上 下
56 / 75

何があったんだ?

しおりを挟む
目が覚めたらリストのイケメン顔が心配そうに見下ろしていた。

起き上がろうとした途端、頭の左あたりに激痛が走る。


「いっ……~~っ」

「まだ寝てた方がいい。かなり派手なコブが出来てるからね」


くう、マジで痛い。なんなんだよ、もう……!

涙目で頭をそっと触ると、気絶した方がマシだって痛みがさらに俺を襲った。


「悪いリスト、そこの箱ん中に高級傷薬入ってるから、それ取って……」


無言でガサゴソと保管箱を漁ったリストが、親切にもゆっくりと抱き起こして傷薬を飲ませてくれた。いやマジで性格もイケメンだよリストは。見た目チャラいのがもったいないくらいだ。

こいつなら、安心してゆずを任せられるんだけどなあ。


そんな事を考えてリストを盗み見たら、リストもこっちをガン見してて、目と目がバチっと合ってしまった。

スペックをあげまくった高級傷薬の恩恵ですっかり回復した俺を、いつになく厳しい表情で見ているリストに少しだけ緊張する。


「な、何だよ」

「何があったんだい?」

「え、何が」

「ゆずちゃんとだよ、泣いて俺のとこに来たんだよ」


リストはジト目で俺を見るが、俺は少しだけ複雑な気分だ。なんだよゆずのヤツ、結局リストのトコに行ってるんじゃねえかよ。


「ゆずちゃんが、ケンカしてお前に回し蹴りしちゃったってあんまり心配するから見に来たんだけど。それで、ケンカの原因は?」

「ケンカっつうか、アイツが一方的に怒って出てったんだよ」


ちょっとふてくされ気味に言ったら、リストに「で? 何を話してたんだ?」と重ねて聞かれた。穏やかな口調と表情なのに、話すまで引かない決意がみてとれるのってなんでなんだろう。

しぶしぶ事情を話したら、心底呆れたとでも言いたげな半眼を披露されてしまった。せっかくのハンサムフェイスが台無しなんだが。


「ゆずちゃんに土下座してこい」

「意味がわからん」


俺は悪くねえだろ。

そう思うのに、リストはわざとらしいため息をついて目のあたりを押さえたりしている。チラ、とこっちを見ては天を仰ぎ、腕組みしては目を泳がせ、口元に手を当てては瞑目する。

なんなんだ、その思わせぶりな態度はいったい。


「あー……ゆずちゃん、可愛いよな」

「お、おう」


なんだいきなり。確かにまあその、なんというか。


「この頃ますます可愛いって、さすがのお前でも思ってるんじゃないのか?」

「そりゃまあ……あいつこの頃とみに女子力があがってるからな」


ぶっちゃけ不本意ながら可愛いと思う場面がないわけでもない。割と頻繁だと言う事実は俺自身の中でも伏せておきたい事実だが。正直キャッシュちゃんといい勝負だと思うくらいの成長っぷりである。


「それってさ、なんでだと思ってるわけ」
しおりを挟む

処理中です...