能力者主義の世界で俺は無能なチート能力者

高桐AyuMe

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本編

試験二日目

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 俺は寝袋から出ると、一度洞窟から出て大きくのびをする。
 普段とは違う環境と寝心地に少しばかり腰が痛んだ。最近では中々にいいベットで寝ているためか、体が思うほど順応してないようだ。Bクラスになる前は別にこれくらいはなんとも思わなかったんだが、自分でも知らずの内に、今の生活に慣れてしまっていたらしい。
 今日は試験二日目。今日までが戦闘禁止期間だ。明日からは血に飢えた生徒たちがどこかしこで戦闘が繰り広げられることだろう。
 安全に行動できるのは今日までか。
 ポイント消費が前提なこの試験。今日も課題でポイントを集めてもう少し物資を潤したところだ。明日から完全に行動できる保証はどこにもない。ましてや、本部に足を運んで物資を交換してもらったとしても、その道中に襲われては意味がない。
 俺はタブレットを開き、課題を確認。現在の時刻は8時を過ぎたところ。
 見たところ、まだ課題は出現していない。恐らくは9時から出現しだすはずだ。
 俺は荷物をまとめ、手ぶらで砂浜に出る。取りあえずは本部に向かう。昨日手に入れたポイントで交換できるものは今のうちに手に入れておきたい。
 海岸線に沿って砂浜を歩く。既に日はのぼり、日光が海に反射して俺を照射してくる。光に顔をしかめながら、本部に着くと、既に先着がいた。
「あら、意外と早い起床のようね」
「言うても、もう8時だろ。本格的に動くのは9時からとは言え、早く起きるのは普通だと思うが」
 本部の物資交換場にて、品選びをしていた舞原千歳が話しかけてきたため、俺はそう返す。
「そう。試験は順調かしら?」
「まだ始まっていないようなもんだろ。戦闘解禁は明日から。今は貯め時だろ? ここからどう転ぶかは分からない」
「それもそうね。で、貴方も物資を交換しに来たのかしら?」
「ああ、明日から戦闘が始まるからな。安全に行動できる今日のうちに手に入れておこうと思ったんだ」
「それなら心配しなくていいわよ。本部から半径1KM以内は戦闘禁止だから」
「あれ、そうだったか」
「貴方、ルールを読み込まずに挑もうとしてたわけ? 流石にそれはマイペースすぎじゃないかしら?」
「結果的に始まる前に聞けたんだ。細かいことはどうでもいい」
「あっそ。なら教えるんじゃなかったわね」
「随分と冷たいな。別にそれくらいならいずれ気づいた可能性は高いが?」
「私としては貴方がルールを理解せずに停滞してくれたほうが都合がいいもの。別に戦って勝つことは揺るがないけど、私が手を下さずにつぶれてくれるなら、ありがたいわ」
「それなりの警戒はされているようで何よりだ」
 舞原とはそれなりに長く共に行動してきた。それこそ学校内紛から始まり、この間の試験、そしてあの暴走者の一件。どの場面も戦闘を伴う状況だった。そんな中で俺の実力に全くもって気づかないというのは、学校最強の名が廃る。
 試験に関して言えば、一週間近く、幾つもの共闘をしていれば、嫌でもわからせられる。警戒せざるを得ないその実力に。それこそ西園寺と同等に。
「けど、私としてはそんなことでは勝ちたくはないわ」
「というと?」
「私は、私が学校最強というならば、自分の手で証明したい。自分の力で、確かな証明が」
 周りからの評価で今の地位まで上り詰めたこともある反面、その影響で植え付けられた学校最強という肩書き。しかし、それは自らの力を見せつけた結果というわけではない。あくまでも他人の評価。それに甘えていた今までの自分を捨てて、この試験でそれを証明する。
「だからこそ、貴方にはそう簡単にへばってもらうととても困るのよね」
「お前と戦わなくなるならそれでいいかもな」
 しかし、彼女はそんな皮肉に何も言うこともなく、踵を返す。
「それじゃ、また会いましょう。必ずね」
「冗談きついな。俺としてはそんな最悪な約束はしたくないんだが」
 学校最強を相手取って戦うなど想像したくない。明らかに避けるべき事態だ。
 だが、必ず彼女はこの試験で俺の前に立ちはだかると、確信めいたものを感じた。
 そんな舞原の背中を見送り、俺は品選びを始めた。
 まだ反射する光は俺の顔を照らしてるようで、俺の顔は一層険しくなった。

 拠点に帰ってきたところで、ちょうど9時になり、予想通り課題が出現し始める。だが、ここは島の中でも奥に位置する。まだ近くに課題は見られない。だが、そろそろ移動は始めたい。
 俺は先程本部で物資を交換してきた。内容としては少し小さめのバックパックに食料を交換。食料などに関しては課題で手に入れられることが昨日わかったため、優先度は低いが、明日以降は挑められないので、少しでも交換しておくのは得と考えた。次にこのバックパックだが、配布されたものではテントなどの試験の必需品を運ぶものであるため、常に持ち歩くには大きすぎる。だからといって、島の情報が入ったタブレットを生身で持つのはリスキーだ。もし無くしたりした場合、それだけで大きな損失になる。そのための小さなバックパックだ。他にも水や食料も少しは身に着けていたほうが良いための物でもある。それを運ぶために交換したものだ。
 さて、ここからは取り敢えず、静観だ。ポイントは戦闘敗北時に所持の4/1が奪われるため、所持が少なければ奪われるポイントは減っていく。あくまでも保険であるが、やらないよりはましだろう。スタートがゼロでも勝ち続ければ、嫌でもポイントは膨らんでいく。わざわざかき集める必要もない。もしかすると、舞原も同じことを考えたから本部でポイントを消費しようと思ったのかもしれない。
 俺は時間を確認して、タブレットを開く。なるべくこの島の地図は頭にインプットしておきたい。後、今日はこれと言ってやることはない。
 やれることはやった。ほぼ万全と言える状態で明日に臨める。
 いよいよ明日は戦闘解禁。本試験もいよいよ本番を迎える。
 どんな結果が待ち受けるか、それは誰にも分からない。だが、俺がとる行動はいつでも変わらない。
 勝ち続ける。いつだって俺は、負けることはない……。
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