能力者主義の世界で俺は無能なチート能力者

高桐AyuMe

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本編

白髪の少女

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 「大丈夫か?」
翌日。教室に入るなり汗衫がそう心配してくる。まあ、この俺の姿を見れば心配するのも無理はない。
顔や手、足などに絆創膏が貼られた状態。大丈夫かと言ってしまうのも頷ける。
「ああ、なんとかな」
あの後、男たちにフルボッコにされた。おかしいなあ。何かの本で、絡まれたら虚勢を張っていれば何とかなるって書いてあったんだけどな~。
「大丈夫ならいいんだが、これ、お前だろ?」
そう言って、汗衫は自分のスマホを見せてきた。そこには、俺が男たちにボコボコに殴られている様子だった。
「あ、ああ。そうだけど、何で昨日の事が…」
「誰かが様子を録画していたらしい」
恐ろしや、ネット監視社会…。
ん?何で自分の醜態をさらされて何も言わないかって?
ん~。別に隠しても仕方ないし、俺の実力は自分が一番わかっているからな。今更騒いでも仕方ない。
「重要なのはそこじゃない」
汗衫は動画を何回かタップして早送りし、あるシーンで手を放す。そこには、その日の俺の服装とよく似た服装をした少女が男たちをなぎ倒していた。まるで赤子を相手にするかのようにさばいていた。見た感じ年齢は俺たちと同じくらいだろうか。俺と同じ白い髪をしていた。
「お前の兄弟か何かか?」
俺は、首を左右に振った。俺は、知らない。この少女を。見たこともない。
「俺に兄弟なんていないし、血縁関係でもない」
「そうか、ならいいんだ」
汗衫はスマホを引っ込める。
「今、警察はこの少女を捜索している」
「ん?何でだ?警察なんて動くような事柄じゃないだろ」
「どうやら、この少女は学校にも所属してないらしい」
何でこの少ない情報でそこまで分かるんだよ。もう恐ろしいとかいうレベルじゃないぞ。うかつに行動出来ないじゃないか。まあ、何か問題を起こす予定はないが。
だが、この少女の実力は圧倒的。学校に入ればAクラスに直行だろう。それぐらいの実力なら警察が動くのも無理ないか。
さて、授業に集中しますか。
俺は、そう心の中で呟いた。

 三時限目の始め。緊急な命令が飛び出た。能力者が逃走し、警察が偶々近くにあったこの学校に応援を要請したという事だった。何故、俺たちFクラスが出なきゃいけないのか疑問を浮かべつつ、俺は学校を出た。
 住宅街に飛び出て一時間。俺は単独でパトロールに当たっていた。無能力者なのに何故単独で回っているかというと、ただ単純に一緒に回ってくれるような奴がいなかっただけだ。
そうしているうちに、道の真ん中で辺りを必要以上に確認している男を見つけた。
明らかに挙動不審。俺はすかさずナイフを引き抜き、構える。その動作で男がこちらに気付き、腰をかがめた。あちらもわかっているのだろう。
瞬間、男が動いた。素早い動き。一瞬にして俺との距離を詰めてくる。
刹那、横腹に激痛。男は俺の背後を取り、追撃を仕掛けてくる。
「ちっ」
俺は体を反転させて、ギリギリの所でその攻撃をよける。
そのまま、地を蹴り、男と距離をとる。だが、それがいけなかった。男は後ろに振り向くと、逃げ出そうとした。
「しまった」
そう思ったときには男は動き出していて…、
その時だった。あの男の声が聞こえてきたのは…。
「いつまで遊んでいるんだ?」
Fクラスのエースが遅れてやって来るのだった。
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