召還聖女はストックホルムの夢を見るか

らんふぁ

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23話

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図書館通いの後、葵は又、古着屋に来ていた。
今まで着た切り雀だったので、雨で濡れた時などを考え、着替え用の服をワンセット。
それまで何時でも逃げられるように着の身着のままで寝ていたのだが、やはり寝にくいので寝間着を買う。

その代わり古道具屋で革袋を売る事にする。
中金貸を礼にと貰ったが、持ち金は多い方が良いし、道着のように特に思い入れもなく、このまま無限収納インべントリにしまっておいても無駄なだけだ。

元々騎士の持ち物だけあって品が良く、中古品ながら小金貸4枚(約40.000円)の値が付いた。



タ食後、シャワーを浴びて寝間着に着替えた葵は、残金を確認した後【林檎亭】のべッドにパタンとひっくり返った。

仕事どうしようかな……。出来れば住込みで何かないかな。

葵にはチート故の悩みがあった。
これでは生活魔法でさえままならないのである。

まず魔力がむげんだいで、全属性。
調べたら、いねーよ!そんな奴!だった。
普通、火と水、闇と光、聖のように相反する属性は同時に得る事はできないらしい。

確認しようと部屋に結界を張って、火魔法を使って見たら……。

ライターぐらいのほんの小さな火を思い浮かべたのだが魔力が多すぎ、ステーキを焼く時のフランべの3倍くらいの炎がボンッ!と出た。
実験したのが、浴室でつくづく良かったと思う。
次に水魔法ではコップ一杯のつもりが浴槽に一杯。危うく溢れそうになって焦った。
階下に水漏れでもしたら大変な事になる。

普通服が濡れたら風魔法で乾かすのだが、調節が利かない今の状態では、下手をすると切り刻んでしまいそうである。
着替えを買った理由がそれだ。

要するに魔力が多すぎて過剰な効果になってしまうのに、まだ微調整がろくろく出来ない状態なのだ。
過剰でも別に構わないのは水魔法のクリーンくらいである。

毎日着ている服にクリーンをかけ、“ウイルス、雑菌は存在しません。極めて清潔です”の鑑定結果は、現代日本で生まれ育った葵にはとても重要な事だった。
雑菌があると服は臭くなるし、いくら男の振りをしているとはいえ、臭いのには耐えられない。

こんな調子で光、風、土、闇、聖を使ったら、-体どうなる事やら……。

しかも今は門の出入りを騎士がチェックしているので、人のいない王都の外に行って確認もおろか練習も出来ないのだ。
そういう事なので生活魔法は暫くお預け。
「ーー元々魔法が無かったんだし、ま、いいか……それよりも……何をするにしても必要なんだよね....身分証」

色々なギルドや教会で身分証は作れる。
審判の水晶玉と同じ系列のシステムで、作る時には各人のステータスが表示され、名、性別、年齢、魔法属性、スキルが分かるようになっている。ただ個人の任意で表示と嫌なら隠蔽も可能らしい。

その中で隠蔽できない項目ーー当然とも言えるがなのだ。

アオイ ミネギシ
聖女というジョブ、異世界人である事は隠蔽できるが、まず家名持ちは貴族か異国人。
それだけで既に目立つ。


社会的にまず結婚を最優先に考えているので、
仕事は限られる。
一般的なのが女中、侍女、宮中で女官、その他魔法が使える者やスキルにより、治療士、鑑定士、薬士、結界士など。
冒険者になる者もいるが、その場合はかなり特殊。
そしていずれも身分証は必須である。

年齢14
この世界での成人は15歳。
末成年で出来る仕事は限られ、保護者がいなければ尚更難しい。

この3つが隠蔽できないという事は、幻覚のスキルの選択肢がかなり狭められてしまうのだ。
「う~……これは詰んだかも……」
ポスッと葵は顔を枕に埋めた。




「あ?今泊まっている客?」
【林檎亭】に二人連れの騎士が訪れ、受付にいたヴィオークに宿泊客の事を訊いて来た。

「こんな感じの少年なんだが……泊まってないか?」
そう言って紙に描かれた似顔絵を見せた。

短い黒髪、細身で白い上下で上着を紐で締めている、異国風の顔立ち。

「いねぇな」

にべもない返事に訊いた騎士はムッとするが、もう一度。
「ちゃんと見てくれ」

「こんなのは泊まってねぇ」

ヴィオークは単に何時もと同じ態度だっただけだが、騎士達には怪しく見えた。
「何か隠してないか?部屋を改めさせて貰うぞ」

「あ!」

止める間もなく、騎士2人は階段を駆け上がって
行った。



?騒がしい?

階段の方の部屋から順番に誰かが騒いでいる。

身体強化で聞き耳を立て、探知を発動した葵は顔色を変えた。2
「……来た!」

慌てて幻覚スキルを使って別の姿になり、泊まる時にしている防犯の為の部屋の結界は怪しまれないように解いておく。

ドンドンとドアが叩かれたが、わざと直ぐには返事をしない。

再びドンドン。

「……誰?オヤジさん?」
『違う、騎士団の者だ』

「騎士団が何の用?」
『いいからドアを開けてくれ』

「やだ」
『何だと!』

「……今、寝てたんだよ。だいたい本当に騎士だって証拠もないのに、ホイホイ開けられるか。最近物騒だってのに」

唸るような声がする。
それを宥めるようにもう1つの声が穏やかに頼んで来た。
『人を捜しているんだ。ちょっと中を確かめるだけだから……』

カチャッ!
ドアが開く。

本当に寝ていたらしく、寝間着姿で長いくすんだ金髪がもつれた、実に不機嫌そうな少年が顔を見せる。
「……早くしてよ」

部屋に入って来た2人の騎士は、ぐるりと見回し、洋服掛けに引っ掛けたシャツとパンツと上着、布のバックに目を留めた。
「荷物はこれだけか?確認しても?」

少年が頷いたので見てみると、着替えと財布で特におかしな物は入ってない。

「もういい?明日早いんだ」

「ああ、すまなかった」

一通り宿泊客を確かめたが、全て空振りに終わり、心持ち肩を落として下に降りて来た騎士達を、無愛想を形にしたようなヴィオークが出迎えた。
「だからいねぇと言っただろうが」

「ああ、スマン。質問を変えるが、泊まってなくても、はどうだ?」

「ハッキリ言ってやる。





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