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30. 男でも女でもない
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それは真夜中の奇襲劇だった。雨上がりで湿っぽい公園のベンチで、蛇坊主はヘッドホンから爆音でパンクを聴いていた。彼は曲に合わせて能天気に歌っていたが、側から見ると、演奏もなく調子っ外れに歌う様は滑稽だった。それにその音痴な大声量はあからさまに騒音であり、近隣住民は迷惑していた。彼は注意を何度受けても、ここで歌っていた。何故なら外で大声で歌うとなんだかとっても気持ちいいから。
彼の背後に、遠近法で米粒ほどの大きさに見える人影があった。その人影は蛇坊主のほうを凝視しているようだった。それから、強いバネが弾けるように駆け出し、短距離走さながらに全力疾走で一心に蛇坊主のほうへ向かってくる。米粒が水を吸って急激に膨らむみたいに人影が拡大されるように近づく。
大音量で音楽を楽しみ、熱唱している蛇坊主はその猛然と距離を詰める人影に気づく気配すらない。その人影が街灯に照らされ、15歳の庵であることが晒される。その疾走の勢いを殺すことなくそのまま、力を拳から放出するように蛇坊主の後頭部を目掛けて腕を振り切り殴る。庵に後頭部を殴られた蛇坊主は、首を根こそぎ刈られるような衝撃を受け、脳震盪で意識がぶっ飛ぶ。
覚醒したときには、前屈みになった庵に左手の薬指が握られていた。第三関節に沿って庵の足が添えられていて、左手の薬指を握った手をえいやと上げれば、梃子で指折りができるだろうと思われた。外れたヘッドホンからはさっきまで聴いていたのと同じ曲が漏れている。数秒意識が飛んでいたのか、十曲ほどあるプレイリストを一周したのか、検討がまるでつかない。圧倒的に有利な状況下で、庵は何やら語っている。
「思想なき暴力は、ただのエンターテイメントになる。娯楽としてただ消費されるのは嫌だろう。娯楽としての暴力は、過剰にスタイリッシュだったり、内臓びちゃびちゃみたいなのをうひょうひょって喜ぶ変態のためのものだ。復讐は倍返しじゃなきゃ意味がない。酔わせてくれるカタルシスがない。されたことより、非道いことを返す。復讐でアートする」
地面に転がるヘッドホンから漏れるメタルのサビの訪れと共に、庵は梃子でえいやと左手の薬指を折る。メキメキと細い骨が鈍くへし折れる音がした。サビでのコーラスみたいに、蛇坊主の獣じみた咆哮が響く。庵は蛇坊主の表情を観察していた。その顔には既視感があった。庵は左手の薬指を折られそうになったときと折るときとで、全く同じ表情をしていた。
蛇坊主の親は、うだつが上がらない安月給の父と、離婚したいのに経済的に自立する能力がないためできない母だった。蛇坊主はこの指折りの一件を警察沙汰にすることを避けたいという旨を伝えたとき、彼らは「あ、そう」といった具合に興味なさげに受け入れた。その理由を訊くことすらなかった。そのため、警察へ被害届が提出されることはなかった。両者の保護者間で示談が成立した。相場より高額な示談金に、蛇坊主の両親は大変満足していた。願ってもない臨時報酬だった。
指折りから数日後、痛みも癒えぬまま蛇坊主は幽霊くんとの交渉のために、「腸」へと赴いた。牛の血まみれエプロンをした幽霊くんは、古惚けた焼肉屋の裏で牛骨を鋸で切断していた。
