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21話
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入浴してサッパリした葵はぐっすり眠り、目が覚めたのは9:00に閉まる食堂のオーダーストップ、ギリギリの時間だった。
慌てて下に降り、オススメのハンバーグ定食を頼んだ。
注文を取って運んで来たのは、ふっくらして愛想の良い女性。彼女が愛妻のジェネだ。
強面のヴィオークは厨房に引っ込んでいる。
異世界にハンバーグ定食があった事、それもパンだけではなく御飯があった事に、ちょっと感動する。
ラノベのテンプレだけど、実際日本人にはやっぱり御飯!が無いとね-。
味は文句なし、この宿は当たりだ。
すっかり【林檎亭】が気に入った葵は連泊する事にした。
初めの3日間、葵は王都のガイドブック生活編と施設編を買って読み、施設編にあった図書館に通い、この世界の歴史、この国の歴史、聖女、魔法、スキルについて勉強していた。
聖女のリサが奨励し、身分の別なく誰でも利用可能な図書館は、かなりの規模でしかも蔵書が豊富。
まだ身分証を作っていないので、本の貸出は出来ない。
司書を通さない本の持ち出しは、警報が鳴るらしい。
ただ館内での閲覧は可能だ。
ここでも幻覚のスキルを使い、毎日容姿を変えて通っている。
召喚された葵は何の情報も持っていない。この世界の基礎知識さえないのだ。
無知故に、やらかしたくないし、利用もされたくない。
4日目で葵は一度【林檎亭】をチェックアウトする。
図書館で勉強した後、又古着屋で身形を代え、今までの服はクリーンをかけて売ったが、着替えをした葵は鏡に写った姿を見てふと気づいた。
持物が同じ、靴が同じじゃ、姿を変えてる意味無いじゃない!
量産品の丈夫な布製でポケットと中に仕切りがあるデザインのバックと、財布、靴を買う。
そして運動靴はクリーンをかけ、革袋と一緒にインベントリへ。
又、幻覚スキルで容姿を変えた葵は、再び【林檎亭】へ向かった。
くすんだ長めの金髪の少年で新規の客のフリ。
チリリン……!
「いらっしゃい、お泊まりですか?」
おや、今日の受付はジェネらしい。
「うん。部屋ある?」
「風呂付きなら銀貨6枚銅貨5枚、シャワーだけなら銀貨4枚です」
「風呂……いや、無しで」
できるだけ節約せねば。
今度の部屋は209。
【林檎亭】は全部で12部屋ある。
200が3人~5人泊まれる大部屋風呂付き。
201~203が風呂付の2人部屋。
204~207が風呂付き1人部屋。
208~211がシャワーのみの1人部屋だ。
それでも無いよりはずっと良い。
【林檎亭】は、食事が美味しく他よりも安い宿なので又3日の連泊。
しかし懐具合を考えたら何時までも宿屋生活は無理がある。
最初は薬草取りと思っていたが、ガイドブックによると、簡単に街を出入りするなら身分証が必要とあった。
王都で生まれた者には、届け出をした時に市民証が作られているのでそれを使用している。
王都に入る前、素顔のままで会っていたのは、3人の騎士、ザックとネリー、守備隊のミランとアルノー。
金と革袋を巻き上げたし、怪我したザックに薬草を分けてやり、ディーを拾って預けたり滅茶苦茶目立つ事を既に充分やらかしていた。
幻覚スキルを確認する前だったとはいえーー。
う~、失敗した~!
絶対覚えてるよね。
べッドの上で自分の間抜け加減にジタバタする。
門の審査をやり直す事も考えたが、幻覚スキルが人間の目は誤魔化せても、審査の為の水晶玉に通用するかは分からない。
単なる犯罪をしたかどうかの判定のみならば良いのだが、この者は以前通ったアオです、とか出たら目も当てられない。
街を出て戻らないなら身分証は別に必要ないが今は不味い。
宿屋でチラッと耳にした事だが、騎士達がウロウロして、街を出る者を門の所でチェックをしているらしい。
こういう時、素振り1つでカンの良い者は怪しい者を見抜いたりするので、触らぬ神に祟りなしーー近づかないに限る。
召喚されてもうー週間。
騎士達を街の中でも見かけるようになったので、捜索方針に何らかの変化があったのかも知れない。
追われている葵は図書館通いをしながら、探知と追跡のスキルも使っている。
探知を展開させると自分を中心に、地図と重ねたレーダーのような画面が脳裏に浮かぶ。
レベル10の葵はおよそ半径10Kmの広範囲をカバーできた。これはほぼ王都の3分の1に相当する。
人々は点で表示され、特に何もなければ黒、その中で害意を持つ、犯罪予備軍がいれば赤く光る。
害意は無くても“騎士”と思い浮かべると、青の点で表示され、王都中に散っているのが分かった。
全部表示するのは煩いので、赤と青のみに注意を向ける事にする。
意識を切り変えれば、段階的に近距離を表示して行く。
そして点が20mまで接近すると警戒音が鳴り、どの方向から接近して来るかも分かった。
ピロン!“右方向”
警戒音が鳴ったので目をやると、右から走って来た赤い点が付いた男が、高級な店から出て来て、停まっていた馬車に乗り込む寸前の身形の良い老人と、付き添っていた家人をあっという間に倒し、その手から鞄を奪って逃げていた。
早速追跡のスキルを使う。
対象にマーキングを付けるのだが、その男の背中にでかでかと顔文字L(゚皿゚メ)」を付けてやる。
人混みに紛れても、しっかり印が付いていて、更に探知を使えば見失う事はない。
幻覚のスキルで自分の印象を変えて追った。
痩せている葵だが、筋肉質の男へ、髪も黒から赤毛へ。
犯人は身体強化でぶちのめしたので、疑う事もなく、赤毛の男にやられたと思うだろう。
鞄を取り戻し、同じように(´д`|||)でマーキングしておいた被害者の老人に返してやった。
驚いてポカンとした老人と家人も葵の本当の姿は分からない。
幸い2人とも怪我は無かったようで、我に返り大事な商売の品物が戻ったと喜んだ老人は、お礼にと中金貨1枚くれた。
ここは遠慮しないで有り難く受け取っておく事にする。
中金貨1枚でおよそ100.000円。
金欠の葵にはとても助かる金額だった。
葵と別れた老人は不思議そうに首を傾げる。
「……はて?私の鑑定をあっさり弾いたあの男……-体何者なんだろうか?」
慌てて下に降り、オススメのハンバーグ定食を頼んだ。
注文を取って運んで来たのは、ふっくらして愛想の良い女性。彼女が愛妻のジェネだ。
強面のヴィオークは厨房に引っ込んでいる。
異世界にハンバーグ定食があった事、それもパンだけではなく御飯があった事に、ちょっと感動する。
ラノベのテンプレだけど、実際日本人にはやっぱり御飯!が無いとね-。
味は文句なし、この宿は当たりだ。
すっかり【林檎亭】が気に入った葵は連泊する事にした。
初めの3日間、葵は王都のガイドブック生活編と施設編を買って読み、施設編にあった図書館に通い、この世界の歴史、この国の歴史、聖女、魔法、スキルについて勉強していた。
聖女のリサが奨励し、身分の別なく誰でも利用可能な図書館は、かなりの規模でしかも蔵書が豊富。
まだ身分証を作っていないので、本の貸出は出来ない。
司書を通さない本の持ち出しは、警報が鳴るらしい。
ただ館内での閲覧は可能だ。
ここでも幻覚のスキルを使い、毎日容姿を変えて通っている。
召喚された葵は何の情報も持っていない。この世界の基礎知識さえないのだ。
無知故に、やらかしたくないし、利用もされたくない。
4日目で葵は一度【林檎亭】をチェックアウトする。
図書館で勉強した後、又古着屋で身形を代え、今までの服はクリーンをかけて売ったが、着替えをした葵は鏡に写った姿を見てふと気づいた。
持物が同じ、靴が同じじゃ、姿を変えてる意味無いじゃない!
量産品の丈夫な布製でポケットと中に仕切りがあるデザインのバックと、財布、靴を買う。
そして運動靴はクリーンをかけ、革袋と一緒にインベントリへ。
又、幻覚スキルで容姿を変えた葵は、再び【林檎亭】へ向かった。
くすんだ長めの金髪の少年で新規の客のフリ。
チリリン……!
「いらっしゃい、お泊まりですか?」
おや、今日の受付はジェネらしい。
「うん。部屋ある?」
「風呂付きなら銀貨6枚銅貨5枚、シャワーだけなら銀貨4枚です」
「風呂……いや、無しで」
できるだけ節約せねば。
今度の部屋は209。
【林檎亭】は全部で12部屋ある。
200が3人~5人泊まれる大部屋風呂付き。
201~203が風呂付の2人部屋。
204~207が風呂付き1人部屋。
208~211がシャワーのみの1人部屋だ。
それでも無いよりはずっと良い。
【林檎亭】は、食事が美味しく他よりも安い宿なので又3日の連泊。
しかし懐具合を考えたら何時までも宿屋生活は無理がある。
最初は薬草取りと思っていたが、ガイドブックによると、簡単に街を出入りするなら身分証が必要とあった。
王都で生まれた者には、届け出をした時に市民証が作られているのでそれを使用している。
王都に入る前、素顔のままで会っていたのは、3人の騎士、ザックとネリー、守備隊のミランとアルノー。
金と革袋を巻き上げたし、怪我したザックに薬草を分けてやり、ディーを拾って預けたり滅茶苦茶目立つ事を既に充分やらかしていた。
幻覚スキルを確認する前だったとはいえーー。
う~、失敗した~!
絶対覚えてるよね。
べッドの上で自分の間抜け加減にジタバタする。
門の審査をやり直す事も考えたが、幻覚スキルが人間の目は誤魔化せても、審査の為の水晶玉に通用するかは分からない。
単なる犯罪をしたかどうかの判定のみならば良いのだが、この者は以前通ったアオです、とか出たら目も当てられない。
街を出て戻らないなら身分証は別に必要ないが今は不味い。
宿屋でチラッと耳にした事だが、騎士達がウロウロして、街を出る者を門の所でチェックをしているらしい。
こういう時、素振り1つでカンの良い者は怪しい者を見抜いたりするので、触らぬ神に祟りなしーー近づかないに限る。
召喚されてもうー週間。
騎士達を街の中でも見かけるようになったので、捜索方針に何らかの変化があったのかも知れない。
追われている葵は図書館通いをしながら、探知と追跡のスキルも使っている。
探知を展開させると自分を中心に、地図と重ねたレーダーのような画面が脳裏に浮かぶ。
レベル10の葵はおよそ半径10Kmの広範囲をカバーできた。これはほぼ王都の3分の1に相当する。
人々は点で表示され、特に何もなければ黒、その中で害意を持つ、犯罪予備軍がいれば赤く光る。
害意は無くても“騎士”と思い浮かべると、青の点で表示され、王都中に散っているのが分かった。
全部表示するのは煩いので、赤と青のみに注意を向ける事にする。
意識を切り変えれば、段階的に近距離を表示して行く。
そして点が20mまで接近すると警戒音が鳴り、どの方向から接近して来るかも分かった。
ピロン!“右方向”
警戒音が鳴ったので目をやると、右から走って来た赤い点が付いた男が、高級な店から出て来て、停まっていた馬車に乗り込む寸前の身形の良い老人と、付き添っていた家人をあっという間に倒し、その手から鞄を奪って逃げていた。
早速追跡のスキルを使う。
対象にマーキングを付けるのだが、その男の背中にでかでかと顔文字L(゚皿゚メ)」を付けてやる。
人混みに紛れても、しっかり印が付いていて、更に探知を使えば見失う事はない。
幻覚のスキルで自分の印象を変えて追った。
痩せている葵だが、筋肉質の男へ、髪も黒から赤毛へ。
犯人は身体強化でぶちのめしたので、疑う事もなく、赤毛の男にやられたと思うだろう。
鞄を取り戻し、同じように(´д`|||)でマーキングしておいた被害者の老人に返してやった。
驚いてポカンとした老人と家人も葵の本当の姿は分からない。
幸い2人とも怪我は無かったようで、我に返り大事な商売の品物が戻ったと喜んだ老人は、お礼にと中金貨1枚くれた。
ここは遠慮しないで有り難く受け取っておく事にする。
中金貨1枚でおよそ100.000円。
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