七夕伝説

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星の終わりに 七星 姫奈 視点

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 風が、音を立てていた。

 あの日と同じ、何もない草原。
 遠くに街の灯りはなく、ただ静かに夜が降りていた。

 流星が隣に立っている。
 でも、何も言葉は交わさない。

 なぜなら、言葉なんてもういらなかった。
 これまでのすべてが、私たちの間に通っていたから。

 そして、私たちは図ったように――

 同時に、空を見上げた。

 なぜかわかる。
 彼も、今、見上げていると。
 私と同じ、この星空を。

 刹那、空が――割れた。

 黒い、深淵のような裂け目。
 そこから這い出してくるのは、異形たち。

 一、十、百……それ以上。

 私は手の甲に五芒星を描く。
 刃が、現れる。
 流星も同じように。

 紫と朱の漢服が風に揺れた。
 私たちは、走る。

 言葉を交わさない。
 でも、すべてがわかる。
 どのタイミングで斬るか。どこに飛び込むか。
 相手の思考が、まるで自分のように流れ込んでくる。

 そうして私たちは、次々と異形を斬っていった。

 その全てが、まるで“使命”をなぞるようだった。

 そして――

 一番大きな異形。
 それが私たちの目の前に、うねるように姿を現す。

 言葉はない。
 ただ、目が合う。

 流星と。

 そして私たちは、同時に跳んだ。

 空を裂くように、刃を振るった。
 朱と若草の軌跡が交差し、異形の首を断つ。

 その瞬間、世界が音もなく弾けた。
 闇は消え、空は閉じた。

 私は目を覚ました。
 自分の部屋で、何事もなかったかのように。

 スマホも、流星の存在も、
 何もかもがなかったことになっていた。

 ただ、私の心だけが知っていた。

 あの日、草原で戦ったことを。
 流星と共に守った世界のことを。

 すべてが消えても、私の胸には確かな記憶がある。

 「また、どこかで――」

 私はそう呟き、静かに空を見上げた。
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