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一章
はじめての夜
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惑星カレドはセドナ。
この地の時刻は――午後7時手前、といったところだろうか。
俺とカノンは連れ立って、脱出ポッドの外へと歩み出る。
サァァァァ――
南から吹く風が、トウヒモドキの細い枝葉を揺らす。
風は、少しだけ冷たい。
地表の大気には、まだ昼日中の陽気の残滓が残っている。
だが、それも夜が更けるにつれて消えていくだろう。
「寒くないか、カノン?」
「ん、大丈夫。15度くらいは、ある?」
「体感では、ちょっとわからんな……」
脱出ポッド内部は、適温として、概ね20度前後に保たれている。
それより少々涼しく感じるのだから、カノンの予想はそこまで外れていないだろう。
そして、俺たちの前方にあるのは。
まばらな樹林に満ちる、夕暮れをさらに深めたような闇。
あれに見える彼は誰ぞ、と問うには、この闇はいささか深すぎる。
昼間にすでに見えているはずのその景色は、まるで素知らぬ他人のように、こちらにそっぽを向けてくる。
夜。
もう一つの世界の姿。
そのうちにすべてを隠すもの。
原初の恐怖を掻き立てるもの。
人間は、夜の闇の中に入り込むことを本能的に恐れる。
なぜならそこでは、自分の生命が保証されないことを知っているから。
なにがあるかわからない。
なにがいるかわからない。
未知。
それこそが、恐怖の根源だ。
だが――
「うむ、こんくらい暗ければ【夜目】取れそうだな」
「ちょうど、いい、暗さ、かも」
「まっくらすぎると、それはそれでなにもできんままぶらぶらすることになるしな」
この世界のプレイヤーは、その世界に適応する術がある。
少なくとも前作『犬』には存在した。
プレイヤーたちが夜のうちでも活動できるようになるために、獲得する能力。
それが【夜目】と呼ばれる技能である。
「……【夜目】、こっちでも、残ってる、かな?」
「あれ必須技能みたいなもんだし、流石に残ってるだろ、たぶん……」
*────
【夜目】というのは、『犬』に存在した技能の一つ。
一言で言ってしまえば、暗闇に対してある程度の視覚補正を行ってくれる技能である。
これさえあれば、夜の闇の中でもある程度ものが見える。
野外サバイバルにおいて、極めて有能な技能であることは間違いない。
……のだが、この技能に頼りすぎると、ちょっと痛い目を見ることがある。
この技能を高レベルで持っていても、まったくものが見えないような暗闇があるのだ。
たとえば洞窟の中とか地下大空洞なんかは、【夜目】を持っていても視界がまったく確保できない。
それはなぜか?
かつてとある有志と検証したのだが、【夜目】によるこの光度補正の理屈は、どうも「人間の視細胞が外界の光から受け取る感覚刺激を、【夜目】の技能レベルに応じてある程度増幅する」といったものであるらしい。
ようはこの技能は、世界の光量の方ではなく、人間の視力機能の方を弄っているわけだ。
そのため、まったく光のない空間――たとえば地下空洞とか洞窟の奥深くとか――では、人間の視力機能をある程度強化したところで、受容するべき光がほぼ存在しないのだから、ほとんど獲得できる視覚情報に変化がない。
光を放たないもの、光を反射していないものは、変わらず見えないままだ。
ゆえに、この【夜目】の視覚補正はそうした環境では機能しない……ように見える。
実際のところ【夜目】は機能しており視力機能の強化自体も行われているのだが、目に入ってくる光量が少なすぎて焼け石に水というわけだ。
つまり【夜目】という技能は、いわゆる「暗視」能力ではないということ。
あくまで、夜の闇という光の少ない空間で、ものが見通せる程度に人間の視力機能を強化するだけ。
そうした限界によって【夜目】という技能もまた、「概ね人間準拠」の枠内に収まってくる。
この技能の名前が【暗視】ではなく【夜目】なのも、恐らくはそういうことだ。
完全に光の射さない空間でものを見たいなら、おとなしく光源を用意するとか、サーマルスコープを用意するとかしよう。
【夜目】は非常に優れた技能ではあるが、あくまでその領分は、「夜の闇程度の光量のもとでも、ある程度視界が確保できる」ということにあるのを忘れないほうがいい。
*────
「そんじゃあまずは樹脂を確保するために、例の倒木のところまで行こうか。
そんくらいまで歩けば、脱出ポッドの明かりから完全に離れるだろうし。
ついでに【夜目】の習得経験も得られそうだ」
【夜目】技能を取得するためには、単純に夜間に活動すればよい。
虹彩がある程度収縮している状態で一定時間経過することが条件とか検証されていた気がするが、流石にそこまで詳しくは覚えていない。
要は夜の闇の中で一定時間目を開いていればいいんだと思う。
「ん、と。こっちだった、よね?」
「ああ、こっから北に5分くらいだったはずだ」
カノンと共に、脱出ポッドのある空き地を離れ、まばらな樹林の中に足を踏み入れる。
トウヒモドキの枝葉に遮られ、既に地平線の向こう側に落ちているであろう恒星の光も、ほとんど届いていないが――それでもまだ、真っ暗闇ではない。
これくらいなら、人間の視力機能でもまだ活動できる。
*────
ザク、ザク。
ザクっ、ザク。
暗い樹林の中にあるのは、二人分の足音だけ。
革のブーツが、枝葉や腐葉土を踏みしめる音。
たった1、2分歩いただけなのに、背後を見れば、もう脱出ポッドの光はまったく見えない。
ここはもう、夕暮れの終わりの、暗い闇の帳の裡だ。
「……明かり、ないね」
「……そうだな」
今作から始めたプレイヤーは、驚くかもしれない。
いまだ文明の光のない惑星の、夜の闇の深さに。
そして――星明りだけが照らす世界の明るさに。
「でも、けっこう見えるよな」
「うん。――空、晴れてるね」
暗順応。
順応しきるには30分ほどかかるらしいけれど……それでも人の眼は暗闇に慣れる。
たとえこの世界に【夜目】という技能が用意されていなくても。
夜の闇の中でも人間は活動することができる。
これもまた、先ほど気づいた食材の話と同じ。
「食料がない」というのが「美味しく食べられる食料がない」という程度の意味であるのと同様に。
「夜の闇の中ではなにも見えない」「夜闇の中では出歩けない」というのは、「夜の闇の中ではものが見にくい」「夜闇の中は出歩きたくない」という程度の意味にすぎない。
俺たちはただ、快適な視界を得たいと、安心を得たいと、それだけのことなのだ。
暗闇の中を歩き続ける。
まばらなトウヒモドキの樹林。
空を見上げれば、濃い紫から黒へと変わる、夕闇のグラデーションと。
「――星が見えるな」
「――うん、すごい、綺麗」
田舎の夜空は綺麗だと、よく言うけれど。
ならば、いまだ文明の光なき、この星の空は。
「ああ、綺麗だ」
「……うん」
この空の下にいるプレイヤーたちは、きっとその胸に刻まれるだろう。
この世界は、その時刻によって、彩りを変えるのだということを。
日中、ティータイム、夕暮れのオレンジ。
黄昏、宵闇、丑三つ時、長い夜を払う暁の光。
時間帯によって、世界はその装いを変える。
それらは刻一刻と変わる一瞬の泡沫。
だからこそ、できれば長く味わいたいじゃないか。
この世界の一日が長い理由。
それは、そんな一瞬一瞬の驚くべき色彩を、
より長く、味わってもらいたいからなんじゃないかと。
そう考えるのは――俺の空想だろうか。
「……ん、どうかした、カノン?」
「――ッんんっ!? なんでも、ない、ないよっ」
ふいに視線を感じてそちらに目をやれば、こちらを見ていたらしきカノンに、ふいっと顔を背けられる。
いくら夕暮れの闇の中とはいえ、俺のおめめも夜闇に慣れてきた。
隣を歩くカノンが、さきほどからこちらを見ていたことくらいはわかる。
ゆえにそう問いかけたのだが、返ってきたのはなぜか慌てたような反応。
その反応を誤魔化すように、今度はこちらに問いかけてくる。
「――フーガくん、また、なにか、考えて、た?」
「……もしかして、顔に出てた?」
「ん。なに考えてるかは、わかんないけど……。
でも、たぶんいいこと、なんじゃないかな、って」
「いい?」
「う、ん。言葉では、難しい、んだけど、
――いいなぁ
って、考えて、た?
