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一章
エピローグ
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照り付ける残暑の陽ざしを照り返す、アスファルトの上。
アンティーク調の、飴色美しい扉を引く。
――カラン、コロン――
扉の上部に取り付けられていた鐘が、軽やかな音を立てる。
残暑の陽ざし照り付ける屋外と比べると、その店の中は仄暗い。
中からは、涼やかな風が――っとちがうな。
外の熱気が、涼しい店内に流れ込んでいるんだ。
さっさと入ってしまおう。
キィ―― パタンッ
扉を閉めれば、ふわりとコーヒーの香ばしい匂い。
静かな店内に染み渡る、低く抑えられたボサノヴァ・ミュージック。
数席のラウンド・テーブルにはまばらに客がつき、思い思いの時を過ごしている。
雑誌を読んだり、カップを片手に手帳を覗き込んでいたり、同卓者と談笑したり。
ところどころの観葉植物が他の席への視線を遮り、落ち着いた空間を作り出している。
昼下がりに入るには、実にいい喫茶店だ。
コツ、コツ――
履きなれた革靴の立てる硬い足音を楽しみながら、店内を進む。
二人の若い客がついている席を横切り、店の一番奥の席へ。
店の片隅に設えられた、二人用の小さなテーブルには、先客がいる。
それは、一人の年若い女性だった。
ドレープの入った紺色のチュニックに、チェックのカーディガンをふわりと身に纏った、シンプルな出で立ち。
首元には、灰色のストライプリボンが巻かれている。
艶やかにまとまった黒い長髪。腰にまで届きそうなその髪は、彼女の顔の目元あたりまで掛かり、華奢な肩も合わさって、どこか気弱そうな印象を与えている。
俺が近づいてきたことを察したのか、その人物が顔を上げる。
つとめて何気ない風に、目の前の女性に声を掛ける。
その前髪の向こう側にあるまっくろな目を、じっと見つめて。
「ハロー」
「――っ!!」
……さて、こちらのことがわかるだろうか。
なにせ、彼女と会うのは――4年ぶりだ。
この一週間、俺は彼女と毎日逢っていたが、彼女はそうではないのだ。
いや、毎日逢っていたというのも語弊がある。
俺が毎日逢っていたのは――6年前の、彼女だ。
彼女に比べて目の前の女性は、なんというか――とても、大人っぽい。
というか、実際大人だろう。
よくよく考えれば、俺は大人になった彼女に会うのは初めてということになる。
「わかる?」
「――っ!!」
こくこくと、顔を縦に振る彼女は――顔を紅潮させて。
なにかを言おうとして――言葉に詰まっているようで。
最初から――そんな心配は、無用だったのだと気づく。
空いているもう一方の席につきつつ、彼女を見つめて。
そうして――久闊を叙する、はじまりの挨拶を交わす。
「こんにちは。こっちでは久しぶり。――カノン」
「……うんっ! こんにちは、久しぶり――フーガくんっ!」
花咲くような笑顔の、彼女の声を聞く。
ああ、そういえば――こんな、透き通る風のような声だったな。
俺の記憶の中にある彼女の声よりも、少しだけ低く、落ち着いている声。
それは彼女が、大人になった証だろう。
この4年間、俺の知らない場所で。
彼女が、たしかに生きていた証だ。
*────
「4年ぶりだな?」
「うんっ」
コーヒーを頼みつつ、あらためて彼女をまじまじと見る。
……うん、なんというか、大人っぽいな。
連日顔を合わせているカノンは……15歳当時のカノンの再現だったはずだ。
現実であったのも、4年前。17歳当時。
今のカノンは、そこから4年足して21歳の大学生。
そりゃあ、変わるよな。人が大きく垢抜ける時期だ。
だが――それでも、カノンらしさは変わっていない。
少し垂れ気味の目も、幼げな顔立ちも。
見惚れるような黒の長髪も、首元を覆うアクセサリーも。
手首に巻かれたリストバンドも。
(……いや、ちょっと変わったかな?)
