召還聖女はストックホルムの夢を見るか

らんふぁ

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24話

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聖女が召喚されて早、10日が経った。

ずっと寝込んでいた“塔”の魔道師長シドや弟子達も、ようやく回復して仕事に復帰できた。

シドは人の魔力が追えるので、それを期待されていたのだが、今回は残念ながら出来ないと言われてしまった。

シドによれば人の魔力はそれぞれ微妙な波長の違いがあり、一度でも彼の前で魔法を使ったら、そのパターンの違いを覚えているらしいのだが、召喚時、聖女は魔法を使
実力行使でぶちのめされたのだ。
だから肝心の聖女の魔力のパターンが分からない。

もう1つ、相手が大きな魔力を使えば感じ取れるのだが、その形跡もないと言う。

聖女ならば、最低でも聖、光の魔法を持っているので、どこかで使ってもおかしくはない筈なのだが……とシドは首を捻る。

更に悪い事に、召喚の館の結界をシドに確認させたところ、レベルが高い彼でも解けない事が判明し、国王達は-斉に青くなった。

慌てて500年前の大戦争から先祖が守った召喚の書を、頑丈な金庫の中の保存箱から取り出した。

その内容によれば、召喚の魔法陣はただの図形ではない。
描かれた緻密で複雑な図形のライン1本1本に魔石を砕いた特殊な塗料が使われている。
魔法陣自体の保護と召喚魔法の補助の為、膨大な魔力が込められているのだ。

塗料も魔石の他、色々な材料が使われていて、調合が非常に難しい。
その中で、今では殆ど見かけなくなった植物の名もあり、現状魔法陣の複製はほぼ不可能となった。

本当に今回の聖女は色々規格外過ぎて、追う者達は頭が痛い思いだった。



ーー彼らは知らない。
魔力が多すぎるが故に微調整が出来ない葵が、魔法はクリーンのみ、後は魔力を殆ど使わないスキルだけで生活している事を。



騎士達は今日も行方を追っているが、これと言った成果が無く、皆、精神的に疲労が溜まって来ていた。




「……ん?」
たった今、すれ違った男……どこか引っ掛かる物を感じたカーサは後を追った。
「ちょっと、そこの人。悪いがその革袋を見せてくれないか?」

突然騎士に呼び止められた男は眉を上げた。「何だってんだ。別に変な物は持ってないぞ」

「違う。確かめたいのは中身じゃない。革袋の方なんだ」

「……フーン。ホラよ」
革袋を手渡された力ーサは、礼を言ってよく見てみる。
思った通り、底に自分が目印の為に付けておいた小さな焼印があった。

「……俺のだ」

「はぁ?何だアンタ、いきなり因縁つける気なのか?人の事泥棒扱いするのかよ?」男は目をつり上げて怒り出した。

「ち、違うんだ。これはある人に俺がやった奴で、何故持ってるのかと……」
焦ったカーサは更に火に油を注ぐような事をつい口走ってしまう。

「やっぱり疑ってるんじゃねぇか!」怒れる男はカーサから革袋をひったくる。「こいつはな、古道具屋で買ったばかりなんだよ!疑うならコレ見ろ!」
パンツの尻ポケットからクチャクチャになった領収書を出して見せた。
「ホラ、【イーストン古道具屋】革袋小金貨6枚って書いてあるだろーが!」

「……スマン。実はこの革袋の持主をずっと捜しているんだ。コレをやった時はまさか当の本人とは全然気づかなくて……この革袋が手がかりの1つだと思っていたから……気を悪くさせてすまない」

あまりにションボリとしたカーサの様子に、男はため息をついて怒りを収めた。
「……この古道具屋に行ってみたら、売り主が分かるんじゃねぇか?」

「ああ、そうするよ。引き止めて悪かった」


カーサは【イーストン古道具屋】を訪ねたが、店主の話では売主が聖女とは似ても似つかない、長めのくすんだ金髪の少年と聞いてガッカリ。
既に転売されていたらしい。

城の敷地内にある騎士団の建物に戻ったカーサがこの話をヒューバートに伝えると納得顔で頷いた。

「団長、まさかこの事予測していたんですか?」

「ああ、実は進捗状況の報告をしに本宮に行ったら、丁度ランバルト様が見えていて…」

隠居した前国王がいちいち口出しするのはロクな事にならないと、普段はめったに本宮には顔を出さないのだが、こちらの料理人が作る焼菓子をリサがことのほか好んでいたので、作って貰いにわざわざ来ていたのだそうだ。
その時、ヒューバートから相変わらずの進捗状況を聞き、さすがに放っておく事はできなかったらしい。
 
自分の素顔が目撃されている事を、頭が回る聖女が気づいたならば、サッサと身に付けている物は手離すだろう……。

そうすると手がかりが無いではないか……落胆する部下にヒューバートはその続きを話した。
「だが、嬢ちゃんを捜すのに良い方法をダリオン氏から聞いたそうで、今から確認に行こうとしていたんだ」

「ダリオン氏?あのー級鑑定士の?」

「そうだ。彼が言うには……」




閉館間際の図書館に駆け込んだヒューバートは、司書にまず毎日同じ人物が通ってないか聞いてみた。
すると、いるにはいるが、聖女とは全くの別人で皆身分証持ちでほぼ常連。
研究者や学生達で、閲覧室で勉強した後、大抵は貸し出ししているという。

そこでヒューバートは質問を変えた。
「では、貸出しはしていないが、歴史、聖女、魔法、スキルの本を読んでいる人物はいないかな?」

司書は少し考えた。「……いますね。何処にそれらの本があるか、最近良く聞かれますし、その後何冊か抱えて閲覧室に持って行くのを見かけますが、全部違う人ですよ?」

「……え?全部違うって別々の人間って事か?」

「はい、そうです。今日もそういう人は確かにいましたが、昨日の人とは別人です」

ヒューバートは眉根をよせた。
「スマン、もう1つ質問させてくれ。その分野を閲覧している連中だが、来始めたのはいつ頃からだか分かるか?」

「うーん、そうですね……ここ10日ってところでしょうか」

「ありがとう」

礼を言って図書館を出たヒューバートは、ダリオンの店に足を向けた。

彼の言った通り、確かに10日ぐらい前からそのような人物が図書館に出入りしていた。

だが、別人とはどういう事だろう?

どうせ聖女の捜索は手詰まりなのだ。
革袋はダリオンが示唆した通り売っていたし、それならあの服も始末しているに違いない。
宿屋の方もこの10日間虱潰しに回ったが、何の進展もなく、魔法関係で追ったが、あのシドでさえお手上げと来ている。

彼の意見を聞いてみるか……。



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