わたしも、そんなこと、考えてた、から」
「――っ」
……やっぱすごいな、カノンは。
センチメンタルとか、ノスタルジィとか。
郷愁とか、哀切とか、エモーショナルな情動とか。
そういった、小難しい言葉を使わなくても、
自分は、たぶん俺と同じことを考えていたのだと。
伝えてくれる。伝わってくる。
きっとカノンも、この世界を「いいな」と思っていたのだ。
「……正解。やっぱこの世界はすげぇなって、考えてたよ」
「ん、ふふっ。フーガくん、詩人なとこ、あるもんね」
「ぐっふッ」
ポエット!
胸中を言い当てられたうえでそう言われるのは流石に恥ずかしい。
でもカノンさんも「セドナにて君を待つ」とか書いてたじゃん! 詩人じゃん!
いま顔を見られたら、きっと少しだけ赤らんでいるだろうけれど、そこは夜闇が気を利かせてくれると信じよう。
*────
夜闇を纏った見覚えのある景色を、拡大したマップを頼りに歩き続けること数分。
俺たちは無事に、昨夜の探索で見つけた倒木のある空き地まで辿り着いた。
「……いやあ。これ、もう少し暗くなってたらここまで辿り着けんかったかもしれんな」
ぶっちゃけ大自然の夜をちょっと舐めてた。
夜闇の中、明かりもなしに、目標物もない空き地を発見するなんて無理だよ。
周囲の景色が変わり映えのない樹林なのもきつい。
距離感も方角感もあったもんじゃない。
「ん、時間、ちょうどよかった、ね?」
「うむ。夜目の取得検証と素材調達。どっちもできる都合のいい時間帯だった」
「夕焼けの、ソラ、綺麗だったし、ね?」
カノンさんがいると感性が豊かになるな。
「――うむ。じゃ、無事に辿り着けたわけだし、ちゃちゃっと枝を貰ってしまおうか」
「わたしも、やっていい?」
「うむ、一緒に頼む。今回は持てるだけ持って帰りたい。
まだお互い採取系技能もないし、俺とカノンで効率に大した差も出ないだろうしな」
「ん、いっぱい、もらう」
「おう、じゃあ作業開始と行くか」
そうして倒れたトウヒモドキから、枝を貰う作業に取り掛かる。
数十本はあるし、できるだけたくさん持って帰りたいところだ。
*────
カノンと二人で、倒木から枝をもぎ取る作業をはじめてから十数分。
どうやらこのトウヒモドキの繊維、縦方向には極めて強靭だが、横方向には大してしぶとくないということを発見し、根本あたりを折っては千切り、折っては千切りを繰り返す。
黙々とした作業。
なんというか、この作業感はあれだな。
蟹の殻を剥いているかのような――
――――――ョッ
「――ッ!!」
瞬時、即座に身体の動きを止め、気配を消す。
目をつむり、聴覚のみに集中する。
周囲の闇に、耳を欹てる。
1秒、
2秒、
3びょ――
「あっ、あの――フーガ、くん?」
突然動きを止めたこちらを訝しんでか、カノンに声を掛けられる。
……カノンが反応していないということは、そういうことか?
いや、まだ警戒を解くには早いな。
カノンの方に音を殺しながら歩み寄ると、こちらのただならぬ様子を感じ取ってか、カノンも作業を止める。
しんとした静寂が、この場を支配する。
音を響かせないように、なるべく小声で問いかける。
「カノン、いま、――なにか聞こえなかったか?」
「えっ……っと、わたしは、気づかなかった、よ。
集中してた、から、たぶん、聞き逃した、かも」
「そうか……」
カノンが取り立てて反応していないということは、【危機感知】に引っかかるようななにかではないんじゃないかと思うんだが……。
なにせカノンの危機感知はまだ取得したてだ。
あてにしすぎないほうが良いだろう。
「ちょっと、耳を澄ませてみてくれ。俺もする」
「う、うん」
カノンと共に、周囲を包み込む樹林の暗闇に耳を澄ませる。
1秒、
2秒、
5秒、
――――ュョッ
「あっ……なんか、聞こえた、ね」
「ああ、あっちの……上の方からだ」
俺とカノンから見て左後方、樹林の暗闇の中から、たしかに何かの音が聞こえた。
やや高い、一瞬だけ聞こえる、漏れ出るような音。
あれは――
「……鳴き声、か?」
その可能性が一番高い。
虫が歯をかち合わせるようなカチカチという軽い音ではないし、風が樹々の合間を吹き抜ける音でもない。
地面の腐葉土を踏みしめるような音も聞こえない。
音が聞こえてきた高さも加味すると――
「……カノン、ちょっと、石投げてみてもいいか?」
「人じゃ、ないよね?」
「ここまで気配を殺して接近されてたら人でも石投げたいかなぁ」
これでもそこそこ神経を張り詰めて気配を探っている。
人や四つ足の獣の気配なら、当に気づけているはずだ。
「まあ、予測が正しければ、たぶん人じゃないとは思う」
「ん。じゃあ、おねがい」
カノンの了承も得たので、そのあたりで小石を……地面に落ちたならある程度の音を立てるであろう大きさの小石を選び、構える。
そして、それを、音の聞こえてきたと思われる方向にある暗闇の中へと投げる。
ヒュッ――
――ガサッ
バサッ バササッ!
