お江戸物語 藤恋歌

らんふぁ

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二十七話

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何やら意味ありげである。


「どういう意味ですかな?」


「いえね、看板の白雪太夫がお座敷にも出られない、寝たり起きたりじゃあ、鈴代屋さんの米櫃だって干上がってしまうんじゃないかと思ってねぇ。太夫には、さぞかし金がかかっているんじゃないか?」


「……だったら何なんです?」


山城屋はニヤニヤと嫌らしい笑いを浮かべた。「ですからね、今が売り時じゃないかと。花は萎れてからは、商品にならんでしょう?あの方は出来れば太夫を身請けしたいと言いなさってるのさ」


確かに今まで身請けの話が無かった訳ではないが……。


白雪には全くその気が無かったし、藤兵衛とて、今が盛りの彼女を手離す気は無かった。


身請け話でも、あのような相手では最悪と言っていい。

だが、如才なく考えているフリをする。


よし、少しは見込みがありそうだ、と見た山城屋は満足げに「ま、良く考えて下さいな。白雪太夫が今までのようにならなかったら、おたくに取っても悪い話ではない筈だからね。何せ、相手はある藩のご家老様。不自由はさせぬとの仰せだ。では太夫に宜しく」


山城屋が帰った後、大量の塩をまいた藤兵衛は太夫の元に行き、今の話を伝えた。


真っ青になった白雪は、めいっぱい嫌がった。「いやでありんす!どうしても、と言われるなら、わちきはいっそ死んだ方がマシでありんす!舌を噛みきってでも!あんなお座敷は……もう、もう、こりごりでありんす!」ハアハアと息まで切らせる有り様に籐兵衛は慌てて宥めにかかる。

身体が弱った太夫に、こんな興奮は良くない。


「分かった。分かった。確かに困り者の客だからね。ウチとしてもありがたくない」


「親父様、この通りでありんす」彼女は白い華奢な両手を合わせて、主を拝んだ。


「ならば、あのような事を言われないように、早く元の太夫に戻っておくれよ」

太夫を寝かせた彼は、まるで懇願するように言った。


「……あい」


そこへバタバタとが伊之助が藤兵衛を呼びに来た。「旦那様、すぐ来て下せぇ。南町同心の神野様と才蔵親分がお見えです。何でも長崎屋さんがゆんべ襲われたとかって……」


「!」


悪い知らせに驚愕した太夫は、再び身を起こし、藤兵衛の方は彼を問い詰めた。「な、何ですと!?それで、命は?怪我は?」


「幸い、長崎屋さんには怪我はありやせん。松永右京様が襲って来た四人を叩き斬ったそうで。……あのお侍様、昨日は人助けの1日でしたね」おかしそうにつけ足した。


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