「復讐してやりたい奴がいる」と蛇坊主は開口一番に言ってから、指折りまでの経緯を説明した。「あいつの左腕をへし折ってくれ!そうでもしてやらないと、俺の気持ちは治まらない。金ならある。示談金の一部を親からぶんどった。そもそも全額俺のものだろうが!」
幽霊くんは聾であるように、蛇坊主に一切の注意を払わない。
「俺の叔父は市長だ。腸を含めたこの地区の再開発の計画があるのは知ってるだろう?俺は叔父に可愛がられている。だから、俺が言えば再開発が止まるかもしれない」
嘘だった。叔父が市長なのは事実だが、可愛がられてなんかいないし、殆ど喋ったこともなかった。寧ろ叔父は不出来な父を蔑視している節があった。蛇坊主は叔父の名刺を見せびらかしたが、幽霊くんはそもそも字が読めないようだった。
幽霊くんは無言のまま牛骨をぎこぎこ切断する。それが蛇坊主の怒りの火柱に牛脂を放り込む。
「指折りを警察沙汰にはしなかった。仮にそうしたら、最も重い罰でも、奴は少年院に行くだけだろう。少年院で過ごして、何年かしたら出てくる。そんなんで罰を受けたと言えるか?生ぬるい!ネットでの奴の人気ぶりは凄まじい。奇行や暴力嗜好や自傷による左眼の失明も、馬鹿なメンヘラ野郎どもは賞賛していた。それも彼の芸術だと、彼は表現者だとほざいている。こいつらは傷害罪で少年院に行く奴をも絶賛するだろう。何が芸術だ。あいつのやっていることがアート?笑わせるなよ。ただの悪趣味な暴力じゃないか。あいつはただの狂人だ。いや、狂人の域にも及んでいない。少しだけ変なただの可愛い男の子だ。ばばぁか男色家のただの性の対象だ。オナニーのおかずだ。それをあんたが教えてやってくれ。あいつをねじ伏せてくれ。画家として生きていく奴には、前科があっても致命傷にはならないかもしれない。罰金で済むかもしれない。それは親の金だろう。そんなんで許せるわけがない。あいつの左腕をへし折ってくれ。絵を描くことができない身体にしてくれ。そうだ。左腕を折られてもいつか治る。いや、あいつの左腕を切断してくれ!一生絵が描けないようにしてくれ!」螺旋階段を駆け上がるみたいに苛立ちが増し、説得にさらに熱が籠る。「あいつにはきっと絵しかない。イカれた社会不適合者だ。奴にとっての極刑は死刑じゃない。奴にとっての極刑は、左腕を捥がれて隻腕で生きていくことだ!」
「面白い。いいよ」と幽霊くんはやっと牛骨から顔を上げる。その眼に、庵とよく似た光あるいは闇を感じた。
「なにが?」
「左腕をへし折ってから、切断してあげる」
「・・・ありがとう。戦争がはじまるな」
「戦争はもうはじまってる」
蛇坊主が幽霊くんに依頼したのは、復讐の螺旋から自らは降りたくて堪らないのに、どうしても復讐を果たさずにはいられないからだった。庵は蛇坊主の手に余る。幽霊くんと庵は彼にとって同次元の怪物だった。以前、幽霊くんが喧嘩をする姿を見たことがある。それは集団リンチのような状況だった。
「腸」への入り口となる俗称「肛門」と呼ばれる門がある。その「肛門」を覗くように、「腸」の外から、腸内での集団リンチを眺めていた。幽霊くんは複数の男に囲まれ、殴り蹴られていた。アクション映画のように全員を華麗に捌くようなことは起きなかった。それでも、痛みを忘れた彼は、リンチにも怯むことなく、にやにや笑みを浮かべながら楽しそうに戦闘をしていた。彼は純粋な戦闘者であり、戦闘狂だった。幽霊くんは泥臭くもふたりの男を、病院送りにするほどの怪我を負わせていた。
怪物だと確信した。庵に左手の薬指をへし折られ、復讐を決意したときに、真っ先に幽霊くんの名を思い浮かべた。武器として怪物を使う。怪物で怪物を駆除する。バケモンにはバケモンぶつけんだよ。