突如、暗闇の向こうから、なにかの羽ばたきのような音が聞こえてくる。
その音はやまず、それどころか次第に大きくなり――
「ひゃっ――」
「――ッ!!」
思わず身構えた俺の頭上、空き地の空を、
バサッ! バサッ!
なにかの影が横切って行った。
そして――
あとには、無音だけが残る。
*────
「――びっくり、した」
「ああ、悪いなカノン、どうしても確認したくて」
「ううん、いいよ? いまの、鳥、かな?」
カノンの問いかけに、俺も同意する。
「たぶん。さっき聞こえたあの音は、あの鳥の鳴き声だったんじゃないか」
「あっ――なるほど、ね?」
「枝折るためにけっこうバキバキ音立ててたから、反応したのかもしれん」
「……わたしたちが、起こしちゃった?」
「ずいぶん早寝な鳥だな。……ありえる話だな」
あの鳥の生活圏に俺たちが入ってしまったのだろう。
ちょっと申し訳ないな。
それにしても、
「祝、この星の先住種と初遭遇、ってか?」
「そういえば、まだ、いきもの、見てなかった、ね」
「獣とか虫とかもまだだったもんな」
トウヒモドキや雑草も生き物ではあるが、そういう話ではなく。
動物との初遭遇だ。
この世界にも当然、動物はいる。
それは、現実で俺たちが知っている種に近い容姿であるかもしれないし、まったく見たことのないなにかかもしれない。
ただ、この惑星カレドが地球と似た環境である以上、そこに発生し適応進化した生命というのは、ある程度地球のそれと似てくるんじゃないかと思う。
鉱石生命体とかガス状生命体とか、そういうのは少ないんじゃないかと。
左右非対称の生命体とかも同様だ。
いないと断言はできないんだけどな。
というか『犬』には稀によくいたんだけどな。
環境が地球っぽいからと言って、この星に不思議生物がいないわけではない。
そもそも、俺はいまだにテレポバグで飛んだ奇妙な森の仕組みをさっぱり理解できていない。
あれほんとに惑星カレドのどこかに実在する場所なのかな……。
あるんだろうなぁ……。
「――ん、脅かしてごめんなカノン。
音の確認ついでに、この森には鳥がいるらしいってこともわかったし上々だ。
作業に戻ろっか」
「えと、けっこう折ったけど、まだ、いる?」
「……言われてみれば、そろそろ十分か」
既に折り取った枝は30本以上になっている。
これ以上は一回で運べるか怪しいほどだ。
「ん、訂正。このあたりで作業切り上げて、帰ろうか」
「持てる、かな?」
「ちょっと多いけど、せっかくだし【運搬】も狙おうぜ」
「あっ、たしかに、あった、ね?」
有用な技能は暇を見つけて回収していきたい。
この程度の経験で取得できるかは微妙だが。
「葉っぱの方は、それこそ脱出ポッドに一番近いトウヒモドキから貰えばいいしな。
今回は全力で枝を運んで、まっすぐ拠点まで戻ろう」
「そうしよっ、か。あの、……足元、気を付けよう、ね?」
「暗い中で重いもの運ぶとか、現実ではやりたくないよなぁ」
まぁこれも【夜目】取得の修行の一環として、いっちょやりますか。
さ、折り取った枝々を拠点まで抱えて運ぶとしよう。
……倒れて水分が抜けてるからか、意外と軽いな。
建材として優秀なうえに、運搬もしやすいとか、優秀過ぎるよなトウヒモドキさん。
……名前、しばらくの間はトウヒモドキでいいか。
正式名称は、りんねるかマキノさんあたりにつけてもらおう。
この地の時刻は――午後7時手前、といったところだろうか。
俺とカノンは連れ立って、脱出ポッドの外へと歩み出る。
サァァァァ――
南から吹く風が、トウヒモドキの細い枝葉を揺らす。
風は、少しだけ冷たい。
地表の大気には、まだ昼日中の陽気の残滓が残っている。
だが、それも夜が更けるにつれて消えていくだろう。
「寒くないか、カノン?」
「ん、大丈夫。15度くらいは、ある?」
