仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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ええ⁉ 誤解だよぅ

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やってやった!

やってやったよ、あたし!

一晩中、あの黒いイヤなヤツに睨みをきかせ、ついにあたしは大事な人を守り通した!



あの夜、安らかな寝息が聞こえ始めて少し経つと、あの部屋の隅の黒い塊が、そろりそろりとあたしの大事な人に近づいて来たの。明確な悪意をあの人に向けて、そのせいであの人は魘され始めてしまった。

大粒の汗が額に浮かんで、とっても苦しそう。

止めてよ!
苦しんでるじゃない。

ねぇ、どうしてイジワルするの?


尋ねても、黒いヤツはあたしなんか完全無視だ。

悪意の念を次第に濃くし、ついにはあの人に這い寄って、触ろうとする。


やだ! 止めてよ!
ほら、可哀相に、苦しそうに胸を押さえてる……。


来ないで!
あの人には指一本触れさせないんだから!


あの人の体を守りたくて、体の上にひらりと飛び乗った。


この体に近づかないで!


唸り声をあげ、全力で威嚇する。



あまりの悪意の高まりに、あの人もとうとう目が覚めてしまったみたい。青い顔で、脂汗をだらだらながして、すっごく苦しそう。息も次第に荒くなる。



心配しないで、あたしがきっと守るから。



まだ、狩りもした事がなかったの。
縄張り争いだって一回もした事なかった。
だってママが今までは守ってくれたんだもの。


戦い方も知らないけど。
それでも、あたしを助けようとしてくれたあの人を守りたい。


黒いヤツが動いた瞬間に、あたしの中で本能が目覚めた。黒いヤツに無我夢中で飛びかかり、噛みつき、引っ掻き、また牙をたてる。

大乱闘の末、ようやく部屋の隅に戻っていった黒いヤツ。本当は部屋からも追い出したいくらいだけど、まだチビなあたしじゃそこまでは出来なかった。

あの人に近づいてこないように睨みをきかせ、ヤツと睨みあったまま朝を迎える。


そうして、あたしは初めての戦いに勝利したの。


あたしの望みは、優しいあの人を守ること。
だから、あの黒いイヤなヤツがあの人に触れたりできないように、それからは毎日毎日、黒いヤツと戦った。


あたしは死んじゃったけど、大切な人を守れてるって思うと幸せだった。

幸せだったのに。




「おう雅人……ってお前、なんか顔色やべーぞ」

「ああ……この頃夜、寝れなくて」

「何それ、不眠症? お前そんな繊細だったっけ」

「いや……なんか、寝てると……その、部屋で獣の唸り声がするっつうか」


ええ⁉ それ、もしかしてあたし⁉


「何それ、まさか怖い話系⁉」

「言いたかないけど……まあ、それ系……だと思う」

「その顔色じゃ冗談ってわけでも無ぇよな。うわーマジか……しっかしまたなんで急に? お前どっかアヤシイとこでも行ったの?」

「行くわけねーだろ。ただ、思いあたるふしはある」

「え、何?」

「二週間前、跳ねられた仔狐拾って動物病院行ったんだけど死んじゃって……酷いのってそれからだし」

「うわぁ、まさかの逆恨み? しかも狐って……完全にホラーじゃねぇか!」


ええっ⁉ そんな‼
違う、違うよ、誤解だよぅ……!

あたし、あたし、 恨んでなんか……!
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