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ムー大陸編
37黒い玉その後
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「さっきの部屋には何人ぐらいの青色人がいたのかな」
闘技場を出て、部屋に戻る階段を降りながらアルハザードに話しかけた。
「大体三百人はいたね」
それにしてもツルツル滑る階段だ。手すりぐらいつけた方が良いのではないか。
「この階段は石を切り出したそのままを使ってるからね、それに、滑るのは神谷の履いている靴が悪いんだよ。こういう所を想定していないそんな靴じゃ滑るのが当たり前さ」
「君だっていつもサンダルじゃないか」
「これが唯のサンダルだというのかい」
アルハザードが左の足を膝から曲げて、足首に固定するための帯がついているサンダルの裏側を見せた。細かい溝が横に無数に入り、細かい金属製のビスが何個も嵌っている。
「世界を放浪するためには、これくらいの装備は必要だよ。これで全速で走れば、短距離の世界新記録くらいは軽く出せるよ」
先ほどのアルはアードの動きを見ると、その通りなのだろうと納得してしまう。
「でも、世界新記録を出したところで何の意味もないけどね」
確かに、アラブの魔人にとって意味があることとは思えない。
部屋について昼食を摂ると、アルハザードは訓練のために一人で出て行った。やはり案内役のグラムダルクリッチは現れない。
試しに部屋の壁に手をついて「扉よ開け」と念じてみたが、やはり何も起こらない。
毎日一緒にいると、感じないのだが、先ほどの黄金人との戦いを見て、改めてアルハザードの魔人たる所以を見たような気がした。
先日、ラ・ムーにギターがもっと上手くなれるならば訓練を受けても良いと言ったが、今の神谷の望みはそれ以外には何もない。唯この楽器をもっと指が速く動くようになりたい、美しい音が出したい、それしかない。アルハザードの望みに比べれば簡単に叶う望みではないのだろうか。しかし、現実的には地道な練習を積んでコツコツと精進するしかないのだ。
今日もアルハザードは夕方近くになった部屋に戻って来た。
「今日も長時間訓練してきたんだね」
「うん、普通ならばこんなに長時間の訓練に耐えられるはずがないって、ラ・ムーも不思議がってたね」
今日もラ・ムーが立ち会っていたようだ。
「機械の中は波が充満しているって言ったのを憶えているかい」
「うん、憶えてるよ、確か電磁はみたいな物だって言ってたよね」
「その波の周波数に僕の感情を乗せるやり方が体得できるようになったんだよ、まだ完全ではないけどね」
「へー、すごいね」
「もう少しかな、もう少しで辿り着くかもしれない」
アルハザードの美しい声が歌うようにさえずっていた。
「今夜も動画のサービスがあるようだよ」
夕食後にワインを飲んでいたアルハザードが、部屋の隅で横になっている邪神を指差した。
「あの黒い玉のその後かな」
「そうかもしれないね、見てのお楽しみだそうだ」
アルハザードが言い終わると同時に目の前に昨日と同じ五十インチほどのスクリーンが現れた。
「昨日の続きかな」
「多分ね、まあ、しばらくは黙って見ていようよ」
アルハザードの言葉通りにワインを飲みながら、画面を注目した。
スクリーンの中は、昨日最後に見た荒野を引きの映像から始まっている。
照明が月明かりだけなのではっきりとは見えないが、おそらくは昨日赤色人が黒い玉を破棄した場所なのだろう。
アングルが木の影を回って昨日は見えなかった箇所に変わっている。木の根元に置かれた黒い玉が画面いっぱいに映された。
黒い玉は二十個はあるだろうか、唯そこに玉が映し出されている映像が永遠とつづいている。
「これって昨日の玉が映ってるだけだよね」
「まあ、もうしばらく見ていると何かが起こるよ」
再び何も起こらない画面を眺めていた。ワインはすでに三本目になっている。いいかげんに眠気をもよおしてきた頃、黒い玉に変化が現れた。
丸い玉が其々に動きを見せていた。微妙ではあるが振動をしているようだ。
そこで黒い玉がアップになり、画像がより鮮明になった。邪神のサービスか、解像度が上がったようだ。
「ここからは録画が必要かな」
「大丈夫だよ、僕は一回見た物は全て記憶できるからね」
ならば、見たい画面はあとで頭の中に送ってもらえばいい。
黒い玉は細かい振動を繰り返しながら、徐々に体型を変えていった。手足が生え始め、赤ん坊のような体型をとり始める物、羽が生えて鳥の雛のような形を成す物、手足が生えているが、人間ではなくトカゲのような形を成す物、様々だった。
「これって、黒い玉は黒い卵だったってことなのかな」
「そういうことだね、あの玉から生物が生まれるているからね。そして、あの人の形をした物が成長すると黒色人になるんだろうね」
「それじゃあ、黒色人は精神力増幅装置が作り出したエネルギーのカスから生まれるってことなんだね」
「人型以外にも鳥やトカゲ型もいるけど、あれを黒色人の生息地で見ることはなかったろう。あれは皆黒色人の餌になるんだそうだ」
ヒラニプラの外で動物類を見なかったのは、全て黒色人に食べられてしまっていたということか。
「生き残った鳥は猛毒のオレンジの実を食べてしんじゃうしね」
猛毒の木の実の理由は、黒鳥を退治するためだったようだ。
闘技場を出て、部屋に戻る階段を降りながらアルハザードに話しかけた。
「大体三百人はいたね」
それにしてもツルツル滑る階段だ。手すりぐらいつけた方が良いのではないか。
「この階段は石を切り出したそのままを使ってるからね、それに、滑るのは神谷の履いている靴が悪いんだよ。こういう所を想定していないそんな靴じゃ滑るのが当たり前さ」
「君だっていつもサンダルじゃないか」
「これが唯のサンダルだというのかい」
アルハザードが左の足を膝から曲げて、足首に固定するための帯がついているサンダルの裏側を見せた。細かい溝が横に無数に入り、細かい金属製のビスが何個も嵌っている。
「世界を放浪するためには、これくらいの装備は必要だよ。これで全速で走れば、短距離の世界新記録くらいは軽く出せるよ」
先ほどのアルはアードの動きを見ると、その通りなのだろうと納得してしまう。
「でも、世界新記録を出したところで何の意味もないけどね」
確かに、アラブの魔人にとって意味があることとは思えない。
部屋について昼食を摂ると、アルハザードは訓練のために一人で出て行った。やはり案内役のグラムダルクリッチは現れない。
試しに部屋の壁に手をついて「扉よ開け」と念じてみたが、やはり何も起こらない。
毎日一緒にいると、感じないのだが、先ほどの黄金人との戦いを見て、改めてアルハザードの魔人たる所以を見たような気がした。
先日、ラ・ムーにギターがもっと上手くなれるならば訓練を受けても良いと言ったが、今の神谷の望みはそれ以外には何もない。唯この楽器をもっと指が速く動くようになりたい、美しい音が出したい、それしかない。アルハザードの望みに比べれば簡単に叶う望みではないのだろうか。しかし、現実的には地道な練習を積んでコツコツと精進するしかないのだ。
今日もアルハザードは夕方近くになった部屋に戻って来た。
「今日も長時間訓練してきたんだね」
「うん、普通ならばこんなに長時間の訓練に耐えられるはずがないって、ラ・ムーも不思議がってたね」
今日もラ・ムーが立ち会っていたようだ。
「機械の中は波が充満しているって言ったのを憶えているかい」
「うん、憶えてるよ、確か電磁はみたいな物だって言ってたよね」
「その波の周波数に僕の感情を乗せるやり方が体得できるようになったんだよ、まだ完全ではないけどね」
「へー、すごいね」
「もう少しかな、もう少しで辿り着くかもしれない」
アルハザードの美しい声が歌うようにさえずっていた。
「今夜も動画のサービスがあるようだよ」
夕食後にワインを飲んでいたアルハザードが、部屋の隅で横になっている邪神を指差した。
「あの黒い玉のその後かな」
「そうかもしれないね、見てのお楽しみだそうだ」
アルハザードが言い終わると同時に目の前に昨日と同じ五十インチほどのスクリーンが現れた。
「昨日の続きかな」
「多分ね、まあ、しばらくは黙って見ていようよ」
アルハザードの言葉通りにワインを飲みながら、画面を注目した。
スクリーンの中は、昨日最後に見た荒野を引きの映像から始まっている。
照明が月明かりだけなのではっきりとは見えないが、おそらくは昨日赤色人が黒い玉を破棄した場所なのだろう。
アングルが木の影を回って昨日は見えなかった箇所に変わっている。木の根元に置かれた黒い玉が画面いっぱいに映された。
黒い玉は二十個はあるだろうか、唯そこに玉が映し出されている映像が永遠とつづいている。
「これって昨日の玉が映ってるだけだよね」
「まあ、もうしばらく見ていると何かが起こるよ」
再び何も起こらない画面を眺めていた。ワインはすでに三本目になっている。いいかげんに眠気をもよおしてきた頃、黒い玉に変化が現れた。
丸い玉が其々に動きを見せていた。微妙ではあるが振動をしているようだ。
そこで黒い玉がアップになり、画像がより鮮明になった。邪神のサービスか、解像度が上がったようだ。
「ここからは録画が必要かな」
「大丈夫だよ、僕は一回見た物は全て記憶できるからね」
ならば、見たい画面はあとで頭の中に送ってもらえばいい。
黒い玉は細かい振動を繰り返しながら、徐々に体型を変えていった。手足が生え始め、赤ん坊のような体型をとり始める物、羽が生えて鳥の雛のような形を成す物、手足が生えているが、人間ではなくトカゲのような形を成す物、様々だった。
「これって、黒い玉は黒い卵だったってことなのかな」
「そういうことだね、あの玉から生物が生まれるているからね。そして、あの人の形をした物が成長すると黒色人になるんだろうね」
「それじゃあ、黒色人は精神力増幅装置が作り出したエネルギーのカスから生まれるってことなんだね」
「人型以外にも鳥やトカゲ型もいるけど、あれを黒色人の生息地で見ることはなかったろう。あれは皆黒色人の餌になるんだそうだ」
ヒラニプラの外で動物類を見なかったのは、全て黒色人に食べられてしまっていたということか。
「生き残った鳥は猛毒のオレンジの実を食べてしんじゃうしね」
猛毒の木の実の理由は、黒鳥を退治するためだったようだ。
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