なんだろう、纏う空気というか、影というか。
そういう雰囲気のようなものが、軽やかになった気がする。
わずかに上向きになった視線とか、軽く微笑むような表情とか。
そういう小さな変化が、彼女の印象を変えている。
「カノン、ちょっと変わった?」
「そう、かな?」
「おう。明るくなったというか、軽やかになったというか。
大人っぽくなったし、垢抜けて洒脱になった。
その服装も、今のカノンにいい感じに似合ってるぞ」
「……う、うん……。」
「リボンの白めの灰色が紺色のチュニックに映えて良いな。
前のときの黒いシュシュも似合ってたけど、いまの季節は流石に暑いよな」
オフ会の日は秋というか、もう冬になりかけてたからなぁ……。
「……。」
「チュニックも胸もとのドレープがいい感じだ。
カノンは細身だから、そういうの似合うよな」
「……ぁ、ぅ……」
「そういや、髪型もちょっと変わっ――っと。どうも」
運ばれてきたコーヒーの香りが鼻をくすぐる。
俺はコーヒー党ではないからそこまで詳しくはないが、うん、いい香りだ。
口に含めば、香ばしい苦みが染み渡り――あ、カフェインの味。
背もたれに体重を預けて力を抜くと、静かなピアノが心地いい。
「ここは、いい店だな。カノンのおすすめ?」
「う、ん。……そんなに、たくさん、は、来てないけど」
「いい店教えてくれてありがと、カノン。
しかし……よくこんな穴場っぽい店知ってたな。
しかも、俺の家からもけっこう近いし」
「……。」
「もしかして、気を遣ってくれた?」
「……。…………。
………………あ、の。」
「うん?」
「じつ、は。わたし、も……。
……このあたりに……住んでる、から……」
「えっ、マジで」
このあたりって……ほとんど俺の生活圏内じゃねぇか。
徒歩10分とかそんなレベルだぞ。
えっ、カノン、そんな近くに住んでたの? マジで?
「大学が、近いから……引っ越した、の」
「なるほど、あのあとで、か」
しかし、それならカノンにはちょっと気まずい思いをさせてたかもしれない。
会わなくなった友人が近くに住んでるって、どう考えても気まずいだろう。
日常のなかでばったり出くわして、気まずくなる奴だ。
ましてや俺とカノンは、決して自然消滅的な別れ方ではなかった。
「……ごめんな。カノン」
「えっ」
「4年前、あれっきりにしちまって。
この近くに棲むことになって、気まずかっただろ?」
「えっ。……そんなこと、ない、よ?」
「……カノンは、強いなぁ」
俺だったら、絶対気まずくなる自信がある。
というか、どうにか逢おうとしてしまうだろう。
俺にとってのカノンは、過去に穿たれた抜けない楔だった。
それに触れれば、いつでもまた血が溢れ出すような。
忘れることもできず、癒えることもない、自ら穿った楔。
「……謝るのは、ちがうな。
ありがと、カノン。俺を『犬2』に誘ってくれて。
もう一度カノンに逢えて、嬉しかった。
……本当は、俺の方から声を掛けるべきだったんだがな」
「でも、フーガくん、連絡、取れなかった、よね?」
「うん。どうしようもなかった。
……ああ、そっか。そういうことか。
カノンは近くに住んでたから、俺の家にダイレクトで手紙を置いていったわけだな」
遠くに住んでいるのなら、素直に郵送で送ればよかったのだ。
俺の家の場所がわかるなら、地図なりなんなりで俺の家の住所もわかるだろう。
なにせ、俺の家の郵便ポストに直接投函することすらできたのだ。
「……うん。小夜ちゃんが、そうしたら、って」
「やっぱり、小夜の差し金か」
いつか推測した通り、此度の再会には小夜が一枚噛んでいたらしい。
そして小夜が噛んでいるというのなら、デューオも噛んでいるだろう。
「デューオの役割はなんだ?」
「もともと、デューオくんが、提案してくれた、みたい。
『いぬつー』が出るから、フーガくんと、もう一度遊ぼう、って。
それで、どうやって誘おうって話してたら、小夜ちゃんが」
「あー、そのときの流れが想像つくなぁ……。
あの手紙の文面考えたのも、小夜だろ?」
「……どうして、わかるの?」
「デューオらしくもカノンらしくもないからな。
あの、ちょっと斜に構えたというか、カッコつけた感じが。
『新生セドナにて君を待つ(キリっ)』みたいな」
カタンっ
小さな音が、背後のテーブルで鳴る。
「……ぁ、あの……」
「教えてくれてありがと、カノン。
あいつらのこと、気になってたんだけど、心配なくなった」
俺たちの交流は、この4年間、物理的に途絶えていたわけだが。
それでも、決して失われてしまったわけでもないらしい。
3人は、セピア色に色褪せていたそれを、もう一度拾い上げてくれた。
それを感謝しないわけにはいかない。
「デューオのおかげで、テレポバグもできたしなぁ」
「……しばらくは、まだできない、けど」
「そうとも限らんぞ、カノン?」
「えっ」
「モンターナが、あのポータルの残骸の起動方法を教えてくれただろ。
