召喚弱者は静かに暮らしたい！！

洗礼式前日

洗礼式、この世界において７歳を迎えたものが教会にて受ける儀式の事である。
洗礼式を受ける事により、身分が定められ、身が保証される。
つまり、洗礼式を受ける前の子供は身分を保証されておらず、身分を証明できる親や家族が居なければ奴隷にされて当然のような危うい存在なのである。
なお、洗礼式を受け、身分が保証された人の場合は奴隷魔術は本人が受け入れない限り弾かれるようになっているらしい。
ファンタジーな世界である。

さらには洗礼式を受ける事により待ちに待ったステータスの確認も可能になるのだ！

そう、あれは2歳になった頃、そういえばお約束の恒例行事をしていないと思いだし、しゅてーたしゅと言ったはいいものの表示されず、えっまさかステータスが存在しないのかと絶望しているさなか

「ステータスは洗礼式を終えないとみれないですよ」
とアルーツィアの声が頭に響いたのは懐かしい出来事である。

会話出来るならさっさと教えとかんかい！と怒りを覚えたがアルーツィア本人は天啓を下ろすのも疲れるんですよ～とかいい言い訳をしていた。

今となっては日に何度も天啓？を下ろし、話しかけてくることもあり、暇なの？と訊ねれば、他のみんなはかまってくれないからとどうやら暇潰しの相手にされているようだ。

とまぁそんな事はどうでもいい。
ようやく念願のステータスが見られる。
そして、俺の伝説が始まるのだ！

「とまぁ、そういうわけで洗礼式を受けるんじゃが」
「今回はアサヒ、マルタ、トマスの3人だけじゃからすぐに終わりそうだな」

「洗礼式の話はここまでにして、前回の続きをしようかの」
またそこから村長の現役時代の冒険譚が長々と続き、昼を報せる教会の鐘が鳴れば即時解散となった。

「村長の話っておもしろいよね～」
「……」
「ねぇ、聞いてる？」
「……」
「ねぇってば！」
マルタに手を強く引っ張られ、現実世界に呼びもどされる。
いや、決してこれから始まる俺TUEEEEEEEEEを妄想していたわけではなく、真面目な事を考えていた。

洗礼式ではステータスを司祭様へと提示する義務が存在し、それはステータス内容を確認するためである。
基本、農家の子はそのまま家を継ぐし、商人の子もそれと同じである。
しかし、稀に農家の子ながら高いステータスを保有する者も現れるという。
そういった場合はその子は両親の許可の元、そのステータス値が最も最適である職業に就かせるべく国が責任を持って育成するという法が整備されている。
自身の子供が良い仕事に就くことができるし、国としても優秀な人材が確保できると両者WINWINの関係に見えるが現実はそうはいかない。

なぜなら良い仕事に就こうが所詮は平民だからである。
国の兵士も書記官も上司に当たるのは基本はお貴族様であり、平民をものとしか思っていない。
平民だからと諦めるしか方法はないのだから。

だがしかし！俺はそうはならない。
なぜなら勇者だから！
国を救うべく立ち上がる勇敢なる者だから！

「そうなったらマルタをめとってやるからな！」
「？めとるって何？おいしい？」
はっお子ちゃまにはまだわからないか。

「とにかく、明日が楽しみだなって話だよ」
「うん、そうだね！」
そう言った顔はとても無邪気で可愛らしく、少し頬が赤くなってしまったのは内緒だ。

二人仲良く手を繋ぎ、昼食を食べるべく家路へとつくのであった。