ワンダリング・ワンダラーズ!!

ツキセ

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一章

星を継ぐもの

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 *────


 そうして……俺たちの、長い長い7日目が終わった。
 はじまりの1週間を締めくくる、あまりにも――ハードな1日だった。

 ……だが。
 そんなキリの良さなどお構いなしに、8日目の朝は来る。


 *────


 9月6日。金曜日。平日。
 社会人である俺は、当然出勤しなければならない。
 遅刻もしなかった。通勤途中では……流石に、仮眠したけれど。

「なにか、心ここにあらずって感じですけど……先輩、本当に大丈夫ですか?」
「……ウボァー」
「仕事してください」


 *────


 そつなく……恐らくはそつなく社会人としての責務を果たし、帰宅したあと。
 なにせ、あまりにも長かった昨日の今日だ。
 今日はどうするか、今日くらいは休んだ方がいいのではないかと、カノンにメッセージを送ろうとして。

(……おや?)

 一件のメッセージが届いていることに気が付く。
 見ればそれは、モンターナからのもの。

『From:モンターナ(『ワンダリング・ワンダラーズ!!』)(09-06-16:32)
 To:フーガ; カノン(『ワンダリング・ワンダラーズ!!』)
 件名:さかのぼり録画を頼む
 内容:こんばんは。フーガ。カノン。
    昨日はありがとう。そしてお疲れさま。
    昨日伝え忘れていたのだが、さかのぼり録画をお願いしたい。
    君たちのファンの一人として、君たちの戦いを、ぜひとも見たいんだ。
    それと……二人の体力が残ってさえいればだが。
    もしよければ今夜あたり、ちょっと話さないか。
    二人の傷の療養がてら、私の脱出ポッドで羽を休めていってくれると嬉しい。』

 どうやら――俺の連続ログイン記録は途切れないらしい。
 今日も今日とて『犬2』をプレイすることになりそうだ。

 自分を誘ってくれる友人がいる。
 一緒に遊べる友人がいる。
 こんなに嬉しいことはない。
 飯食って風呂入って仮眠して、さぁ……いざ惑星カレドへ!

(……っと、その前に)

 モンターナに頼まれた、さかのぼり録画もしておこう。
 反省会も兼ねて、あとで自分でも見返しておきたい。
 今回はカノンとモンターナのおかげでギリギリ生還することができた。
 だが……自分だけでは何度死んでいたことか、知れたものではない。
 せめて同じ死に方だけはしないように、精進せねばなるまい。
 まだまだ、全盛期のフーガの動きには程遠い。
 頭の中で思い描いた通りには、なかなか身体は動かないもの。
 フルダイブゲーム。あの世界は、前作とはちがうのだ。

(しかし……)

 今回の戦いの映像は、少々スプラッタなものになりそうだ。
 なにせ最初から最後まで、敵も味方も出血塗れの血祭りなのだ。
 モンターナがお望みらしい『フーガの愉快な死に様集』の素材としては、使えそうにないな。


 *────


 そうして―― 日付はそのまま金曜日、時刻はそのまま夕飯後。
 モンターナの脱出ポッドに集まった俺とカノンとモンターナは、互いの健闘を労ったのち、まずは互いの知らない情報を余すことなく共有し合うことにした。

「……いったい、あの場所でなにがあったんだ?」

 俺たちは、モンターナに語る。
 モンターナと別れたあと、俺たちにいったいなにがあったのか。
 あの場所のこと。アミーのこと。
 ズールと名付けたアミーとの戦いのこと。
 ズールとの戦いのあとに起こったこと。
 ズールの中に埋め込まれていた黒い物体のこと。

 そして―― " ■■■■■あいつ " のこと。

「実は、俺がその石を見たのは、それが初めてじゃなかったんだ。
 一週間前にも、テレポバグしたときに――」
「えっ。あれ、なんでもう……あれ? ポータルはまだ……あれ? というか一週間前って、それサービス開始日じゃないか……?」
「すまんモンターナ。黙ってたけど、実はチュートリアル終了時の処理でなんか飛べちゃいました。てへ」
「……。…………。………………カノン。なにか言ってやって」
「……?」
「僕以外にまともなプレイヤーはいないのか!?」
「おう鏡見ろ鏡」

