11 / 26
10.秘密の行動
しおりを挟む
第十番 嬰ハ短調 Molto allegro
電話をした翌日、僕と聡は汐入の駅改札口で待ち合わせることにした。
「芸術劇場のこと話聞きにいこうぜ」
と聡からまたLINEが入ってきていたからだ。昨晩の電話で今日のお誘い。聡の行動の速さにはいつも感心するところがある。
横須賀芸術劇場は汐入駅下車してすぐの場所にある。京急久里浜から快速特急に乗車したが、汐入は快速特急が停まらないため横須賀中央で普通列車を待って乗り換えるか、京急堀之内で普通列車に乗り換えることになる。到着時刻は結局のところ変わらないのだけどいつもは通過してしまう県立大学駅で下車することに新鮮味を感じる。
乗車した車両を見渡してみたが聡はいなかった。別の車両にでも乗っているのだろう。浦賀からの列車は普通列車しかないので乗車する聡とは同じ列車になるはずなのに。
汐入駅の改札口を出ても聡はいなかった。どうやら乗り遅れたらしい。
僕はスマートフォンを立ち上げるが連絡はきていない。待ち合わせの約束時刻になってLINEに連絡が入った。
「すまん。15分程遅れる」
「了解」
と返事を打った。
聡が来るまで僕は芸術劇場建屋の1階のゲームセンターで時間をつぶすことにしようと思ったがゲームセンターは電子音の混在した空間であることに躊躇う。入口にクレーンゲーム機が設置してあったので、それで時間を潰すことにした。
景品を覗くとスカレー海上自衛隊音楽隊限定バージョンと書かれたスカレーのぬいぐるみだった。それはいつもの水兵さんの恰好ではなく音楽隊の恰好をしたスカレーだった。さすが芸術劇場下の景品といったところだろうか。
僕は100円玉を入れる。
まずはそのまるまるとした顔を狙ってみよう。アームは予定通り顔を掴んだかのようにみえたけどクレーンがあがるとアームからずり落ちてくちばしを上にして横たわる。
100円を追加。もう一度顔を狙うが今度は位置がいまいち。
さらに100円。今度はアームは顔をしっかりと捉えたがやはりずり落ちる。
もう100円追加。今度はお腹を狙ってみる。首にひっかけてやろうという狙いだ。狙い通り頭を狙った時よりもスカレーが引きあがったがクレーンが最高点に達するやその振動でぽてりと落ちてしまった。スカレーは真っ逆さま。
こんちくしょうめと100円を追加する。
最後はひっくり返ったスカレーがお尻を突き出して横たわるだけだった。
やれやれ頭をぽりぽり掻いて少し溜息をつき、僕はここで諦めることにした。
*
15分後聡と合流する。
「いやすまん。電車に一本遅れてしまった」
聡はすまない、と両手を合わせながら頭を下げて謝ってきた。
「なに、気にすることはないさ。ただ500円ばかしクレーンゲーム機に吸い込まれてしまったけどな」
「なんだ500円も吸い込まれたのか?」
「ああ、お前が遅れてきたからな」
僕は少しだけ皮肉を言ってみる。
「どの機種だよ?」
僕は500円を呑み込んだ機種を指さす。
「ほうっスカレーのぬいぐるみか。どれ」
そういって聡は100円玉を入れる。
クレーンはぐいんぐいんと動き、スカレーの中心とは逸れた位置にとまった。
「おいおいそんなところでいいのかよ?」
「まぁみてなって」
クレーンが降りていく位置ではアームは何も掴みはしないと思われたが、開いたアームがスカレーのお尻を押し出し筒の中に転がり落ちた。
「こういうのはさ、掴もうとするから駄目なんだよ」
取り出し口から取り出したスカレーを得意げにみせてくる。
「さっいこうぜ」
しかし、こいつの雑学というかこうした情報に関しては感心するところがあるものだ。早く進むべきベクトルが定まるといいのだけどな。
「視野は広くってことだな」
感心する僕の表情を汲み取ったからのか言葉を付け足してくる。そういうものなのか・・・
戦利品を見せられては反論もできず、僕らは横須賀芸術劇場に向かうエスカレーターに足を運んだ。
