アース ダンジョン核を持つ少女

生けもの

文字の大きさ
63 / 82
2章 アースの学園生活

036 闘技大会 前夜祭の事件

しおりを挟む
 ー≪心理の泉学園 演習場≫ー

 総合戦闘部門の予選、参加者はウルリカ、キング・オブ・モブ男爵令息、ヴォルス伯爵令息…他。試合形式は全員参加でのバトルロワイアルだ。

 今回、学園側はウルリカの合体の使用を許可した。これまでは秘匿すべき内容だったが、学園の教授がウルリカの魔力素体エレメントと自身との合体について解明をすすめ、その論文を発表できる算段が付いたらしい。
 そのため闘技大会でのウルリカは絶好のデモンストレーションになると判断したらしい。

「いいか、まずはあのゴーレムもどきの小娘を全員でギタギタにする。そのあとは俺に勝ちを譲れ。そしたらヘルマン家うちからたんまりと謝礼を払う」
「ヴォルスさんには敵わないだろうからそれでいいです。でもあんな子に全員でなんて、もしかしてビビってます?」
 図星をつかれ、慌てて否定する。

「ちっちがう!単に生意気だから気に食わないだけだ」
 ヴォルスは1号と2号がウルリカのパンチでぼこぼこにされた顔面を思い出し、ぶるっと震えた。

 ピ―――!
 開始の合図と共に、ヴォルス達がウルリカに襲い掛かった。
 狩人蜂ハンタービー旋風鷹ウィンドホーク幻影狐ファントムフォックスなど様々な魔力素体エレメントにウルリカはなすすべもなく攻撃を受けた。

「ははは、一気に攻撃されたら逃げる隙もなかっただろう!」
 ヴォルスがウルリカの敗北を確信して勝ち誇った。

 モウモウとたちこめる土埃が次第に晴れると、そこには半分ゴーレムと化したウルリカが立っていた。
「あーー、また服が破けてしまったです。どうしてくれるんですか?ちゃんと責任を取ってください…ねっと!」
 そんな言葉を聞きながら、ヴォルスの目には眼前に迫るウルリカの巨大な拳が映っていた。

 結果から述べると、ウルリカの圧勝だった。
 ウルリカにとっては、メリアースの味方か敵かの2択なので、全員を敵と認識し手加減なしでぼこぼこにしたのだった。

  闘技大会 心理の泉学園代表は以下に決まった。
 1.魔術具部門:毛卓乐もうたる
 2.創造術クリエイトマギア部門:ノエリア・セルシア
 3.総合戦闘部門:ウルリカ

 全員が魔術具部門の代表の名前に首を傾げた。
「だれ?」
「知らない、最後まで見てなかったし」
「もう、皆さんメリアースさんが予選落ちって決まったら、さっさと大講堂から出て行っちゃったじゃないですか」
「あはははは、ごめんごめん。キシュのバカのせいであそこに居続けるのが恥ずかしくて…」
「メリアースちゃんが、やけ食い…いえ外に美味しいものを食べに行きたいと言うので」
「メリアース様が居なくなったところに居る意味はありませんから」

 3人の理由に呆れつつ、ラウレッタが魔術具部門の代表、毛卓乐もうたるについて説明してくれた。

毛卓乐もうたるさんは黒目、黒髪のかなり痩せている男子学生で、なんというか目に生気がない感じが不気味でした。大講堂ではメリアースさん達が出て行ったあと何人かの発表があって、彼毛卓乐もうたるさんは最後に発表されました」
「代表になったほどなら、凄い魔術具だったんでしょ?それなのになんで?」

 カーリーの”なんで?”はラウレッタに向けての言葉だ。

「なんでラウレッタはその魔術具に夢中になってないの?いつもなら”どれだけ売れるか”とか言ってるのに」
「人を血も涙もないように言わないでください。でもあれは世の中に出したらダメだと思うんです。それに発表の時は、それほどの評価でもなかった先生が後になってなぜか大絶賛したり、そうそうそう言えば魔術研究科の先生がおかしなことを言ってたんです」
「おかしなこと?」
毛卓乐もうたるの横に立った魔物を見て、みえちゃん…って」

 ラウレッタが毛卓乐もうたるの発表の時の話をした。

 ……毛卓乐もうたるの発表……

「ボクが発表するのは、この魔術具『魔物拘束リング』で…す。このリングを嵌めたダンジョンの魔物は対となるリングを嵌めた人間の意のままに操る事が出…来るんです」
 すると、毛卓乐もうたるの横に美しい少女が立った。だが、目には生気はなく肌は土気色、髪も灰色で明らかに死人と分かる。

「この少女…はダンジョン『永久の眠り』で捕獲した魔物で今…はボクの言うとおりに動きます」

 ダンジョン『永久の眠り』の魔物は人間が死んでそのまま不死になった魔物と言われている。
肌の色や目を見ればすぐにわかるが、逆に言えばそれ以外は人間の頃のまま変わらなかった。

