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二十ー話
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妹花魁の春菜は物怖じしない性格らしく、「松永様、奥方様は?」と尋ねてよこした。
右京は頬をかきながら苦笑した。「……某のような野暮天に来てくれる、酔狂な女はおらぬ」
松尾が首を振った。「あれ、松永様は良き男ぶりでありんすわいな」
白雪は、そんな妹花魁達に軽い嫉妬を覚えた。
私が言いたい……!
だが、一度口にすれば、想いが溢れて、抑えきれぬやも知れぬ。
春奈が更に彼に尋ねた。「ならば、好いたお方はありんすか?」
さすがに慌てた藤兵衛がたしなめる。「これ、そんな明け透けにご無礼な。松永様申し訳ございません」
「……いや、良い。好きな女は……おる」
……そのどこか儚い笑み。
白雪の胸がドキリとし、思わず高鳴った。
右京はあえて目を背けるように、開け放った障子から見える丸い月を振り仰いだ。「……某に取っては、あの月のような……美しい……だが、決して手の届かぬ高嶺の花。一時は添えぬ苦しさに、想いを断ち切ろうともしたが……できなんだわ」
貴方様も苦しまれたのですね……
「風の頼りに、その女が具合を悪くしたと聞いた時……例え届かぬ月であっても、失えば己に取ってこの世は闇になると遅まきながら気が付いた……」
右京が吐露したその想い……堪えきれず、白雪太夫の瞳から涙が溢れ出す。
「……太夫?どうかしましたかな?」白雪の涙に驚いたのは、主の藤兵衛で、おそるおそる聞いて来た。
彼女は安心させるように首を振った。「いえ……お話を伺って、この胸が熱くなりんした。……そこまで想われて、その女性は……ほんに……幸せ者でありんすわいなあ……」
……私は幸せ者です。右京様……
本当に……嬉しい……!
その時、くらっと目眩が彼女を襲った。
……部屋の中がぐるぐる回る……
叫び声が遠くに聞こえ……
太夫は、彼女の夢見た逞しい腕に抱えられていたが、意識を失って、それに気づく事はなかった……。
右京は頬をかきながら苦笑した。「……某のような野暮天に来てくれる、酔狂な女はおらぬ」
松尾が首を振った。「あれ、松永様は良き男ぶりでありんすわいな」
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私が言いたい……!
だが、一度口にすれば、想いが溢れて、抑えきれぬやも知れぬ。
春奈が更に彼に尋ねた。「ならば、好いたお方はありんすか?」
さすがに慌てた藤兵衛がたしなめる。「これ、そんな明け透けにご無礼な。松永様申し訳ございません」
「……いや、良い。好きな女は……おる」
……そのどこか儚い笑み。
白雪の胸がドキリとし、思わず高鳴った。
右京はあえて目を背けるように、開け放った障子から見える丸い月を振り仰いだ。「……某に取っては、あの月のような……美しい……だが、決して手の届かぬ高嶺の花。一時は添えぬ苦しさに、想いを断ち切ろうともしたが……できなんだわ」
貴方様も苦しまれたのですね……
「風の頼りに、その女が具合を悪くしたと聞いた時……例え届かぬ月であっても、失えば己に取ってこの世は闇になると遅まきながら気が付いた……」
右京が吐露したその想い……堪えきれず、白雪太夫の瞳から涙が溢れ出す。
「……太夫?どうかしましたかな?」白雪の涙に驚いたのは、主の藤兵衛で、おそるおそる聞いて来た。
彼女は安心させるように首を振った。「いえ……お話を伺って、この胸が熱くなりんした。……そこまで想われて、その女性は……ほんに……幸せ者でありんすわいなあ……」
……私は幸せ者です。右京様……
本当に……嬉しい……!
その時、くらっと目眩が彼女を襲った。
……部屋の中がぐるぐる回る……
叫び声が遠くに聞こえ……
太夫は、彼女の夢見た逞しい腕に抱えられていたが、意識を失って、それに気づく事はなかった……。
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