出来なさそうだな。
脂質、糖質、タンパク質……月並みな話だが、三大栄養素が欠片もない。
現状では圧倒的にカロリーが足らん」
一応、人間は食物繊維をカロリーに変換できたはずだ。
だから脂質や糖質がゼロでも、エネルギーを得ることはできる。
あれ、それは食物繊維の種類によるんだっけ?
このタンパク質も脂質も糖質もない「乾燥食物繊維」なる物体にもわずかながらのカロリーが存在する以上、あの可食葉っぱに含まれている食物繊維は分解できる方の食物繊維なのだろうけれど。
でもこの食物繊維、変換効率クッソ悪いな……。
1gあたり0.2kclくらいしかないってことじゃないかこれ。
この葉っぱの食物繊維、人体では実質消化できないと見たほうが良いんじゃないか……?
そもそも食物繊維ってそんなに摂っていいもんだっけ?
昔の知識でうろおぼえだが食物繊維って、成人の一日あたりの摂取量目安は20gとかじゃなかったっけ?
この塊だけ食って一日2,000kcl目指すとかなんかやばいことになりそうじゃない?
でも人間って、極端に摂る栄養偏ってても、足りない栄養素は作り出せるとか聞いたことあるしな……
ハンバーガーだけで40年くらい生きてる海外の方いたよな。
ならやってやれんことは、ない、のか……?
「なんというか、……ひもじ、い?」
「……そうだな、カノン。栄養素よりも大事な問題はそっちだ。
『これで食料確保の目途が立ちました』はやめとこう」
これで満足するのは、人間の食文化としてあまりにも志が低すぎる。
この食物繊維の塊を見て、あらためて気づかされたことがある。
ほとんどの場合において「食うものがなにもない」なんてことはありえないのだ。
その辺の雑草食ってもいいし、なんなら異国には土を食べる部族だって存在したはずだ。
なにかの必須栄養素が決定的に欠けている環境でも、人間の身体は適応する。
それでも人間は生きている。生きていける。
だから、俺たちが普段いう意味での「食料がない」というのは、ほとんどの場合において「美味しく食べられるものがない」という意味なのだ。
そして俺たちが今後求めるべきなのは、その「美味しく食べられるもの」の方だ。
それは現実で無人島生活をする場合でも同じこと。
生きていくだけなら、その辺の草でも食めばいい。
腹を壊すのを覚悟で川の水をがぶ飲みしてもいい。
泥水を啜ってでも、人間は生きていけるかもしれない。
うん、「美味しく食べられる」だけじゃなくて「安全に」も重要だな。
「せっかくだし、この食物繊維の塊も作ってみたい気もするけど……なんというか、
これ作るためだけに雑草掻き集める作業をするのは嫌だな」
「フーガくん。……これ、食べたい、の?」
「……ちょっとだけ? 不味いもの見たさというか」
いや、やるなら俺が一人の時にやるけど。
カノンと一緒の時はもっとまともなもん食べたい。
「でもせっかくDIYして拵えたテーブルの上で、乾燥させた雑草の塊を食むのは、イメージ映像的にちょっといやだよな」
「んっ、ふふっ。そうだ、ね。
せめて、サラダ、とか、そういうの、いいかな?」
「ドレッシングでもあればそれっぽいか……?
油、塩、酢……どれもちょいちょい遠そうだなぁ」
特に塩。塩化ナトリウム。
海がないとなると岩塩か?
でも岩塩って大昔の海水が云々だから、産出しないとこにはまったくないよな。
油は、まぁどうにかなるだろう。
酢も、果実さえあれば製造装置がなんとかしてくれそうな気がする。
このセドナに、美食家とかシェフさんでも落ちてきてくれればな。
その手のプレイスタイルのプレイヤーが一人いると、一気に食文化が華やかになる。
これは食文化に限らず、いろんな分野全般に言えることだけど。
身近に一つの分野に詳しいプレイヤーがいると、一気に世界が豊かになる。
それが期待できない最初のうちは、自分でなんとかしていかないと。
「あんまり加工しなくても、美味しい、もの、探す、とか?
