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23 キッチン家電の中の人
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「こちら、N-Smart Cookingシリーズフードプロセッサー、NS-2300Gになりまして~。シンプルなカラーリング展開は――」
誰に聞かせるわけでもなく、俺は商品PRを口ずさみながら下ごしらえをする。いやホント、フープロってマジで便利だ。
食材を放り込むだけで、この通りみじん切りだってあっという間!
「教授~ッさすがです! いいよいいよ、キレが良いね!」
「…………教授?」
一人盛り上がってフープロを撮影していると、何やら視線を感じた。
……そう言えば、朝霧がいるんだった。こいつ最近帰りが早いんだよ、早く飯食いたいから。
何食わぬ顔で口を閉じ、振り返る。
「いたのか、朝霧」
「ずっといる。ちなみに教授はプロフェッサーだ」
「知ってるわ! だからプロ……あれ? プロセッサーってなんだ? え、こいつ教授じゃなかったのか?!」
俺は……俺はずっと教授だと思っていたのに!!
愕然とする俺に、朝霧の生ぬるい視線が突き刺さる。つうかお前、俺の商品PR聞いてたのか。だって朝霧がフードプロセッサーってワードを知っているはずがないからな。
「あやうく『教授のご活躍』って投稿するとこだったわ……」
「……よかったな」
俺だって一応、SNS担当として気をつけているからな。炎上案件にならなくて良かった。
けど最近はフォロワーの伸びもイマイチ。そのくらいのプチ火種はおいしいかもしれないな……。
なんて、碌でもない考えが出てくるくらいには、現状伸び悩んでいる。
「やっぱイマドキは、企業も動画かなあ。料理動画系も多いしな」
動画は編集が面倒だけど、PRとしてはめちゃくちゃ強い。
日々の調理工程を撮って会社にぶん投げたら、他の誰かが編集してくれるんじゃないだろうか。少なくとも、俺が編集するのは勘弁してほしい。
それも、今度の企画会議のネタにしようか。
自宅でも仕事のことを考えている俺って、デキる感ある……なんて悦に入りながらミンチを放り込んだ。
ちなみに今日は朝霧からのリクエストがなかったので、俺が作りたいものを作っている。
朝霧は飯の名前をちゃんと覚えていないので、リクエストは大体ハンバーグだとかオムライスだとか、お子ちゃまメニューになる。
最近は自分の脳内料理レパートリーの貧困さに気付いたらしく、俺にお任せの日が増えてきた。
あっという間に刻まれた野菜類とミンチを混ぜるのも、フープロさんの役目。俺の担当は丸めて揚げるだけだ。
本日のメニューは、巨大肉団子のトマト煮込み。肉団子には食費とカロリー節約のために、木綿豆腐も絞って混ぜ込んである。
真ん中にはチーズを仕込んで……あと、朝霧が日々馬鹿みたいにウズラ卵を買ってくるから、こっそりウズラバージョンも作ってやろう。味玉にしろって怒るだろうか。
そこらでお目に掛かったことがないようなデカさの肉団子は、朝霧だって満足に違いない。
機嫌よく肉団子を揚げていると、背後に気配がする。
行儀の悪いワンコが、良い香りに待ちきれなくなったらしい。
「まだ食えねえよ」
「食えないのか?」
「中まで火通ってねえの。煮込んでから食うんだよ」
残念だな、今味見できるものはないぞ。
すごすごリビングに戻った朝霧は、もう洗濯物をたたみ終えたらしい。
手持ち無沙汰になったのか、おもむろにトレーニングを始めるあたり、ちょっとどうかしてるんじゃねえかと思う。
「暇ならサラダでも作っててくれ。レタス洗って、きゅうりを……いや、きゅうりは俺がやる。お前はレタスとミニトマト担当」
「ああ」
朝霧にきゅうりを切らせたら、ひとくちサイズにしかねないから。
そして、冷蔵庫を開けた朝霧を油断なく見張っておく。こいつ、全然信用できねえからな。
「……」
「ちなみに、お前が今両手に持ってんのはキャベツと白菜。どっちもハズレだ」
無言で冷蔵庫に戻した朝霧が、何かを手に取ってちら、と俺を見る。
「そうだな、それがレタスな。つうか残る野菜はほうれん草と小松菜、さすがにレタスとは間違えねえよな?!」
「……。でも、どっちもサラダで見たことがあるぞ」
「ねえよ、ほうれん草は入れたことあるけど、小松菜は生で入れねえよ」
こういうやつだ、朝霧は。自分が何を食ってるか全然気にしてねえんだろうな。
豚と牛の区別もついてねえし。
何度言ってもキャベツとレタスは間違えるし。今日は白菜まで選択肢に加えやがった。
「――なあ朝霧君、お前の知るサラダはレタスが細切れだったかな?」
「さあ……? でも、糸みたいなのもあるだろ」
「だからその場合はキャベツだ!! いいからレタスをシュレッダーするのをやめろ。無駄に器用だな?! もっとざっくりちぎればいいんだよ!」
「そうか」
こいつ……こんなんで本当に一人暮らししてたんだろうか。
飯は一切作ってないって言ってたけど、まさかここまでダメとは思わなかった。
誰に聞かせるわけでもなく、俺は商品PRを口ずさみながら下ごしらえをする。いやホント、フープロってマジで便利だ。
食材を放り込むだけで、この通りみじん切りだってあっという間!
「教授~ッさすがです! いいよいいよ、キレが良いね!」
「…………教授?」
一人盛り上がってフープロを撮影していると、何やら視線を感じた。
……そう言えば、朝霧がいるんだった。こいつ最近帰りが早いんだよ、早く飯食いたいから。
何食わぬ顔で口を閉じ、振り返る。
「いたのか、朝霧」
「ずっといる。ちなみに教授はプロフェッサーだ」
「知ってるわ! だからプロ……あれ? プロセッサーってなんだ? え、こいつ教授じゃなかったのか?!」
俺は……俺はずっと教授だと思っていたのに!!
愕然とする俺に、朝霧の生ぬるい視線が突き刺さる。つうかお前、俺の商品PR聞いてたのか。だって朝霧がフードプロセッサーってワードを知っているはずがないからな。
「あやうく『教授のご活躍』って投稿するとこだったわ……」
「……よかったな」
俺だって一応、SNS担当として気をつけているからな。炎上案件にならなくて良かった。
けど最近はフォロワーの伸びもイマイチ。そのくらいのプチ火種はおいしいかもしれないな……。
なんて、碌でもない考えが出てくるくらいには、現状伸び悩んでいる。
「やっぱイマドキは、企業も動画かなあ。料理動画系も多いしな」
動画は編集が面倒だけど、PRとしてはめちゃくちゃ強い。
日々の調理工程を撮って会社にぶん投げたら、他の誰かが編集してくれるんじゃないだろうか。少なくとも、俺が編集するのは勘弁してほしい。
それも、今度の企画会議のネタにしようか。
自宅でも仕事のことを考えている俺って、デキる感ある……なんて悦に入りながらミンチを放り込んだ。
ちなみに今日は朝霧からのリクエストがなかったので、俺が作りたいものを作っている。
朝霧は飯の名前をちゃんと覚えていないので、リクエストは大体ハンバーグだとかオムライスだとか、お子ちゃまメニューになる。
最近は自分の脳内料理レパートリーの貧困さに気付いたらしく、俺にお任せの日が増えてきた。
あっという間に刻まれた野菜類とミンチを混ぜるのも、フープロさんの役目。俺の担当は丸めて揚げるだけだ。
本日のメニューは、巨大肉団子のトマト煮込み。肉団子には食費とカロリー節約のために、木綿豆腐も絞って混ぜ込んである。
真ん中にはチーズを仕込んで……あと、朝霧が日々馬鹿みたいにウズラ卵を買ってくるから、こっそりウズラバージョンも作ってやろう。味玉にしろって怒るだろうか。
そこらでお目に掛かったことがないようなデカさの肉団子は、朝霧だって満足に違いない。
機嫌よく肉団子を揚げていると、背後に気配がする。
行儀の悪いワンコが、良い香りに待ちきれなくなったらしい。
「まだ食えねえよ」
「食えないのか?」
「中まで火通ってねえの。煮込んでから食うんだよ」
残念だな、今味見できるものはないぞ。
すごすごリビングに戻った朝霧は、もう洗濯物をたたみ終えたらしい。
手持ち無沙汰になったのか、おもむろにトレーニングを始めるあたり、ちょっとどうかしてるんじゃねえかと思う。
「暇ならサラダでも作っててくれ。レタス洗って、きゅうりを……いや、きゅうりは俺がやる。お前はレタスとミニトマト担当」
「ああ」
朝霧にきゅうりを切らせたら、ひとくちサイズにしかねないから。
そして、冷蔵庫を開けた朝霧を油断なく見張っておく。こいつ、全然信用できねえからな。
「……」
「ちなみに、お前が今両手に持ってんのはキャベツと白菜。どっちもハズレだ」
無言で冷蔵庫に戻した朝霧が、何かを手に取ってちら、と俺を見る。
「そうだな、それがレタスな。つうか残る野菜はほうれん草と小松菜、さすがにレタスとは間違えねえよな?!」
「……。でも、どっちもサラダで見たことがあるぞ」
「ねえよ、ほうれん草は入れたことあるけど、小松菜は生で入れねえよ」
こういうやつだ、朝霧は。自分が何を食ってるか全然気にしてねえんだろうな。
豚と牛の区別もついてねえし。
何度言ってもキャベツとレタスは間違えるし。今日は白菜まで選択肢に加えやがった。
「――なあ朝霧君、お前の知るサラダはレタスが細切れだったかな?」
「さあ……? でも、糸みたいなのもあるだろ」
「だからその場合はキャベツだ!! いいからレタスをシュレッダーするのをやめろ。無駄に器用だな?! もっとざっくりちぎればいいんだよ!」
「そうか」
こいつ……こんなんで本当に一人暮らししてたんだろうか。
飯は一切作ってないって言ってたけど、まさかここまでダメとは思わなかった。
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