~異世界女子会~ 蒼い花(ティアラ)は誰が為に……

げんげんだの

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第4夜会 恋人のできた嘘のつけない狼男-ワードウルフ(後編)

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 みなせの放った一言
『ーーーもう答えが出ているーーー』
 その言葉にメンバーは驚きの声を上げた。

「みなせさん! 本当ですか!?」

「ええ。この耳でしっかりとお聞き致しました」

「いや~みなせしか気付かないようなこと誰かいったのかー?」

「私はわかりませんわ」

「おいおい……みなせ。一体誰が本当のことを言ったっていうんだ。割りとお互いに否定しあっていたと思うんだけど」

「はい。はっきりとこのお話を聞いた上でこれしかないという解答を出した方は……」

『……』

 全員が息を飲む。

 みなせが話始める名前を待っているからである。みなせは一呼吸置いて答えを出したメンバーの名前を話そうとしている。時間にするとせいぜい数秒程度の一拍……一呼吸であるのだがこの場のメンバーに取ってはとても長い間に感じられた。

 そして、遂に解答に一度たどり着いたメンバーの名前がみなせの口から告げられた……












……









……






















「チェルシーさまです」



『はあああぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!?』

 全員が驚きの声を上げた。いつも優雅に振る舞いマナーも良いロサナでさえ大声を上げていた。

「ええっ!? やっ……やった!? 当たった! 遂に推理できた! ほらみろ! やっぱり、私の言っていたことが正しかったんだ!?」

「いやいや! どこですか!? チェルシーさんの推理は割りとガタガタで色々喋るのでどこが正しいのかわからないです!」

「いやいや! ありえませんわ! 魔法的・化学的に否定されてますわ!」

「なんだなんだ? 皆謎を解けないからって失礼だな。謎を解いてから文句を……」

『チェルシーは黙っていて!』

「……はっはい……」

 三人の勢いに百戦錬磨の戦場を駆け巡ったチェルシーも押されてします。
 みなせは興奮する三人をなだめて席につかせてお茶を配る。
 皆がほっ……と一息を着いたタイミングでみなせはゆっくりと口を開き語りだした。

「チェルシーさまの推理ですが……」

「やっぱりあれだろ!? 魔法か薬物投与だろ!」

 またしてもチェルシーのテンションが上がる。それを一刀両断するかの如く。

「いいえ。全く違います」

「へ……?」

 チェルシーは目が点になり間の抜けた声を上げる。明らかに頭の上に、はてなマークがぷかぷかいくつも浮いているのがハッキリとわかる。
 そして、それは他のメンバーにも当てはまった。

「え? え? どういうことですか?」

「全くわかんないよ~」

「皆様はかなり今回のデートの内容を深掘りして追求しつづけておりますが話を最も簡単に捉えましょう。そう……例えるならば子どもの言葉遊びです。皆様は彼……マクレーンにからかわれたのです」

「嘘をついたってこと? そんなことはありえませんわ。マクレーンは真実人(トゥルー)。嘘をつくと死んでしまいますわ」

「では、本人を読んで目の前で説明致しましょう……皆様、マクレーンの入室を許可して頂いてもよろしいでしょうか?」

 皆、頷いて許可を出す……するとみなせの合図を待たずしてマクレーンが入室してきた。

「やはり、聞き耳をたてておりましたね?」

「そうね。まあ、料理を運ぶついでだからみなせちゃんは多目に見てねん!」

「では、チェルシーさまの推理も聞いていましたか?」

「ええ。もちろん。順序はあべこべだけど正解は正解ね」

『!?』

 マクレーンの一言にメンバーは驚きの顔を見せる。そこにはもちろんチェルシーも含まれていた。

「まずは皆様でチェルシーさまの推理を分かりやすく【起承転結】でまとめてみましょう」

「……なんだ起承転結って?」

 チェルシーの発言に皆力が抜ける。

「おばかね」

「なんだ~そんなことも知らないのか!?」

「これが王国最強と言われてると思うと頭が痛くなりますわ……」

「あっ……あははは(どうしよう!? 私もわからないです!)」

 ロサナが先生らしく説明をする。

「起承転結はストーリーの構成によく使われますわ。
起:物事の起こり
承:話を膨らます
転:視点が変わる
結:まとめる
この4つの構成のことですわ」

「?」

「……っこいつ!」

 ぼけーっと聞く耳を持たないチェルシーにロサナが苛立つ。

「まぁまぁロサナ様。具体的に今回のチェルシー様の推理でまとめてみてください」

「はいはい……まずは
起:魔法か薬物により幻を見た!
と言い出した部分が【起】ですわね」

 その説明を聞きユアも気付いて話に加わる。

「あっ! それでは
承:現実のことじゃなくても本人が経験したのなら真実だ!
これが【承】の部分で話を膨らませたのですね!」

「そうですわ! ユアはどっかの誰かとは違いますわね!」

「むきゅ~」

 ロサナがユアを抱き締め頭を撫でる。ユアはその豊満な胸に挟まれ目を回したようだ。

「なんだよ。私にもわかったよ!
転:ロサナとアーニャによる否定意見!
こういうことだろ? 私にもわかる! 簡単な内容だよ!」

 どや顔をするチェルシーを畳み掛けるようにすかさずアーニャが続く。

「結:チェルシーの正解は夢物語でしたとさ~
……ちゃんちゃん!」

「いやいや、合ってるんだろ!?」

「みなせはもちろん、マクレーン本人が否定しないとなるとどの部分が正解ですの?」

 全員が頭を抱える中、チェルシー本人が何かに気付く!

