召還聖女はストックホルムの夢を見るか

らんふぁ

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2話

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葵は深呼吸をし、息を整える。

落ちつけ、落ちつけ……。

ここにいる事自体が既に犯罪行為で、私は被害者。
相手は男が3人で、こちらは1人。おまけに素手の中学生の女の子。
何をされるか分からないから怖い。そう、命の危険も感じている。故に逃げようとした結果相手に傷を負わせても罪には問われない。

よし……!

邪魔になるスポーツバックを床に置く。

そして声を張り上げた。
「近づかないで!」

3人は顔を見合せた。

「……警戒している?」見かけ王子が首を傾げれば2mがぶっきらぼうに答えた。
「そらそうですよ。いきなり知らない場所に来たんだから」

「近づくなって言ってるでしょ!」

「おいおい、そう興奮しないで」ここは自分が、と他の2人に合図し、2mが更に近づく。

警告無視、ね。
これで遠慮はいらないが更にダメ出し。

「触らないで!」

「大丈夫、何もしないって」

落ち着かせようと思ったのか、葵の手首を取ったその瞬間、入身・転換の体さばきによって相手の側面に回った。
男の手に親指を絡め掌で固定し外側へ捻る。そして自分の方に引きつけると見事にバランスを崩した。合気道の小手返しである。

「!」

祖父の合気道の道場で幼少期から鍛練していたとはいえ、体格差がある相手との接近戦は不利だ。
今は相手の意表を突けただけ。戦闘能力も高そうだから……。

葵は素早く足のすね即ち弁慶の泣き所を蹴る。
「ぐっ!」
次いで股間を膝で蹴りあげた。鍛練でも鍛えられない場所である。そして一発で効果覿面だからこそ急所と云うのだ。

『まずは逃げる。それが出来ない時、男にはこれが一番効くわよ。ただ、その後げしげし、なんて更に踏まないように。過剰防衛になるから。痴漢や婦女暴行犯なんかにはそうしてやって、いっそ子孫なんか残せないようにしてやりたいけどね』
男性陣が聞いたら震え上がりそうな事を、ニッコリとそれはそれは美しい笑顔で教えてくれたのは、道場に通っていた婦人警官のお姉さんだ。

『あら、よろめいた振りして踏んづけるってのもアリじゃない?』と嬉しそうにのたまったお姉さんもいた。

お姉さんのレクチャー通り、堪らず崩れ落ちた2mは呻く声すら出せないでいる。

次に狙いをローブの男に定めた。

祖父母に育てられた葵は本来敬老精神が強い。しかし、犯人の1人となれば遠慮はしない。

葵に迫られ慌てる男の肘を打つ。痺れて力が抜けた所で杖を取り上げ、その鳩尾みぞおちを一撃。

「ぐえっ!」

気絶し倒れた男を踏み越え、葵は最後のターゲットに向き直る。

まさか召還した少女が、このような暴挙に出るとは想像もしていなかったに違いない。
呆然としていた見かけ王子が我に返った。
「な、何をする!?」

「この人攫い!喰らえ!」
拾ったスポーツバックを振り回せば見事こめかみにクリーンヒット。

遠心力で威力を増した打撃を受けてフラつく男に葵は再び股間蹴りをかまし逃げ出した。

武道を習っている葵は当然攻撃してはいけない場所、つまり人体の急所を良く知っていたのである。
稽古の時ならそんな事はしないが、相手は犯罪者、こんな事に巻き込んだ怒りもあって容赦しなかった。

葵が走り去った部屋に残されたのは、急所を蹴られて痛みに声も出せず、蹲る2人と気絶した1人。




部屋から飛び出すと、地下だったらしく、壁に囲まれ目の前に登りの階段だけがあった。



用心して登り、そっと辺りを窺う。
幸い人気はなく、ひっそりとしている。


正面に大きな扉があり閉まっていたが、施錠はされていなかった。

少しだけ開けて覗くと、地下室と同じぐらいの広さの部屋の中央に魔法陣が描かれ、その図形の真ん中が漏斗のように凹んでいた。
どうやら地下の魔法陣の真上に当たるようだ。

魔法陣の周りに15人程のローブ姿の人間が倒れている。

おそらく、ここで召還の儀式を行ったのだろう。
ラノべでも儀式には膨大な魔力やら何やらを使うのがテンプレなので、きっと似たり寄ったりに違いない。

倒れている者達の生死はここからでは分からないが、犯罪に加担した連中だ。面倒は仲間に見てもらえばいい。

今ならすぐ追って来られる者もいない。
その為に魔法使いと思われる口ーブの男を気絶させ、他の2人には急所蹴りをかましたのだ。

もし回復魔法があったとしても、意識が無かったり、痛みで声を出せなければその分時間が稼げる。

葵は建物の外へと出て行った。



時にイルマヤ王国歴498年の事であった。

これが後に【断罪の聖女】【変革の聖女】時には【最強(最凶)】と陰で呼ばれるようになる、アオイ・ミネギシの物語の始まりである。























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