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一章
製造装置を使ってみよう(2)
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製造装置先生の料理スキルは確かめるだけ確かめたので、本命と行こう。
今回の製造装置でつくりたい本命、つまり――防寒着の製作だ。
採ってきた資源のなかのなにかが、コートとか、ケープとか、そういうのに使えないかな?
簡易食料の画面から戻り、再びのカテゴリ選択。
続いては衣類の項を見る。
衣類の項には最初から、製造装置が供給してくれる基本的な合成生地を使った、さまざまな種類の衣類が並んでいる。
布地の素材としては、綿・絹・麻・ウール・革くらいか。
それらはすべて製造装置が基本供給してくれる、たぶんそれっぽいだけの合成品だが――それでもいまは十分だろう。
こんだけあれば、最低限のおしゃれ着くらいなら作れそうだ。
某衣類量販店の品質に届くかどうかは、わからないが。
前にも言ったように、ゲームをはじめたばかりの現時点でも、防水や耐熱とかのサバイバルに向いた改良強化はできる。
本物の生地を使ったり、生地自体を改良したり伝統工芸品の再現をしたりしようと思うと、この惑星上で天然繊維を見つけて来なければならない。
「で、なにか面白そうな改良はできるかなーっと」
手っ取り早いのはやはり対照実験だろう。
衣類のラインナップの中で、初期装備として与えられている革のベストを選択してみる。
採ってきた資源の中で有用なものがあれば、基本的にはこいつに性能を加える形で「改良」できるはずだ。
だが――
「……うーん、特に目立った改良点はない、かな?
耐水、防水、撥水の類とか、断熱コーティングとかはまだできないっぽい」
あの樹脂――ロジンとか言ったっけ――はそうした方向でのベストの改良には適さなかったらしい。
やたらしぶとかったトウヒモドキの樹の繊維を使ってベストの強靭性を強化、とかもできないようだ。
セルロースナノファイバーとかいうカタカナモジレツをどこかで聞いたことある気がするんだが……あれは衣類に使うようなもんじゃないのかもしれん。
雑草や茸も衣服の性能強化には役立ちそうにない。
なかなか一筋縄ではいかないな。
そんなことを考えていると、布生地系列の装備を眺めていたカノンがなにかに気づいたような声を挙げる。
「あっ、これ、虫除け?」
「……なるほ、ど?」
具体的になにがどうなって虫除け効果を発揮するのかはわからないが、トウヒモドキの葉を原料として綿や絹製の布装備に虫除け効果を付与できるらしい。
「一緒に香りづけもできるみたい。……精油だから、虫除け、かな?」
精油だから虫除けであるようだ。
俺にはその因果関係が見えないが、カノンにはそのつながりが見えているらしい。
一部の布装備にしか使えないのは、この精油がウールや革と相性が悪いのかもしれない。
「……いっそカノンのケープと普段着一式、この仕様で作っちゃおうか」
虫除け効果だけとはいえ、改良には違いない。
地味だけど役に立たんことはないし、現状では他によさそうな改良もできなさそうだ。
それにカノンは時折ベルトやズボンを気にするような仕草してたからな。
この手の服装に日常で着慣れないのもあって、落ち着かないのだろう。
はやめに過ごしやすい服を用意しておくのがいいだろう。
合成生地でつくるケープは、たぶんそこまでの暖かさは期待できないが……
もともと、カノンに似合いそうだという理由で提案したおしゃれ着だ。
本格的な防寒はコートに一任すればいいだろう。
「あっ、ちょっと、欲しい、かも。
……拠点にいるとき、革の服は、ちょっと、かたくて」
カノンからもそんな反応が返ってくる。
初期装備として貰っといて贅沢だが、普段から着心地がいい服ではないな。
ズボンも、膝を曲げたりするときにひかがみのあたりが圧迫される。
インナースーツの上に直で着てるわけだし、肌ざわりもあんまりよくない。
……考えてみれば、全感覚型のVRゲームだと、普段着って結構重要なこだわりポイントなのでは?
俺はこの『犬2』が初フルダイブだからその辺は先達に聞いてみたいところだ。
「もうちょいゆったりした服がいい?」
「うん、チュニックとか、あると、過ごしやすい、かも」
「あー、ちょっとわかる」
チュニックの過ごしやすさを俺が知っている、という意味ではない。
チュニックならゆったりした服としてそれっぽい、という意味だ。
さすがに俺はチュニックを着たことはないからな?
「落ち着いた色で……ちょっとサイズ大きめの、腰下あたりまでの丈のやつとか似合いそう。
ボートネック……はインナースーツに合わんか。浅めの丸口のほうが良いな。
んで淡い感じの色のショートパンツに膝下ブーツとか、いや青のズボンでも――」
「そっ、そこまで、は、はりきりすぎ、かも……
――で、でも、着てみる? よさそう?」
思わず脳内カノンにいろいろ着せてしまった。
カノンはお前の着せ替え人形ではない。反省しろ。
でも、どうやらカノンもその方向性に乗り気のようだな。
えっ、いかにもサバイバルっぽくないって?
拠点にいるときくらいはオシャレ重点でもよかろう。
それにこういうのは本人が過ごしやすいのが第一なんだよ。
俺もそのうちTシャツとかスキニーとかつくろかな。
拠点でゆっくりしたいときとかよさそうじゃん。
もちろん未開地に行くときはちゃんとした装備に換える。
前作では大抵なにも身に着けていなかったわけだが。
今作では頑張ろう、うん。カノンも居るしな。
「よっしゃ、はじめてのオリジナル装備はカノンの普段着一式だな。
ケープに、チュニックと、下は……まぁカノンが決めてくれ。
衣類については、まあ、現状ではこんなとこかな?」
「えっ、でも……まだ、フーガくんの、決めてない、よ?」
カノンはそう言ってくれているが、
「俺は今んとこ、特に過ごしづらいことないからな。
南の山行くときのこと考えるとコートも作りたいけど、
それも暖かさとか撥水とか、拘らなければ今でも基本の布地で作れるしな」
どうしても必要そうなら妥協するとしよう。
でもどうせなら、なんかいい素材見つけたときにカノンの分と一緒に作りたいとは思う。
あれだ、見た目でなく性能で装備を選ぶなら、一足飛びにいいものが欲しい。
俺はゲーム開始地点の村で売ってる、初期装備よりワンランク高い装備を買わないで、次の町のツーランク高い装備を一足飛びに買いたい派なんだ。
なんのこっちゃ。
「う、ん。じゃあ、――いい? わたしの服、作っても」
「ん、もちろん。カノンがいろいろ着てくれれば、俺も楽しいしな」
俺はそこまでファッションにこだわりがないが、人が着飾っているのを見るのは好きだ。
なんというか、ファッションってその人の心の表現なんだよな。
そして大抵のファッションは、上向きの心の表れだ。
見ていて気持ちがいいというか、こっちまで活が入る。
じゃあお前もファッション頑張れって?
せ、清潔感は大事にしてるから……。
「――わかった。いっぱい、着てみる、ね?」
「好きなの、気に入ったの、楽なのを着ればいいぞ。
『あの人いつも同じ服着てる云々』なんていう奴もこの世界にはいないだろうしな」
というかゲームでそれを言うやつはそうおらんだろう。
RPGとか、機能性重視で考えればしばらくの間は同じ服装にならざるを得ない。
「ん、じゃあ、ウールのケープと、コットンのチュニックと、ズボンと――」
合成生地とはいえ、生地のバリエーションはけっこういろいろある。
それなりにこだわった仕上がりになりそうだ。
「……つくりたいの、こんな感じ、かな?」
「ええやん」
そうしてカノンが選んだファッション一式を防虫加工するためには、トウヒモドキの葉があと1kgほど必要だということが分かった。
その他については特になにも資源を使わない。
改良点としては、本当に精油による虫除け効果のみだ。
しかし精油を使うことで、合成生地のわざとらしい匂いも紛れて、意外といいかもしれない。
「あとで外行ってサクッと取ってこようか。
1㎏くらいならその辺で毟るだけで行けるだろ」
「ちょっと、申し訳、ない気もする、ね?」
「毟らせてもらった樹はあとで家具に利用するってことで一つ」
一つの樹木を資源として生の営みに役立てる。
やっていることは家畜の屠殺と一緒だな。感謝して頂こう。
*────
カノンの衣類一式を新調するためには、素材の本格的な調達作業が必要だ。
そっちに行く前に、他の作りたいものについても見繕っておこう。
「で、他になんか道具に使えるのないかなーっと」
衣食住のうち、カノンの衣が改善できそうなのはいい収穫だ。
だが、あれだけ抽出可能な成分があって、まさか有効成分が一つってことはないだろう。
早い話が、もっと探索の成果を寄越してくれ。
「おっ」
そうして装備類を流し見していると、一部の装備に『グリップ強化』という文字列が見える。
対応している装備としてはグローブ、革靴、ブーツ……そのあたりか。
「グローブとブーツが改良できるみたいだ」
「ぐりっぷ、って、滑り止め?」
「そうそう。いいじゃんいいじゃん、それめっちゃ欲しかったやつ」
使う資源は――なるほど、ここでトウヒモドキの樹脂か。
滑り止めで樹脂ってことは、この樹脂、相当粘度が高いのかな?
「カノン、樹脂使ってグローブとブーツ作らせてもらってもいい?」
「もちろんいい、よ? わたしも、精油、いっぱい、使うみたい、だから」
「よーし、いきなりいい強化できそうだぞー」
道具類の握り部分とかにも使えそうだし、家具の足の滑りにくい加工とかにも使えそうだな。
滑り止め、いいぞ。飛んだり跳ねたりするうえでめっちゃ欲しい。
「で、必要なトウヒモドキの樹脂の量は……あー、当然だが足りんな。
でも、グローブとブーツ2つずつくらいなら、枝を本数集めればなんとかならんこともないか」
必要な資源の質量は、枝をひたすら本数集めて誤魔化せんこともない程度だ。
家具や道具に使ったりする分は、幹を切り倒せるようになってからだな。
というか家具や道具は、枝だけではまともなものが作れないだろう。
「んっ、予備も、あった方が、いいよね」
カノンが俺の言葉に首肯する。
ん、予備? 2つ、ああ――
「いや、カノンのと俺ので2つずつって意味」
「えっ、でも、わたしは、服、つくる、よ?」
「カノン。グローブとブーツの滑り止めは早めに作っといたほうが良いと思う。
川の方行くんなら、特に」
濡れた石は滑るぞぉ。
つるっつるやぞぉ。
それに初期装備の革靴の頼りなさは、テレポ先で嫌というほど味わったからな。
多少でも性能のいいものを作れるなら、それに越したことはない。
「……ん。ありがと、フーガくん。わたしも、もらう、ね?」
「おう、つくろうぜ。グローブなんかも、今後の採取に役立ちそうだしな」
ますますトウヒモドキの樹脂が大量に欲しくなってきた。
樹脂ってことはある程度水にも強い、か?
それは試してみればわかるな。
*────
「で、だ」
カノンの装備一式、革グローブとブーツ、それらは作るとして。
まだなんか作れるものあるんじゃない?
あの茸とかさぁ。
そう思い、再びカテゴリを戻し、探すが……特に目ぼしいものは見当たらない。
薬品とか、その辺に分類されるものがあると思ったんがだ。
「なあカノン、あの茸って、なるとしたらなにになると思う?」
「……う、ん。たぶん、強心薬とか、鎮痛薬とか、そっち系、かも?」
だよなぁ。
分析した成分が仮に水溶性なら、水に漬けるだけでも、そうした薬ができそうなものだ。
抽出自体は可能なわけだし、なんらかの薬として生成できる方が自然なのだが、
「でも、ない、ね? ――もしかして、だけど、成分に、未発見のが、混ざってる、から?」
「製造装置だと、効果がはっきりしないものは作れない? いや、作らないのか」
「たぶん。――もしかしたら、きょーじゅとかなら、こういうのを素材にする方法も、わかるかも、だけど」
このセドナに降りてきているというりんねるなら、なにかわかるかもしれない。
マキノさんには恐らく無理だ。
これは茸の成分が云々という話ではなく、製造装置というゲーム的なデバイスとの付き合い方の問題だからな。
今作からはじめたばかりのマキノさんには、製造装置まわりのその手の仕様はわからないだろう。
「……うむ、しゃーない。面白そうだけど今は諦めようか。
りんねるに逢えたら聞いてみる感じで」
「――ん。あの、……気にしないで、いいよ?」
「……ん、おっけー。
その辺でしなびさせとくのもあれだし、今回は星のサイクルに戻してあげようか」
つまり、自然に返すということ。
結局あの茸については、よくわからないままだった。
だが、こういうこともこれから往々にしてあるだろう。
この星で見つかるすべてのものが、すぐに理解できるわけではない。
だがこの茸の利用法も、今ではないいつか、誰かが解明するのかもしれない。
それが、漢試食によるものなのか、それともりんねるのような植物博士による研究によってなのかはわからないが――
こうした解明されない未知もまた、この世界の魅力の一つだ。
*────
さて、脱出ポッドの壁面高所にある、小さな採光窓を見る。
いつのまにか日はとっぷりと暮れてしまっている。
こちらの時刻で言えばもう午後7時くらいだ。
「んじゃカノン、トウヒモドキの枝と葉っぱ、もうちょい取りに行こうか」
「んっ、そうだね。【夜目】も取らないと、だし?」
夜は怖い。
だが閉じこもってばかりはいられない。
なにせ、ここから20時間以上は夜が続くのだから。
そうして俺とカノンは、再びの資源採取のため、夜のセドナへと踏み入れる。
吹き付ける風は、ほんの少し冷たい。
……やっぱり、コートも欲しいかも。
今回の製造装置でつくりたい本命、つまり――防寒着の製作だ。
採ってきた資源のなかのなにかが、コートとか、ケープとか、そういうのに使えないかな?
簡易食料の画面から戻り、再びのカテゴリ選択。
続いては衣類の項を見る。
衣類の項には最初から、製造装置が供給してくれる基本的な合成生地を使った、さまざまな種類の衣類が並んでいる。
布地の素材としては、綿・絹・麻・ウール・革くらいか。
それらはすべて製造装置が基本供給してくれる、たぶんそれっぽいだけの合成品だが――それでもいまは十分だろう。
こんだけあれば、最低限のおしゃれ着くらいなら作れそうだ。
某衣類量販店の品質に届くかどうかは、わからないが。
前にも言ったように、ゲームをはじめたばかりの現時点でも、防水や耐熱とかのサバイバルに向いた改良強化はできる。
本物の生地を使ったり、生地自体を改良したり伝統工芸品の再現をしたりしようと思うと、この惑星上で天然繊維を見つけて来なければならない。
「で、なにか面白そうな改良はできるかなーっと」
手っ取り早いのはやはり対照実験だろう。
衣類のラインナップの中で、初期装備として与えられている革のベストを選択してみる。
採ってきた資源の中で有用なものがあれば、基本的にはこいつに性能を加える形で「改良」できるはずだ。
だが――
「……うーん、特に目立った改良点はない、かな?
