10 / 15
三章 消えない傷痕
三話
しおりを挟む
店の中に飛び込んで見れば、血の海の中、親友とその妻は既に事切れ、娘は虫の息だった。
空腹も忘れ、佐七はお艶に血止めを施し、医者に担ぎ込んだ。
もう少し受けた傷が、首に近かったら危なかったと医者は傷を縫いながら言った。
お艶は凶事の時、店の手伝いをしていて、丼が乗ったお盆を胸の前に抱えていた。
そのおかげで刃先が狂ったのだろう。
丼は割れていたが、綺麗に真っ二つになって、お艶の側に転がっていたお盆がそれを物語っていた。
お艶が後に証言した犯人の侍は、未だに捕まっていない。
勿論、佐七は親友夫婦を殺した犯人を懸命に探したのだが……。
亡くなる前まで、それが俺の悔いだと……お艶にすまねえと何時も零していた。
父親同士が仲が良かったので、お艶と才蔵も幼なじみだ。
ほんの赤ん坊の時から行き来していた。
時々、佐七は休みの時、倅を連れて蕎麦を食べに来たりもしていた。
佐七は、店でくるくると良く働くお艶に目を細め「お艶坊もすっかり大きくなって。女の子は良いよな~。家の中が明るくなるぜ。それに比べて、男の子は臭いは生意気だわ……ああ、つまんねぇ」と何時も言い、「どうだ?ウチの才蔵の嫁さんにくんねえか?」幼なじみをからかった。
そのせいか、才蔵はお艶を意識せずにはいられなかった。
信吉の方は「この子は気が強いぜ」とか「跳ねっ返りだぜ」とか「いやぁ、まだまだガキだよ」とか言って、まるで本気にせず笑っていたのだが。
空腹も忘れ、佐七はお艶に血止めを施し、医者に担ぎ込んだ。
もう少し受けた傷が、首に近かったら危なかったと医者は傷を縫いながら言った。
お艶は凶事の時、店の手伝いをしていて、丼が乗ったお盆を胸の前に抱えていた。
そのおかげで刃先が狂ったのだろう。
丼は割れていたが、綺麗に真っ二つになって、お艶の側に転がっていたお盆がそれを物語っていた。
お艶が後に証言した犯人の侍は、未だに捕まっていない。
勿論、佐七は親友夫婦を殺した犯人を懸命に探したのだが……。
亡くなる前まで、それが俺の悔いだと……お艶にすまねえと何時も零していた。
父親同士が仲が良かったので、お艶と才蔵も幼なじみだ。
ほんの赤ん坊の時から行き来していた。
時々、佐七は休みの時、倅を連れて蕎麦を食べに来たりもしていた。
佐七は、店でくるくると良く働くお艶に目を細め「お艶坊もすっかり大きくなって。女の子は良いよな~。家の中が明るくなるぜ。それに比べて、男の子は臭いは生意気だわ……ああ、つまんねぇ」と何時も言い、「どうだ?ウチの才蔵の嫁さんにくんねえか?」幼なじみをからかった。
そのせいか、才蔵はお艶を意識せずにはいられなかった。
信吉の方は「この子は気が強いぜ」とか「跳ねっ返りだぜ」とか「いやぁ、まだまだガキだよ」とか言って、まるで本気にせず笑っていたのだが。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる