烏帽子岩と龍

海辺野海月

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写真に写る影

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 垣根の修理は結局祖父ちゃんの言ってた平和工務店にお願いすることになった。

 我が家のある茅ヶ崎市は、垣根とか塀を直す時、条件に添っていれば補助金の申請が出来るんだとか。

 詳しくは両親に任せたけど、使う樹の種類が指定されてるとか、曲がり角とか見透しが悪くならない様に整えるとか、細かい条件は勿論有るけど、悪くないシステムだと思う。

 これを知ってる人がどれだけ居るのか知らないけどさ。

 んで、打ち合わせして、再度垣根の位置測り直して、申請用に写真撮って、って夏休みで暇だし、父さんの代わりに手伝ってたんだけど、ある日、工務店の人がちょっと興奮気味にやって来たんだ。

「これ、この写真見てください!ここの松の所で写真撮ると、なんか白いもやが絶対写ってるんですよ!カメラ変えても写るんですけど、何にも無いですよね?事務の子が龍に見えるって言うんですけど、どう思います?」

 そう言って見せられた写真には、確かに松の樹の下の方に白いもやが写ってる。

 別の角度から撮ったやつとは微妙に形が違うけど、

 龍に見えるといえば見える?

 とりあえず、母さんも買い物行ってて居なかったし、写真は預かることにして、工務店のおばさんにはお引き取り願った。

 龍の居る家、とかちょっと中二病ぽいよね。

 いや、俺も男だし嫌いじゃないけど。


  ***


「この写真どうしたの?書類の申請用?」

 居間でクーラー付けて宿題片付けてたら、バイトから帰ってきた姉ちゃんが台所の机に置いといた写真に気付いたみたいで、麦茶片手に顔出した。

「今日工務店のおばさんが持ってきた写真。松の樹の根本に白いもやが写ってるって興奮しながら持ってきた。」

「え~?あ、本当だ、なんか龍っぽい?ハルもそう思わない?」

 そう言って数学の問題集の上に写真を置く姉。一応、俺勉強中なんだけど。

「工務店の事務の人も龍に見えるって言ってたみたいだよ。」

 答えるまで退ける気の無さそうな姉ちゃんに逆らうのも得策じゃないし、仕方ないから今日のとこは宿題はここまでにしますか。

 俺、夏休みの宿題は早めに片付けるタイプなんだよね。

「んー、龍と言えば龍に見えないこともない?」

「いやいや、ここが頭じゃん?んで、これが角で体がこうふよっとしてて、こことか足っぽくない?」

 姉ちゃんの指し示す場所を一緒に見ると、自分で見てた時より龍に見えてくるから不思議だ。

「あー、もう、こういう時お祖父ちゃんが居たら聞けるのに~。」
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