烏帽子岩と龍

海辺野海月

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庭いじりは祖父ちゃんの仕事だった

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 葬式から帰ってきて皆でお茶して一段落。

 さっき見た何かのオブジェは瞬きしてる間に無くなった。

 疲れてるのかな、俺。

「お父さんも95歳だったし、ピンシャンころりで大往生だったけど、ちょっと最後の置き土産が面倒だったわね。御役所仕事に文句言ってもしょうがないけど、司法解剖とかあんなに時間掛かるものなのね。」

 お茶飲みながら母さんが愚痴る。

 気持ちは分かるけどね。何にも悪いことしてないけど、一応事情聴取とか言われると犯罪者にでもなった気分。

「まあまあ、ご近所の人達も皆さん家を悪く言う人は居なかったし、お義父さんの表情も穏やかだったから警察の人も優しかったじゃないか。まぁ、医者に行っててくれれば、とはちょっと思ったけどな。」

「お母さんだって病院嫌いなの同じじゃない。おんなじことにならない為にもちゃんと病院行ってよね。」

 父さんは母さんを諌めつつもちょっと同意して母さんの機嫌を取るお決まりのパターン。

 姉ちゃんは姉ちゃんでしっかり釘指してる。

「はぁ、でも本当どうしましょう。今までお父さんが庭いじりしてくれてたから、水遣りも枝打ちもみーんなお父さん任せだったじゃない?垣根もだいぶボロっちくなってきたし、いっそ植木屋さんにお願いして全部綺麗にしてからちょっとづつ枝打ちとかやるようにしましょうか?」

「祖父ちゃんが、最近は植木屋さんも少なくなったし、今度垣根は前に屋根直した業者に頼もうかなぁって言ってたよ。」

「そうなの?前に頼んだとこって平和工務店よね?ちょっと電話してみようかしら。」

 祖父ちゃんのリタイアしてからの趣味は専ら庭いじりだったから、しょっちゅう松の枝伐ったり、実がなる果樹に肥料やったり、水撒いたり、毎日色んな事やってた。鋏や包丁研ぐのもお手の物だったから、小物の手入れも自分でしてたし、正直、俺にも父さんにも直ぐに真似は出来ないと思う。

 一応、父さんと二人で教えてもらった事はあるんだけど、祖父ちゃんがやる方が早いから、母さんも「歳なんだから無理しないで」とは言いつつも、好きにさせてたからなぁ。

「お祖父ちゃん、ドラ○もんみたいに何でも出来る引き出しの多い人だったからねぇ。一家に一台的なね。」

「昔の人間は何でも自分でやるのが当たり前だったんだよ。って、祖父ちゃんの口癖だったしね。」

 俺ら姉弟からしたら、祖父ちゃんは何でも出来て、何でも知ってる、凄い人。
 祖母ちゃんが生きてた頃は、祖母ちゃんには頭上がんない人だったけどね。

 そんな所も俺も姉ちゃんも大好きだったんだよね。
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