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ムー大陸編
02ムー大陸事前調査2
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神谷が料理を終えてリビングの様子を窺うと、アルハザードは先程と変わらない体制で本を読みふけっていた。唯、最初に手にした本はすでに読み終えたらしく脇に置かれ、二冊目に取りかかっていた。この魔人は速読もできるのか?
「これくらいの本は三十分もあれば読めてしまうよ。それが速読と言うのなら、速読かな」
速読ではなく普通に読んでこの速度で読めてしまうらしい。
「へぇー、普通ではない読み方なんてあるのかい」
「うん、一つのページを映像のように記憶しながら、読む方法だよ」
「それは修練でできるようになるのかい」
「訓練さえすれば誰でもできるらしいよ」
「じゃあ、僕もその訓練をやってみようかな」
それだけ速く読む能力があるのなら、その必要はないのではないか。
「そうだね、普通でいいかな」
いや、充分普通ではないと思う。
「料理ができたけど、運ぼうか」
「うん、いいよ。このテーブルに並べて食べようよ」
一人暮らしの神谷のリビングに置かれているガラス面のテーブルは必要最小限の大きさしかないため、二人分の鰤の照り焼きとほうれん草のおひたし、どんぶり御飯と味噌汁を並べただけで隙間がなくなってしまった。
アルハザードのためにフォークを出そうとすると「僕も箸で大丈夫だよ」後ろから声をかけられた。
「えっ、君は箸が使えるのかい」
「使ったことはないけど、多分大丈夫だよ」
二人はす向かいに並んで食事をしながら話を聞くことにした。
「神谷、この箸という物を使って見せてくれないか」
神谷がほうれん草を箸でつまむと、アルハザードが器用にそれを真似た。
「上手いもんだね」
「これは魔術じゃないよ、生まれつき手先は器用なのさ」
「ところで、ムー大陸の情報はどのくらい分かったの」
「うん、今の太平洋の中央に東西八千㎞、南北五千㎞の巨大な大陸で、今から一万二千年ほど前に一夜にして海に沈んだらしいよ。その時の島の人口はおよそ六千四百万人、ラ・ムーという国王が統治していたらしいね」
アルハザードがほうれん草を鰤の切り身に乗せて頬張った。
「なんでその島は沈んでしまったの」
「そこまではわからない」
「それだけの大陸が一夜にして沈んでしまうなんてことあるのかな」
神谷の問いかけにアルハザードがクスリと笑った。
「この世に起こりえないことなど何もない」
「それは君の経験値かい」
「いや、こいつの言葉だよ」
アルハザードが脇で体を丸めて横たわっている黒猫を箸先で指した。
「もっとも、こいつらが起こしていると言った方が正しいけどね」
「分かったのはそれだけかい」
「うん、大陸は十の国に分かれていたらしいとか、細かいことは色々と書いてあったけど、沈んでしまった島のことだから、全ては憶測だね」
「その偉い神様は教えてくれないの?」
神谷が黒猫を見た。
「前にも言ったろう、こいつらは我がままで気まぐれなのさ。教えてなんてくれないよ、自分の目で確かめてこいって言ってるよ」
「ふーん」
自分の分のおかずと御飯を食べ終えたアルハザードがテーブルに箸を置いて神谷の方へ向き直った。
「また、お願いしたいんだが」
「あそこでギターを弾くの」
「そう、そしてムー大陸へも一緒に行って欲しいんだ」
「えっ、僕もムー大陸に行くのかい、一万二千年も溯って」
「そうだよ、神谷がいるとこいつの機嫌がいいんだ、大丈夫きっと無事に帰ってこられるから」
アルハザードが「きっと」のところを強調するように、ゆっくりと言ったが、神谷には「多分」と聞こえてならなかった。
「一万二千年も昔に何があるか分からないじゃない、そこに住んでいる人だってきっと僕たちとは違う常識で生きているだろうし」
「神谷と違う常識で生きている人間は、現代でもアフリカあたりに行けば、いくらでもいるよ。それを考えれば一万二千年前の大陸なんかどぉってことないと思うけど」
確かにそのとおりかもしれない。現に千三百年前のアラブの魔人と鰤の照り焼きを一緒に食べていること自体、かなり普通ではない状況なのだから。
「これくらいの本は三十分もあれば読めてしまうよ。それが速読と言うのなら、速読かな」
速読ではなく普通に読んでこの速度で読めてしまうらしい。
「へぇー、普通ではない読み方なんてあるのかい」
「うん、一つのページを映像のように記憶しながら、読む方法だよ」
「それは修練でできるようになるのかい」
「訓練さえすれば誰でもできるらしいよ」
「じゃあ、僕もその訓練をやってみようかな」
それだけ速く読む能力があるのなら、その必要はないのではないか。
「そうだね、普通でいいかな」
いや、充分普通ではないと思う。
「料理ができたけど、運ぼうか」
「うん、いいよ。このテーブルに並べて食べようよ」
一人暮らしの神谷のリビングに置かれているガラス面のテーブルは必要最小限の大きさしかないため、二人分の鰤の照り焼きとほうれん草のおひたし、どんぶり御飯と味噌汁を並べただけで隙間がなくなってしまった。
アルハザードのためにフォークを出そうとすると「僕も箸で大丈夫だよ」後ろから声をかけられた。
「えっ、君は箸が使えるのかい」
「使ったことはないけど、多分大丈夫だよ」
二人はす向かいに並んで食事をしながら話を聞くことにした。
「神谷、この箸という物を使って見せてくれないか」
神谷がほうれん草を箸でつまむと、アルハザードが器用にそれを真似た。
「上手いもんだね」
「これは魔術じゃないよ、生まれつき手先は器用なのさ」
「ところで、ムー大陸の情報はどのくらい分かったの」
「うん、今の太平洋の中央に東西八千㎞、南北五千㎞の巨大な大陸で、今から一万二千年ほど前に一夜にして海に沈んだらしいよ。その時の島の人口はおよそ六千四百万人、ラ・ムーという国王が統治していたらしいね」
アルハザードがほうれん草を鰤の切り身に乗せて頬張った。
「なんでその島は沈んでしまったの」
「そこまではわからない」
「それだけの大陸が一夜にして沈んでしまうなんてことあるのかな」
神谷の問いかけにアルハザードがクスリと笑った。
「この世に起こりえないことなど何もない」
「それは君の経験値かい」
「いや、こいつの言葉だよ」
アルハザードが脇で体を丸めて横たわっている黒猫を箸先で指した。
「もっとも、こいつらが起こしていると言った方が正しいけどね」
「分かったのはそれだけかい」
「うん、大陸は十の国に分かれていたらしいとか、細かいことは色々と書いてあったけど、沈んでしまった島のことだから、全ては憶測だね」
「その偉い神様は教えてくれないの?」
神谷が黒猫を見た。
「前にも言ったろう、こいつらは我がままで気まぐれなのさ。教えてなんてくれないよ、自分の目で確かめてこいって言ってるよ」
「ふーん」
自分の分のおかずと御飯を食べ終えたアルハザードがテーブルに箸を置いて神谷の方へ向き直った。
「また、お願いしたいんだが」
「あそこでギターを弾くの」
「そう、そしてムー大陸へも一緒に行って欲しいんだ」
「えっ、僕もムー大陸に行くのかい、一万二千年も溯って」
「そうだよ、神谷がいるとこいつの機嫌がいいんだ、大丈夫きっと無事に帰ってこられるから」
アルハザードが「きっと」のところを強調するように、ゆっくりと言ったが、神谷には「多分」と聞こえてならなかった。
「一万二千年も昔に何があるか分からないじゃない、そこに住んでいる人だってきっと僕たちとは違う常識で生きているだろうし」
「神谷と違う常識で生きている人間は、現代でもアフリカあたりに行けば、いくらでもいるよ。それを考えれば一万二千年前の大陸なんかどぉってことないと思うけど」
確かにそのとおりかもしれない。現に千三百年前のアラブの魔人と鰤の照り焼きを一緒に食べていること自体、かなり普通ではない状況なのだから。
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