確かにあのポータルは、あの森の中にしか繋がってないかもしれんけど。
でも、転移は転移なんだ。なら――バグらせればいい」
「あっ」
「これから楽しみだよなぁ、カノン」
今回のモンターナとの冒険における一番のゲーム的収穫はそれだと言わざるを得ない。
あのガラス化した廃墟の中のポータルを使えば、テレポバグができる。
あのポータルの残骸に転移処理が残存していること自体が既にバグであり、バグフィックスの対象になるのではないかという懸念は、実績「カレドリアの小片」を獲得したことで払拭されている。
『カレドリアのポータルを起動する』という取得条件。
それを鑑みるに、モンターナと推測した通り、多分あの転移は、意図的に残されている処理なのだ。
なぜ残っているのかは――まだ、わからないが。
「最初のイベントも来るだろうし、アミーの遺伝子データも気になるし。
バーベキューもやりたいし、りんねるからのメッセージはまだ来てないし。
南の断崖絶壁も降りなきゃいけないし、北の方にも行ってみたいし。
愉しみたくなったら、いつでもテレポバグで遊べそうだし。
これから、どんどん――楽しくなりそうだ」
この1週間、社会人の風上にも置けないほど『犬2』にどっぷり漬かったけれど。
普通のゲームなら、全クリして、やり込み要素に手を付け始めているころだけど。
あの世界は、まだまだ、どこまでも、広く、深く、広がっている。
いくらでもやりたいことはある。
いくらでもやるべきことはある。
まだまだ。まだまだ――これからだ。
だから。
いまここで、カノンに、伝えたい。
「……なぁ。カノン」
「んっ。……どう、したの?」
その暗い衝動を満たす場を奪われて。
その心に、大きな破綻を抱えながら。
それでもこの世界で、生きていた彼女。
生きていて、くれた――
「……。……ありがとう、カノン。
俺を、あの世界に誘ってくれて。
この1週間、俺と一緒に、遊んでくれて」
「――ぁ」
「もしよければ、これからも、一緒に遊ぼう。
あの世界でも、この世界でも、一緒に愉しもう。
俺たちの――これからの、人生を」
「――っ」
あらためて、カノンに提案する。
カノンは、俺と一緒に歩きたいと言ってくれた。
でも、俺もカノンと一緒に歩きたいんだ。
これからの人生を、並んで歩いていきたい。
あの日、離してしまった彼女の手。
もう二度と――離すつもりはない。
「……っ、か――」
「か?」
紅潮した顔、ぎゅっとつむられた両眼、ぎゅっと握られた両手。
「神崎、花音――ですっ」
絞り出すようにそう言った、目の前にいる―― 花音を見る。
彼女もまた、こちらを見ている。
冴えない風貌をした、黒い眼の男を。
「――だからっ。あのっ!
フーガくんの、なまえ、おしえて、くださいっ」
「――っ」
俺がトウヒモドキを、カオリマツと呼びなおしたように。
かつてとある獣に、友情という名前が与えられたように。
俺があの獣に、Zという名前を与えたように。
名前とは、自分が対象をどのように見るかを表すものであり。
新しい名前を用いるのは、対象との関係の変化を願うためだ。
(……ああ)
だから、現実での俺の名を知りたいと言った、彼女の想いは。
きっと―― そういうことなのだろう。
熱を持った顔を誤魔化すように背け、彼女に向けて、小さく手招きする。
「ぅん? ……んっ、ぁふ……」
かわいらしく小首をかしげ、その頭を近づけてくる彼女の耳。
その耳朶に口を近づけると、こそばゆそうに小さな吐息を漏らす。
そんな目の前の少女にしか聞こえないように、そっと耳打ちする。
「――――」
「……えっ?」
「聞こえた?」
「うっ、うん。でも……なんで、フーガ?」
「この名前を付けたのは、高二病の真っ盛りの時でなぁ。
当時は遁走曲ってのが、カッコいいと思ったんだよなぁ」
「……んっ、ふふっ」
「あ、笑いやがったな、花音っ!」
実は今でも、俺にぴったりの命名だったと思っている。
だって、ほら。俺――テレポバグ中は基本逃げまくるし。
死ぬまで逃げ続ける俺には、ぴったりだろう。
「……まぁ、そういうわけで。
あいつらと逢ってるときは、できればフーガで呼んでくれると嬉しい。
あっちでの俺は、もうすっかり俺でな」
「……じゃあ、二人きりの、ときは?」
「ぐふっ」
相変わらず、恐ろしい不意打ちをしてきやがる。
敢えてぼかして言ったのに、そのような甘えは許してくれないらしい。
「お、お手柔らかにお願いします」
「うんっ。……フーガくん。こちらこそ。
――ふ、ふつつかものですが、よろしく、おねがいします?」
「ぅぐふっ」
二段構え、だと……。
それは……妙手……なり……。
「カノン。そういうのは、その……また、あとでな」
「……あとでなら、いい?」
土壇場で言い逃れようとして言質取られるの、やめて貰っていいですかね。二度目だぞ。
こっちの世界だと割と逃げ場がないぞ。あとでって、いつのどこだ……!
カチャンっ
……くそ、そろそろ後ろのテーブルが鬱陶しくなってきた。
ええい、一番の山場は乗り越えたし、そろそろ堤防を破壊するとしよう。
「――いや、それにしても、びっくりしたよな、カノン?」
「……えっ? なに、が?」
「そりゃ、デューオと小夜よ。まさかあの二人が、くっつくなんてなぁ」
コトっ
小さな音が、背後のテーブルで鳴る。
ふむ、この程度のジャブでは足りんか。
……この程度で物音を立てている時点で、大概だが。
「デューオは、まぁわかるよ。いいやつだし、明るいし、コミュ力高いしな。
でもまさか、小夜を陥落させるとはなぁ。……あの小夜をだぜ?」
「……あっ、あの……」
「俺としては、小夜がデューオに一撃入れたかたちだと思うんだが、どうよ。
それこそ、あの手紙みたいに、どこどこで君を待つ、とか言って――」
カタっ
軽い音が、背後のテーブルで鳴る。
小さな、含み笑うような声も。
ふむ、あと一押しといったところか。
「そういや小夜って、年下の男が――」
「年下の男が―― なぁに?」
「ひぇっ」
しまった、そこはデリケートゾーンだった!
背後に強烈な気配の高まりを感じる。
あと、俺の後ろでひたすら笑ってるやつ。
はやく止めてくれ。推定おまえの嫁だろう。
「年下の男が―― 好みだったよなぁ、と」
「そう、それで?」
絶対零度に凍てついた声が、背後の上の方から降ってくる。
端的に言って、こわい。振り向きたくない。もはや殺気だ。
「なのに、なんでデューオなのかなぁ、と」
「そう、聞きたい?」
「そこそこ」
「じゃ、あんたの名前と交換でどう?」
「おっ。俺の名前、そんなに価値がある感じ?」
「名前がわからないと―― 葬式挙げるのに、不便でしょう?」
「ひぇっ」
「辞世の句を読みなさい。――壊してあげる」
「止めろ――ォ! デューオ――ッ!!」
「――わははははははっ!!」
「あの、ここ、喫茶店、だから――」
そうして俺たちは、4年ぶりに再会した。
互いの知っている過去を手繰り寄せ、
かつてと変わらない部分を、探しながら。
互いの知らない4年分の歩みを経て、
その分だけ変わった部分に、戸惑いながら。
そうして、俺たちは、再び、友になる。
それが、旧友と再会するということなんだ。
騒がしい日々が返ってくる。
4年ぶりの、あの懐かしい日々。
4年前とは、ほんの少しだけちがう日々。
変わったものもある。
変わらないものもある。
それでも、一つだけ、確かなことがある。
それは――
「よぉ、小夜、デューオ。――生きてたか?」
「あんたが言うの? 音信不通だったの、あんただけよ」
「見ての通り生きてるぜ! というかオレたちには名前教えてくれないのかよー?」
おまえ等が、生きているということ。
俺の知らない間にも、生きていてくれたということ。
「カノンに聞け」
「……おしえないっ」
「なんでよ―― ……っと、なんか砂糖吐きそうだからやめとくわ」
それさえわかれば、それでいい。
本当に――ただ、それだけでいいんだ。
「ところで―― いつから気づいてたの?」
「店に入ってすぐの、折り畳まれた車椅子」
「そんくらい見過ごしなさいよ、気が利かないわね」
「りふじんッ!?」
ありがとう。デューオ、小夜、カノン。
願わくば、これからも、末永く、よろしく。
*────
「ところでさー、フーガ」
「うん? どした、デューオ」
「さっき言ってた、オレのおかげでテレポバグできたって、どゆこと?」
「えっ」
えっ?
