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3.立ちふさがる弟という名の壁
しおりを挟む「申し訳ございませんが、お引き取りください」
そう言って氷点下何度かの目で見下ろしてくるのは、セイラ様専属メイドのオネェサン。目があのメイド長さんに似ているなーなんて思っていたらやっぱり、姉妹だったようです。
そんな彼女に扉の前で門前払いを受ける僕。『セイラさんに会いに来ました』と言ったら上記の言葉を返されました。
婚約者に会えないなんて・・・やっぱり僕の人生、全然イージーじゃないと思う!!
*****
当主様の部屋を出た後、僕に宛がわれた部屋に案内された。離れに負けず劣らず、いやそれ以上に豪華な部屋に気後れしそうでキョロキョロ見回していると、割ったら大変なことになりそうな花瓶があったりして汗が流れる。皆食事はバラバラに取っているため僕はどうするか聞かれ、せっかく習ったマナーを忘れないため食堂で食べる旨を伝えるとかしこまりましたといって執事長さんはお辞儀をしながら下がっていった。
もうすぐ昼時なこともあり、ベットに座って足をぶらぶらさせているとお腹がくぅと小さく鳴った。先ほど執事長さんに『食事を取りたくなったら召使いにおっしゃってください』と言われたのを思い出し、部屋の扉を少し開けそこに立っていたメイドルさんに食事をお願いする。しばらく経つと食事が用意できたとのことなので、僕はメイドルさんの後に着いて食堂へと向かった。
出された温かい料理は舌に染み、心に染みた。あまり大仰なものじゃない方が良いと伝えたからか、野菜たっぷりのシチューみたいな料理とパンだ。舌が火傷をしないくらいの絶妙な温かさで、よく煮られた野菜たちがほろほろと口の中でほぐれていく。
僕だって、不安を感じていない訳ではない。ここ数ヶ月の間に家を離れ、故郷を離れ、知らない家で知らない人たちに囲まれて過ごしている。精神的に疲れているのだ。そんな心をあったかく包み込んで癒やしてくれるような力が、この食事にはあった。
おいしいな・・・と口を頬を緩めながら食べていると、視界に白い何かが入る。んん?っと視線を徐々に上げていくと白い服に白いボタンが付いており、どうやらコックさんの服だということがわかった。そのまま視線を上げていくと、明るい茶髪をお茶目に撥ねさせた・・・・・・イケメン。
「ふぇっっ!!?」
「ヨッ!初めまして、ルキ様」
テーブルに手をついて僕の顔を覗く目の大きいこと、その周りを飾る睫の長いこと・・・・・・イケメンまぶしっ!!
彼はここで料理を作っている料理人で、ミミさんというらしい。『オレの料理、どう?』と聞かれたため『ひっじょーーにっ、おいし、です!!』と行儀悪いながらすぐに応えなくてはと口にものが入った状態で必死に本心を伝える。
それが伝わったのか彼の顔が綻び、『そっか』と花が咲いたようにパァッと笑みを浮かべた。あまりにも綺麗すぎて、僕も頬が熱くなってくる。
「あ、そうだ。オレ双子の姉がいるんだけどさ、紹介してもいい?」
「ハイッ!もちろん!!」
そう言って半ば強引に引っ張られてきたのは、ミミさんと同じ髪色でこちらは癖がなくストレートの髪を一つに纏めた美人さんだった。名前はメメさんというのだそうだ。この屋敷に来てから誰にも歓迎されず何故か皆から嫌われているので、こうやって気さくに話してくれる彼らに嬉しくなり、僕は思わず二人に『友達になってくださいっ!』とお願いしてしまった。ハッと我に返り謝ろうとすると、差し出した手を取って『こちらこそ!』と笑ってくれたので、嬉しさで思わず泣きそうになってしまったのは内緒だ。
そうして幸福の昼食を終え、メイドルさんに屋敷の中を案内してもらう。一通り見て回り、セイラ様に挨拶したいなと思って部屋まで行き、扉の前で立っていたメイドさんに声をかけたら軽くあしらわれてしまったのだ。
ショボン・・・としながら歩いていると、こうなることをわかっていながらも付き添ってくれたメイドルさんが明らかに僕を気遣ってくれているようにちらちらと視線を送ってくれているのを感じる。だがさっと顔を上げるとあっちも顔をさっと避け、まるで何事も無かったかのように振舞うからなんだかおかしくなってしまった。
「(一回断られたぐらいじゃ、諦めないぞ!!)」
僕は元気を取り戻し、足取り軽く自室へと向かった。
夜は夜で広い食堂でぽつんと一人で食事を取る。なんだか脇に控えている召使いさんたちの視線が僕に集中していて非常に緊張するが、僕は先生方に習ったとおりマナーを守って食事をした。ふーんというような雰囲気が感じ取れ、『ふふん、僕だってやればできるんだぞ!顔が良い(自分で言うの恥ずかしい///)からって何もできない訳じゃないぞ!』って得意顔になっちゃったかもしれないのが恥ずかしい。
それから、離れの屋敷で過ごしていたものとあまり変わらない生活が続いていた。家庭教師の先生は数は減ったものの今でも数日に一度は僕の部屋を訪れてくれるし。ただちょっと違うのは、食事の後にミミさんとメメさんとお話しすること、お義父さん(当主様にそう呼べって言われた)とも時々お話することと、メイドルさんと一緒に広い庭園を散歩したりすること。そして、そこで見つけた綺麗な花や今日一日経験した新しいことなど、話したいたくさんのお話を持って行き、セイラ様に会いに行くこと。いつも部屋の前で門前払いされるのだが。でもいつも冷たいメイドのハナさんは、口調は厳しいながらも僕の持っていったものをちゃんと受け取ってくれているから、それがセイラ様にも届いているといいな・・・・・・。
そしてある日、いつものように昼食後の散歩のあと庭園で見つけた珍しい花を持ってセイラ様の部屋の前まで来ると、そこには僕よりも少し大きめな少年が仁王立ちしながら僕を待ち伏せていた。
「俺はお前が姉上の婚約者だなんて認めない!!もう姉上の部屋には来んじゃねぇ!!」
ギョロッとした目が僕を力一杯睨み、口を大きく開けて息を吸ったと思うといきなりこんなことを言われた。
「うちの金が目的のくせにっっ!!早くうちから出てけっ」
「坊っちゃん!いけません」
「うるさいっ!!本当のことじゃないか!!毎日毎日来やがって。姉上も迷惑しているんだぞ!!」
「なんで君にそんなこと言われなきゃいけないんだ!!」
「家族だからだ!!お前はうちとは関係ないよそ者だ!!早く自分の家に帰れ!」
ハナさんに『ローシュ様』と呼ばれる少年はそう言いきると、すぐに走ってどこかへ行ってしまった。付き人が慌てて後を追って行くのを目で追い、その後本来の目的であったセイラ様の部屋の扉に視線が向かう。
ローシュ様に言われたことが頭の中で響き、眉根が自然に下がってくる。『家族じゃない』その言葉が心の中でこだました。この家に来てからずっと感じていた孤独感にその言葉が突き刺さり、一瞬で起き上がれないほどの衝撃を受けたのだ。
そうだ。僕はセイラ様と婚約はしたけれど、まだ正式的には結婚はしていない。家族ではないのだ。
その事実が、なんとも寂しく感じられた。
わくわくした気持ちで持ってきた花を握り肩を落として戻ろうとしたら、ハナさんに咳払いされ手を差し伸べられる。まるで、『おや?もう諦めたのですか?』と言っているような顔で。
その表情に僕はじわじわと笑顔を取り戻し、今日もハナさんにお土産を渡して『明日も来ます!』と言い残して戻っていった。ハナさんのあの態度が、なんだか僕を応援してくれているように感じられ、気持ちが一気に明るくなったのだ。
「お前な・・・しつこいって言葉、わかんねぇのか!!?」
「うわっ!」
次の日もセイラ様の部屋に行き、またその次の日も・・・と懲りずに僕がセイラ様の部屋に行っているのをローシュ様は知っていたみたいで、今日もセイラ様へのお土産探し兼食後の散歩のため庭園で綺麗な花を見つめていると、ふと視界に影が差し見上げるとまたもや仁王立ちして僕を見下ろすローシュ様・・・・・・。
ほへ?なんですか?と首を傾げていると、顔をわなわなさせた彼がいきなり僕の胸ぐらを掴んで来たのでびっくりして声を上げてしまう。
「っ!?」
あまりにも強く胸ぐらを掴まれたせいで上のボタンが千切れてしまい、肌が露わになり冷たい風に身体がビクッとなる。ローシュ様は僕の首元を見るとギョッとした顔になり、眉をキリリとつり上がらせた。
「こんなものまで付けやがって!!」
「痛っ!」
ローシュ様が怖い顔で僕の首元からブチリと何かを千切り取った。彼の手を見ると、なんとその中には大事な大事なペンダント。セイラ様の写真が入ったペンダントだ。
「どんだけアピールしたいんだよお前!そんなにうちの金が欲しいか!!?」
「ああっ!!!」
ローシュ様は凄い剣幕で怒鳴った後に、それを思いっきり濁った池の中に投げ入れてしまった。
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