耐水、防水、撥水の類とか、断熱コーティングとかはまだできないっぽい」
あの樹脂――ロジンとか言ったっけ――はそうした方向でのベストの改良には適さなかったらしい。
やたらしぶとかったトウヒモドキの樹の繊維を使ってベストの強靭性を強化、とかもできないようだ。
セルロースナノファイバーとかいうカタカナモジレツをどこかで聞いたことある気がするんだが……あれは衣類に使うようなもんじゃないのかもしれん。
雑草や茸も衣服の性能強化には役立ちそうにない。
なかなか一筋縄ではいかないな。
そんなことを考えていると、布生地系列の装備を眺めていたカノンがなにかに気づいたような声を挙げる。
「あっ、これ、虫除け?」
「……なるほ、ど?」
具体的になにがどうなって虫除け効果を発揮するのかはわからないが、トウヒモドキの葉を原料として綿や絹製の布装備に虫除け効果を付与できるらしい。
「一緒に香りづけもできるみたい。……精油だから、虫除け、かな?」
精油だから虫除けであるようだ。
俺にはその因果関係が見えないが、カノンにはそのつながりが見えているらしい。
一部の布装備にしか使えないのは、この精油がウールや革と相性が悪いのかもしれない。
「……いっそカノンのケープと普段着一式、この仕様で作っちゃおうか」
虫除け効果だけとはいえ、改良には違いない。
地味だけど役に立たんことはないし、現状では他によさそうな改良もできなさそうだ。
それにカノンは時折ベルトやズボンを気にするような仕草してたからな。
この手の服装に日常で着慣れないのもあって、落ち着かないのだろう。
はやめに過ごしやすい服を用意しておくのがいいだろう。
合成生地でつくるケープは、たぶんそこまでの暖かさは期待できないが……
もともと、カノンに似合いそうだという理由で提案したおしゃれ着だ。
本格的な防寒はコートに一任すればいいだろう。
「あっ、ちょっと、欲しい、かも。
……拠点にいるとき、革の服は、ちょっと、かたくて」
カノンからもそんな反応が返ってくる。
初期装備として貰っといて贅沢だが、普段から着心地がいい服ではないな。
ズボンも、膝を曲げたりするときにひかがみのあたりが圧迫される。
インナースーツの上に直で着てるわけだし、肌ざわりもあんまりよくない。
……考えてみれば、全感覚型のVRゲームだと、普段着って結構重要なこだわりポイントなのでは?
俺はこの『犬2』が初フルダイブだからその辺は先達に聞いてみたいところだ。
「もうちょいゆったりした服がいい?」
「うん、チュニックとか、あると、過ごしやすい、かも」
「あー、ちょっとわかる」
チュニックの過ごしやすさを俺が知っている、という意味ではない。
チュニックならゆったりした服としてそれっぽい、という意味だ。
さすがに俺はチュニックを着たことはないからな?
「落ち着いた色で……ちょっとサイズ大きめの、腰下あたりまでの丈のやつとか似合いそう。
ボートネック……はインナースーツに合わんか。浅めの丸口のほうが良いな。
んで淡い感じの色のショートパンツに膝下ブーツとか、いや青のズボンでも――」
「そっ、そこまで、は、はりきりすぎ、かも……
――で、でも、着てみる? よさそう?」
思わず脳内カノンにいろいろ着せてしまった。
カノンはお前の着せ替え人形ではない。反省しろ。
でも、どうやらカノンもその方向性に乗り気のようだな。
えっ、いかにもサバイバルっぽくないって?
拠点にいるときくらいはオシャレ重点でもよかろう。
それにこういうのは本人が過ごしやすいのが第一なんだよ。
俺もそのうちTシャツとかスキニーとかつくろかな。
拠点でゆっくりしたいときとかよさそうじゃん。
もちろん未開地に行くときはちゃんとした装備に換える。
前作では大抵なにも身に着けていなかったわけだが。
今作では頑張ろう、うん。カノンも居るしな。
「よっしゃ、はじめてのオリジナル装備はカノンの普段着一式だな。
ケープに、チュニックと、下は……まぁカノンが決めてくれ。
衣類については、まあ、現状ではこんなとこかな?」
「えっ、でも……まだ、フーガくんの、決めてない、よ?」
カノンはそう言ってくれているが、
「俺は今んとこ、特に過ごしづらいことないからな。
南の山行くときのこと考えるとコートも作りたいけど、
それも暖かさとか撥水とか、拘らなければ今でも基本の布地で作れるしな」
どうしても必要そうなら妥協するとしよう。
でもどうせなら、なんかいい素材見つけたときにカノンの分と一緒に作りたいとは思う。
あれだ、見た目でなく性能で装備を選ぶなら、一足飛びにいいものが欲しい。
俺はゲーム開始地点の村で売ってる、初期装備よりワンランク高い装備を買わないで、次の町のツーランク高い装備を一足飛びに買いたい派なんだ。
なんのこっちゃ。
「う、ん。じゃあ、――いい? わたしの服、作っても」
「ん、もちろん。カノンがいろいろ着てくれれば、俺も楽しいしな」
俺はそこまでファッションにこだわりがないが、人が着飾っているのを見るのは好きだ。
なんというか、ファッションってその人の心の表現なんだよな。
そして大抵のファッションは、上向きの心の表れだ。
見ていて気持ちがいいというか、こっちまで活が入る。
じゃあお前もファッション頑張れって?
せ、清潔感は大事にしてるから……。
「――わかった。いっぱい、着てみる、ね?」
「好きなの、気に入ったの、楽なのを着ればいいぞ。
『あの人いつも同じ服着てる云々』なんていう奴もこの世界にはいないだろうしな」
というかゲームでそれを言うやつはそうおらんだろう。
RPGとか、機能性重視で考えればしばらくの間は同じ服装にならざるを得ない。
「ん、じゃあ、ウールのケープと、コットンのチュニックと、ズボンと――」
合成生地とはいえ、生地のバリエーションはけっこういろいろある。
それなりにこだわった仕上がりになりそうだ。
「……つくりたいの、こんな感じ、かな?」
「ええやん」
そうしてカノンが選んだファッション一式を防虫加工するためには、トウヒモドキの葉があと1kgほど必要だということが分かった。
その他については特になにも資源を使わない。
改良点としては、本当に精油による虫除け効果のみだ。
しかし精油を使うことで、合成生地のわざとらしい匂いも紛れて、意外といいかもしれない。
「あとで外行ってサクッと取ってこようか。
1㎏くらいならその辺で毟るだけで行けるだろ」
「ちょっと、申し訳、ない気もする、ね?」
「毟らせてもらった樹はあとで家具に利用するってことで一つ」
一つの樹木を資源として生の営みに役立てる。
やっていることは家畜の屠殺と一緒だな。感謝して頂こう。
*────
カノンの衣類一式を新調するためには、素材の本格的な調達作業が必要だ。
そっちに行く前に、他の作りたいものについても見繕っておこう。
「で、他になんか道具に使えるのないかなーっと」
衣食住のうち、カノンの衣が改善できそうなのはいい収穫だ。
だが、あれだけ抽出可能な成分があって、まさか有効成分が一つってことはないだろう。
早い話が、もっと探索の成果を寄越してくれ。
「おっ」
そうして装備類を流し見していると、一部の装備に『グリップ強化』という文字列が見える。
対応している装備としてはグローブ、革靴、ブーツ……そのあたりか。
「グローブとブーツが改良できるみたいだ」
「ぐりっぷ、って、滑り止め?」
「そうそう。いいじゃんいいじゃん、それめっちゃ欲しかったやつ」
使う資源は――なるほど、ここでトウヒモドキの樹脂か。
滑り止めで樹脂ってことは、この樹脂、相当粘度が高いのかな?
「カノン、樹脂使ってグローブとブーツ作らせてもらってもいい?」
「もちろんいい、よ? わたしも、精油、いっぱい、使うみたい、だから」
「よーし、いきなりいい強化できそうだぞー」
道具類の握り部分とかにも使えそうだし、家具の足の滑りにくい加工とかにも使えそうだな。
滑り止め、いいぞ。飛んだり跳ねたりするうえでめっちゃ欲しい。
「で、必要なトウヒモドキの樹脂の量は……あー、当然だが足りんな。
でも、グローブとブーツ2つずつくらいなら、枝を本数集めればなんとかならんこともないか」
必要な資源の質量は、枝をひたすら本数集めて誤魔化せんこともない程度だ。
家具や道具に使ったりする分は、幹を切り倒せるようになってからだな。
というか家具や道具は、枝だけではまともなものが作れないだろう。
「んっ、予備も、あった方が、いいよね」
カノンが俺の言葉に首肯する。
ん、予備? 2つ、ああ――
「いや、カノンのと俺ので2つずつって意味」
「えっ、でも、わたしは、服、つくる、よ?」
「カノン。グローブとブーツの滑り止めは早めに作っといたほうが良いと思う。
川の方行くんなら、特に」
濡れた石は滑るぞぉ。
つるっつるやぞぉ。
それに初期装備の革靴の頼りなさは、テレポ先で嫌というほど味わったからな。
多少でも性能のいいものを作れるなら、それに越したことはない。
「……ん。ありがと、フーガくん。わたしも、もらう、ね?」
「おう、つくろうぜ。グローブなんかも、今後の採取に役立ちそうだしな」
ますますトウヒモドキの樹脂が大量に欲しくなってきた。
樹脂ってことはある程度水にも強い、か?
それは試してみればわかるな。
*────
「で、だ」
カノンの装備一式、革グローブとブーツ、それらは作るとして。
まだなんか作れるものあるんじゃない?
あの茸とかさぁ。
そう思い、再びカテゴリを戻し、探すが……特に目ぼしいものは見当たらない。
薬品とか、その辺に分類されるものがあると思ったんがだ。
「なあカノン、あの茸って、なるとしたらなにになると思う?」
「……う、ん。たぶん、強心薬とか、鎮痛薬とか、そっち系、かも?」
だよなぁ。
分析した成分が仮に水溶性なら、水に漬けるだけでも、そうした薬ができそうなものだ。
抽出自体は可能なわけだし、なんらかの薬として生成できる方が自然なのだが、
「でも、ない、ね? ――もしかして、だけど、成分に、未発見のが、混ざってる、から?」
「製造装置だと、効果がはっきりしないものは作れない? いや、作らないのか」
「たぶん。――もしかしたら、きょーじゅとかなら、こういうのを素材にする方法も、わかるかも、だけど」
このセドナに降りてきているというりんねるなら、なにかわかるかもしれない。
マキノさんには恐らく無理だ。
これは茸の成分が云々という話ではなく、製造装置というゲーム的なデバイスとの付き合い方の問題だからな。
今作からはじめたばかりのマキノさんには、製造装置まわりのその手の仕様はわからないだろう。
「……うむ、しゃーない。面白そうだけど今は諦めようか。
りんねるに逢えたら聞いてみる感じで」
「――ん。あの、……気にしないで、いいよ?」
「……ん、おっけー。
その辺でしなびさせとくのもあれだし、今回は星のサイクルに戻してあげようか」
つまり、自然に返すということ。
結局あの茸については、よくわからないままだった。
だが、こういうこともこれから往々にしてあるだろう。
この星で見つかるすべてのものが、すぐに理解できるわけではない。
だがこの茸の利用法も、今ではないいつか、誰かが解明するのかもしれない。
それが、漢試食によるものなのか、それともりんねるのような植物博士による研究によってなのかはわからないが――
こうした解明されない未知もまた、この世界の魅力の一つだ。
*────
さて、脱出ポッドの壁面高所にある、小さな採光窓を見る。
いつのまにか日はとっぷりと暮れてしまっている。
こちらの時刻で言えばもう午後7時くらいだ。
「んじゃカノン、トウヒモドキの枝と葉っぱ、もうちょい取りに行こうか」
「んっ、そうだね。【夜目】も取らないと、だし?」
夜は怖い。
だが閉じこもってばかりはいられない。
なにせ、ここから20時間以上は夜が続くのだから。
そうして俺とカノンは、再びの資源採取のため、夜のセドナへと踏み入れる。
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そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
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校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
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ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
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ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
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