11 / 55
本編
落ちこぼれと敗者
しおりを挟む
「ちっ」
俺と舞原は堀藤の不可視の攻撃に苦戦を強いられていた。
何しろ不可視なのだ。
どこにどのくらいの範囲でどのような速度で来るのかもわからない。
一見、詰んでいるようにも見えるが、突破口がないわけじゃない。俺ではなく、あいつが戦えばいいのだが、ここには舞原がいる。迂闊には出せない。となると、俺一人で何とかする必要がある。
「舞原…、大丈夫か?」
俺は、明らかに疲弊した舞原に問い掛ける。
「大丈夫、と言いたいところだけど、正直厳しいわね。体力も相当削られているし、能力がどこまでもつか…」
この状況。舞原が動けなくなれば、勝負は堀藤に傾く。
それを堀藤自身も分かっての立ち回りだろう。
だが、この場合、舞原が倒れた時点で俺が勝つ。そう断言できる。
何故なら、俺にはあいつがいるのだから。
「舞原千歳もここで万事休すか。この学校のAクラスの中心人物がここで俺に首を垂れる姿が目に浮かんでくるぜ」
「…まだ…、終わって、ない」
舞原は最後の力を振り絞って立ち上がる。が、すかさず不可視の攻撃が舞原を襲った。
「う……、ぐ…、」
その諦めの悪さは褒めてやる。だが、時には実力差というものを知るべきだ。事実、この勝負で俺はお前に勝った。覆せない事実だ。どうだ、敗北の味は?」
「そうね、二度と味わいたくないくらいにはまずくて、苦々しいわね」
地面に這いつくばりながらそう言う舞原。
流石にそろそろ俺も参戦とさせていただこう。
「堀藤、次は俺だ」
「賢いな、お前」
そう言って、堀藤は俺を鋭く見据える。
「舞原との戦いで体力が万全じゃなくなった俺と戦うことで少しでも勝機を上げる。作戦としては悪くないが、俺の場合、能力的に体力はそう使うものじゃない。故に、お前には勝機はゼロなんだよ。無能力者。いや、落ちこぼれ」
「俺の名前が椿零だから、勝機はゼロか。面白いシャレだ。にしても、『落ちこぼれ』ね~。俺にぴったりだな」
「だろう?気に入ったか?」
「ああ、気に入ったよ。お礼にお前にも肩書をプレゼントしてやるよ」
「ほう?それは何だい?」
俺は腰のあたりに手を置いてから、言い放った。
「敗者だ」
次の瞬間、胃に響くような銃声と、堀藤の絶叫が辺りに響き渡る。
「ぐあああああああああ!!!!」
俺のぶっ放した鉛玉は見事、堀藤の肩のあたりに着弾し、赤黒い液体が飛び散る。
「……椿、…零…!!」
「貴方…!」
二人の驚愕する声が聞こえたが、俺はそれらを全て無視し、堀藤に再び銃口を向ける。
「すまんな。俺は無能力者なもんでね、結局科学の力に頼るしかないんだ」
「ふざ、けるなよ…!俺をこの地に着けるとは、許されたことじゃない!」
「別に許しを求めているわけじゃない。それに、お前はいつから王子様になったんだ?ちなみに言うと、お前の能力にも見当はついている。お前の能力は『風を操る程度の能力』だろ?」
その言葉に、堀藤は目を見開く。
そうだ。この能力なら、すべての芸当は可能となる。
横方向の綺麗な切り傷は、突風による『かまいたち』のような現象。
体が浮き上がったのは上昇気流。
また、このことから、風を生み出すことも可能だということも分かった。
「どうだ?落ちこぼれに負ける気持ちは。きっと一生味わうことのない感情だ。しっかりと味わっておくんだな」
俺のような存在は細かい目で見てもイレギュラーな存在だ。
無能力者で、能力者と渡り合える。
そんな無能力者はいたとしても極稀だろう。
「あと、今回のお前の敗因を教えてやろう。お前の敗因は…、」
俺は一拍をおいて、
「自分の能力に過信し過ぎたことだ」
堀藤の能力は部類では強い方に入るだろう。何と言っても不可視の攻撃は回避は不可能に近い。
だが、堀藤は自らの能力に自信を持ちすぎたために、自身の身体能力面を考慮していなかったのだ。
そして、一番の理由は、俺の拳銃だろう。
こんなご時世だと、拳銃よりも能力に警戒をする。よって、相手が拳銃を持っているという思考には至らないのだ。あと、手に入れにくいというのもあるかもしれない。
取り敢えず、俺は堀藤が動けなくなったのを確認したのち、舞原の元へ歩み寄る。
「大丈夫か?」
そう言って、俺は右手を差し出した。
「貴方、本当に何者なの?」
そう言いながら、俺の手を取ってくる舞原に対し、俺は舞原を引っ張りながら、答えた。
「強いて言うなら、ミステリアスで無能力者の悪魔かな」
結果、この戦いは頭首の敗北によってA・Fクラス側の勝利で幕を下ろした。
宣戦布告をし、敗北したBクラスは極稀に見る一斉退学。その他、協力したC・D・Eクラスは一つ降格の処分を受けた。
敗者に興味はない。というこの学校の理念にも改めて、実感させられた。
俺たちFクラスは空いたBクラスへの史上最高のクラス昇格を達成した。
つまり、現在はCクラスが不在という又もやこの学校歴史史上初の状態となった。
そして、世界の変動は止まることを知らなかった。
俺と舞原は堀藤の不可視の攻撃に苦戦を強いられていた。
何しろ不可視なのだ。
どこにどのくらいの範囲でどのような速度で来るのかもわからない。
一見、詰んでいるようにも見えるが、突破口がないわけじゃない。俺ではなく、あいつが戦えばいいのだが、ここには舞原がいる。迂闊には出せない。となると、俺一人で何とかする必要がある。
「舞原…、大丈夫か?」
俺は、明らかに疲弊した舞原に問い掛ける。
「大丈夫、と言いたいところだけど、正直厳しいわね。体力も相当削られているし、能力がどこまでもつか…」
この状況。舞原が動けなくなれば、勝負は堀藤に傾く。
それを堀藤自身も分かっての立ち回りだろう。
だが、この場合、舞原が倒れた時点で俺が勝つ。そう断言できる。
何故なら、俺にはあいつがいるのだから。
「舞原千歳もここで万事休すか。この学校のAクラスの中心人物がここで俺に首を垂れる姿が目に浮かんでくるぜ」
「…まだ…、終わって、ない」
舞原は最後の力を振り絞って立ち上がる。が、すかさず不可視の攻撃が舞原を襲った。
「う……、ぐ…、」
その諦めの悪さは褒めてやる。だが、時には実力差というものを知るべきだ。事実、この勝負で俺はお前に勝った。覆せない事実だ。どうだ、敗北の味は?」
「そうね、二度と味わいたくないくらいにはまずくて、苦々しいわね」
地面に這いつくばりながらそう言う舞原。
流石にそろそろ俺も参戦とさせていただこう。
「堀藤、次は俺だ」
「賢いな、お前」
そう言って、堀藤は俺を鋭く見据える。
「舞原との戦いで体力が万全じゃなくなった俺と戦うことで少しでも勝機を上げる。作戦としては悪くないが、俺の場合、能力的に体力はそう使うものじゃない。故に、お前には勝機はゼロなんだよ。無能力者。いや、落ちこぼれ」
「俺の名前が椿零だから、勝機はゼロか。面白いシャレだ。にしても、『落ちこぼれ』ね~。俺にぴったりだな」
「だろう?気に入ったか?」
「ああ、気に入ったよ。お礼にお前にも肩書をプレゼントしてやるよ」
「ほう?それは何だい?」
俺は腰のあたりに手を置いてから、言い放った。
「敗者だ」
次の瞬間、胃に響くような銃声と、堀藤の絶叫が辺りに響き渡る。
「ぐあああああああああ!!!!」
俺のぶっ放した鉛玉は見事、堀藤の肩のあたりに着弾し、赤黒い液体が飛び散る。
「……椿、…零…!!」
「貴方…!」
二人の驚愕する声が聞こえたが、俺はそれらを全て無視し、堀藤に再び銃口を向ける。
「すまんな。俺は無能力者なもんでね、結局科学の力に頼るしかないんだ」
「ふざ、けるなよ…!俺をこの地に着けるとは、許されたことじゃない!」
「別に許しを求めているわけじゃない。それに、お前はいつから王子様になったんだ?ちなみに言うと、お前の能力にも見当はついている。お前の能力は『風を操る程度の能力』だろ?」
その言葉に、堀藤は目を見開く。
そうだ。この能力なら、すべての芸当は可能となる。
横方向の綺麗な切り傷は、突風による『かまいたち』のような現象。
体が浮き上がったのは上昇気流。
また、このことから、風を生み出すことも可能だということも分かった。
「どうだ?落ちこぼれに負ける気持ちは。きっと一生味わうことのない感情だ。しっかりと味わっておくんだな」
俺のような存在は細かい目で見てもイレギュラーな存在だ。
無能力者で、能力者と渡り合える。
そんな無能力者はいたとしても極稀だろう。
「あと、今回のお前の敗因を教えてやろう。お前の敗因は…、」
俺は一拍をおいて、
「自分の能力に過信し過ぎたことだ」
堀藤の能力は部類では強い方に入るだろう。何と言っても不可視の攻撃は回避は不可能に近い。
だが、堀藤は自らの能力に自信を持ちすぎたために、自身の身体能力面を考慮していなかったのだ。
そして、一番の理由は、俺の拳銃だろう。
こんなご時世だと、拳銃よりも能力に警戒をする。よって、相手が拳銃を持っているという思考には至らないのだ。あと、手に入れにくいというのもあるかもしれない。
取り敢えず、俺は堀藤が動けなくなったのを確認したのち、舞原の元へ歩み寄る。
「大丈夫か?」
そう言って、俺は右手を差し出した。
「貴方、本当に何者なの?」
そう言いながら、俺の手を取ってくる舞原に対し、俺は舞原を引っ張りながら、答えた。
「強いて言うなら、ミステリアスで無能力者の悪魔かな」
結果、この戦いは頭首の敗北によってA・Fクラス側の勝利で幕を下ろした。
宣戦布告をし、敗北したBクラスは極稀に見る一斉退学。その他、協力したC・D・Eクラスは一つ降格の処分を受けた。
敗者に興味はない。というこの学校の理念にも改めて、実感させられた。
俺たちFクラスは空いたBクラスへの史上最高のクラス昇格を達成した。
つまり、現在はCクラスが不在という又もやこの学校歴史史上初の状態となった。
そして、世界の変動は止まることを知らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる