上 下
30 / 75

【ゆず視点】なんだよ、陸だって……

しおりを挟む
陸にさんざん脅されて怖くなったオレは、いたたまれなくなって家を飛び出した。


「このままだとリストに惚れられて、結婚までまっしぐらだ」

「もしくは男達を侍らせてラブラブ空間満喫の、逆ハーレムを堪能出来るかも知れない」


ついさっき聞いたばっかりの、縁起でもない陸の言葉が頭の中をぐるぐると駆け回る。これがそんな怖いゲームの世界だなんて知らなかった。

いっくらあいつらがイイヤツだっていったって、さすがに結婚とか言われてもムリだ。最初っから教えてくれてれば、オレだってもうちょっと気をつけたってのに。

ちきしょう、どうすりゃいいんだ。

いやいや落ち着けオレ、きっと大丈夫だ。陸が「あとは俺がなんとかする」って言ってたし。

陸が頑張って説明してくれたことはなんか難しくってよくわかんなかったけど、とりあえずは陸の言う通りに届け物して、あとは採取に行くときに男は連れてかなきゃいいんだろ?

で、今日はとにかく、ミリーとニナにこれを届けりゃいいんだよな? よっしゃ。


「こんにちはー!」


まずは確実にニナがいるだろう教会に飛び込む。そして、目の前の光景に絶句した。


「まあ、いらっしゃい~」

「あら、ゆずちゃん久しぶり!」

「どうしたの、そんなに息せき切って」


あれ? なんでこんなに集まってんの? お、女ばっかり……。え、ルーフェルミにミランダに、ニナ? キャッシュにミリーまでいるし。


「ちょうど良かったよー、今女子会中だったの!」


ミリーがおいで、おいでと呼んでくれて、あっという間に女性陣の輪の中に入れられてしまう。


「ゆずさんも呼ぼうかって、言っていたところだったんですよ」

「そうだよ、リクとのことも聞きたいしっ」


さすがシスター、慈愛に満ちた優しい笑顔のニナはまだいいとして、なんだよミリー……リクとのこと聞きたいって。話すことなんか別にないんだけど。

だいたいニナとミリーに至ってはこれまで会ったことすら少なくて、まだ話すのとか緊張しちゃうんだよな。だってさっき見た時、たしか好感度10ちょっとだったし。

ただ、既に目の前にはティーカップが置かれ、全員の目がオレに向いている。

今まで様々な輩をぶっ飛ばし、力で窮地を切り抜けてきたオレだが、これはムリだ。敵前逃亡もできない完全な窮地だ。

結局その日は、日が暮れるまでみんなに根掘り葉掘り聞かれて、オレはぐったりしたまま家に帰った。

なんだってみんな、あんなに元気なんだよ……それにしても陸って意外と人気あるんだな、みんなそうとう興味津々な感じだったけど。

すっごく疲れてるのになんでだか眠れなくて、なんとなく陸のステータスを見てみる。

【好感度】
リスト:53
ディーノ:48
アデラール:56
ラツィオ:52
プラグ:43

ミランダ:55
キャッシュ:67
ルーフェルミ:50
ミリー:54
ニナ:52


「……」

なんだよ、陸だってキャッシュだけ好感度高いし!

「俺は全員、好感度をほどほどに保ってる」とか言っといて。そうだよな、陸はもともとキャッシュが好きなんだもんな。

なんでかムシャクシャして、オレは寝ている陸の鼻を思いっきりつねってやった。
しおりを挟む

処理中です...