 その文字列を名前に含む実績。
 それを取得したと思われるテレポバグ先の森。
 その文字列が刻まれたプレート。
 その文字列が記されていた、俺たちに届いた謎のメッセージ。
 そのメッセージが、俺たちの仮想端末に表示されたこと。
 俺たちの仮想端末が、その言語に対応しているということ。

「結局、あのメッセージはなんだったんだ……?」
「あれは『』だよ」
「はい?」
「なに、それ」


 *────


 続いてモンターナは、俺たちに語る。
 俺たちと別れたあと、彼にいったいなにがあったのか。
 彼が発見した、ガラスのプレートの正体。
 そこに刻まれていた、文字の正体。

「あれは、このゲームの初代に使われていた文字だったんだよ」
「えっ、『犬』にそんなネタあったっけ?」
「ちがうちがう、前作じゃなくて、初代。
 『ワンダリング・ワンダラーズ!』の前作 ――『Wandering Wonderer』さ」
「えっ。……それって、たしか、30年くらい昔、の……?」
「カノンも知ってたか。うれしいね。
 ……実はぼく、あのゲームの大ファンでさ。
 あのゲーム独自の人工言語を解読するくらいにはハマってたんだよ。
 海外のサイトにレビュー書きに行っちゃうくらい」
「……待て。待て待て、モンターナ。おまえ、いったい何歳だ!?」

 硝子の廃墟の探索中、突如として俺たちに送られてきたメッセージ。
 解読不能な言語で記されているはずのそれを、解読できる男がいた。
 男の名はモンターナ。その言語の名は『カレドリア文字』。
 それはこのゲームの元ネタであるゲーム……『Wandering Wonderer』で使われていた言語。
 
 男は語る。
 それは、かつてこの星に存在したとある存在が、いずれ来たる俺たちに遺したメッセージだったのだ、と。

「……のようなものなのではないか、と僕は考えてる。つまり……あの建物の元の持ち主、僕たちが仮定した『僕たちの後にこの世界に存在したなにものか』は、自分たちが間もなく滅び去ることと、自分たちの後にもこの星を訪れる人がいることを、予見していたってことだね」
「……で、その誰かさんたちが使っていた言語を、なぜかお前が知っていた、と」
「使われている文字は、『WW』で使われていた『カレドリア文字』で間違いない。
 だけど……僕の知っているどの言語とも微妙にちがうようでね。
 ところどころそれっぽい文字列はあるんだけど……まだほとんど解読できてないんだ」
「アルファベットだけど英語じゃない、って感じか」
「概ねそんな感じ。英語に対するラテン語……いや、古ラテン語って感じだ。言語の時代がちがうのかもしれない。
 ただし……幾つかの文字列には見覚えがあった。恐らくは、固有名詞の類だと思う」
「たとえば?」
「たとえば  " ■■■■■ " とか」
「――っ!」

 俺たちの技術を継いだのが、誰か。
 なぜ、かれらはいなくなったのか。
 この星に、いったいなにが起こったのか。
 この星に、いったいなにが遺されているのか。
 それらすべての謎に連なる―― " ■■■■■ " という言葉の意味。

「一部推測が混じるけど、訳すなら―― "  " かな」
「…… " ニア " ?」
「 " ニア " は、Wandering Wondererの世界の神話に登場する、神さまの名前。
 でも、僕たちにとっては、もっと身近なところでその名前に見覚えがあるはずだ。
 ……ねぇ、フーガ。僕たちの載ってきた、移民船の名前って――」
「――ッ!!」

 そのメッセージの言語が、カレドリア文字であるということ。
 その文字を使うかれらが、それを " ニアの落とし仔 " と呼んだこと。
 俺たちの移民船の名前が " ニア " であること。

 そして――
 俺たちの仮想端末が、その言語にということ。

「そういえばさ、知ってるかい。フーガ。
 僕たち前作プレイヤー、アバター引き継ぎ組の載ってきた移民船の名前は " ニア " だけど。
 今作からの新規プレイヤーの載ってきた移民船の名前って、ちがうらしいよ?
 フーガが言ってた『僕らの正体』も考えると、それってつまり―― どういうことなんだろうね?」

 それらすべてに、意味が込められているのだとしたら。
 すべてが、つながっているのだとしたら。

「この『犬2』の世界は、たしかに『犬』の世界と、地続きみたいだけれど。
 もしかしたら――『Wandering Wonderer』の世界とも、つながってくるのかもね」

 俺たちが目にしてきた、この世界の謎、この世界の真実は。
 この仮想現実世界で紡がれてきた長い歴史の、ほんの一部分にすぎなかったのかもしれない。


 *────


「……で、そっちはおいおい考えていくとしてさ。
 結局どうやって、モンターナはポータルを起動したんだ?」
「そうそれ、よくぞ聞いてくれた! 実は――」

 モンターナが語った、彼が俺たちのもとに辿り着くまでの経緯。
 あの硝子の廃墟の未踏破部分、崩落した上階にあったもの。
 独りでに起動し、俺たちの端末にメッセージを送った、この世界の遺物。
 そのように設計されていた、古代の遺物。

「ならば……あるはずだった。この時代にも作動するように設計された電源系も、ともに」
「はぁー……なるほどねぇ。それが上階にあった、と。
 ……いや、でもさ。突如として送られてきたメッセージは良いとしてさ。
 あの建物の電源系が復旧するのと、あのポータルが起動するのは別問題だろ。
 だって、どう見ても……どう考えてもぶっ壊れてただろ。あのポータル。
 ……アレって、やっぱりバグなのか?」
「……どうだろうね。あるいは、なのか」
「なんだそれ」
「……この星は、たぶん、なにかが……おかしいんだよ。破綻しているんだ。
 ゲームとしてバグってるんじゃなくて、なにか……現実として、おかしなことになっている。
 君たちの出逢った、この時代まで姿かたちを留めていたアミー。
 そこに埋め込まれていた奇妙な石。
 フーガがテレポートバグで迷い込んだ、奇妙な森。
 そこに存在した、奇妙な石。
 壊れたはずのポータルが、起動してしまうという謎。
 到底現実離れしているそれらのおかしさは、すべて……実は、因果関係に基づく物理的事象として理路整然と説明できる、この世界に用意された謎そのものなのかもしれない」
「つまり、これまでのバグみたいな挙動は全部、想定通りってことか?」
「……たぶん。いや、現状ただの推測だけど」
「……じつは、バグだった、とか、ない?」
「仕様だと思ったらバグだった。ゲームあるある……」
「どちらにせよ、こんなゲーム開始初期に起動するのは想定外なんじゃないかと……」

 まぁ、そのおかげで俺たちはとびっきりな冒険ができたわけだ。
 融通の利くゲーム設計にしてくれた開発に感謝しよう。
 オープンワールドゲームって、こういうぶっ飛んだショートカットが見つかるのも楽しいよな。
 ……少なくともプレイヤーとしては楽しい。うん。

「……まぁ。バグにせよ仕様にせよ、使えるものは使わせてもらおうじゃないか。
 電源系が死なない限り、あのポータルは利用できる。素晴らしいことだ。
 もっとも、今行けるのは、あの森の中だけだろうけど」

 確かに。起動するのが想定通りと言うのなら、遠慮せず使わせてもらおう。
 ズールの墓参りにも行きたい、し――

「……あれ?」
「フーガくん?」
「ポータルが、使える……?」

 ……マジで?
 それって、つまり――


 *────


 小休止がてら、仮想端末を開いたとき。
 ふと、仮想インベントリの項に " ? " マークがついているのに気が付く。
 インベントリを開いてみれば、そこにあるのは、相も変わらず鎮座する『白紙の本』に、失われるタイミングを失った『異世界への招待状』に――

「モンターナ、ヘルプ」
「どうした、フーガ」
「なんかある。読めない」
「なにがだ…… ――ッ! えっ、なにこれ」
「取得日時は……アミーの中の黒い石を壊したあたり、かな?」
「わたしは、ないみたい」
「じゃあやっぱり、あれを壊したときに、かな」

 2つの、見慣れないブラックデータがある。
 ファイルの形式は、見たことのないものだ。
 それぞれの容量は……かなり大きい。

「ファイル名のこれも、カレドリア文字って奴じゃないか?」
「そうみたいだ。ええと―― 『 " ■■■■■ "  』……これはさっき訳した『ニアの落とし仔』。その……『源』、いや『原核』かな。……接続詞があるのはありがたい……たぶん所有の意味かな。そのあとの部分は……アルファベットからの単純な置き換え……」
「今更だけどモンターナ、マジで読めるんだなこれ……」
「部分的にだけどね。……『えー... えむ... あい... しー... あい... てぃー... あい... えー』…で、『 amicitia 』 ?
 つまり直訳すると『 " amicitia " の持つ " ニアの落とし仔 " の原核』、と」

 『 " amicitia " の持つ " ニアの落とし仔 " の原核』。
 それが、一つ目のブラックボックスファイルの名前――らしい。

「なんだそれ」
「 " amicitia " と言えば、ラテン語で " 友情 " とかそんな意味だけど……」
「あ」
「カノン、なにか気づいた?」
「アミー?」
「……あっ」
「……なるほど! アミーの正式名称がそれか!」
「となると、これは……?」
「……ああ。おそらくはそうだ。
 君たちが戦ったアミーに埋め込まれていた『ニアの落とし仔』、すなわち黒い石の……なにかの、データじゃないか」
「なにかのって?」
「そこまでは、流石にわからない。ちゃんと解読しないとね」
「でも解読もなにも……俺たちの仮想端末では開けないっぽいぞ、このファイル。
 拡張子が対応していない感じだ」
「分析装置に読み取って貰って、分析とか、できない?」
「っ!! ナイスだカノン、それやってみようっ!!
 ……あっ、くそ、ダメだ。分析装置のスペック不足で弾かれた……
 ……ってかスペック不足とかあるのかよ。前作から通してはじめて見たぞ。
 今作、分析装置についてもアップグレードとかあるのか?」
「……もしかして、というか十中八九そうだけど。
 これ手に入れるの、早すぎたんじゃない? ゲームの進行度的に」
「……あー。うん」
「ぼくら、いくらなんでも、流石にいろいろ、かっ飛ばし過ぎてる気がするし」
「たし、かに……」
「そもそも中身も……『カレドリア文字』だっけ? それで書かれてるだろうしな」
「……惜しいな。せめて中身さえ見られれば解読できるのに……」
「これだからガチ勢は困る」
「困ることはないんじゃない?」

 ついでに、もう一つのブラックボックスについても。

「『 " amicitia " に関する……存在の……情報』?」
「なんだそれ。……さっきからなんだそれとしか言ってないけど」
「わからない。わからないが……アミーに関する、存在の情報、だ」
「ふーむ。……人間に関する存在の情報、と言ったら、なんだ?」
「戸籍、とか、かな?」
「いや、たぶん、もっと根源的な……存在の情報……」
「……生体情報、あるいは……遺伝子の……?」
「おおう。そりゃまた、なんというか、SFチックな」
「もしかしてこれ、アミーの……」

 先ほどのファイルとは違う形式の、ブラックボックス。
 やはりこちらも、仮想端末ではファイルを開くことはできず。
 しかしいつか、このファイルの情報を利用できる日が来るのかもしれない。
 このゲームの技術ツリーを進めた先で。

「アミーと、また逢える……かも?」
「……この世界でまた逢おうって、アイツと約束したしな」
「フーガってさ……存外、ロマンチストだよね」
「うぐっ」


 *────


 最後に、今回取得した技能や実績の一部を確認しよう。
 これを確認するときが、生還の愉しみだ。

 今回の冒険で、俺が付けていった技能。
 【跳躍】【投擲】【登攀】【装備換装】【石工術】。
 それらはすべて、無事に成長していた。全部活躍したしな。
 生き残れたのは、ひとえにこれらの技能のおかげと言って相違ない。
 今回の冒険はかなりハードだったから、【極限】とかもつけていけば役に立ったことだろう。
 だが【極限】は、別にそれがあるからと言って極限を越えられるような技能じゃない。
 自力で極限を維持し続けられるなら、特に必要ない技能だったりする。
 俺にはプリショット・ディープブルーがあるからそこまで重要じゃない。
 その辺、有用な技能は人それぞれで、選ぶのが難しいんだ。それが楽しい。

 新しく取得した技能は【マーシャルアーツ】とか【回避】とかいろいろあるけど……
 
「おい【アクロバット】……。おまえ、どう考えてもフライングだろ……」
「うわ、フーガ、もうそれ出したの。前作だと発見まで1年くらい掛かってなかった?」
「前提技能の制限がかなり曲者だったからな……。これもバグという名の仕様か」
「自分で言っといてなんだけど、なんでもかんでもバグのせいにするのやめよう?」

