召還聖女はストックホルムの夢を見るか

らんふぁ

文字の大きさ
1 / 28

1話

しおりを挟む
……え?

峰岸葵みねぎしあおいは戸惑っていた。


確か部活が終わって学校から帰宅途中のハズ……だよね?
うん、リュックは背中に背負ったままだし、スポーツバックも手に持ってる。

なのに何でこんな所にいるの?


さっき目の前がグニャッと歪んだ気がした。
そうしたら……。 

……見慣れた通学路ではない。
何処かの建物、石造りの壁を松明が照らしている薄暗い部屋で、体育館ぐらいはある。

……ちょっと待って。松明?今時?



「おお、成功したか」

状況をまだ飲み込めない葵だったが、若い男の声にハッとした。

入口から入って来たのは男が3人。
薄暗いので細かい表情までは良く見えないものの、ザ・ガイジンなのは分かる。

1人目……松明の灯りに髪が照り映えているので金髪?らしき若い男。
さっきの声はどうやらこいつらしい。
如何にも王子様と言った感じの古風な服。20歳前後だろうか。

2人……30歳ぐらいで背がえらく高く2mはありそうだ。黒っぽい髪は短く、がっしりした身体に鎧を纏っている……という事は、絶対戦闘向きに違いない。
「……本当に聖女なのですか?胸なんか平らだし、男みたいで、とてもそうは見えませんが」
なかなかのイケボだが、言っている内容はかなり失礼。

中学生の葵はショートカットで痩せているだけ。む、胸は成長過程にあるのだ………多分。
って第一、スカートを履いてるではないか!

最後の1人……杖を持ったローブ姿の皺がある年配の男が口を開く。6 0歳は行ってそうだ。
しわがれた声が失礼イケボの問いに答えた。
「間違いない。この召還の魔法陣から現れるのは聖女のみ」

言われて足元を見れば、確かに薄く光を放つ魔法陣が描かれていた。

……今、聖女を召還したって言った?



葵はクラスメイトで親友の椎名綾香しいなあやかがラノべ好きで、異世界召還、転生物を良く勧められて読んでいたのだが……。

……コレって現実?

こっそり足をつねってみたが残念ながら痛い。

ペラペラ日本語を話す、時代錯誤の衣装を着た怪しさ満載のガイジン達。

ビックリカメラ……?
にしてはこの部屋、セットにしては懲りすぎで、ハリボテ感がない。
そもそも葵はまだ中学三年の14歳。本人の了解はおろか保護者の同意も無しで、勝手に通学路から連れ出すのは犯罪だろう。

葵はちょっと特殊な家庭環境にある為、こういうオフザケを家族は絶対に許可しない。


「聖女よ、ようこそ参られた」とにこやかに言う見かけ王子。

ようこそ参られた?

その言葉に葵はこれが現実かどうかは、一時棚上げにした。
ふつふつと怒りの感情が沸き上がって来たからだ。

人の都合も聞かずに無理矢理連れて来たクセに!

今日は単身赴任中の検事の父親、峰岸いつきが半年ぶりに帰ってくる日だったのだ。
母親が亡くなっている父子家庭の葵は、転勤の多い父親と一緒に暮らすのが難しく、祖父母の家で生活していた。

タ飯は料理上手のお祖母ちゃんが、ご馳走を張り切って作っている筈。
それを楽しみにしていたし、激務の父親なので、親子の時間は物凄く貴重なのだ。それを……!



ふ ざ け ん な !


『葵、これはラノべなんだよ、ラ ノ べ !そんなに召還物にムキにならんでも』

『そうは言うけどさ、転生物はまだ良いのよ。死んでこっちの世界とはもう切れてるんだから。偶然の転移はまあ仕方ないとしても、召還は違うでしょ?そもそも本人の同意を得てないんだしさ。要は拉致……略取りゃくしゅだよ』

『おー、さすが未来の検事!因みに誘拐とどう違うの?』

『誘拐に誘うって字が入ってるでしょ?簡単に言えばね、犯人が言葉巧みに色々騙して、本人がその時は納得して付いていっちゃう事。ゲームのレアアイテム~とか、お母さんが急病だから~とか』

『なるほど~。んじゃ拉致?略取?ってのは?』

『拉致を法律用語で略取って言うんだよ。こっちは本人の意志は関係なしでムリヤリ連れてかれちゃう事。ホラ、北の国に連れてかれた人達いるでしょ?』

『ああ、それで誘拐じゃなくて拉致なんだ。で、その罪は?』

『略取、誘拐罪。それが未成年なら末成年略取、離婚したダンナが子供を勝手に連れてった、なんてのもコレ。ケースにもよるけど刑法224条で3月以上7年以下の懲役。召還の動機が結局自分達の利益の為なんだから、営利目的にもなり得るかもね。我らの世界を救って~とか、だしさ。望んでないのに連れて来られて働らかされるワケだし。その場合は刑法225条、1年以上10年以下の懲役かな』

『へー』

『閉じ込めたりしたら逮捕監禁罪になるし、そこから逃げようとしてケガしたり、死んじゃったら、もっと罪は重いよ。殺人なら死刑の判決あるし』

『ありゃ。この話、召還された聖女サマ、結局ニセモノって言われて殺されちゃったんだよね』

『何それ、ヒドイ……ってネタバレすんなや』


私が聖女かどうかは、今どうでもいい。
召還は略取よ。これは犯罪なんだ。

まず大事なのは“犯人”達から逃げる、そして現状確認。

“略取”の動機は、色々な理由で滅亡しそうで困った末のと欲得絡みが多かった。

状況も分からないのに言う事なんか聞くもんか。





























しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...