「あっ! そういうことか!」  

「わかったんですか!? チェルシーさん! 教えてください!」

「あれだ! ロサナとアーニャの否定した部分は正しくて、それ以外が正解なんだ!」

『……』

「あれ?」

 皆静まりかえる中、みなせとマクレーンがくすくす笑う。そして、あわあわしているチェルシーの背中に手をあて落ち着かせながらみなせが話し出す。

「皆様。今チェルシー様のおっしゃいましたことこそ真実でございます」

「そうだ夢物語なんだ!」

『……?』

「もう! なんでわかんないのかな!」

「いやいや意味がわかりませんわ」

「私もです」

「あたしも~」

「今回のお話を整理しましょう。マクレーンは嘘をつくと死んでしまう真実人(トゥルー)という種族です。したがって今回のデート内容に嘘はございませんでした。もちろん作り話も同意語なのであり得ません」

「んで~? あたしたちが目撃した人物も当てはまらないしチェルシーの推理も外れたでしょ~」

「だからモゴモゴ……」

「はいはい。チェルシーさんは黙っていましょうね~」

「ややこしくなるんだから」

 反論しようとしたチェルシーをユアとロサナが口を塞ぎ押さえ込む。

「はい。その通りでごさいます。ですので今回の出来事を言葉遊びで説明できるように【起承転結】という括りでまとめさせて頂きました。それが答えと説明になります」

 ユアが悩みながら呟く。

「ん~言葉遊び……あっ! わかりました!」

 そしてユアが気付く。

「今回の出来事! 起承転結の【起】と【転】これはロサナさんとアーニャさんが否定してみなせさんも正しいと言っていたのでここは省きます! そうすれば残った物が【承】と【結】! つまり、結果と理由が残りました! これが答えなんですね!? みなせさん!」

「はい。ユアさまのおっしゃる通りにございます。すなわち……」

「【結】マクレーンの夢物語!
 【承】理由は例え夢でもマクレーン本人の実体験だから嘘じゃない!
ってことだよね!」

 ユアとロサナの押さえを越えてチェルシーが声を高らかに上げる。一瞬皆がきょとんとしたのだが、みなせは

「その通りでございます。チェルシー様の名推理お見事でございます」

 ぱちぱち……と拍手をするみなせ。

「いやあ! 私の知恵を皆に披露してしまったな! あーはっはっは!」

 チェルシーはみなせに誉められたことが嬉しいのか気持ちのいいほど笑い声を上げて上機嫌であった。

 そして、不正解組とその他一人はというと……

「ねえ~……あれさ~正解といっていいの?」

「間違いなく名推理ではないですわよね?」

「あーんなに大きくふんぞり返ってだからおぶすなのよ」

「まあまあ、みなさんたまにはいいじゃないですか。貴重なことなので……」

『まあ、それもそうか』


「って、聞こえてるんだよ! お前らーーーーーー!」

『あははは!』


 見事にマクレーンに騙されていた一同だったが、皆腹の底から笑った一夜となった。




……



……






……


~夜会後~

 夜の帰り道を仲良く四人揃って歩く。カシャンっ……! カシャンっ……! とチェルシーの鎧の音もいつになく上機嫌に音を奏でている。

「全く……子供じゃありませんのよ」

 ロサナがため息をつく……しかし、その顔ははしゃぐ子どもを優しく見つめる母親のように優しい笑顔だった。

「たまにはいいんだい!」

「そ~そ~! いいのにゃ~!」

「ちょっと二人とも酔っぱらい過ぎですよ~」

 ピンク色の頬のチェルシーとアーニャに挟まれたユアは笑いながら二人を心配する。

「なんだい! 酔ってないろ!」

「酔ってないよ~帰るのめんどくさいから~ユアん家(ち)泊めて~」

「えっ!?」

「いいこと言うなアーニャ! 二次会だあ!」

「ちょっ! 実家だから皆さん入りきりませんよ~」

「こらこらいい加減に……んっ!」

 ばっ! ……っとロサナが後ろを振り向く。泥酔していた筈のチェルシーも一瞬でロサナの前に飛び出す!
 そうして頭まですっぽりとローブを被った者の手を掴み。後ろ手に捻り上げ拘束した。

「どこの誰だか知らないけどさっきから付け回してこっちを見る視線に私が気付かないと思った? 危害を加えてこないなら見逃してやろうと思ってたけど流石に友達が気付て警戒しちゃう距離まで近付かれても放置するほど私は甘くないよ……」

「えっ!? えっ!?」

「なんにゃらよ~?」

 状況の読めないユアとアーニャを尻目にチェルシーとロサナと謎の尾行者はやり取りを繰り広げていた。

「さあて、どのような醜い姿なのですかね? 尾行者(ストーカー)の犯罪者さんの顔はっ!」

 ロサナがばっ! と尾行者のフードをめくる。

『えっ!?』

 全員が驚きの声を上げた! そして次に発したのは名前だった。


『イズミさんっ!?』



恋人のできた嘘のつけない狼男-ワードウルフ 完

つづく
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