集団リンチで意識が飛んだぼろぼろの幽霊くんに、個人売春のワンコインばばぁが近寄る。そそくさと手際よく幽霊くんの下半身を露出させる。それから、性器の辺りをじっと見つめる。一分ほどの凝視の後、「男でも女でもないねぇ」と独り言を呟き、何もせずにその場を立ち去る。
彼の背後に、遠近法で米粒ほどの大きさに見える人影があった。その人影は蛇坊主のほうを凝視しているようだった。それから、強いバネが弾けるように駆け出し、短距離走さながらに全力疾走で一心に蛇坊主のほうへ向かってくる。米粒が水を吸って急激に膨らむみたいに人影が拡大されるように近づく。
大音量で音楽を楽しみ、熱唱している蛇坊主はその猛然と距離を詰める人影に気づく気配すらない。その人影が街灯に照らされ、15歳の庵であることが晒される。その疾走の勢いを殺すことなくそのまま、力を拳から放出するように蛇坊主の後頭部を目掛けて腕を振り切り殴る。庵に後頭部を殴られた蛇坊主は、首を根こそぎ刈られるような衝撃を受け、脳震盪で意識がぶっ飛ぶ。
覚醒したときには、前屈みになった庵に左手の薬指が握られていた。第三関節に沿って庵の足が添えられていて、左手の薬指を握った手をえいやと上げれば、梃子で指折りができるだろうと思われた。外れたヘッドホンからはさっきまで聴いていたのと同じ曲が漏れている。数秒意識が飛んでいたのか、十曲ほどあるプレイリストを一周したのか、検討がまるでつかない。圧倒的に有利な状況下で、庵は何やら語っている。
「思想なき暴力は、ただのエンターテイメントになる。娯楽としてただ消費されるのは嫌だろう。娯楽としての暴力は、過剰にスタイリッシュだったり、内臓びちゃびちゃみたいなのをうひょうひょって喜ぶ変態のためのものだ。復讐は倍返しじゃなきゃ意味がない。酔わせてくれるカタルシスがない。されたことより、非道いことを返す。復讐でアートする」
地面に転がるヘッドホンから漏れるメタルのサビの訪れと共に、庵は梃子でえいやと左手の薬指を折る。メキメキと細い骨が鈍くへし折れる音がした。サビでのコーラスみたいに、蛇坊主の獣じみた咆哮が響く。庵は蛇坊主の表情を観察していた。その顔には既視感があった。庵は左手の薬指を折られそうになったときと折るときとで、全く同じ表情をしていた。
蛇坊主の親は、うだつが上がらない安月給の父と、離婚したいのに経済的に自立する能力がないためできない母だった。蛇坊主はこの指折りの一件を警察沙汰にすることを避けたいという旨を伝えたとき、彼らは「あ、そう」といった具合に興味なさげに受け入れた。その理由を訊くことすらなかった。そのため、警察へ被害届が提出されることはなかった。両者の保護者間で示談が成立した。相場より高額な示談金に、蛇坊主の両親は大変満足していた。願ってもない臨時報酬だった。
指折りから数日後、痛みも癒えぬまま蛇坊主は幽霊くんとの交渉のために、「腸」へと赴いた。牛の血まみれエプロンをした幽霊くんは、古惚けた焼肉屋の裏で牛骨を鋸で切断していた。
「復讐してやりたい奴がいる」と蛇坊主は開口一番に言ってから、指折りまでの経緯を説明した。「あいつの左腕をへし折ってくれ!そうでもしてやらないと、俺の気持ちは治まらない。金ならある。示談金の一部を親からぶんどった。そもそも全額俺のものだろうが!」
幽霊くんは聾であるように、蛇坊主に一切の注意を払わない。
「俺の叔父は市長だ。腸を含めたこの地区の再開発の計画があるのは知ってるだろう?俺は叔父に可愛がられている。だから、俺が言えば再開発が止まるかもしれない」