 仕様通りだとすると、この技能も今作から取得条件変わったのかもしれない。
 今作からフルダイブゲームになって、前作とはいろんなところが変化している。
 うまいこと適応していきたいものだ。

「……あ。【有毒】、成長してる」
「おっ。……えっ、あれ? カノン、【有毒】なんてどこで適用されてたんだ……?」
「わかん、ない……」

 ちなみに、今回の冒険にカノンが付けていった技能は【夜目】【危機感知】【握力強化】【斧術】【有毒】だった。

「……巻き付かれたとき、とか……?」
「そういえば、ズールもあの肉柱も、カノンに関しては躊躇というか……動揺してた時があった、か?」

 カノンに対するズールや " ニアの落とし仔 " の動きがどこかおかしいときがあったのは、もしかすると【有毒】のおかげなのではないだろうか。
  " ニアの落とし仔 " の挙動がおかしくなった理由は、よくわからないけれど。
 そもそもあいつは、なんのために俺たちを襲ってきたんだ……?


 そして最後に、今回取得した実績のうち、そのいくつかを見てみよう。
 ――――――――――――――――――――
 【モータル・コンバット】
 取得条件:瀕死状態で1時間以上行動する。
 ――――――――――――――――――――
 暗に「死にぞこない」って言われてるな?

 ――――――――――――――――――――――――
 【ニア・イモータル】
 取得条件:瀕死状態で1時間以上行動し、生還する。
 ――――――――――――――――――――――――
 あ、こっちはちょっと嬉しい。
 こういうのがあると、死に物狂いのモチベーションも上がる――

 ――――――――――――――――――――――
 【 " ■■■■■ " の小片】
 条件条件: " ■■■■■ " のポータルを起動する。
 特殊機能:???
 ――――――――――――――――――――――
 ……うん?

「モンターナ、おまえの方にもこの実績出てるよな」
「 " カレドリア " って書いてある、ね……。それで、この実績名は……」
「なるほど、つまり……カレドリアの『小片』。
 誰かさんの雑誌を知ってると、 " カレドリアン・シャード " って読みたくなるよな?」
「スタッフさんのなかにも、ファンがいる、のかも?」
「……実は『カレドリアン・シャーズ』の名前の元ネタがWandering Wondererのカレドリア帝国だから、元ネタの元ネタに戻ってきただけのような……」

 ……で。

 ――――――――――――――――――――――
 【星を継ぐもの】
 条件条件: " ■■■■■ " からのメッセージを受け取り、
      " ■■■■■ " を破壊する。
 特殊機能:???
 ――――――――――――――――――――――
「 " カレドリア " からのメッセージを受け取り……」
「 " ニアの落とし仔 " を破壊する……」
「それが、【星を継ぐ、もの】……?」

 前作の俺たち。この星を継いだなにものか。今作の俺たち。
 やはり今回の俺たちの冒険は……『犬2』の物語のかなり深いところまで至っていたらしい。

「……あっ、わたしの方にも、同じの出てる」
「なにこの……なに?」
 
 " ■■■■■ニアの落とし仔 " に関する実績の謎が解けたと思ったら、すぐにまた来る次の謎。
 ところで特殊機能ってなんですか。


 *────


 と、まぁ、そんなところで。
 俺たちの今回の冒険は、多くの謎を並べるだけ並べて棚上げして、ひと通り総括された。
 モンターナに礼を言って、幾つかの約束を交わし、モンターナの拠点を後にする。

「……あー、なんというか。久しぶりの地上……!」
「フーガくん、やっぱり昨日は、気づいてなかった?」
「そういや、モンターナとカノンにここまで運んで貰ったんだったな。……ありがとな、カノン」
「んっ」

 今のセドナは、夜時間だ。
 今日はもう、拠点に帰って終わりにしよう。

 二人の拠点に向かって歩きながら。
 他愛ない雑談に興じながら。
 心地よい夜風を愉しみながら。
 月のない夜空の下を歩きながら。
 ふと――カノンがこんなことを言う。

「ね、フーガくん」
「うん?」
「……明日、したいことが、あるんだけど――」
「いいとも」

 自分を誘ってくれる人がいる。
 一緒に遊べる人がいる。

 ……ああ。

 こんなに―― 嬉しいことはない。
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