魚とか、お肉とか、美味しい、かも」
「いきものは栄養素の塊だからな。魚欲しいな魚」
「あの川、魚、いる、かな?」
「川に墜ちたときには見なかったな……。いたらなんとかして捕りたいな」
彼らがさまざまな方法で世界から得た栄養素を拝借する形になってしまうが。
栄養素の摂取という意味では、肉はとても効率がいい食材だ。
新鮮であればなおいい。
「釣り、とか、銛とか?」
「川なら仕掛け罠の方が効率よさそうな気がするな。
魚の習性によっては採れないときはまったく採れないけど」
その辺は、昔取った杵柄で微妙に経験がある。
前作『犬』でも通用したし今作でも……どうだろう、たぶん大丈夫。
……と、いうか。
「……俺たち、さっきから食べ物に熱中しすぎじゃね」
「あっ、……そう、だね? いろいろ、作らないと、ね」
今回の主目的は、一応防寒着づくりなのだ。
材料が足りないなら足りないでさらに集めてくる必要があるし、早めに確認しておかないとな。
「でも食べ物は早めに確保したいよな」
「んっ。さかな、食べるっ」
あ、カノンさんの中で魚は決定な感じですか。
俺も好きだからいいけどね、魚。
そのために分析したのだ。
俺たちは分析するために分析してるんじゃないからな。
プレイヤーのなかには、分析装置によるデータの収集自体が楽しくなっちゃうプレイヤーもいるだろうが……基本的には、製造装置で加工可能にするという実益を求めて分析装置を使うことになるだろう。
製造装置の使い方は、以前カノンが飲料水を作ったときに確認したよな。
前回は製造装置前面の投入口に主原料を直接入れたが、当然、使う素材の数や種類が多くなればそうはいかない。
今回は別の方法、すなわち圧縮ストレージに放り込む方法を試してみよう。
「カノン。採ってきたやつ、ぜんぶ圧縮ストレージに放り込むつもりだけど。
なんか取っときたいやつとかある? 例の茸とか」
「ん、特にない、よ。 ぜんぶ、いっちゃって」
了解を得たので、今回採れた資源をすべてストレージ内に放り込み、扉を閉める。
*────
さて、このまるで現実のような世界で製造装置を使うにあたって、圧縮ストレージに放り込まれた資源を使用しようとするとき、次のような疑問を抱く人もいるかもしれない。
製造装置は、圧縮ストレージ内に存在する資源を、いったいどのようにして製造装置内に運び入れ、加工しているというのか?
結論から言ってしまえば、その答えは「プレイヤーからは見えないため、わからない」だ。
なぜなら、圧縮ストレージの扉を閉めた状態、かつ、圧縮ストレージ内部にプレイヤーが存在しない状態でのみ、製造装置は圧縮ストレージ内部の資源を素材として認識してくれるからだ。
製造装置の稼働中は圧縮ストレージへの扉がロックされる。
だから製造装置の稼働中、圧縮ストレージ内部でいったいなにが起こっているのかはわからない。
どのように資源が製造装置に供給されているかはわからないのだ。
圧縮ストレージ内部に記録機器を仕込むと壊れるし、扉を閉めた瞬間通信も断絶する。
前作で試したプレイヤーがいたが、壊れた機器の検証結果は「よくわからない」だった。
考えられるとすれば、圧縮ストレージに用いられている空間圧縮技術の弊害だとか。
ゆえにプレイヤーは、本当に本当の意味で、圧縮ストレージ内に置かれた資源を製造装置が素材として使用できるということが、単にゲーム的な処理なのか、それとも実際に搬入作業のようなものが行われているのかがわからないようになっている。
……わからないから、疑問に思う必要はない。
圧縮ストレージ内部に入れた資源が、どのように製造装置に搬入されるのか、とか。
その仕事はいったい誰がやっているのか、とか。
そういうことは気にする必要はない。
見えないところでロボットアームが動いているのかもしれない。
空間圧縮技術を応用して、亜空間を経由して製造装置に搬入されているのかもしれない。
わからないが現に出来ているのだから、そんな感じでどうにかしているのだろう。
そのように納得すればいいようになっている。
そのあたりがぼやかしてあるからこそ、プレイヤーは製造装置を使うたびに「まるで現実みたいだけど、やっぱりここはゲームの中なんだな」と思わされることがない。
資源の保管庫としての圧縮ストレージと製造装置の関係は、「もう一つの現実」というVRゲームの世界観を損なわないようにするために、マキノさんの言葉を借りるなら、よく練られている部分なのだ。
*────
プシュッ、という空気の擦過音と共に、圧縮ストレージの扉が閉まる。
これで回収してきた資源は素材として使用可能になった。
あとは製造装置を操作するだけでいい。
製造装置を起動し、コンソールの上にあるモニターを覗き込む。
「さて、さて―― ……おー、いろいろアンロックされとるな」
「んっ、……ほんとだ、家具とか、いっぱいある、ね?」
カノンが遠慮がちに身体を寄せてくる。
分析装置もそうだが、一人で使うことを想定されているため、モニターが少々小さい。
誰かと一緒に見ながら使おうと思うと、どうしても手狭になる。
カノンに気づかれないように、カノンとの間に少し空間を作ろうとして――やめる。
こちらから拠点を借してくれと頼んだ以上、いまさら過敏になるのかという話だ。
カノンが不快の色を見せない限りは、特に気にしないでいいだろう。
異性だからとか、他人だからとか、
下手に気を遣うことで、相手の居心地が悪くなることもある。
『そーいうの、オレどーでもいいから遠慮すんな!!わはははは!!』
親しかった友の顔を思い出す。
彼もまた、こちらが気を遣うことを求めない人間だった。
きっと彼は、いつだって気を遣われる側の人間だったから。
親しい友達からくらいは、普通に接して欲しかったのだろう。
だから俺は、彼にまったく遠慮しなかった。
いつしか彼が、少し特別であるということを忘れるくらいに。
「どれから、見る?」
すぐ隣、俺のパーソナルスペースの少しだけ内側にある、カノンの小さな肩。
カノンもまた、俺に気を遣われることを望んではいまい。
親しき仲にも礼儀あり、という言葉さえ忘れなければ、
それ以上の遠慮はきっと蛇足だろう。
「……、ええっ、と。
……そうだな、カテゴリから選ぶのは前作と変わらんな」
「家具、衣類、道具、簡易食料……あ、食料ある、みたい?」
「おっ、ほんとだ。あれかな、最後の可食葉っぱの加工品?」
モニター上の簡易食糧の項を数回押下していくと、先ほど採取した葉っぱが3Dモデリングによって表示され、加工材料として使うことを提案される。
材料は不足しているようだが、つくった場合の生成物の予想結果を見ることはできるようだ。
「見て、みよっか」
「うむ」
さぁ、果たして製造装置シェフは、道端に生えていた野草をどのように調理するのでしょう!
――――――――――――――――――――――
『乾燥食物繊維』
質量 100g
エネルギー 21kcl
■栄養素
タンパク質 0g
脂質 0g
糖質 0g
食物繊維 99g
ナトリウム 6.5mg
カリウム 21.7mg
カルシウム 0.01mg
鉄 822.1μg
マグネシウム 0.01mg
リン 7.3μg
亜鉛 ……
銅 ……
マンガン ……
クロム ……
ヨウ素 ……
セレン ……
ビタミンA ……
ビタミンB1 ……
ビタミンB2 ……
ビタミンB6 ……
ビタミンB12 ……
ナイアシン ……
パントテン酸 ……
葉酸 ……
ビタミンC ……
ビタミンD ……
ビタミンE ……
■材料不足
【未登録(草木類)】が 986g 不足しています。
――――――――――――――――――――――
……製造装置先生、もしかして料理下手なの?
そんな感想を持つのも已む無しだ。
いや下手というか、料理以前の問題なのだが。
草しかないのに、これ以上なにをどうしろというのか。
だが、この惨状は、なにも素材不足のみが原因というわけではない。
そもそも製造装置先生は、料理ができない。
これは前作でもそうだった。
簡易食料という区分でカテゴライズされていたように、製造装置は資源を加工して栄養素の塊を作ることはできる。
だが、醤油と味醂で煮るとか、油で4分揚げるとか、そういう調理ができない。
わかりやすく言えば……そうだな。
製造装置を使えば、お湯を掛ければすぐにスープになる「乾燥かやく」を作ることはできる。
カップラーメンの乾麺を作ることもできる。
そうした原料の加工物を生成することはできる。
そこまではできるんだ。
だが、そこから先ができない。
というかやってくれない。
どうも「料理」なる人間の創造物は、製造物の生成するものではない、ということらしい。
*────
「なんというか……ひどいな、これはひどい」
「これ、食料、って、言っていい、のかな?」
あの葉っぱを1kgちかく掻き集めてできるのがこれかよ。
いやそういう以前の問題だという話だが。
「これだけ食べてても生命活動は維持出来なさそうだな。
脂質、糖質、タンパク質……月並みな話だが、三大栄養素が欠片もない。
現状では圧倒的にカロリーが足らん」
一応、人間は食物繊維をカロリーに変換できたはずだ。
だから脂質や糖質がゼロでも、エネルギーを得ることはできる。
あれ、それは食物繊維の種類によるんだっけ?
このタンパク質も脂質も糖質もない「乾燥食物繊維」なる物体にもわずかながらのカロリーが存在する以上、あの可食葉っぱに含まれている食物繊維は分解できる方の食物繊維なのだろうけれど。
でもこの食物繊維、変換効率クッソ悪いな……。
1gあたり0.2kclくらいしかないってことじゃないかこれ。
この葉っぱの食物繊維、人体では実質消化できないと見たほうが良いんじゃないか……?
そもそも食物繊維ってそんなに摂っていいもんだっけ?
昔の知識でうろおぼえだが食物繊維って、成人の一日あたりの摂取量目安は20gとかじゃなかったっけ?
この塊だけ食って一日2,000kcl目指すとかなんかやばいことになりそうじゃない?
でも人間って、極端に摂る栄養偏ってても、足りない栄養素は作り出せるとか聞いたことあるしな……
ハンバーガーだけで40年くらい生きてる海外の方いたよな。
ならやってやれんことは、ない、のか……?
「なんというか、……ひもじ、い?」
「……そうだな、カノン。栄養素よりも大事な問題はそっちだ。
『これで食料確保の目途が立ちました』はやめとこう」
これで満足するのは、人間の食文化としてあまりにも志が低すぎる。
この食物繊維の塊を見て、あらためて気づかされたことがある。
ほとんどの場合において「食うものがなにもない」なんてことはありえないのだ。
その辺の雑草食ってもいいし、なんなら異国には土を食べる部族だって存在したはずだ。
なにかの必須栄養素が決定的に欠けている環境でも、人間の身体は適応する。
それでも人間は生きている。生きていける。
だから、俺たちが普段いう意味での「食料がない」というのは、ほとんどの場合において「美味しく食べられるものがない」という意味なのだ。
そして俺たちが今後求めるべきなのは、その「美味しく食べられるもの」の方だ。
それは現実で無人島生活をする場合でも同じこと。
生きていくだけなら、その辺の草でも食めばいい。
腹を壊すのを覚悟で川の水をがぶ飲みしてもいい。
泥水を啜ってでも、人間は生きていけるかもしれない。
うん、「美味しく食べられる」だけじゃなくて「安全に」も重要だな。
「せっかくだし、この食物繊維の塊も作ってみたい気もするけど……なんというか、
これ作るためだけに雑草掻き集める作業をするのは嫌だな」
「フーガくん。……これ、食べたい、の?」
「……ちょっとだけ? 不味いもの見たさというか」
いや、やるなら俺が一人の時にやるけど。
カノンと一緒の時はもっとまともなもん食べたい。
「でもせっかくDIYして拵えたテーブルの上で、乾燥させた雑草の塊を食むのは、イメージ映像的にちょっといやだよな」
「んっ、ふふっ。そうだ、ね。
せめて、サラダ、とか、そういうの、いいかな?」
「ドレッシングでもあればそれっぽいか……?
油、塩、酢……どれもちょいちょい遠そうだなぁ」
特に塩。塩化ナトリウム。
海がないとなると岩塩か?
でも岩塩って大昔の海水が云々だから、産出しないとこにはまったくないよな。
油は、まぁどうにかなるだろう。
酢も、果実さえあれば製造装置がなんとかしてくれそうな気がする。
このセドナに、美食家とかシェフさんでも落ちてきてくれればな。
その手のプレイスタイルのプレイヤーが一人いると、一気に食文化が華やかになる。
これは食文化に限らず、いろんな分野全般に言えることだけど。
身近に一つの分野に詳しいプレイヤーがいると、一気に世界が豊かになる。
それが期待できない最初のうちは、自分でなんとかしていかないと。
「あんまり加工しなくても、美味しい、もの、探す、とか?
魚とか、お肉とか、美味しい、かも」
「いきものは栄養素の塊だからな。魚欲しいな魚」
「あの川、魚、いる、かな?」
「川に墜ちたときには見なかったな……。いたらなんとかして捕りたいな」
彼らがさまざまな方法で世界から得た栄養素を拝借する形になってしまうが。
栄養素の摂取という意味では、肉はとても効率がいい食材だ。
新鮮であればなおいい。
「釣り、とか、銛とか?」
「川なら仕掛け罠の方が効率よさそうな気がするな。
魚の習性によっては採れないときはまったく採れないけど」
その辺は、昔取った杵柄で微妙に経験がある。
前作『犬』でも通用したし今作でも……どうだろう、たぶん大丈夫。
……と、いうか。
「……俺たち、さっきから食べ物に熱中しすぎじゃね」
「あっ、……そう、だね? いろいろ、作らないと、ね」
今回の主目的は、一応防寒着づくりなのだ。
材料が足りないなら足りないでさらに集めてくる必要があるし、早めに確認しておかないとな。
「でも食べ物は早めに確保したいよな」
「んっ。さかな、食べるっ」
あ、カノンさんの中で魚は決定な感じですか。
俺も好きだからいいけどね、魚。
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しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
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そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
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