親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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錬金術師編

03柱の街での演奏会1

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 ギターケースを背負い、アルハザードの後ろから押し入れを通って砂漠の世界へと入った。
一これで何度目になるのかな一
 砂漠の世界は昼間は太陽光線が強烈に肌を焼き、夜間は冷たい風が吹きすさぶ、過酷な環境である。
 昼間でも薄い長袖を身につけたほうが涼しく感じられるのは、日差しが強烈で空気の乾燥している地域ならではの過ごし方だ。

「今回で五回目らしいよ」
 神谷が心の中で思ったことにアルハザードが答えた。
「君は人の心の声が聞こえるのかい」
「いや、これが教えてくれたのさ」
 アルハザードが足元で大きく欠伸をしている黒猫を指差した。

「何といっても、最高位の邪神だからね。出来ないことなど何もないのだよ」
「ならば、君の体を治す位は簡単に出来るのではないのかい」
 アルハザードがクスリと自嘲気味に笑った。
「彼らが僕らの願いを聞いてくれると思うかい。神等というものは総じて自分勝手で気まぐれなものさ。自分の気に入ったものしか愛さない、そんなものだよ」
 神を最も呪う者の言葉には、普通の人間には理解の及ばない重みがある。

「あそこ見てごらん」
 アルハザードが約五メートル先の幅十メートル、奥行き五メートルほどはありそうな、巨大な岩を真横に削ったと思われる平らな舞台を指差した。

「うん、舞台みたいだね」
「あそこが神谷の今日のステージだよ。用意はいいかい」
「大丈夫だよ、忘れものもないしね。あとは椅子があると嬉しいかな」
「こいつに椅子になってもらうかい」
 アルハザードが足元の黒猫を見下ろした。

「とんでもない。偉い神様を尻に敷くことなんてできる訳ないじゃないか」
「そうかな、結構座り心地がいいと思うけどね。もっとも、その後のことについての責任は持てないけどね」

 黒猫がゴロゴロと喉を鳴らしながら神谷を見上げた。
「あそこに腰かけるサイズの岩を置いてくれるかい」
 アルハザードが黒猫に向かって囁いた。

 黒猫がサファイア色の瞳を瞬くと、舞台の上に四角い石が現れた。
 このくらいのことは、叶えてくれるらしい。

「今日は機嫌がいいみたいだね」
「神様にも機嫌のいい時と悪い時があるのかい」
「それはそうさ。エジプトの神話や日本の昔話を読めば分かるじゃないか、神なんて人間そのままじゃないか。唯、雨を降らせたり、雷を落としたり、人間にはできないことができるだけさ」

「ふ一ん、まあ、そう言われればそうだけど」
「だから、干ばつや大雨なんて神の機嫌の悪さの象徴みたいなものじゃないかな」
 アルハザードが肩をすくめた。

「さて、演奏の準備をするとしようか」
 神谷がステージに向かって歩き出した。
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