*
「申し訳ございませんが8月の大ホールのスケジュールは一杯なんです」
受付で応対してくれた女性スタッフはホールの空き枠についてお詫びの言葉を申し上げてきた。
録音をするのならば夏休みの間にと思って行動をし始めたが、僕らの計画は第一関門で破綻してしまった。
「はやくても10月の平日にしか空いてませんね。どうされますか?」
さらに追い打ちをかけられる。
日程はどうにもならない。ひとまず10月に借りるかは保留しておくことにした。
それでも受付のお姉さんは備品についての説明や、賃貸料等についても詳しく教えてくれた。
「小ホールでしたら8月でも一枠空いてますよ」と帰り際に教えてくれた。
*
横須賀芸術劇場の受付窓口を後にし、階段を降りる。
僕らはなんとなく駅前の歩道橋の真ん中で足を止めた。お互い無言のまま。
昼間の国道16号線の車は数珠繋ぎのように絶え間なく連なって走っていて途切れることがない。僕と聡はぼんやりと歩道橋の下を走る車の流れを無言で眺めていた。僕が何かを言いかけようとしたがYナンバーをつけた車が爆音を轟かせながら赤信号に捕まった。
Yナンバーというのは横須賀米軍基地に住んでいる人達がつけるナンバープレートの事。だからドライバーはアメリカ人。アメリカ人ってのはとにかく音が出る車が好きだ。時代に逆行しているというか、文化がそのまま残っているというか、妙にガラパゴスなところがあると感じる。会話の切り出しに困っていた時なので会話を遮るくらいの爆音が今はありがたかったりもした。
「まぁいきなりじゃしょうがないか」
信号が青に変わりYナンバーをつけた爆音車が通りすぎていくと沈黙に耐えかねたのか聡の口から言葉が出た。
「小ホールにするか。10月まで待ってみるか、かぁ」
選択は二択しかない。聡は選択肢を口にするがどちらも選びたいという気持ちでないことは言葉の抑揚から感じとれる。
「小ホールでも録音するにはいい環境だとは思うけど、やっぱり大ホールでやってあげたいよな。願い事を値下げするって感じだしさ」
そして本心を口に出してきた。聡としては想い出に残るような事としてやる以上、大ホールに拘りたいようだ。それは僕も同じ気持ちだ。
「10月は体育祭があるしな。まぁクラスの中心になるわけじゃないが、非協力的になるのには気がひけるよ」
僕は10月の困難さを口にする。学校の祭り事にはまったく興味がないわけだけど、まったく非協力的な人間というわけではない。ただでさえクラスに溶け込めない人間なだけに期待はされていないがこれ以上疎まれるのは得策ではないという空気は読めている。
もとより他人にあまり関心のない人間ばかりが集まっている学校なのでいじめといった事案はほとんど聞かれたことがないが、熱い人間がいることはたしかなので、波風だけはたてないようにするのが処世術というものだ。
「ところでさ。録音の話って潮崎さんには確認したのか?」
聡が「いまさらだけどよ」なんて口にしながら僕の顔を確かめにきた。
「いや聞いちゃいないな」
僕は即答した。
「はぁ???」
聡は呆れた表情で僕の顔を疑ってきた。
「いや、まぁサプライズってことでもいいんだけどさ。でも練習しなきゃいけなかったりもするんだろう?」
「すまん」
僕はシンプルに謝った。
「わかった。わかった。何か理由がありそうだな。でもとにかく聞いておけよな」
「それじゃ、俺はこれからバイトだからさ。とりあえずお金はあった方がいいだろう。働きますよ」
聡はそう言って手をひらひらと舞わせながら、ドブ板の方へ消えていった。
僕がとくに言い訳もしなかったことに理由があったことを察してくれたと感じた。
美海にはまだ話をしなかった理由。それは美海の弾きたい曲には問題があるからだ。その問題を解決すべき手段が僕に考えはあるものの、実行できるかが問題なのだ。それは誰に相談して解決できることじゃない。