「体感では、ちょっとわからんな……」
脱出ポッド内部は、適温として、概ね20度前後に保たれている。
それより少々涼しく感じるのだから、カノンの予想はそこまで外れていないだろう。
そして、俺たちの前方にあるのは。
まばらな樹林に満ちる、夕暮れをさらに深めたような闇。
あれに見える彼は誰ぞ、と問うには、この闇はいささか深すぎる。
昼間にすでに見えているはずのその景色は、まるで素知らぬ他人のように、こちらにそっぽを向けてくる。
夜。
もう一つの世界の姿。
そのうちにすべてを隠すもの。
原初の恐怖を掻き立てるもの。
人間は、夜の闇の中に入り込むことを本能的に恐れる。
なぜならそこでは、自分の生命が保証されないことを知っているから。
なにがあるかわからない。
なにがいるかわからない。
未知。
それこそが、恐怖の根源だ。
だが――
「うむ、こんくらい暗ければ【夜目】取れそうだな」
「ちょうど、いい、暗さ、かも」
「まっくらすぎると、それはそれでなにもできんままぶらぶらすることになるしな」
この世界のプレイヤーは、その世界に適応する術がある。
少なくとも前作『犬』には存在した。
プレイヤーたちが夜のうちでも活動できるようになるために、獲得する能力。
それが【夜目】と呼ばれる技能である。
「……【夜目】、こっちでも、残ってる、かな?」
「あれ必須技能みたいなもんだし、流石に残ってるだろ、たぶん……」
*────
【夜目】というのは、『犬』に存在した技能の一つ。
一言で言ってしまえば、暗闇に対してある程度の視覚補正を行ってくれる技能である。
これさえあれば、夜の闇の中でもある程度ものが見える。
野外サバイバルにおいて、極めて有能な技能であることは間違いない。
……のだが、この技能に頼りすぎると、ちょっと痛い目を見ることがある。
この技能を高レベルで持っていても、まったくものが見えないような暗闇があるのだ。
たとえば洞窟の中とか地下大空洞なんかは、【夜目】を持っていても視界がまったく確保できない。
それはなぜか?
かつてとある有志と検証したのだが、【夜目】によるこの光度補正の理屈は、どうも「人間の視細胞が外界の光から受け取る感覚刺激を、【夜目】の技能レベルに応じてある程度増幅する」といったものであるらしい。
ようはこの技能は、世界の光量の方ではなく、人間の視力機能の方を弄っているわけだ。
そのため、まったく光のない空間――たとえば地下空洞とか洞窟の奥深くとか――では、人間の視力機能をある程度強化したところで、受容するべき光がほぼ存在しないのだから、ほとんど獲得できる視覚情報に変化がない。
光を放たないもの、光を反射していないものは、変わらず見えないままだ。
ゆえに、この【夜目】の視覚補正はそうした環境では機能しない……ように見える。
実際のところ【夜目】は機能しており視力機能の強化自体も行われているのだが、目に入ってくる光量が少なすぎて焼け石に水というわけだ。
つまり【夜目】という技能は、いわゆる「暗視」能力ではないということ。
あくまで、夜の闇という光の少ない空間で、ものが見通せる程度に人間の視力機能を強化するだけ。
そうした限界によって【夜目】という技能もまた、「概ね人間準拠」の枠内に収まってくる。
この技能の名前が【暗視】ではなく【夜目】なのも、恐らくはそういうことだ。
完全に光の射さない空間でものを見たいなら、おとなしく光源を用意するとか、サーマルスコープを用意するとかしよう。
【夜目】は非常に優れた技能ではあるが、あくまでその領分は、「夜の闇程度の光量のもとでも、ある程度視界が確保できる」ということにあるのを忘れないほうがいい。
*────
「そんじゃあまずは樹脂を確保するために、例の倒木のところまで行こうか。
そんくらいまで歩けば、脱出ポッドの明かりから完全に離れるだろうし。
ついでに【夜目】の習得経験も得られそうだ」
【夜目】技能を取得するためには、単純に夜間に活動すればよい。
虹彩がある程度収縮している状態で一定時間経過することが条件とか検証されていた気がするが、流石にそこまで詳しくは覚えていない。
要は夜の闇の中で一定時間目を開いていればいいんだと思う。
「ん、と。こっちだった、よね?」
「ああ、こっから北に5分くらいだったはずだ」
カノンと共に、脱出ポッドのある空き地を離れ、まばらな樹林の中に足を踏み入れる。
トウヒモドキの枝葉に遮られ、既に地平線の向こう側に落ちているであろう恒星の光も、ほとんど届いていないが――それでもまだ、真っ暗闇ではない。
これくらいなら、人間の視力機能でもまだ活動できる。
*────
ザク、ザク。
ザクっ、ザク。
暗い樹林の中にあるのは、二人分の足音だけ。
革のブーツが、枝葉や腐葉土を踏みしめる音。
たった1、2分歩いただけなのに、背後を見れば、もう脱出ポッドの光はまったく見えない。
ここはもう、夕暮れの終わりの、暗い闇の帳の裡だ。
「……明かり、ないね」
「……そうだな」
今作から始めたプレイヤーは、驚くかもしれない。
いまだ文明の光のない惑星の、夜の闇の深さに。
そして――星明りだけが照らす世界の明るさに。
「でも、けっこう見えるよな」
「うん。――空、晴れてるね」
暗順応。
順応しきるには30分ほどかかるらしいけれど……それでも人の眼は暗闇に慣れる。
たとえこの世界に【夜目】という技能が用意されていなくても。
夜の闇の中でも人間は活動することができる。
これもまた、先ほど気づいた食材の話と同じ。
「食料がない」というのが「美味しく食べられる食料がない」という程度の意味であるのと同様に。
「夜の闇の中ではなにも見えない」「夜闇の中では出歩けない」というのは、「夜の闇の中ではものが見にくい」「夜闇の中は出歩きたくない」という程度の意味にすぎない。
俺たちはただ、快適な視界を得たいと、安心を得たいと、それだけのことなのだ。
暗闇の中を歩き続ける。
まばらなトウヒモドキの樹林。
空を見上げれば、濃い紫から黒へと変わる、夕闇のグラデーションと。
「――星が見えるな」
「――うん、すごい、綺麗」
田舎の夜空は綺麗だと、よく言うけれど。
ならば、いまだ文明の光なき、この星の空は。
「ああ、綺麗だ」
「……うん」
この空の下にいるプレイヤーたちは、きっとその胸に刻まれるだろう。
この世界は、その時刻によって、彩りを変えるのだということを。
日中、ティータイム、夕暮れのオレンジ。
黄昏、宵闇、丑三つ時、長い夜を払う暁の光。
時間帯によって、世界はその装いを変える。
それらは刻一刻と変わる一瞬の泡沫。
だからこそ、できれば長く味わいたいじゃないか。
この世界の一日が長い理由。
それは、そんな一瞬一瞬の驚くべき色彩を、
より長く、味わってもらいたいからなんじゃないかと。
そう考えるのは――俺の空想だろうか。
「……ん、どうかした、カノン?」
「――ッんんっ!? なんでも、ない、ないよっ」
ふいに視線を感じてそちらに目をやれば、こちらを見ていたらしきカノンに、ふいっと顔を背けられる。
いくら夕暮れの闇の中とはいえ、俺のおめめも夜闇に慣れてきた。
隣を歩くカノンが、さきほどからこちらを見ていたことくらいはわかる。
ゆえにそう問いかけたのだが、返ってきたのはなぜか慌てたような反応。
その反応を誤魔化すように、今度はこちらに問いかけてくる。
「――フーガくん、また、なにか、考えて、た?」
「……もしかして、顔に出てた?」
「ん。なに考えてるかは、わかんないけど……。
でも、たぶんいいこと、なんじゃないかな、って」
「いい?」
「う、ん。言葉では、難しい、んだけど、
――いいなぁ
って、考えて、た?