――――――――――
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
毎日投稿に追いついて読んでくれた方。本当にありがとう。
投稿したその日の夜にPVが付いてるのに励まされました。
ツイッターでの更新報告にいいねをくれた方。本当にありがとう。
毎日投稿の更新報告に果たして意味は……? と思うなか、あたたかい声援を頂きました。
なにやらこのまま終わりそうな雰囲気ですが、本作品はこれからも続きます。
ですが……筆力不足、構成力不足などを痛感したため、少々お時間を頂きます。
第二章の投稿までに、よろしければ評価や感想等を頂けると嬉しいです。
今後の更新報告のほか、感想箱もあるツイッターはこちら @frigatenovel
*────
「……長かったな、第一章……」
「ほんとは、ゼロ章、だった?」
「えっ」
「『いぬつー』の世界と、わたしたちの、紹介の章、だって」
「……そういやまだ、1週間しか経ってないしな……」
「んっ。これから、フーガくんと、いっぱいあそぶ」
「……今後ともよろしく、カノン」
「んっ!」
アンティーク調の、飴色美しい扉を引く。
――カラン、コロン――
扉の上部に取り付けられていた鐘が、軽やかな音を立てる。
残暑の陽ざし照り付ける屋外と比べると、その店の中は仄暗い。
中からは、涼やかな風が――っとちがうな。
外の熱気が、涼しい店内に流れ込んでいるんだ。
さっさと入ってしまおう。
キィ―― パタンッ
扉を閉めれば、ふわりとコーヒーの香ばしい匂い。
静かな店内に染み渡る、低く抑えられたボサノヴァ・ミュージック。
数席のラウンド・テーブルにはまばらに客がつき、思い思いの時を過ごしている。
雑誌を読んだり、カップを片手に手帳を覗き込んでいたり、同卓者と談笑したり。
ところどころの観葉植物が他の席への視線を遮り、落ち着いた空間を作り出している。
昼下がりに入るには、実にいい喫茶店だ。
コツ、コツ――
履きなれた革靴の立てる硬い足音を楽しみながら、店内を進む。
二人の若い客がついている席を横切り、店の一番奥の席へ。
店の片隅に設えられた、二人用の小さなテーブルには、先客がいる。
それは、一人の年若い女性だった。
ドレープの入った紺色のチュニックに、チェックのカーディガンをふわりと身に纏った、シンプルな出で立ち。
首元には、灰色のストライプリボンが巻かれている。
艶やかにまとまった黒い長髪。腰にまで届きそうなその髪は、彼女の顔の目元あたりまで掛かり、華奢な肩も合わさって、どこか気弱そうな印象を与えている。
俺が近づいてきたことを察したのか、その人物が顔を上げる。
つとめて何気ない風に、目の前の女性に声を掛ける。
その前髪の向こう側にあるまっくろな目を、じっと見つめて。
「ハロー」
「――っ!!」
……さて、こちらのことがわかるだろうか。
なにせ、彼女と会うのは――4年ぶりだ。
この一週間、俺は彼女と毎日逢っていたが、彼女はそうではないのだ。
いや、毎日逢っていたというのも語弊がある。
俺が毎日逢っていたのは――6年前の、彼女だ。
彼女に比べて目の前の女性は、なんというか――とても、大人っぽい。
というか、実際大人だろう。
よくよく考えれば、俺は大人になった彼女に会うのは初めてということになる。
「わかる?」
「――っ!!」
こくこくと、顔を縦に振る彼女は――顔を紅潮させて。
なにかを言おうとして――言葉に詰まっているようで。
最初から――そんな心配は、無用だったのだと気づく。
空いているもう一方の席につきつつ、彼女を見つめて。
そうして――久闊を叙する、はじまりの挨拶を交わす。
「こんにちは。こっちでは久しぶり。――カノン」
「……うんっ! こんにちは、久しぶり――フーガくんっ!」
花咲くような笑顔の、彼女の声を聞く。
ああ、そういえば――こんな、透き通る風のような声だったな。
俺の記憶の中にある彼女の声よりも、少しだけ低く、落ち着いている声。
それは彼女が、大人になった証だろう。
この4年間、俺の知らない場所で。
彼女が、たしかに生きていた証だ。
*────
「4年ぶりだな?」
「うんっ」
コーヒーを頼みつつ、あらためて彼女をまじまじと見る。
……うん、なんというか、大人っぽいな。
連日顔を合わせているカノンは……15歳当時のカノンの再現だったはずだ。
現実であったのも、4年前。17歳当時。
今のカノンは、そこから4年足して21歳の大学生。
そりゃあ、変わるよな。人が大きく垢抜ける時期だ。
だが――それでも、カノンらしさは変わっていない。
少し垂れ気味の目も、幼げな顔立ちも。
見惚れるような黒の長髪も、首元を覆うアクセサリーも。
手首に巻かれたリストバンドも。
(……いや、ちょっと変わったかな?)