電話をした翌日、僕と聡は汐入の駅改札口で待ち合わせることにした。
「芸術劇場のこと話聞きにいこうぜ」
と聡からまたLINEが入ってきていたからだ。昨晩の電話で今日のお誘い。聡の行動の速さにはいつも感心するところがある。
横須賀芸術劇場は汐入駅下車してすぐの場所にある。京急久里浜から快速特急に乗車したが、汐入は快速特急が停まらないため横須賀中央で普通列車を待って乗り換えるか、京急堀之内で普通列車に乗り換えることになる。到着時刻は結局のところ変わらないのだけどいつもは通過してしまう県立大学駅で下車することに新鮮味を感じる。
乗車した車両を見渡してみたが聡はいなかった。別の車両にでも乗っているのだろう。浦賀からの列車は普通列車しかないので乗車する聡とは同じ列車になるはずなのに。
汐入駅の改札口を出ても聡はいなかった。どうやら乗り遅れたらしい。
僕はスマートフォンを立ち上げるが連絡はきていない。待ち合わせの約束時刻になってLINEに連絡が入った。
「すまん。15分程遅れる」
「了解」
と返事を打った。
聡が来るまで僕は芸術劇場建屋の1階のゲームセンターで時間をつぶすことにしようと思ったがゲームセンターは電子音の混在した空間であることに躊躇う。入口にクレーンゲーム機が設置してあったので、それで時間を潰すことにした。
景品を覗くとスカレー海上自衛隊音楽隊限定バージョンと書かれたスカレーのぬいぐるみだった。それはいつもの水兵さんの恰好ではなく音楽隊の恰好をしたスカレーだった。さすが芸術劇場下の景品といったところだろうか。
僕は100円玉を入れる。
まずはそのまるまるとした顔を狙ってみよう。アームは予定通り顔を掴んだかのようにみえたけどクレーンがあがるとアームからずり落ちてくちばしを上にして横たわる。
100円を追加。もう一度顔を狙うが今度は位置がいまいち。
さらに100円。今度はアームは顔をしっかりと捉えたがやはりずり落ちる。
もう100円追加。今度はお腹を狙ってみる。首にひっかけてやろうという狙いだ。狙い通り頭を狙った時よりもスカレーが引きあがったがクレーンが最高点に達するやその振動でぽてりと落ちてしまった。スカレーは真っ逆さま。
こんちくしょうめと100円を追加する。
最後はひっくり返ったスカレーがお尻を突き出して横たわるだけだった。
やれやれ頭をぽりぽり掻いて少し溜息をつき、僕はここで諦めることにした。
*
15分後聡と合流する。
「いやすまん。電車に一本遅れてしまった」
聡はすまない、と両手を合わせながら頭を下げて謝ってきた。
「なに、気にすることはないさ。ただ500円ばかしクレーンゲーム機に吸い込まれてしまったけどな」
「なんだ500円も吸い込まれたのか?」
「ああ、お前が遅れてきたからな」
僕は少しだけ皮肉を言ってみる。
「どの機種だよ?」
僕は500円を呑み込んだ機種を指さす。
「ほうっスカレーのぬいぐるみか。どれ」
そういって聡は100円玉を入れる。
クレーンはぐいんぐいんと動き、スカレーの中心とは逸れた位置にとまった。
「おいおいそんなところでいいのかよ?」
「まぁみてなって」
クレーンが降りていく位置ではアームは何も掴みはしないと思われたが、開いたアームがスカレーのお尻を押し出し筒の中に転がり落ちた。
「こういうのはさ、掴もうとするから駄目なんだよ」
取り出し口から取り出したスカレーを得意げにみせてくる。
「さっいこうぜ」
しかし、こいつの雑学というかこうした情報に関しては感心するところがあるものだ。早く進むべきベクトルが定まるといいのだけどな。
「視野は広くってことだな」
感心する僕の表情を汲み取ったからのか言葉を付け足してくる。そういうものなのか・・・
戦利品を見せられては反論もできず、僕らは横須賀芸術劇場に向かうエスカレーターに足を運んだ。
*
「申し訳ございませんが8月の大ホールのスケジュールは一杯なんです」
