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三話
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当時の雪菜が右京と初めて出逢ったのは、まだ彼女が姉様の朝霧太夫に付いていた時である。
鈴代屋の看板太夫、朝霧は彼女を実の妹のように可愛がってくれた優しい女だった。
その姉様が、刃状沙汰に巻き込まれたのである。
太夫にすっかりのぼせ上がった三河以来の名家の大身旗本の若様が家から吉原に行くのを禁じられ、抱えの鈴代屋の方でも、それを承知。
切羽詰まった若様は刀を持ち出し、花魁道中の太夫に心中を図って斬りかかったのであった。
吉原では刃状沙汰は御法度である。
見世……楼閣に上がる時には、武士といえども、腰の大小の刀を預けるのが慣わし。
そして見世に行っても主が「若様、手前共では、もう若様を朝霧太夫にお会わせする訳には参りませぬ。きつくお屋敷の方から申しつかっておりますので」と門前払い。
例え名家の子息だろうと金の支払いが期待出来なければ、家からの要求を呑むしかない。
黄金色になびくのが吉原なのだ。
朝霧に会えない。
そして、こうしている間にも自分以外の男と……?
……ああ、嫉妬で胸が灼け付きそうだ……!
朝霧は私のものだ。この私だけの……。
我らのこの気持ちなど、金が大事の見世、家名大事の親などに到底理解などできぬ……。
この世で結ばれぬ縁なら、いっそあの世で添い遂げようぞ。
朝霧もきっと分かってくれよう……。
若様は太夫に会えなくなり、思い詰めた挙げ句、彼女が公衆の面前に出て来る花魁道中を狙ったのであった。
振りかざした刀に沿道から悲鳴が上がった。
「朝霧、一緒に死のう!」
高下駄を履いている太夫は、逃げようにも、そうは素早く動けない。
「姉様!」
朝霧太夫に付いていた雪菜が、とっさに石を拾って血迷った男に投げつけた。
「姉様!逃げて!」
石が当たった若侍の目に、狂気じみた怒りが閃いた。「この……!邪魔だてするな……!」叫ぶなり大きく刀を振りかぶると少女に向かい斬りかかる....…!
光る刃が恐ろしく足が竦み動けない。
迫り来る死に彼女は思わず目をつむった……。
鈴代屋の看板太夫、朝霧は彼女を実の妹のように可愛がってくれた優しい女だった。
その姉様が、刃状沙汰に巻き込まれたのである。
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切羽詰まった若様は刀を持ち出し、花魁道中の太夫に心中を図って斬りかかったのであった。
吉原では刃状沙汰は御法度である。
見世……楼閣に上がる時には、武士といえども、腰の大小の刀を預けるのが慣わし。
そして見世に行っても主が「若様、手前共では、もう若様を朝霧太夫にお会わせする訳には参りませぬ。きつくお屋敷の方から申しつかっておりますので」と門前払い。
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そして、こうしている間にも自分以外の男と……?
……ああ、嫉妬で胸が灼け付きそうだ……!
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「姉様!逃げて!」
石が当たった若侍の目に、狂気じみた怒りが閃いた。「この……!邪魔だてするな……!」叫ぶなり大きく刀を振りかぶると少女に向かい斬りかかる....…!
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