「みえちゃん…うそ、そんなはずない」
 発表を見ていた魔術研究科の先生が、驚きの顔をしてつぶやいた。

 そんなつぶやきなど聞こえなかったのか、毛卓乐もうたるが簡単な命令を少女に命じると少女はその命令通りの動きをした。

「だが、『永久の眠り』の魔物は元は人間だったと言われているじゃないか、ダンジョンの魔物になったとしても、倫理的にどうなんだ?許されるのか?」
 魔術具の能力的に人として受け入れられないと拒否する人間から叱責が飛ぶ。がそこで毛卓乐もうたるが意外な提案をする。

「受け入れられな…い気持ちもわかります。彼女を元人間…と見るか、ダンジョン…の魔物と見るか、それを見極めるためにし…ばらくリングとセットで貸そうと思いま…す」

  毛卓乐もうたるの言葉に、その場にいた何人もが、自分が見極めると言い出した。そして『魔物拘束リング』を拒否していた人間ばかり数人に貸すと、なぜか数日後には大絶賛するようになった。

 …………………………

「それからは、とんとん拍子に魔術具部門の代表が彼に決まったの始めは反対していた人もいつの間にか彼の代表決定に賛成していたわ」
 ラウレッタが、その時のことを思い出したのか自身の体を抱きしめた。

「話を聞く限り、あぶないヤツって感じだし、先生たちが急に評価を変えるのもどこかおかしいわね」
「同じ代表選手として、会いに行って見ましょうか」
 ノエリアの提案でみんなで一度顔を見に行くことになった。


 ー≪心理の泉学園 男子学生寮≫ー

「すみません、毛卓乐もうたるは、代表に決まったらすぐに中央の街に移動しました。大会終了までは戻らないと思います」

 寮監らしき男性が、彼の不在を知らせた。ただどこか生気が感じられず心、ここにあらずと言った感じだった。
 だが、アース達はそんなことは気に留めず、毛卓乐もうたるを追って中央の街に向かう事にした。

「では、私達も中央の街に移動しましょう。ノエリア様とウルリカさんは出場の準備もしませんと」
「美味しいお菓子あるかな~~」
「大会の準備より、メリアース様のお世話の方が何百倍も大事です!」
 …アースとウルリカはいつもの2人だった。

 学生寮の毛卓乐もうたるの部屋の窓からはあるじと呼ばれていた男がアース達を見つめていた。

「あの少女、闘技場にいたに似てるな…」

 そしてあるじと言われた男の横には毛卓乐もうたるではない別の男子学生が立っていた。

「ちょっと出かけてくるから、誰がきても私はいないと言ってくれ」
「…かしこまりました」

 男子学生は虚ろな目で返事をする。そして彼の首には青く光るリングが嵌っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

異世界転生したら内装工だった件 ~壁を立てて国を救う職人無双~

もしもノベリスト
ファンタジー
俺の仕事は、空間を作ること。——たとえそれが、異世界だとしても  都内の内装会社に勤める現場代理人・墨田建吾(37歳)は、ある日、現場で足場から転落し、気がつくと見知らぬ世界にいた。そこは魔法と剣が支配する中世風の異世界。しかし建吾が転生したのは、勇者でも魔法使いでもなく、ただの「内装工」としてだった。  異世界の建築技術は石積みと木造が主流で、LGS(軽量鉄骨)どころか、まともな墨出しすら存在しない。城の壁は分厚いが断熱性は皆無、天井は高いが遮音性ゼロ。建吾は最初こそ途方に暮れるが、やがて気づく——この世界には、俺の技術が必要とされている、と。  偶然助けた辺境伯家の令嬢・リーゼロッテから、崩壊寸前の領地の城砦修繕を依頼された建吾。彼は異世界の素材を分析し、魔法を「電動工具」代わりに使い、独自の「軽量鉄骨工法」を編み出していく。完璧な墨出し、精密な下地組み、パテ処理から仕上げまで——彼の施工管理能力は、やがて「神業」と呼ばれ始める。  しかし、建吾の技術革新は旧来の建築ギルドの利権を脅かし、さらには魔王軍の侵攻計画にも関わる重大な秘密に触れてしまう。魔王城の「構造的弱点」を見抜いた建吾は、人類連合軍の最終決戦において、かつてない役割を担うことになる——それは、魔王城の内装を破壊し、空間そのものを崩壊させるという、前代未聞の作戦だった。  内装工の知識と経験、そして異世界で得た仲間たちとの絆。墨田建吾は、壁を立て、天井を張り、床を敷くことで、文字通り「世界を救う空間」を構築していく。 この物語は小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで掲載されています。 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9309lp/1/ カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/822139842910255740 アルファポリス:https://www.alphapolis.co.jp/novel/852717007/297023486?preview=1

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...