受付で応対してくれた女性スタッフはホールの空き枠についてお詫びの言葉を申し上げてきた。
録音をするのならば夏休みの間にと思って行動をし始めたが、僕らの計画は第一関門で破綻してしまった。
「はやくても10月の平日にしか空いてませんね。どうされますか?」
さらに追い打ちをかけられる。
日程はどうにもならない。ひとまず10月に借りるかは保留しておくことにした。
それでも受付のお姉さんは備品についての説明や、賃貸料等についても詳しく教えてくれた。
「小ホールでしたら8月でも一枠空いてますよ」と帰り際に教えてくれた。
*
横須賀芸術劇場の受付窓口を後にし、階段を降りる。
僕らはなんとなく駅前の歩道橋の真ん中で足を止めた。お互い無言のまま。
昼間の国道16号線の車は数珠繋ぎのように絶え間なく連なって走っていて途切れることがない。僕と聡はぼんやりと歩道橋の下を走る車の流れを無言で眺めていた。僕が何かを言いかけようとしたがYナンバーをつけた車が爆音を轟かせながら赤信号に捕まった。
Yナンバーというのは横須賀米軍基地に住んでいる人達がつけるナンバープレートの事。だからドライバーはアメリカ人。アメリカ人ってのはとにかく音が出る車が好きだ。時代に逆行しているというか、文化がそのまま残っているというか、妙にガラパゴスなところがあると感じる。会話の切り出しに困っていた時なので会話を遮るくらいの爆音が今はありがたかったりもした。
「まぁいきなりじゃしょうがないか」
信号が青に変わりYナンバーをつけた爆音車が通りすぎていくと沈黙に耐えかねたのか聡の口から言葉が出た。
「小ホールにするか。10月まで待ってみるか、かぁ」
選択は二択しかない。聡は選択肢を口にするがどちらも選びたいという気持ちでないことは言葉の抑揚から感じとれる。
「小ホールでも録音するにはいい環境だとは思うけど、やっぱり大ホールでやってあげたいよな。願い事を値下げするって感じだしさ」
そして本心を口に出してきた。聡としては想い出に残るような事としてやる以上、大ホールに拘りたいようだ。それは僕も同じ気持ちだ。
「10月は体育祭があるしな。まぁクラスの中心になるわけじゃないが、非協力的になるのには気がひけるよ」
僕は10月の困難さを口にする。学校の祭り事にはまったく興味がないわけだけど、まったく非協力的な人間というわけではない。ただでさえクラスに溶け込めない人間なだけに期待はされていないがこれ以上疎まれるのは得策ではないという空気は読めている。
もとより他人にあまり関心のない人間ばかりが集まっている学校なのでいじめといった事案はほとんど聞かれたことがないが、熱い人間がいることはたしかなので、波風だけはたてないようにするのが処世術というものだ。
「ところでさ。録音の話って潮崎さんには確認したのか?」
聡が「いまさらだけどよ」なんて口にしながら僕の顔を確かめにきた。
「いや聞いちゃいないな」
僕は即答した。
「はぁ???」
聡は呆れた表情で僕の顔を疑ってきた。
「いや、まぁサプライズってことでもいいんだけどさ。でも練習しなきゃいけなかったりもするんだろう?」
「すまん」
僕はシンプルに謝った。
「わかった。わかった。何か理由がありそうだな。でもとにかく聞いておけよな」
「それじゃ、俺はこれからバイトだからさ。とりあえずお金はあった方がいいだろう。働きますよ」
聡はそう言って手をひらひらと舞わせながら、ドブ板の方へ消えていった。
僕がとくに言い訳もしなかったことに理由があったことを察してくれたと感じた。
美海にはまだ話をしなかった理由。それは美海の弾きたい曲には問題があるからだ。その問題を解決すべき手段が僕に考えはあるものの、実行できるかが問題なのだ。それは誰に相談して解決できることじゃない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる