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二十話
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吉原の大門は、医師以外籠では通れないのが習わしだった。
そこで一行は籠を降り、鈴代屋へ向かう。
白雪太夫と三人の花魁達、長崎屋、それに右京。
「長崎屋様、太夫、お帰りなさいまし」
大門まで、見世の衆が数人出迎えていた。
「この通り、太夫達を無事お返し致しますよ。そう出来たのは、このお武家様のおかげですがな。宴に乱入し、太夫達に狼藉を働こうとした浪人達を追っ払って下さいました。松永右京様と仰います。お礼をしたいので、よしなに。太夫も是非にと」
見世の衆が右京に口々に礼を述べる。
「あの……貴方様は、以前にも太夫の命を救って頂いたお武家様じゃござんせんか?お顔に覚えが……」その中の一人が問いかけてよこした。
長崎屋は頷いた。「はい、その通り。太夫からもそう聞きました。ですから藤兵衛さんに伝えて下さいな」
「やっぱり。あっしは、左平と言いやす。二度も太夫を助けて頂き、まことにもって……」
ペコペコと頭を下げると、早速主に告げる為、鈴代屋へ駆け戻って行った。
鈴代屋では主の藤兵衛が、満面の笑顔で出迎えた。
「ああ、確かに松永右京様!重ね重ねお世話になりました」丁寧に礼を述べた。
恩人の右京は、それこそ下にも置かぬ扱いで、見世に招かれた。
本来なら、格式ある花魁と宴席を開くなら、引き出茶屋を通して呼び出しをするのだが、長崎屋と見世からの礼の宴席なのでそこは省略された。
たちまち料理や酒が並べられ、白雪太夫を始め、妹花魁達も宴席に侍る。
藤兵衛が改めて礼を述べ、長崎屋も言葉を添えた。「全く、松永様がいなければ、私共はどうなっていた事やら……」
「いや。おかげで、某こそ貧乏侍には縁無き見世にこうして招いて頂いた」
そして白雪太夫を見やり「……吉原一の太夫にの。まことに果報者でござる」と爽やかな笑顔を向ける。
彼女の胸がキュンと鳴った。
早速右京に酌をする。
……まるで夢のようだ。
恋い焦がれた相手が、こうして側にいるなどと……
酒を注ぐ手が
杯を持つ手が
微かに震え……己の胸の内を互いに伝える。
見交わす目と目……
「……さあ、松永様。酒をどうぞお召しなんす」
「…いただこう」ぐっと飲み干し「……太夫、誠に甘露にござる…」と頭を下げた
そこで一行は籠を降り、鈴代屋へ向かう。
白雪太夫と三人の花魁達、長崎屋、それに右京。
「長崎屋様、太夫、お帰りなさいまし」
大門まで、見世の衆が数人出迎えていた。
「この通り、太夫達を無事お返し致しますよ。そう出来たのは、このお武家様のおかげですがな。宴に乱入し、太夫達に狼藉を働こうとした浪人達を追っ払って下さいました。松永右京様と仰います。お礼をしたいので、よしなに。太夫も是非にと」
見世の衆が右京に口々に礼を述べる。
「あの……貴方様は、以前にも太夫の命を救って頂いたお武家様じゃござんせんか?お顔に覚えが……」その中の一人が問いかけてよこした。
長崎屋は頷いた。「はい、その通り。太夫からもそう聞きました。ですから藤兵衛さんに伝えて下さいな」
「やっぱり。あっしは、左平と言いやす。二度も太夫を助けて頂き、まことにもって……」
ペコペコと頭を下げると、早速主に告げる為、鈴代屋へ駆け戻って行った。
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「ああ、確かに松永右京様!重ね重ねお世話になりました」丁寧に礼を述べた。
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本来なら、格式ある花魁と宴席を開くなら、引き出茶屋を通して呼び出しをするのだが、長崎屋と見世からの礼の宴席なのでそこは省略された。
たちまち料理や酒が並べられ、白雪太夫を始め、妹花魁達も宴席に侍る。
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「いや。おかげで、某こそ貧乏侍には縁無き見世にこうして招いて頂いた」
そして白雪太夫を見やり「……吉原一の太夫にの。まことに果報者でござる」と爽やかな笑顔を向ける。
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早速右京に酌をする。
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恋い焦がれた相手が、こうして側にいるなどと……
酒を注ぐ手が
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微かに震え……己の胸の内を互いに伝える。
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