なんだろう、纏う空気というか、影というか。
そういう雰囲気のようなものが、軽やかになった気がする。
わずかに上向きになった視線とか、軽く微笑むような表情とか。
そういう小さな変化が、彼女の印象を変えている。
「カノン、ちょっと変わった?」
「そう、かな?」
「おう。明るくなったというか、軽やかになったというか。
大人っぽくなったし、垢抜けて洒脱になった。
その服装も、今のカノンにいい感じに似合ってるぞ」
「……う、うん……。」
「リボンの白めの灰色が紺色のチュニックに映えて良いな。
前のときの黒いシュシュも似合ってたけど、いまの季節は流石に暑いよな」
オフ会の日は秋というか、もう冬になりかけてたからなぁ……。
「……。」
「チュニックも胸もとのドレープがいい感じだ。
カノンは細身だから、そういうの似合うよな」
「……ぁ、ぅ……」
「そういや、髪型もちょっと変わっ――っと。どうも」
運ばれてきたコーヒーの香りが鼻をくすぐる。
俺はコーヒー党ではないからそこまで詳しくはないが、うん、いい香りだ。
口に含めば、香ばしい苦みが染み渡り――あ、カフェインの味。
背もたれに体重を預けて力を抜くと、静かなピアノが心地いい。
「ここは、いい店だな。カノンのおすすめ?」
「う、ん。……そんなに、たくさん、は、来てないけど」
「いい店教えてくれてありがと、カノン。
しかし……よくこんな穴場っぽい店知ってたな。
しかも、俺の家からもけっこう近いし」
「……。」
「もしかして、気を遣ってくれた?」
「……。…………。
………………あ、の。」
「うん?」
「じつ、は。わたし、も……。
……このあたりに……住んでる、から……」
「えっ、マジで」
このあたりって……ほとんど俺の生活圏内じゃねぇか。
徒歩10分とかそんなレベルだぞ。
えっ、カノン、そんな近くに住んでたの? マジで?
「大学が、近いから……引っ越した、の」
「なるほど、あのあとで、か」
しかし、それならカノンにはちょっと気まずい思いをさせてたかもしれない。
会わなくなった友人が近くに住んでるって、どう考えても気まずいだろう。
日常のなかでばったり出くわして、気まずくなる奴だ。
ましてや俺とカノンは、決して自然消滅的な別れ方ではなかった。
「……ごめんな。カノン」
「えっ」
「4年前、あれっきりにしちまって。
この近くに棲むことになって、気まずかっただろ?」
「えっ。……そんなこと、ない、よ?」
「……カノンは、強いなぁ」
俺だったら、絶対気まずくなる自信がある。
というか、どうにか逢おうとしてしまうだろう。
俺にとってのカノンは、過去に穿たれた抜けない楔だった。
それに触れれば、いつでもまた血が溢れ出すような。
忘れることもできず、癒えることもない、自ら穿った楔。
「……謝るのは、ちがうな。
ありがと、カノン。俺を『犬2』に誘ってくれて。
もう一度カノンに逢えて、嬉しかった。
……本当は、俺の方から声を掛けるべきだったんだがな」
「でも、フーガくん、連絡、取れなかった、よね?」
「うん。どうしようもなかった。
……ああ、そっか。そういうことか。
カノンは近くに住んでたから、俺の家にダイレクトで手紙を置いていったわけだな」
遠くに住んでいるのなら、素直に郵送で送ればよかったのだ。
俺の家の場所がわかるなら、地図なりなんなりで俺の家の住所もわかるだろう。
なにせ、俺の家の郵便ポストに直接投函することすらできたのだ。
「……うん。小夜ちゃんが、そうしたら、って」
「やっぱり、小夜の差し金か」
いつか推測した通り、此度の再会には小夜が一枚噛んでいたらしい。
そして小夜が噛んでいるというのなら、デューオも噛んでいるだろう。
「デューオの役割はなんだ?」
「もともと、デューオくんが、提案してくれた、みたい。
『いぬつー』が出るから、フーガくんと、もう一度遊ぼう、って。
それで、どうやって誘おうって話してたら、小夜ちゃんが」
「あー、そのときの流れが想像つくなぁ……。
あの手紙の文面考えたのも、小夜だろ?」
「……どうして、わかるの?」
「デューオらしくもカノンらしくもないからな。
あの、ちょっと斜に構えたというか、カッコつけた感じが。
『新生セドナにて君を待つ(キリっ)』みたいな」
カタンっ
小さな音が、背後のテーブルで鳴る。
「……ぁ、あの……」
「教えてくれてありがと、カノン。
あいつらのこと、気になってたんだけど、心配なくなった」
俺たちの交流は、この4年間、物理的に途絶えていたわけだが。
それでも、決して失われてしまったわけでもないらしい。
3人は、セピア色に色褪せていたそれを、もう一度拾い上げてくれた。
それを感謝しないわけにはいかない。
「デューオのおかげで、テレポバグもできたしなぁ」
「……しばらくは、まだできない、けど」
「そうとも限らんぞ、カノン?」
「えっ」
「モンターナが、あのポータルの残骸の起動方法を教えてくれただろ。
確かにあのポータルは、あの森の中にしか繋がってないかもしれんけど。
でも、転移は転移なんだ。なら――バグらせればいい」
「あっ」
「これから楽しみだよなぁ、カノン」
今回のモンターナとの冒険における一番のゲーム的収穫はそれだと言わざるを得ない。
あのガラス化した廃墟の中のポータルを使えば、テレポバグができる。
あのポータルの残骸に転移処理が残存していること自体が既にバグであり、バグフィックスの対象になるのではないかという懸念は、実績「カレドリアの小片」を獲得したことで払拭されている。
『カレドリアのポータルを起動する』という取得条件。
それを鑑みるに、モンターナと推測した通り、多分あの転移は、意図的に残されている処理なのだ。
なぜ残っているのかは――まだ、わからないが。
「最初のイベントも来るだろうし、アミーの遺伝子データも気になるし。
バーベキューもやりたいし、りんねるからのメッセージはまだ来てないし。
南の断崖絶壁も降りなきゃいけないし、北の方にも行ってみたいし。
愉しみたくなったら、いつでもテレポバグで遊べそうだし。
これから、どんどん――楽しくなりそうだ」
この1週間、社会人の風上にも置けないほど『犬2』にどっぷり漬かったけれど。
普通のゲームなら、全クリして、やり込み要素に手を付け始めているころだけど。
あの世界は、まだまだ、どこまでも、広く、深く、広がっている。
いくらでもやりたいことはある。
いくらでもやるべきことはある。
まだまだ。まだまだ――これからだ。
だから。
いまここで、カノンに、伝えたい。
「……なぁ。カノン」
「んっ。……どう、したの?」
その暗い衝動を満たす場を奪われて。
その心に、大きな破綻を抱えながら。
それでもこの世界で、生きていた彼女。
生きていて、くれた――
「……。……ありがとう、カノン。
俺を、あの世界に誘ってくれて。
この1週間、俺と一緒に、遊んでくれて」
「――ぁ」
「もしよければ、これからも、一緒に遊ぼう。
あの世界でも、この世界でも、一緒に愉しもう。
俺たちの――これからの、人生を」
「――っ」
あらためて、カノンに提案する。
カノンは、俺と一緒に歩きたいと言ってくれた。
でも、俺もカノンと一緒に歩きたいんだ。
これからの人生を、並んで歩いていきたい。
あの日、離してしまった彼女の手。
もう二度と――離すつもりはない。
「……っ、か――」
「か?」
紅潮した顔、ぎゅっとつむられた両眼、ぎゅっと握られた両手。
「神崎、花音――ですっ」
絞り出すようにそう言った、目の前にいる―― 花音を見る。
彼女もまた、こちらを見ている。
冴えない風貌をした、黒い眼の男を。
「――だからっ。あのっ!
フーガくんの、なまえ、おしえて、くださいっ」
「――っ」
俺がトウヒモドキを、カオリマツと呼びなおしたように。
かつてとある獣に、友情という名前が与えられたように。
俺があの獣に、Zという名前を与えたように。
名前とは、自分が対象をどのように見るかを表すものであり。
新しい名前を用いるのは、対象との関係の変化を願うためだ。
(……ああ)
だから、現実での俺の名を知りたいと言った、彼女の想いは。
きっと―― そういうことなのだろう。
熱を持った顔を誤魔化すように背け、彼女に向けて、小さく手招きする。
「ぅん? ……んっ、ぁふ……」
かわいらしく小首をかしげ、その頭を近づけてくる彼女の耳。
その耳朶に口を近づけると、こそばゆそうに小さな吐息を漏らす。
そんな目の前の少女にしか聞こえないように、そっと耳打ちする。
「――――」
「……えっ?」
「聞こえた?」
「うっ、うん。でも……なんで、フーガ?」
「この名前を付けたのは、高二病の真っ盛りの時でなぁ。
当時は遁走曲ってのが、カッコいいと思ったんだよなぁ」
「……んっ、ふふっ」
「あ、笑いやがったな、花音っ!」
実は今でも、俺にぴったりの命名だったと思っている。
だって、ほら。俺――テレポバグ中は基本逃げまくるし。
死ぬまで逃げ続ける俺には、ぴったりだろう。
「……まぁ、そういうわけで。
あいつらと逢ってるときは、できればフーガで呼んでくれると嬉しい。
あっちでの俺は、もうすっかり俺でな」
「……じゃあ、二人きりの、ときは?」
「ぐふっ」
相変わらず、恐ろしい不意打ちをしてきやがる。
敢えてぼかして言ったのに、そのような甘えは許してくれないらしい。
「お、お手柔らかにお願いします」
「うんっ。……フーガくん。こちらこそ。
――ふ、ふつつかものですが、よろしく、おねがいします?」
「ぅぐふっ」
二段構え、だと……。
それは……妙手……なり……。
「カノン。そういうのは、その……また、あとでな」
「……あとでなら、いい?」
土壇場で言い逃れようとして言質取られるの、やめて貰っていいですかね。二度目だぞ。
こっちの世界だと割と逃げ場がないぞ。あとでって、いつのどこだ……!
カチャンっ
……くそ、そろそろ後ろのテーブルが鬱陶しくなってきた。
ええい、一番の山場は乗り越えたし、そろそろ堤防を破壊するとしよう。
「――いや、それにしても、びっくりしたよな、カノン?」
「……えっ? なに、が?」
「そりゃ、デューオと小夜よ。まさかあの二人が、くっつくなんてなぁ」
コトっ
小さな音が、背後のテーブルで鳴る。
ふむ、この程度のジャブでは足りんか。
……この程度で物音を立てている時点で、大概だが。
「デューオは、まぁわかるよ。いいやつだし、明るいし、コミュ力高いしな。
でもまさか、小夜を陥落させるとはなぁ。……あの小夜をだぜ?」
「……あっ、あの……」
「俺としては、小夜がデューオに一撃入れたかたちだと思うんだが、どうよ。
それこそ、あの手紙みたいに、どこどこで君を待つ、とか言って――」
カタっ
軽い音が、背後のテーブルで鳴る。
小さな、含み笑うような声も。
ふむ、あと一押しといったところか。
「そういや小夜って、年下の男が――」
「年下の男が―― なぁに?」
「ひぇっ」
しまった、そこはデリケートゾーンだった!
背後に強烈な気配の高まりを感じる。
あと、俺の後ろでひたすら笑ってるやつ。
はやく止めてくれ。推定おまえの嫁だろう。
「年下の男が―― 好みだったよなぁ、と」
「そう、それで?」
絶対零度に凍てついた声が、背後の上の方から降ってくる。
端的に言って、こわい。振り向きたくない。もはや殺気だ。
「なのに、なんでデューオなのかなぁ、と」
「そう、聞きたい?」
「そこそこ」
「じゃ、あんたの名前と交換でどう?」
「おっ。俺の名前、そんなに価値がある感じ?」
「名前がわからないと―― 葬式挙げるのに、不便でしょう?」
「ひぇっ」
「辞世の句を読みなさい。――壊してあげる」
「止めろ――ォ! デューオ――ッ!!」
「――わははははははっ!!」
「あの、ここ、喫茶店、だから――」
そうして俺たちは、4年ぶりに再会した。
互いの知っている過去を手繰り寄せ、
かつてと変わらない部分を、探しながら。
互いの知らない4年分の歩みを経て、
その分だけ変わった部分に、戸惑いながら。
そうして、俺たちは、再び、友になる。
それが、旧友と再会するということなんだ。
騒がしい日々が返ってくる。
4年ぶりの、あの懐かしい日々。
4年前とは、ほんの少しだけちがう日々。
変わったものもある。
変わらないものもある。
それでも、一つだけ、確かなことがある。
それは――
「よぉ、小夜、デューオ。――生きてたか?」
「あんたが言うの? 音信不通だったの、あんただけよ」
「見ての通り生きてるぜ! というかオレたちには名前教えてくれないのかよー?」
おまえ等が、生きているということ。
俺の知らない間にも、生きていてくれたということ。
「カノンに聞け」
「……おしえないっ」
「なんでよ―― ……っと、なんか砂糖吐きそうだからやめとくわ」
それさえわかれば、それでいい。
本当に――ただ、それだけでいいんだ。
「ところで―― いつから気づいてたの?」
「店に入ってすぐの、折り畳まれた車椅子」
「そんくらい見過ごしなさいよ、気が利かないわね」
「りふじんッ!?」
ありがとう。デューオ、小夜、カノン。
願わくば、これからも、末永く、よろしく。
*────
「ところでさー、フーガ」
「うん? どした、デューオ」
「さっき言ってた、オレのおかげでテレポバグできたって、どゆこと?」
「えっ」
えっ?
――――――――――
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
毎日投稿に追いついて読んでくれた方。本当にありがとう。
投稿したその日の夜にPVが付いてるのに励まされました。
ツイッターでの更新報告にいいねをくれた方。本当にありがとう。
毎日投稿の更新報告に果たして意味は……? と思うなか、あたたかい声援を頂きました。
なにやらこのまま終わりそうな雰囲気ですが、本作品はこれからも続きます。
ですが……筆力不足、構成力不足などを痛感したため、少々お時間を頂きます。
第二章の投稿までに、よろしければ評価や感想等を頂けると嬉しいです。
今後の更新報告のほか、感想箱もあるツイッターはこちら @frigatenovel
*────
「……長かったな、第一章……」
「ほんとは、ゼロ章、だった?」
「えっ」
「『いぬつー』の世界と、わたしたちの、紹介の章、だって」
「……そういやまだ、1週間しか経ってないしな……」
「んっ。これから、フーガくんと、いっぱいあそぶ」
「……今後ともよろしく、カノン」
「んっ!」
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