ゼロのダンジョン、進化中!

真弓りの

文字の大きさ
18 / 26
初めての来訪者

いたずらっ子、召喚!

しおりを挟む
ルリがやらせてあげたらいいじゃない、ととりなして来たが、ここは譲れない。俺があまりに反対したからか、ゼロはすっかり拗ねてしまった。

ルリには白い目で見られ、ユキもキュ~ン……と哀しい声を出す。耳もしっぽも可哀想なくらいぺしゃんこだ。きっとゼロが可哀想だと思っているんだろう。

うう、居た堪れない……。

でも、それでも譲れない。悩む俺の脳裏に、ふとある映像が浮かぶ。

そうだ、昼間カタログを見た時、確か……。

急いでカタログを取り出し、書いてある情報をじっくり読み込んだ俺はゼロを説得に入った。


「なぁゼロ、考えたんだけどさ、お前がやりたいことを実際にやってくれるスタッフを召喚すればいいんじゃないか? ダンジョンも錬金も、って時間が足りないだろ」

「……出来るし」


きたな、この聞き分けのない感じ。よっぽど自分でやりたかったんだろうが……でも、負けねぇぞ!


「新しいダンジョンも、練兵場も作るんだよな? でも錬金もしたいんだろ?」

「………」

「ほら、カタログに錬金術師いるし。女の子も選べるぞ? 顔も性格もスキルも、チケットと違ってカスタマイズ出来るみたいだし。素直で優しい子召喚して、考えたのやって貰おう。……な?」

「僕そういうの、キライ」


あれ? 好みじゃなかったか?


「あんた、バッカじゃないの? 召喚するなら素直で可愛い男の子でしょ!?」


いや、ルリの好みは関係ねぇから。そう言い返そうとしたら、俺の手からスルッとカタログが取り上げられる。振り返るとゼロがカタログを片手にダンジョンコアの前に立っていた。


「……もういいよ。錬金術師、召喚すればいいんだろ」


そうだけど。そこまでシュンとされると、こっちが悪いような気分になるじゃないか。なんだこの罪悪感。


「その……ゴメンな」


何について謝ったかは、自分でも分からない。ゼロは俺とルリを交互に見て、こう言った。


「でも、カスタマイズとかそーいうのはしないから。来てくれた人がどんな人でも、絶対に仲良くしてよ」


そう宣言したゼロによって召喚されたのは、なんと小柄で可愛い女錬金術師だった。

おお、優しげなお嬢様顔!

淡いピンクの髪はざっくりと三つ編みにし、前に流している。大きなつばひろ帽子に首もとが留められただけのマント。白いミニのチュチュから伸びるすらっとした脚が魅力的だ。


うんうん。こういう子を待っていた。

ゼロ! 良くやった!

ルリは面白くなさそうだが、しょうがない。キョロキョロしているその子と、ゼロの目があう。


「ご主人様……?」


可愛らしく小首を傾げる彼女を見て、ゼロは相変わらず恥ずかしそうにモジモジしはじめた。アレだな、やっぱどうしても人見知りするタイプなんだな。


「うん、あの……よろしく」

「ああ、ご主人様いい人そうで良かったですぅ。なんでもやるので、よろしくお願いしますぅ」

「うん、早速だけど……錬金釜あるから、これからドンドン色んな物、錬金して欲しいんだ」

「錬、金、釜!!!!」


女は突然叫び、大きな目を潤ませて、プルプルと震え始めた。


「本当ですかぁ~!? 嬉しい! これまで危険だって、使わせて貰えなかったからぁ……憧れでしたぁ! 頑張りますぅ!」


ちょっと待って、俺たち錬金術師を召喚したよな? 危険だからって使わせて貰えなかったってどういうことだ。しかも錬金釜を見る瞳の輝きがゼロに似ている。

いったん錬金釜が目に入るやいなや、それ以外に目が向かない。なんかヤバいタイプかも知れない。少しだけ……ほんのちょっとだけ心配だ。

なにはともあれ彼女は名前をマーリンと付けてもらい、俺達と自己紹介を兼ねた簡単な挨拶を交わしたが……視線はチラチラと錬金釜を見ている。完全にうわの空じゃねーか。

ひととおりの挨拶を済ませると、マーリンはゼロとコソコソと話し、何かを受け取り、挨拶もそこそこに喜々として錬金部屋に入って行った。もはや錬金の事しか頭になさそうだ。


「なんかもう錬金のことしか頭にない感じね。天然かしら……マッドかしら。掴めない子だわ~」

「アレ、メシも忘れそうなタイプに見えるぞ。気を付けねぇと」

「でも、凄いの作っちゃいそうじゃない? 僕、楽しみだよ!」


ゼロは同類に仕事を任せて安心したのか、一気に機嫌を直したらしい。それはそれで助かったわけだし、錬金はマーリンに任せ、俺たちは引き続きダンジョンの強化に励む事にした。

お次はホビットとブラウニーの召喚だ。

ホビットはともかく、ブラウニーはどれ位のいたずら小僧ぶりか分からない。とりあえず1体ずつに決めた。ついでに店の強化も視野に入れ、ドワーフたちも一緒に召喚する。


『ホビット1体、ブラウニー1体、ドワーフ4体を交配強化付与で、120Pを消費して召喚しますか?』

「承認!」


身長が俺の腹のあたりくらいの男たちが5人、同じくらいのデカさの少年が1人現れる。悪いが、顔が幼いのがブラウニーだろう位しか、見分けがつかない。

ゼロも同じだったのか、一瞬困惑した表情を見せた。


「えーっと、じゃあドワーフの皆さん! ダンジョンの空いてるお店で、武器や防具を作って下さい! 若い人が好きそうで、付加効果があるとなお良しです」


めっちゃざっくりした指示を与えたうえで、ユキにダンジョンへの案内を頼んで、まずはドワーフに仕事を任せる。そしてその場には一人の男と少年だけが残された。

じゃあ、残ったこいつがホビットなんだな。

ホビットは若い男だった。申し訳ないが、まだ仕事を決めていない。妖族レア度2コンプリート目的だったからだ。ゼロも同じだったらしく、素直にホビットに問う。


「何か得意な仕事ってある?」

「おら、ずっと店やってきたから、商売なら得意だ」


人の良さそうなヤツだとホビットを観察していたら、ゼロがそっか! と声をあげる。


「ドワーフの人たちには作るのに集中してもらって、売る専門の人を置けばいいんだ!」


確かにちょうどいい。彼には駆け出し用ダンジョンで、武器・防具の販売を担当してもらう事になった。ちょうどドワーフたちの案内を終えて戻ってきたユキに事情を話して、今度はホビット君をダンジョンに連れて行ってもらう。

いつのまにか場所もしっかり把握してるし、可愛い顔してユキは意外と有能なんだよな。

そして残るはいたずらっ子設定のブラウニーだ。ここまではおとなしくしてくれてたけど、いたずら好きだってのが性質らしいから、どうなることやら。

俺はてっきり5~6歳のやんちゃ小僧が出てくると思ってたから、それよりはちょっと、トウがたっている。


「こんにちは。よろしくね」


優しくゼロが優しく声をかけたら、ブラウニーはほっぺたをプクッと膨らませてなぜか不満げだ。


「なんだよ~! マスター、美人のおネーサンじゃ無いじゃんかぁ」

「えっ? ゴメン」


なぜか謝るゼロ。


「じゃあ、私の弟子になる?」

「却下」

「犯罪が起こりそうだからムリ」


急にしゃしゃり出てきたルリの意見はもちろん一蹴された。ルリは顔的には絶世の美女なんだけどな、口を開くと急に残念なんだよな。

でも、ゼロは『弟子』という言葉で閃いたのか、楽しそうにブラウニーを錬金部屋に放り込んだ。


途端に湧き上がる悲鳴。

軽い爆発音。

いきなり何があった!?


「ゼロ様ぁ! なんですか、この子っ! いきなりスカートめくるしっ! 胸揉むしっ! あげく錬金釜に適当に材料ぶち込むしっ!」


マーリンが泣きながら飛び出して来た。

ああ、それであの爆発音。


「マーリンの助手にどうかなって思って。可愛いでしょ? 君、適当に材料入れるなら、1個だけにしてね」


ゼロは見当外れの注意をしている。ていうかお前、それが目的だろう。恐ろしいヤツだ。


「ゼロ様、こんな助手イヤですぅ!」

「う~ん……でも、錬金の可能性が広がると思わない? 思いもかけない物ができるかもよ?」

「そんな博打みたいな……! 私、普通の錬金がしたいですぅ」

「えー、おれ、あれやりたい。ブクブクってしてちょー面白い!」


泣きが入っているマーリンとはうらはらに、ブラウニー君は錬金釜がお気に召してしまったらしい。どんぐり目を目一杯開けて一生懸命に主張している。

まあな、ゼロもあれだけやりたがってたくらいだもんな。子供からしたら面白いおもちゃみたいなもんなんだろうなぁ。


「うーん。じゃあえーと、ね。マーリンお姉さんの言うことちゃんと聞いてね。いたずらはほどほどに」


ゼロの言葉にマーリンはガックリとうな垂れる。

ブラウと名付けられたこの子とマーリンが一体何を発明してしまうのか、想像も出来ない。

本当に、ほどほどにして欲しい。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...