嘘だった。叔父が市長なのは事実だが、可愛がられてなんかいないし、殆ど喋ったこともなかった。寧ろ叔父は不出来な父を蔑視している節があった。蛇坊主は叔父の名刺を見せびらかしたが、幽霊くんはそもそも字が読めないようだった。
幽霊くんは無言のまま牛骨をぎこぎこ切断する。それが蛇坊主の怒りの火柱に牛脂を放り込む。
「指折りを警察沙汰にはしなかった。仮にそうしたら、最も重い罰でも、奴は少年院に行くだけだろう。少年院で過ごして、何年かしたら出てくる。そんなんで罰を受けたと言えるか?生ぬるい!ネットでの奴の人気ぶりは凄まじい。奇行や暴力嗜好や自傷による左眼の失明も、馬鹿なメンヘラ野郎どもは賞賛していた。それも彼の芸術だと、彼は表現者だとほざいている。こいつらは傷害罪で少年院に行く奴をも絶賛するだろう。何が芸術だ。あいつのやっていることがアート?笑わせるなよ。ただの悪趣味な暴力じゃないか。あいつはただの狂人だ。いや、狂人の域にも及んでいない。少しだけ変なただの可愛い男の子だ。ばばぁか男色家のただの性の対象だ。オナニーのおかずだ。それをあんたが教えてやってくれ。あいつをねじ伏せてくれ。画家として生きていく奴には、前科があっても致命傷にはならないかもしれない。罰金で済むかもしれない。それは親の金だろう。そんなんで許せるわけがない。あいつの左腕をへし折ってくれ。絵を描くことができない身体にしてくれ。そうだ。左腕を折られてもいつか治る。いや、あいつの左腕を切断してくれ!一生絵が描けないようにしてくれ!」螺旋階段を駆け上がるみたいに苛立ちが増し、説得にさらに熱が籠る。「あいつにはきっと絵しかない。イカれた社会不適合者だ。奴にとっての極刑は死刑じゃない。奴にとっての極刑は、左腕を捥がれて隻腕で生きていくことだ!」
「面白い。いいよ」と幽霊くんはやっと牛骨から顔を上げる。その眼に、庵とよく似た光あるいは闇を感じた。
「なにが?」
「左腕をへし折ってから、切断してあげる」
「・・・ありがとう。戦争がはじまるな」
「戦争はもうはじまってる」
蛇坊主が幽霊くんに依頼したのは、復讐の螺旋から自らは降りたくて堪らないのに、どうしても復讐を果たさずにはいられないからだった。庵は蛇坊主の手に余る。幽霊くんと庵は彼にとって同次元の怪物だった。以前、幽霊くんが喧嘩をする姿を見たことがある。それは集団リンチのような状況だった。
「腸」への入り口となる俗称「肛門」と呼ばれる門がある。その「肛門」を覗くように、「腸」の外から、腸内での集団リンチを眺めていた。幽霊くんは複数の男に囲まれ、殴り蹴られていた。アクション映画のように全員を華麗に捌くようなことは起きなかった。それでも、痛みを忘れた彼は、リンチにも怯むことなく、にやにや笑みを浮かべながら楽しそうに戦闘をしていた。彼は純粋な戦闘者であり、戦闘狂だった。幽霊くんは泥臭くもふたりの男を、病院送りにするほどの怪我を負わせていた。
怪物だと確信した。庵に左手の薬指をへし折られ、復讐を決意したときに、真っ先に幽霊くんの名を思い浮かべた。武器として怪物を使う。怪物で怪物を駆除する。バケモンにはバケモンぶつけんだよ。
集団リンチで意識が飛んだぼろぼろの幽霊くんに、個人売春のワンコインばばぁが近寄る。そそくさと手際よく幽霊くんの下半身を露出させる。それから、性器の辺りをじっと見つめる。一分ほどの凝視の後、「男でも女でもないねぇ」と独り言を呟き、何もせずにその場を立ち去る。
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