62 / 144
首席騎士様は、状況を見守る③
しおりを挟む
「これまでも私は、生徒への指導態度について、再三注意してきたはずだよ。それは君の魔術の実力を惜しんでのことだ。君の美しい術式を後進に惜しみなく伝えてくれたなら、若き才能も大きな学びを受けられたのだがねぇ。……残念だよ」
寂しそうに、学長の目尻がわずかに緩んだ。
落ちこぼれのあたしには、学年主任のすごさはよく分からない。正直術式が美しいだとか乱れてるとか、そんなの見分けもつかないし。でも、あれだけ怒っていた学長がそう語るくらいには、きっと実力が高いと言うことなんだろう。
「今回の件に関しての処罰は追って正式に連絡するが……その前に」
言いながら、学長は自らの顔の前で右手をゆらりとはためかせる。弧を描くように軽く指先が動いたかと思うと、その手にはいつの間にか二通の手紙が握られていた。
上質な白い封筒には美しい文字で宛名が書かれているみたいだし、紅い封蠟もしっかりと見える。
転移? 奇術? あたしには学長が何をしたのかさっぱり分からない。まるで、昔街中で見た大道芸みたい。その滑らかな動きに、おもわずため息がでた。
「念書の魔法……? 初めて見た」
リカルド様が小さく呟いたのを聞いて、さらに驚いた。
念書って……魔法で手紙を作り上げたってこと? ていうか、魔法でわざわざ書をしたためる必要性がイマイチ分からないんだけど。
学長の右手がひときわ大きく弧を描くと、手紙がふわふわと空で揺れる。
うわぁ、なんか手紙が鳥みたいに羽ばたき始めた。もしかして、これから宛先へと飛んでいったりするんだろうか。こんな時に不謹慎かも知れないけれど、初めて見る学長の魔法に、あたしの胸は勝手に高鳴った。
「ま、待て! 待ってくれ!」
「すまぬが、私も報告する義務があるのだよ」
学年主任が血相を変えて学長に詰め寄ろうとした瞬間、学長の前に薄い大きなシャボン玉のような膜が張る。指先がそれに触れた途端、学年主任の体は電撃を受けたように仰け反った。
「ぐ……っ」
くぐもったうめき声を上げる学年主任を冷ややかな目で見下ろして、学長は小さく「行け」と呟く。
羽ばたく手紙たちが勢いよくどこかを目指して飛び去ろうとした瞬間。
「行くな!」
学年主任の両手から、凄まじい熱量の炎が手紙めがけて吹き上げた。
まるでファイアバードみたいに、炎が渦巻きながら一直線に伸びていく。小さな手紙を狙うには余りにも強力な魔法。
あの手紙っていったいなんなの? そこまで必死に止めないといけないもの?
炎が手紙に到達しようというその時。
「見苦しいわ」
美しい声が響くとともに、水の壁が出現し炎の行く手を遮った。
寂しそうに、学長の目尻がわずかに緩んだ。
落ちこぼれのあたしには、学年主任のすごさはよく分からない。正直術式が美しいだとか乱れてるとか、そんなの見分けもつかないし。でも、あれだけ怒っていた学長がそう語るくらいには、きっと実力が高いと言うことなんだろう。
「今回の件に関しての処罰は追って正式に連絡するが……その前に」
言いながら、学長は自らの顔の前で右手をゆらりとはためかせる。弧を描くように軽く指先が動いたかと思うと、その手にはいつの間にか二通の手紙が握られていた。
上質な白い封筒には美しい文字で宛名が書かれているみたいだし、紅い封蠟もしっかりと見える。
転移? 奇術? あたしには学長が何をしたのかさっぱり分からない。まるで、昔街中で見た大道芸みたい。その滑らかな動きに、おもわずため息がでた。
「念書の魔法……? 初めて見た」
リカルド様が小さく呟いたのを聞いて、さらに驚いた。
念書って……魔法で手紙を作り上げたってこと? ていうか、魔法でわざわざ書をしたためる必要性がイマイチ分からないんだけど。
学長の右手がひときわ大きく弧を描くと、手紙がふわふわと空で揺れる。
うわぁ、なんか手紙が鳥みたいに羽ばたき始めた。もしかして、これから宛先へと飛んでいったりするんだろうか。こんな時に不謹慎かも知れないけれど、初めて見る学長の魔法に、あたしの胸は勝手に高鳴った。
「ま、待て! 待ってくれ!」
「すまぬが、私も報告する義務があるのだよ」
学年主任が血相を変えて学長に詰め寄ろうとした瞬間、学長の前に薄い大きなシャボン玉のような膜が張る。指先がそれに触れた途端、学年主任の体は電撃を受けたように仰け反った。
「ぐ……っ」
くぐもったうめき声を上げる学年主任を冷ややかな目で見下ろして、学長は小さく「行け」と呟く。
羽ばたく手紙たちが勢いよくどこかを目指して飛び去ろうとした瞬間。
「行くな!」
学年主任の両手から、凄まじい熱量の炎が手紙めがけて吹き上げた。
まるでファイアバードみたいに、炎が渦巻きながら一直線に伸びていく。小さな手紙を狙うには余りにも強力な魔法。
あの手紙っていったいなんなの? そこまで必死に止めないといけないもの?
炎が手紙に到達しようというその時。
「見苦しいわ」
美しい声が響くとともに、水の壁が出現し炎の行く手を遮った。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる