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変化を受け入れた日

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ゆずが女っぽくなったって理解したつもりだった。

あまつさえ、好きな男とか出来たんじゃないかとまで疑ってた。

それなのに、なんでこんな事で俺、ショック受けてんの!?

いや、なんか。そうだよな。

俺の想定より相当……ゆずの内面が、かなり本気でしっかり乙女への階段を登ってたっていうか。

ちょっと遠い目になってしまった。


「……やっぱり、気持ち悪い?」

「いや、そういうんじゃなくてな」

「それが一番怖かったんだ。陸に嫌われるんじゃないかって……だって自分でもキモいって思うんだから……当たり前だよね」


あ、この表情。なんかデジャ・ヴ。

まだゆずがぐんぐん背が伸びる前、気が弱くて俺のあとばっかりついてくるもんだから「他のヤツとも遊べ」って言うと、よくこんな顔してたなぁ。

裏切られたような、傷ついた顔。

ああ、なんだ、そうか。

変わったって言うか、戻った部分もあるのかもなぁ。

身長が一気に伸びて、よく絡まれるようになって、自衛のために鍛えたらさらに絡まれるようになって。もともと悪かった目付きも絡まれる度にさらに凶悪さを増して。

いつの間にか、気が弱かった頃のお前の事なんて忘れてたよ。

もしかしたらここは、お前が素のままの自分で居れるとこなのかも知れないな。

そう考えたら、なんかこう、ストンと腑に落ちた気がした。


「陸?」


不安そうに、俺の顔を覗き込む。そんな怯えた目とか、しなくたっていいのにな。

そんな顔、でかくなってからは譲の時だってそう簡単にはお目にかからなかったと思うけど。

あーでも、会ったばっかのガキの頃は結構あったかな。お互い、きっと距離が掴めてなかったんだろう。


「ばーか、それくらいで気持ち悪りぃとか思わねーよ」

「だって、なんか遠い目してた」

「いや、なんかお前のガキの頃思い出してたわ。なんかそんな泣きそーな、情けない顔よくしてたなーと思って」


途端にゆずの顔がボッと真っ赤になった。しまった、どうやら触れて欲しくない事だったらしい。譲の時とは比べものにならない小さな拳を振り上げて、俺の頭部を狙って振り下ろしてくる。

結構な勢いでゆずの拳が空を切った。

うわっ危ねえ! 俺の敏捷性だって上がってたから避けられたものの……! 今、風を感じたぞ?


「危ねえだろーが! 今のお前の腕力でマジメに殴られたら、まあまあスプラッタなことになるじゃねえか!」

「あ、ごめん!」


ハッとした表情で拳を体の後ろに隠す。今の顔、お前、絶対に手加減忘れてただろ!?
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