わたしも、そんなこと、考えてた、から」
「――っ」
……やっぱすごいな、カノンは。
センチメンタルとか、ノスタルジィとか。
郷愁とか、哀切とか、エモーショナルな情動とか。
そういった、小難しい言葉を使わなくても、
自分は、たぶん俺と同じことを考えていたのだと。
伝えてくれる。伝わってくる。
きっとカノンも、この世界を「いいな」と思っていたのだ。
「……正解。やっぱこの世界はすげぇなって、考えてたよ」
「ん、ふふっ。フーガくん、詩人なとこ、あるもんね」
「ぐっふッ」
ポエット!
胸中を言い当てられたうえでそう言われるのは流石に恥ずかしい。
でもカノンさんも「セドナにて君を待つ」とか書いてたじゃん! 詩人じゃん!
いま顔を見られたら、きっと少しだけ赤らんでいるだろうけれど、そこは夜闇が気を利かせてくれると信じよう。
*────
夜闇を纏った見覚えのある景色を、拡大したマップを頼りに歩き続けること数分。
俺たちは無事に、昨夜の探索で見つけた倒木のある空き地まで辿り着いた。
「……いやあ。これ、もう少し暗くなってたらここまで辿り着けんかったかもしれんな」
ぶっちゃけ大自然の夜をちょっと舐めてた。
夜闇の中、明かりもなしに、目標物もない空き地を発見するなんて無理だよ。
周囲の景色が変わり映えのない樹林なのもきつい。
距離感も方角感もあったもんじゃない。
「ん、時間、ちょうどよかった、ね?」
「うむ。夜目の取得検証と素材調達。どっちもできる都合のいい時間帯だった」
「夕焼けの、ソラ、綺麗だったし、ね?」
カノンさんがいると感性が豊かになるな。
「――うむ。じゃ、無事に辿り着けたわけだし、ちゃちゃっと枝を貰ってしまおうか」
「わたしも、やっていい?」
「うむ、一緒に頼む。今回は持てるだけ持って帰りたい。
まだお互い採取系技能もないし、俺とカノンで効率に大した差も出ないだろうしな」
「ん、いっぱい、もらう」
「おう、じゃあ作業開始と行くか」
そうして倒れたトウヒモドキから、枝を貰う作業に取り掛かる。
数十本はあるし、できるだけたくさん持って帰りたいところだ。
*────
カノンと二人で、倒木から枝をもぎ取る作業をはじめてから十数分。
どうやらこのトウヒモドキの繊維、縦方向には極めて強靭だが、横方向には大してしぶとくないということを発見し、根本あたりを折っては千切り、折っては千切りを繰り返す。
黙々とした作業。
なんというか、この作業感はあれだな。
蟹の殻を剥いているかのような――
――――――ョッ
「――ッ!!」
瞬時、即座に身体の動きを止め、気配を消す。
目をつむり、聴覚のみに集中する。
周囲の闇に、耳を欹てる。
1秒、
2秒、
3びょ――
「あっ、あの――フーガ、くん?」
突然動きを止めたこちらを訝しんでか、カノンに声を掛けられる。
……カノンが反応していないということは、そういうことか?
いや、まだ警戒を解くには早いな。
カノンの方に音を殺しながら歩み寄ると、こちらのただならぬ様子を感じ取ってか、カノンも作業を止める。
しんとした静寂が、この場を支配する。
音を響かせないように、なるべく小声で問いかける。
「カノン、いま、――なにか聞こえなかったか?」
「えっ……っと、わたしは、気づかなかった、よ。
集中してた、から、たぶん、聞き逃した、かも」
「そうか……」
カノンが取り立てて反応していないということは、【危機感知】に引っかかるようななにかではないんじゃないかと思うんだが……。
なにせカノンの危機感知はまだ取得したてだ。
あてにしすぎないほうが良いだろう。
「ちょっと、耳を澄ませてみてくれ。俺もする」
「う、うん」
カノンと共に、周囲を包み込む樹林の暗闇に耳を澄ませる。
1秒、
2秒、
5秒、
――――ュョッ
「あっ……なんか、聞こえた、ね」
「ああ、あっちの……上の方からだ」
俺とカノンから見て左後方、樹林の暗闇の中から、たしかに何かの音が聞こえた。
やや高い、一瞬だけ聞こえる、漏れ出るような音。
あれは――
「……鳴き声、か?」
その可能性が一番高い。
虫が歯をかち合わせるようなカチカチという軽い音ではないし、風が樹々の合間を吹き抜ける音でもない。
地面の腐葉土を踏みしめるような音も聞こえない。
音が聞こえてきた高さも加味すると――
「……カノン、ちょっと、石投げてみてもいいか?」
「人じゃ、ないよね?」
「ここまで気配を殺して接近されてたら人でも石投げたいかなぁ」
これでもそこそこ神経を張り詰めて気配を探っている。
人や四つ足の獣の気配なら、当に気づけているはずだ。
「まあ、予測が正しければ、たぶん人じゃないとは思う」
「ん。じゃあ、おねがい」
カノンの了承も得たので、そのあたりで小石を……地面に落ちたならある程度の音を立てるであろう大きさの小石を選び、構える。
そして、それを、音の聞こえてきたと思われる方向にある暗闇の中へと投げる。
ヒュッ――
――ガサッ
バサッ バササッ!
突如、暗闇の向こうから、なにかの羽ばたきのような音が聞こえてくる。
その音はやまず、それどころか次第に大きくなり――
「ひゃっ――」
「――ッ!!」
思わず身構えた俺の頭上、空き地の空を、
バサッ! バサッ!
なにかの影が横切って行った。
そして――
あとには、無音だけが残る。
*────
「――びっくり、した」
「ああ、悪いなカノン、どうしても確認したくて」
「ううん、いいよ? いまの、鳥、かな?」
カノンの問いかけに、俺も同意する。
「たぶん。さっき聞こえたあの音は、あの鳥の鳴き声だったんじゃないか」
「あっ――なるほど、ね?」
「枝折るためにけっこうバキバキ音立ててたから、反応したのかもしれん」
「……わたしたちが、起こしちゃった?」
「ずいぶん早寝な鳥だな。……ありえる話だな」
あの鳥の生活圏に俺たちが入ってしまったのだろう。
ちょっと申し訳ないな。
それにしても、
「祝、この星の先住種と初遭遇、ってか?」
「そういえば、まだ、いきもの、見てなかった、ね」
「獣とか虫とかもまだだったもんな」
トウヒモドキや雑草も生き物ではあるが、そういう話ではなく。
動物との初遭遇だ。
この世界にも当然、動物はいる。
それは、現実で俺たちが知っている種に近い容姿であるかもしれないし、まったく見たことのないなにかかもしれない。
ただ、この惑星カレドが地球と似た環境である以上、そこに発生し適応進化した生命というのは、ある程度地球のそれと似てくるんじゃないかと思う。
鉱石生命体とかガス状生命体とか、そういうのは少ないんじゃないかと。
左右非対称の生命体とかも同様だ。
いないと断言はできないんだけどな。
というか『犬』には稀によくいたんだけどな。
環境が地球っぽいからと言って、この星に不思議生物がいないわけではない。
そもそも、俺はいまだにテレポバグで飛んだ奇妙な森の仕組みをさっぱり理解できていない。
あれほんとに惑星カレドのどこかに実在する場所なのかな……。
あるんだろうなぁ……。
「――ん、脅かしてごめんなカノン。
音の確認ついでに、この森には鳥がいるらしいってこともわかったし上々だ。
作業に戻ろっか」
「えと、けっこう折ったけど、まだ、いる?」
「……言われてみれば、そろそろ十分か」
既に折り取った枝は30本以上になっている。
これ以上は一回で運べるか怪しいほどだ。
「ん、訂正。このあたりで作業切り上げて、帰ろうか」
「持てる、かな?」
「ちょっと多いけど、せっかくだし【運搬】も狙おうぜ」
「あっ、たしかに、あった、ね?」
有用な技能は暇を見つけて回収していきたい。
この程度の経験で取得できるかは微妙だが。
「葉っぱの方は、それこそ脱出ポッドに一番近いトウヒモドキから貰えばいいしな。
今回は全力で枝を運んで、まっすぐ拠点まで戻ろう」
「そうしよっ、か。あの、……足元、気を付けよう、ね?」
「暗い中で重いもの運ぶとか、現実ではやりたくないよなぁ」
まぁこれも【夜目】取得の修行の一環として、いっちょやりますか。
さ、折り取った枝々を拠点まで抱えて運ぶとしよう。
……倒れて水分が抜けてるからか、意外と軽いな。
建材として優秀なうえに、運搬もしやすいとか、優秀過ぎるよなトウヒモドキさん。
……名前、しばらくの間はトウヒモドキでいいか。
正式名称は、りんねるかマキノさんあたりにつけてもらおう。
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